「変人四十八面相!? 何やってるんだよ、父さん!?」
「私はサーナイトアイじゃないだって!? じゃあ、その仮面剥いで!? その前に服をちゃんと着て!」
「ぶっちゃけ恋人の兄で仕事上のパートナーだった伯父さんへのオタクっぷりは気持ち悪いと思う時があったけれど、その格好はそれ上回……夢か」
なんか凄い悪夢を見た。日本の昔話を題材にしたアニメのEd曲を変態的に替え歌にした物を歌う変態、それも声からして……。
目を覚ましたのは選手控え室、次の試合が楽しみ過ぎてギラギラしていたから落ち着く為に一人になったのに、まさか変態が出るなんて。
タイトルロゴで局部を隠していなかったら悲惨な事になってたよ。
タイトルロゴって何だって? さあ、私にもさっぱりだよ。
『多分ミッドナイト先生の昔の映像を見たからだな。肌面積自体はそんなに変わらないし』
あの露出狂丸出しのヒーロースーツ、流石は規制を定める切っ掛けになっただけある。
「おや? 誰かが来たみたいだ。もう試合……?」
時計を見れば五分程度しか経過していない、だったら何で……。
ノックの音に入室を許可すれば顔を覗かせたのは変態の夢を見る切っ掛けになったらしいミッドナイト先生だ。
「ちょっと良いかしら? 次の対戦相手について相談があるのよ」
「変……じゃなくってミッドナイト先生。一体何が?」
あっぶなぁああああ!? もう少しで先生を変態って呼ぶ所だったよ。
少し困り顔の先生に何か嫌な予感、まさかリカバリーガールの治癒を受けても次の試合が無理な状態とか?
相談があるから来て欲しいって言われたんだけれど……。
「俺はあんなのを引き分けだと認めねぇんだよ!! 譲ってやるんだから素直に勝ち進めや!」
「私だって主義に反する戦術を選んで引き分けだった以上、勝ち進むのは信念が許しません。一位になると宣言したのですから責任を取るべきでしょう」
「うわっ、面倒臭!」
二人揃ってベッドに寝かされた状態での言い合いに、私は思わず本音が爆発してしまう。
どっちが勝ちかじゃなくって、どっちが負けかで言い争いとか。
「ったく、合理的じゃないな」
「相澤先生、これをどうするのかが相談ですか? 確かにこれはややこしい」
どっちが勝ちかなら先生がさっき言った通りに勝負で決めたら良いけれど、負けを競い合うってのも妙な話だ。
勝負方法は腕相撲は男女の差がある、これは筋肉の発達に関わるホルモンの量が段違いだから仕方無いけれど、だからって運で決まる方法もヒーロー科の名門としてどうなんだってなる。
しかも、これって意地と信念のぶつかり合い、それを曲げさせて妥協の末に進めさせる? それって体育祭の趣旨と真逆じゃないかって話だよね。
「成る程、確かにややこしい。そんなのでモチベーションは上がる訳が無い。そして私も二人の状態にちょっと私もモチベーション低下だよ。ちゃんと動けないよね、今」
「……ちっ!」
「消耗しているのは其方もでしょうに……」
二人の怪我は癒えている。けれどリカバリーガールの治癒って体力を消耗するらしい。
いーちゃんより桁違いにタフな彼だって一回戦で全力爆破、二回戦や三回戦で相当な怪我を治療された所だ。
そりゃあヘロヘロ、第一競技に今の状態で出たら予選落ちは確実じゃない?
私も能力は一部使用不可能、体力は有り余っている。
二人が負けを争っているのはプライドからだけれども、打算でも勝ち上がりたいとは思わないだろうね。
「戦闘には問題無いよ。脱水強制
これじゃあ勝ち上がったとしてもタイマンなんて……タイマン?
「絶対ロクな技じゃねぇ!」
「でしょうね。内容は知りませんが同感です」
失敬な! 無力化には効果的なんだよ?
「会話はその辺にしておけ。時間が惜しい」
ついつい他の事に向かっていた会話に割り込んだのは相澤先生の声。
鋭い瞳でこっちを睨んでいる、怖っ!
「話を進めて良いか? まあ、何方が勝ち抜くか話し合っているが……教師としてはこれ以上の戦闘はお勧め出来ない」
「問題は二人共戦闘不能だから決勝は無しって言えない所よね」
あー、大盛り上がりに水を差して、そもそも子供にガチバトルをさせた事への非難が勃発、学校の運営能力に疑問の声が、って所かな?
怪我人やら舞台の大規模破壊の修繕で時間も押して本来の閉会時間も過ぎちゃっている、随分と派手に暴れたからね。
「マスゴミが喜んで騒ぎ立ててヴィランが大喜びってなりそうだ」
「だから面倒なんだ。動ける奴等で敗者復活戦でもさせるかって意見もあるんだがな。……八木、気持ちは分かるが公でマスゴミは口にするなよ?」
「了解でーす。……あっ、そうだ。先に決勝に進んだ私からって感じで提案があるんだ。今まで圧倒的に勝ち上がったから許されそうなね」
二人にはちょっと気に入らない内容だけれど、そう付け足して私は笑みを浮かべる。
後から聞いたら凄く悪役っぽい笑顔だったそうだよ。
二人が担架で運ばれてから少し時間が経ち、会場も少しざわめいてヤジまで飛ぶ始末だ。
さっさと勝者を決めろ、とか、なにやってるんだ、とかね。
それを口にしているのがヒーローなんだから困った話だ、夢を叶える為の場であって、観客を持ち上げるのは本来二の次、本当なら後日再戦して私の対戦相手を決めて欲しい所だけれど……。
「あー、マイクの声、届いてますか? 届いてますね? じゃあ、私から観客の皆様及びにテレビの前の皆様にこれからのお知らせをします」
そんな職業ヒーロー達の前にマイクを手にして現れられた私に会場の視線が集まる。何故ミッドナイトじゃないのか、って感じだけれど、この発表は運営じゃなく選手である私がするから意味があるんだ。
「実は私と戦う筈の二人、今まで死力を尽くしたから決勝戦でタイマン張れる状態じゃない。将来を見据えるなら、何時か何処かの誰かを救う為には苦渋の選択だろうと仕方がない……」
言葉の途中で広がる落胆、こんな拍子抜けで、盛り上がった状況で水を差して終わりなのかって。
「本来はそうすべきなんだろうね。でもさ! それじゃ面白くない! 此処まで盛り上がったし、ヒーローってのは限界を超えてこそ! そうだろう!」
私の言葉と同時に反対側から現れるいーちゃん……そして爆豪君。
「組み合わせの運も体力の温存も実力の内なら、既に今回の王者は私の筈。だからさ、挑戦を受けてやろうと提案したのさ! かかって来いよ、二人纏めて相手してやるから!」
職場体験何処が良いかな?
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