あくまでもヒーローになる   作:ケツアゴ

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十一話

「おーい。大丈夫かい? ほら、立てる?」

 

「ああ、何とかな……」

 

 壁に叩き付けられて寝転がっている轟君に手を差し伸べて起こす。手、私の方がゴツゴツしてるな、勝利!

 やっぱりホルモン分泌とフィジカル強化の為の訓練の差かな。

 

 うん? 女の子としてはどうなのかって? 私、ヒーロー見習いとしての方に比重置いてるから。

 伯父さんだって私人よりもヒーローとしての方が優先だから同じ同じ。

 

「強ぇな、お前。悪い、手間掛ける」

 

「君に迷いがあったのとルール上の相性に過ぎないよ。まあ、私も母さんがヒーロー関係の仕事をしている影響でプロがするトレーニングとか知って実行したり、推薦合格の後から目を掛けられて指導だってしてもらっているし」

 

 本当は伯父さんが残してたトレーニングメニューの記録を倉庫で見付けたんだけれど秘密さ。当時は個性に目覚めてなかったのに、異形系の私でも少しキツい奴をこなすとかイカれてるよね。

 

「ああ、そうだ。迷いが晴れたら訓練施設を借りてガチでやろう。訓練に幅が出るし、A組の他の人も誘ってさ」

 

「B組の連中は文句言わないのか?」

 

「物間君以外は前から賛成してた。彼もB組がオマケみたいに思われてるのが嫌だったみたい、被害妄想含んでるけれど。何時誘うかが問題だっただけ。ほら、爆豪君とか目立ってたし、誘うのに踏ん切りがね」

 

 同じ学科でもクラスが違うとか多少のライバル視とかあったんだ、物間君が絶対絡むってのもあったし。

 

 少し話している間に担架を持ったロボットがやって来るし、此処までか。

 ミッドナイト先生も吹き飛ばされずに済んでいるし、次の試合も直ぐだろう。

 

 

 

「あっ、そうだ。既に知り合いのヒーロー数人から誘い貰ってるし、習いたい事もあるからエンデヴァーのお誘いは辞退するって先に伝えておいてくれるかい? ……活躍次第で指名を考えてやるって言われてるんだけど、指名枠が勿体ないし」

 

「ふっ。親父もざまあねえな。まあ、家族にメールで伝言を頼んでおく」

 

 そこで自分が伝えるのは嫌とか、君も複雑で厄介だねえ。

 

 

 彼が担架に乗せられるのを見届けた私は一旦B組の観覧席へと飛んで向かって行く。次が終われば決勝戦、泣いても笑っても優勝が決まる。

 

 

 

「打ち上げの打ち合わせしないと。今からカラオケボックスとかファミレス予約出来るかな? 家でお祝いする子もいるだろうし、計画とかその辺りは拳藤さんに任せよう」

 

 私ってリーダーとかってタイプじゃないし、適材適所ってあるもんね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の試合はいーちゃんと爆豪君の試合、互いに入試での実技の成績は上位。更には入学から自主練で個性を伸ばしているいーちゃんだけれども……。

 

「正直、相性が悪いよね。戦闘スタイルも個性も……」

 

「あの爆発に加えて機動力の差があるからな」

 

 いーちゃんは強い、私を除けばB組でトップクラスなんだけれど、模擬戦では速攻に弱いって弱点だって発覚している。

 地上と地中から襲って来る圧倒的な物量は驚異だけれど、準備に掛かる時間を狙われたら強みが最大限発揮出来ないんだ。

 

「速さと火力を使って接近戦で攻め続けられたら厳しいだろうね」

 

 狭い舞台内でヨーイドンで始める試合だ、身体能力自体は其処まででもじゃない彼女が速攻をどうやって食らいついて準備を整えるか、それが勝機を得る条件だと私は考える。

 

 当然、此処まで勝ち上がった彼なら理解しているだろうし、させないだけの力を持っているんだろうけれど。

 

 

『試合開始!』

 

「とっとと死ねぇええええ!!」

 

 

 

 

 それが分かっているのは二人共だ。爆発を加速に使って一気にいーちゃんに肉薄しての右腕の振り上げ、これが決まればフィジカルで劣る彼女じゃ連続爆破で押し切られて一気に終わる。

 

 だから何とか回避か防御をして充分な量の紙を伸ばす時間を稼ぐ……そう思っていた。

 

「ふんっ!」

 

「かっ!?」

 

 いーちゃんが選んだのは私の予想の二つと違って迎撃、爆豪君の右腕が届くよりも前にいーちゃんの拳が突き刺さった……股間に。

 

「きゃあっ!?」

 

「何だ、狙ってじゃないのか。男を無力化するには効果的なのにね」

 

 股間を押さえて悶絶するには至らないけれど後ろに飛び退いた彼と、触る意図が無かったのか可愛い悲鳴を上げるいーちゃん。

 

「け、汚らわしい物を触ってしまいました」

 

「勝手に殴っておいて何を言ってんだ、ボケがぁっ!」

 

「あの動きって普段のいーちゃんよりも上だったね。ああ、成る程。自分を動かしているんだ」

 

 

 地面に向かって伸ばすかと思った髪は手足に絡み付いている、一見すると分からない様に服の下に入り込んでだ。

 外骨格……いや、パワードスーツか。

 

「テメェ、舐めた真似をしやがって。んな付け焼き刃で俺に敵うと思ってやがるのか」

 

「いえ、未だ練習不足ですので接近戦で勝つのは無理でしょうね。……接近戦では」

 

 今までで一番ダメージを受けた顔の爆豪君にいーちゃんは服で手を拭いながらシレッと答え、既に時間は稼げている。

 動揺していたのってまさか演技? いや、騙し討ちとか嫌ういーちゃんだし、違うか。

 

「地面を突き破り飛び出して来るのは絡み合わせて巨大な触手みたいになった茨、あれは天喰先輩がB組の皆(私以外)を叩き潰したタコとかを合わせた大技の真似か」

 

 あの技は甲殻類とか貝殻を混ぜ込んでいるけれど、地中を掘り進む途中で砕いたコンクリートを混ぜて重量を増していて、それを舞台に向かって叩き付けた。

 一撃で舞台全体に大きなヒビが広がり、それが何度も繰り返されれば舞台が崩れて行く。

 

「ちっ!」

 

 爆豪君は咄嗟に爆破の勢いで飛び上がり、いーちゃんはグリーン・ネピリムに全身を包んで不安定な足場でどっしりとかまえていた。

 

「ローズクラーケンとでも名付けましょうか。さて、何時まで浮いていられますか?」

 

 むき出しになった顔を奥へとしまい込み、外が見えないからかグリーンクラーケンの動きは雑だけれど、爆豪君が爆破をすれば即座に茨が破損箇所を埋めた上で蠢く。

 

 空中では踏ん張りが効かず、何時までも飛び続けられもしない。

 

 長期戦になれば火力が上がる彼だけれど、この試合においては短期決戦こそが彼が狙うべき事。

 当然、それも彼は分かっている。

 

 空中での大回転、触手に弾き飛ばされても無理に軌道を戻す彼からは血が飛び散っても勢いを増して行く。

 

 

 

「ハウザーインパクトォオオオオオオオオオオオッ!!」

 

 その勢い全てを乗せた最大威力の爆破は舞台上の触手も緑の巨人も全て纏めて吹き飛ばす。土煙が舞台を覆って視界が閉ざされる中、耳に届いたのは爆豪君が落下する音、受け身も取れずに瓦礫の上に叩き付けられる。

 

 煙が晴れた時、舞台に居たのは彼一人……いや、違うね。舞台の上に居たのは、だ。

 

 ローズクラーケンに取り込んだコンクリートがあった場所が無数の穴ボコになっていて、熱と衝撃の直撃こそ免れたけれどダメージが大きいのか大の字になった状態でギリギリ意識を保っている。

 

 

「巨人の足を通って地中に避難してたのか、……え? あのいーちゃんがっ!?」

 

 作戦で囮とか任せようとしたら鞭で打つとか言い出す程に正々堂々が好きないーちゃんが隠れて潜んでいた、その事実に彼女の性格を知る私達は驚くし、本人だって唇を噛み締めていた。

 

 

「本来ならこの様に卑劣で穢らわしい手段は取りたくありませんでした。ですが、目的の為には手段を尽くす友人を前にして爆豪さん程の相手に己を貫く事にも抵抗がありまして。……だから、卑怯だと恨むなら恨んで下さい」

 

 いーちゃんの髪は普段よりも弱々しい動きで伸びて爆豪君に絡み付く。気絶寸前の爆豪君を全身をグルグル巻きにして場外へと運び、その途中で動きを止めた。

 

 

 

 

「……いーちゃん」

 

 動かなくなった二人、その状態を確認したミッドナイト先生の声が響く。

 

 

 

 

『両者気絶により準決勝第二試合は引き分け! 二人が目覚め次第決勝出場者を別の方法で決定します!』

 

 私はそれを聞くと選手控え室へと向かう。ああ、本当に……楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間をおいて二人が目覚めたと連絡があったけれど、その後が面倒な事になっているらしい。まさに前代未聞。

 

 

 だって、互いに敗けを主張しているんだから。なんでさ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

職場体験何処が良いかな?

  • リューキュー
  • ホークス
  • サーナイトアイ
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