あくまでもヒーローになる   作:ケツアゴ

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十話

「ヒュー! 流石いーちゃん、ネット上の評判も上々じゃないか。神秘的な美少女とか……ぶふぅ!」

 

 一年生のベスト4が決定したトーナメントは一旦休憩、だから選手控え室でスマホをポチポチ、掲示板を見れば凄く盛り上がっている。

 もうヴィランとの戦いを経験したからとA組中心に注目されるのは終わり、因みに私へのコメントは悪魔的見た目へのアンチコメントを除けば圧倒的実力への称賛や恐れ、一撃での瞬殺ばかりだから当たり前だけれどさ。

 

「爆豪君は荒れてるなあ。言葉のチョイスや表情で」

 

 ヴィランっぽいとか、将来のヴィランっぽいヒーローランキング上位確定とか、私にも少しある意見が結構多い。

 

 私、あのランキング嫌いなんだよね。必然的に目立ってる人がランクインするけれど、それって体張ったり大勢を救ってるって事なのにさ。

 

「何処か他人事、ヒーローとヴィランの戦いは画面の向こうの世界、犯罪組織が激減して大規模な被害が出ていないから当然っちゃ当然だけれども、うーん」

 

 どうしようか、このモヤモヤ感。背もたれに体重を預けて考えるけれど答えは出ない。

 

「こんな時はあれだね。楽しい思い出でどうにかすれば良いさ」

 

 生徒手帳から取り出したのは焦げた写真の断片、辛うじて部屋の一部が映ってるだけで家族写真とは呼べない状態だ。

 でも、私の手の中で写真は瞬く間に無事な状態に戻って行く。

 

 傲慢、それが私が使う能力の中でも高頻度と悪燃費を併せ持つ物。口から破壊光線を吐くのもドラゴンに変身するのもその能力の一部であり、その本質は時間の操作。

 

 

「あっはっはっ。とても平和の象徴の姿じゃないね」

 

 見られない様に焼いた写真は元通り、祖父の膝に乗った幼い私がカメラを弄っていたら偶然撮れた一枚。

 理由は忘れたけれど、母さんと祖母にお説教をされて土下座で謝る伯父さんの姿を収めた一枚。

 

『おい! オレ様だ! 俺様が教えてやるよ!』

 

 一頻り懐かしんだ後で再び破壊光線で燃やすけれど、頭の中に五月蝿い声が響いた。

 ルシ様、いや、傲慢を司る悪魔のルシファー。尚、聖書に記された存在そのものじゃない。

 

『オレ様への生け贄が足りてねえから残った力は少しだって教えてやってんだぞ、このオレ様が!』

 

「ドラゴンとか消費がエッグいからね。ありがとう、ルシ様」

 

「当然だ! もっとオレ様に感謝しろ!」

 

 体内に集中すれば確かに傲慢のゲージが赤色な感じ、集中しないと分からないのは本当に厄介だから教えてくれるのは助かるけれど……。

 

 頭の中でギャーギャー騒ぐのはマジで五月蝿いんだよ、昔から。

 

 持ち込んでいたリンゴ味の飴を噛み砕いて飲み込めば微量回復するのを感じるけれど使えて一回、ドラゴンは無理だろう。

 

 

 個性『悪魔』の発動条件! 能力ごとに存在する悪魔の好む生け贄を食べる等して貯めた力を消費して特殊な力を発生させるぞ! 

 因みに大好物のカレーは殆どの悪魔の力に分配される、ルシファーの場合はリンゴや葉物野菜が力を溜めやすい!

 

『なあなあ、サバちゃん、次の相手は女にしてやらん? それかワイの究極奥義や!』

 

『脱糞です! 脱糞させてやりましょう!』

 

 裁兎を本体だと尊重はしているが、悪魔達の性格は基本的に悪い、悪魔の囁きと呼ぶに相応しいな!

 

「却下」

 

 次は轟君か、同じくヒーローの親を持つ身としては共感する所がある。

 上昇志向が強そうな父親で反抗している所や二回戦の会話を考えると……。

 

 

 

「彼も親からNo. 1になれって言われて育った感じかな? うちは両親で言う事が違ったけれど」

 

 最高のヒーローであるオールマイトを知ってから伯父さんに出会った父さんと、個性は発現していないのに異様に鍛えていて個性に目覚めた兄が最高のヒーローになった母さん、だから伯父さんみたいになろうって言う父さんに対して母さんは伯父さんみたいにはなるなって意見だった。

 

 私も優しくて愉快な伯父さんって認識してからヒーローとしての彼を知ったからなあ。

 ……それが骸骨みたいな状態になったんだ、母さんの意見はよく分かる。

 

 

 

 

 

「それでも私はヒーローを目指したんだ。伯父さんとは別のNo. 1ヒーローをね。気合い入れて挑まないと相手に失礼か」

 

 

 うん、思う所とか共感とか同情とか断片的な情報でも色々と有るけれど、今はそれを持ちこう場じゃない。

 互いの夢の為に本気でぶつかり合う場所だ。

 

 

 だから迷わない。目指すは圧勝、それだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

『準決勝第一試合! 此処迄圧倒的な実力を見せて来た二人の対決だ! んじゃあ、前置きは此処迄で……スタート!』

 

「……吹っ切れたと思ったんだけれどね」

 

 第二回戦で緑谷君の言葉で轟君の何かが変わったと思っていたけれど、試合が始まるなり見せたのは迷いを浮かべた顔、葛藤とか罪悪感とか大概父親への敵意以外にも何かあったんだ。

 

「……行くぞ」

 

「全力で来い! ……は無理か」

 

 左側を使った大氷結、物間君との試合で見せた大技を初っ端から放つ姿に少し残念な物を感じながら袖がパンパンになる程に膨張させた右腕を振り抜いた。

 

「残念。炎じゃないのか」

 

 氷結のデメリットを打ち消す事もせずに来るだなんて、今の私がスペック上以外で何処まで強いのか彼なら指標になってくれると思ったのにさ。

 

「まさか先生にお願いは出来ないし……B組vsBIG3の練習試合は楽しかったし、また頼んでみよう」

 

 この呟きの意味、それは今の彼には興味無し。だから終わらせる。発動するのは暴虐、その副産物である怪力。

 今度は袖が破れる程に筋肉が膨れ上がった。そう、まるで伯父さんのマッスルフォームみたいにだ。

 

 

『おおっと! 轟の大規模氷結を拳から放たれた衝撃波が突き破ったぁぁ!! そのまま吹っ飛ばされる轟! 何とか氷の壁で場外は免れた!』

 

 そうだね、一撃で終えるには至らない、私もそれなりに力を込めたけど足りなかったか。

 これは消化試合だと負担が響かないギリギリを狙ったけれど、侮っていた。

 

「これは後でお説教かな? 実戦だと命取りだって」

 

 でも、終わりだ。舞台上の氷に意識を向けて、傲慢の残りの力を注ぎ込めば氷の時間が一気に進んで溶ける。

 さて、大量の氷が一気に溶ければどうなる? 当然、大量の水が一気に流れ出すに決まっているのさ!

 

 舞台に溢れる水は私達の腰の辺りまで、飛べる私は逃げたけれど轟君は堪えて流されるのを免れるのに必死な状態。

 

 

「その状態じゃ凍らせられないからね。じゃあ、次の機会に互いに全力でぶつかろう。劣化版カリフォルニアスマッシュ!」

 

 水が全て流れ出る直前、二発目の衝撃波は轟君を壁まで吹き飛ばした。

 

 

 

 あっ、エンデヴァーのお誘いどうしよう? 他を選べば良いけれど、そもそも指名枠を潰すのが勿体ないし

職場体験何処が良いかな?

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