「君は今のヒーロー社会をどう思うかい?」
目の前の注文の品にスプーンを伸ばそうとした所での問い掛け、それへの返答を考える時間は殆ど無い。
だって、普段から思っていた事だからだ。
「現実と空想活劇の区別が付かない馬鹿が多い、かな?」
「うわっ!? 思ってたより厳しそう」
例えばの話、刃物を振り回しながら奇声を上げる奴が居たら、銃を街中で乱射するなんて事件が目の前で起きたとして、それを呑気に眺めるのは有り得ないと思うんじゃないかな?
ああ、緊急時でもスマホとかで撮影するのは居るけれど、普通はしない、そんな奴は馬鹿の烙印を押されるべきだ。
なのにヒーローとヴィランの捕物はショーの一種として扱われているのは甚だ疑問だ。
大体の人が物騒な凶器を持っているのと同じだし、治安の悪さを実感して社会が暗くなるよりマシ? それでも狂気的だよ。
「その馬鹿が増えている辺り、犯罪率が下がっても治安は悪くなっていると感じるんだ。何処か画面の向こう側の感覚なんじゃないのかな?」
「私は平和ボケしている位がちょうど良いとは思うんだけれどね。でも、確かに戦闘中はなんて逃げて欲しいとは思うかな? 被害を出さないのもヒーローの役目なんだがね」
昼下がりのファミレス、受験勉強の合間に伯父さんと遭遇した私はチョコパフェを突きながらヒーロー飽和社会に対しての感想を述べる
一昔前の道徳の教科書では推奨していた様な小さな親切、それさえも人任せにしがちな事を口に出せば骸骨みたいな伯父さんは苦笑しか出来ない。
「これも全部オールマイトが凄すぎた影響かもね。どんな事件もパパッと解決、それに憧れてヒーローが増えて犯罪率も低下……危機感が足りていない」
「
「平和の象徴が老いる前に、比較されても大丈夫な迄に後継者が育つ前に、面倒なのが出ないと良いけれどね。……私の個性が伯父さんに効けば猶予は有ったのにさ」
「大丈夫大丈夫。わた、オールマイトだってそこまでの歳じゃないし、未だ平気……がふっ!?」
あっ、吐血。とても平気には見えないんだけれどなあ……。
それと今、私って言いそうになったでしょ?
彼こそ平和の象徴でありNo.1ヒーローのオールマイト、因みに私の母方の伯父でもある。
狙われるから秘密なんだけれどね。ヒーローが本名を隠してスーツで普段着と掛け離れた姿なのってそっちの意味もあるんだろうさ。
「それにそんな社会でも君はヒーローになりたいんだろう?」
「民度と役目の必要性は別だからね。私は自分の生まれ持った力を有効活用したいし、人助けの重要性だって知っているから」
だからこそヒーローの足を引っ張る連中はちょっと嫌いだ。警察とか軍みたいな組織で動かない弊害がでてるからね。
そうやって話している間にパフェは空になり、伯父さんは伝票を持って立ち上がる。
遠くから事件らしい音が聴こえていた。
まーた母さんに叱られるのに頑張るなあ。そもそも伯父さんが頑張る時点で新人が育ってない証拠じゃないか。
「じゃあ、受験頑張って。確か推薦枠を貰ったんだっけ?」
「うん。雄英のヒーロー科受験の推薦枠を貰ってね。友人達にさっさと合格を自慢したいし、早く試験日になって欲しいな」
「自信満々で頼もしいなあ」
「自信満々でなくちゃヒーローは目指さないさ」
おっと、忘れてた。私の名前は
「障害物競争……まあ、いけるでしょ」
筆記試験も終えての最終試験、幾人かのグループに分かれての種目は障害物競争、私としては可もなく不可もなし。
妨害有りなら独壇場でも、これはヒーローの卵を目指す試験だから仕方が無い、か。
「スタート!」
合図と共に文字通りに飛び出す。背中に生えた蝙蝠みたいな翼で宙を舞い、先頭集団の一人に加わった。
おいおい、流石は推薦枠、私以外にも凄いのがいるじゃないか。
一人は少し話した根明の夜嵐君、風を操る個性の持ち主。近付いたら飛行のバランスを崩されるかな?
それでもう一人は氷の個性の轟君、何かピリピリした様子。エンデヴァーの息子だそうだけれど、誰かの何かにはそんなに興味が湧かないから別に良いや。
こっちは僕の移動の邪魔にならないし。
さてさて、どうせならトップを目指すべきだけれど、どうすべきか……。
「……何というか此処迄抜きん出るとは思いませんでしたね」
推薦入試の最終試験の様子を映したモニターを眺めながら教師の一人が呟く。
推薦枠が有るだけで個性教育への実績がある証拠だが、それを勝ち取ったのだから同世代に比べて優れているのだが。画面にて首位争いを繰り広げる三人は別格。
レコードタイムを更新する勢いでゴールを目指し、他の推薦枠の生徒を置き去りにしていた。
「一人はエンデヴァーさんの息子だから当然として、他二人も個性を使いこなしているな。誰が勝ってもおかしくはない」
「あっ、でも均衡が崩れたわね」
ゴールは目前、ラストスパートとばかりに三人が速度を上げる中、夜嵐の風の放出の影響を受けたのか裁兎の体勢が崩れて二人との距離が僅かに開いてしまった。
中盤までなら挽回可能な距離ではあるものの、残り数秒で決着がつく局面では絶望的、それでも彼女が優秀なのは間違いないと評価を下しつつ残り二人のどちらが入試一位の座を勝ち取るのかと教師陣が思った時だった。
空中で前後逆の体勢になった彼女の口の中が発光、僅差で夜嵐が先にゴールする寸前に放たれた破壊光線は裁兎の身体を後方のゴール目掛けて押しやった。
機械の測定によると差は僅か0.01秒、ゴールを示す音が響くと同時に着地した彼女は何事も無かったかの様に余裕の笑みを浮かべていた。
「って感じだったんだよ。二位と三位の二人に話し掛けたんだけど、轟君の方は余裕が無いって感じだったな。こんな競技くだらないってみたいな?」
あの推薦入試から月日が経って、今は雄英体育祭当日。競技は障害物レース、コースアウト以外は何でも有りの大混戦。
その開始まで少し時間があるからクラスメイトの小森ちゃんと少し話をしていたよ。
「放課後の自主連の時、破壊光線出した後は舌を少し火傷したって悶えてたのに、入試の時は余裕だったノコ?」
「さーて。そろそろ開始だけれど……物間君、やっぱり第一種目から全力出すよ」
「はあ!? 序盤で上位になっても後で不利だろうし、様子見って言ったよね!? 君、馬鹿なのかい!?」
「だって、あんな選手宣誓を聞いちゃったら滾らない?」
打てば響くタイプのクラスメイト、名を物間君。いや、私も最初は合理的に行く気だったんだ。最後に一位になった奴が一位だし、敵情視察と力の温存は必須だろうさ。
でもねえ、他のクラスなんてオマケみたいに扱われてるA組の入学首席が口にした、自分が一位になる、それを聞いちゃったら手を抜くとかあり得ないでしょ。
「どうせなら徹底的に正面から実力で叩き伏せたくない? 小細工使わなくてもB組の方が上だって思わせたいじゃないか。その為に希望者を募って放課後の自主練をしていた訳だし」
流石は常に進歩と試練を求める学風、まさか入学初日から実力テストをやるからって入学式をブッチするクラスがあったり、自主練に使うからって施設の利用申請が初日から通るだなんてさ。
「お世話になった先輩だって期待してくれているよ?」
「うっ。しかしだね……」
このマウント取りが趣味みたいな男、結構扱いやすいし、義理とかを軽視する訳じゃない。
他の学年だって利用するけれど、上級生に知り合いがいる子の関係性を利用したりオールマイトのレアグッズと引き換えに端を共同利用の名目で使わせて貰ったり、模擬戦に混ぜて貰いもした。
「まあ、良いじゃねえか。勝とうぜ、物間」
「悪いが俺達も最初から乗り気じゃなかったし、好きにさせて貰うぜ」
だからこんな感じにやる気をギラギラさせたのも何人もいるんだし、勝ったな!
レアグッズは惜しくないのかって? いや、サンプルを貰いはしたけれど親戚のグッズとか捨てたり売ったりするのに抵抗があるだけで要らないし、押し入れに雑に突っ込んでいたんだよね。
「あーもー! 好きにしたら良いんじゃないかな! でも、僕は作戦を実行するから!」
「結構。じゃあ、第一種目は全員敵って事で何があっても恨みっこ無しだよ?」
当初の作戦に乗ったのと乗らないのは3:7程度、それも良いでしょ。
『スタート!』
そして響き渡る競技開始の合図、狭い門に大勢が殺到……しなかった。
『おおっと!? こりゃどうしたんだ!? 選手のほぼ全員が腹を押さえて蹲ったぞ!?』
『一人だけ無事な奴が門を突破したし、彼奴の仕業に決まってるだろ』
そう! 私以外の皆は強烈な便意に襲われて苦しんでいたのさ!
「八木ー! この外道が!」
「クラスメイトも含むとか鬼かよ!?」
背後から友人達の罵声が聞こえるけれど、これって勝負だからなあ。大丈夫大丈夫、あと三百メートルも離れれば効果範囲外だし、全国放送で脱糞は避けられるさ。
「鬼! 悪魔!」
「そうでーす! 私の個性は悪魔でーす!」
さて、思いっきり楽しんで、全力でアピールさせて貰うとしよう! 私こそが次代のトップヒーローになる器だってね!
~キャラ紹介~
突然変異で得た個性で、小さな山羊の角と蝙蝠の羽と先端が尖った尻尾が生えていて、様々な呪いっぽい力が使えるぞ!
因みに今は能力の一つである《暴露》の応用だ。
容姿は母方の祖母の若い頃にそっくり 好物はカレーとチョコパフェだ
母と伯父の仲は良いけれど、無茶が過ぎる兄は完全に妹の尻に敷かれてるぞ
破壊光線を吐くと熱くて舌を少し火傷するが、これもとある能力の応用だ その本来の力は伯父には中に存在していた他の人格が邪魔で効かなかったぞ
職場体験何処が良いかな?
-
リューキュー
-
ホークス
-
サーナイトアイ
-
ミルコ