奇妙で嫌な夢を見た。
夢の中での私はヤクザの一員で、ベストマスクをつけた癇癪持ちの男の妹。
兄が行う非道な実験の被害者にとっての唯一の救い、手術室で行われる痛くて辛い作業から唯一開放してくれる存在。
「ほらほら、大丈夫だよ。甘いものを食べる夢でも見ていよう。その間に終わるから」
私とは違う力を使い、幸福な夢の世界への誘惑で心を支配する。
そして、時々所用でいなくなることで辛くて痛い作業への恐怖を消したりはしない。
犠牲者の少女の甘い夢に溺れる悪夢のような日々は、私が見知った人々の犠牲と奮闘により救われた……かに見えた。
「ヤッホー! ヒーローの皆さん、こんにちは。そして大変だね、兄さん」
全てが終わり、少女が救われ眠りに落ちた瞬間にその姿は消え、いなかったはずの私に抱かれている。
気を失った兄を眺める私は羽を広げて飛び上がり、知人や知らないヒーローが一斉に攻撃の構えをとるけれど抱いている少女が理由で手を出せなかった。
「お前はっ!」
「あっ、そうそう。兄さんが起きたら伝えてくれる? 私、ヴィラン連合と組むからバイバイってさ。この子を連れて行くと君達と兄さんの曇り顔が見れそうだから連れて行くね。それじゃあ」
悪魔の笑顔を浮かべた私は少女を連れてその場から消え去る。そのまま場面は移り、どう見てもまっとう
ではない連中の前に現れた私。
あのオカマっぽいマッチョ、確か指名手配のはずだったけれど……。
「やあ、お待たせ。いやいや、せっかく仲間になったのに酷いね」
私は味方に対しての反応なのに向こうは敵に対する態度、殺気がビンビンだ。
それでも私はへらへら笑っているけれど。
「死んだ彼の命も失った彼の腕も私が戻したから別に良いじゃないか」
「理解できねぇな。お前、彼奴とは兄弟仲が良かったんじゃないのか?」
「うん、良かったよ? この世でたった1人の肉親だ。まぁ、その肉親の絶望する顔が見たいから裏切ったけど」
悪魔的な笑顔浮かべながら平然と言って退ける私に彼らは化け物を見る目を向けていた。
「この子が起きたら私達の歓迎パーティーを開こうよ。楽しみだなあ、救われたと思ったら別の地獄に来てただけだなんてさ」
そして、場面は再び変わり……大盛りカレーを食べるところで目が覚める。
その後で今度は物間君の妹っていうガチ悪夢も始まったけれど、カレーのところ以外は全部記憶から消えていたんだ。
そしてモヤモヤと妙な言葉だけが頭に浮かんでいた。
「初期案って何のことだろう?」
「寝惚けていないで彼をどうにかするの手伝ってくださいな」
試合終了後、直ぐに準備を終えて表彰式ってなったら良かったんだけれど問題が一つ。爆豪君、思考を無理に誘導して参加させた決勝だけでも不本意なのに負けて二位、そして一位以外に意味が無いからって表彰を拒否して暴れてるんだ。
なんか長引きそうだから寝てたけれど終わってないのか。
「もう夕暮れ時だし、リカバリーガールにでもガチ惚れさせて参加する様に言い聞かせてもらえば良いんじゃないかな?」
「八木、面倒だからと直ぐに洗脳を選ぶのは止めておけ。そっちの方が合理的だがな」
あっ、最終的に拘束して参加させる事にしたんだ。
「流石雄英、未来に生きてる。まさか公開SMショーとか……」
「頼むから少し黙ってろ」
ちぇー。相澤先生って相変わらずジョークがつうじないんだからなー。
『これにて今年度体育祭の全日程が終了。それでは表彰式に移ります』
舞台の修復や出場者の治療も重なって空は既に真っ赤、動いたからお腹も減って来たし、今日の夕飯は何にしようかな。
こんな時に一人暮らしは面倒だよねと表彰台の上で考える。
横では拘束されて暴れる爆豪君の横で迷惑そうないーちゃんがいるし、さっさと終わらせたいんだけれどね。
だって一位になったし、その事実だけで充分なんだから表彰式とか興味無い。
『今年メダルを授与してもらうのは当然この人!』
「ハーッハッハッハッ!」
高い所から伯父さん登場、母さんなら多分呆れるんだろうな。煙と何とやらは高いところが好きよね、とかさ。
そのまま飛び降りるけれど、本当体を労らないなあ、この人。
「私が……」
『No.1ヒーロー、オールマイト!』
「来た!」
あっ、被った。
「ぶふぉっ! ひーっひっひっひっ! やばっ、ツボに入った。ふふ、はは、ふぅ」
危ない危ない、悪目立ちする所だったね。
「長所を活かし短所も補う個性の使い方が素晴らしかった! もう少し戦略に柔軟性を持てば更に道が広がるだろうね!」
「善処します」
暴れる爆豪君の口にメダルを引っ掻けた後でいーちゃんへのメダル授与、こっちも決勝出場が不本意だったみたいだけれど素直に受け取っていた。
……所で女子生徒へのハグはどうなんだろう? いーちゃんは別に抵抗無さそうだけれどさ。
「さて、最後は君だ、さ……八木少女! 素晴らしい戦いだった!」
そして最後に私へのハグだけれど……加齢臭が。
「名前、注意して」
「あっ、ごめん」
一瞬名前呼びしそうになったのを小声で嗜めれば少し慌てた様子の伯父さん。もう、変な所でウッカリしてるんだからさ。
「第一競技から見せてくれた圧倒的な力は既にプロとして通用するレベルだろう。才能もそうだが積み重ねて来た努力の結果だろうと思っているよ。これに慢心する事無く自分を鍛え続けなさい」
「当然、仲間と一緒に頑張って行きます」
それにしても加齢臭が強くなってるなあ、伯父さん。専用のスプレーとか使えば良いのに。
私は五感が優れているから悪臭は苦手なんだよ、それこそ悪臭を放つ個性相手だと真っ先に鼻を潰す選択肢が浮かぶ程度に。
取り敢えず今日のご飯は焼き肉にしよう。父さんがお金出してくれないかな?
先ずはネギ塩タン、ネギを挟む様に折りたたんで両面を焼き、ロースやカルビやハラミを堪能する。勿論だけれどご飯大盛り、キムチと韓国海苔も忘れられない。
肉をタレに浸して米でバウンド、一気にかっ食らう! ホルモンや軟骨、ウインナーも忘れずに。
最後の締めはバニラアイス! パフェでもオッケー! ああ、早く食べに行きたいなあ。
「そこはプルスウルトラでしょ!?」
うん? 食欲に流されている間に何かあったみたいだけれど、多分伯父さんが滑ったんだね。
ミルコの追い上げが凄かった
職場体験何処が良いかな?
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ミルコ