あくまでもヒーローになる   作:ケツアゴ

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十六話

 昔、わりとガチで怒られた事がある。ヒーローの役目はヴィラン退治以外にも災害や事故時の人命救助も含まれるし、だから応急手当の知識や技術だって必要だ。

 ヒーローを志したばかりの頃に思い立った私は教材用の人形と教本とかを買ってもらったんだけれど、ちょっと本物の人体で試してみたくなったんだよ。

 

 でも、他人を怪我させるなんてもっての他、怪我した人を練習に使うのも然りってなれば自分自身を使うしかないじゃないか。

 ちょうどルシ様が現れたしって事で自分の足を折ったり色々としてたらバレて怒られた。

 そりゃもう私が泣いて謝るレベルでだ。

 

 

「あの時の経験が今に活きてるんだから無駄ではなかったんだよね」

 

「うん。俺もそれにはドン引きかな! ぶっちゃけ狂気的だよね!」

 

「ヒーローなんて正気100%じゃやっていられないよ。時に殺す気で襲って来る相手に立ち向かう様な自己犠牲が必須なんだから」

 

 特に伯父さん、腹に穴空いて消化器全部摘出とかやった半死人が未だにヒーローとしても動いてるんだ、正気のまま続ける職業じゃないよ。

 

 そんな風に会話を続けるのは事務所から少し離れたビルの近く、さっきまで爆発系の個性を持ったヴィランが暴れた事と手抜き工事が重なって崩壊していた現場だ。

 

 そんな現場だから刺さっている物が消える事で出血する人だっているだろうからビルを戻して終わりってはならず、ミリオさんが透過で動き周り私が耳で要救助者を発見、助け出した後は応急処置をしつつビルを元に戻して二次災害を防いだ所だよ。

 

 

「レスキュー専門のヒーローから卒業後の打診をもらっちゃったよ。取り敢えずお勧めの教材だけ教えてもらったけれど」

 

「相変わらず勉強熱心って、また事件だ!」 

 

 テレビで連日騒がれているヒーロー殺し、その被害にあって担当地域から姿を消したヒーローや警戒してか活動を抑えているヒーローの影響もあってか微妙に犯罪率が上がっている。

 今だって逃走車とおぼしき速度制限大幅違反車がパトカーやヒーローに追われていた。

 

 

「腹が立つなあ。オールマイトの功績を無駄にしてさ」

 

「愚痴を言っても仕方がないさ! 被害者が増える前に捕まえよう!」

 

 此処でミリオさんの個性について振り返ろう。物体をすり抜ける透過、その代わりに全身を透過させると空気も光も通り抜けて落ち続けるデメリットが大きい。

 肺の中に空気も無くなるなら胃の中とか腸の中身とか……止そうか。多分無意識になんとかしてるんだろうさ。

 

 その状態で戻ると質量が重なる状態になり、弾き出されるんだけれど……空気だって存在しているのに今までは空気に弾き出される事はなかった。

 

 まあ、とっくに体の一部を空気で弾き出して空中で跳ね回れる様になったんだけれどね、私の黒蜥蜴で感覚を掴んでさ。

 それに加えてホルモン操作による筋肉の増加、今の彼は瞬間速度ならホークスを上回り、攻撃力も肘を弾き出す事で大幅に上げている。

 

「負けていられないね」

 

 羽を広げてミリオさんの後を追う。さてと、堂々と個性を使った実戦が出来る機会なんだ、しっかりと学ばせてもらおうか。

 

 

 

 

 

「……少々面倒な事態になるやも知れん。明日は遠出になるぞ」

 

「遠出って …」

 

 インゲニウムが重傷を負わされたのが数日前、今までの傾向からして事件が起きた場所では数件続くだろうけれど、父さんが遠くまで行くなんて珍しい。

 

 

「デルビー、お前が捕らえた少女だが、どうも公安が目を付けていたらしくてな。捜索するも逃げ続けられた者を捕まえた事で捜査協力を頼まれたのだが、その際に同市に向かう予定の職員の未来を覗かせてもらった」

 

 

 へぇ、公安がね。あの子、そんなに厄介な個性でも持ってたんだ。あの動きと合わせて考えれば協力要請も分かるけれど。

 

 父さんは相手と視線を合わせる事で二十四時間先の未来を見れる。どうも私の場合は時間を捻じ曲げるって能力の影響か機能しないけどね。

 

 

「あれ? 公安にマークされてたって事は捕まった状況が記録に残ったりしてる?」

 

「写真で残っているらしいぞ」

 

「そりゃ大変だ。社会ってのは適合するもんだね」

 

 種別も強弱も多種多様な個性を一纏めに規制するってのは平等の為、社会ってのは事情に関わらず平等になる様になっていて、だからはみ出してしまった奴には厳しい。

 

 異形系は身体能力が高めだし、ちょっと不平等に感じて差別理由の一つになっていたりしてね。

 

「血を飲みたがっていたんだろう? その子もそうだけれど、個性からの衝動って大変だと思うよ、俺は」

 

「ただの我儘とか趣味嗜好とは違うからね、世の中の支援が足りていないのも悪いけれど……それはそれさ。何らかの異常で性欲が過剰なら強姦を許すのかって事と同じだからね」

 

 

 これで彼女に関しちゃお終い、あとは行政や司法のお仕事だ。

 

 

 それよりも気になるのは公安が協力を申し込んでくる案件。 

 もしやヒーロー殺し、もしくはヴィラン連合とやら案件……。

 

 

 

 

 

 

「何でも男装っ娘&男の娘コレクターと名乗っているらしい」

 

「病院行こうか。バブルガール、サーがオールマイトに会えないストレスで限界を迎えたから救急車を呼んで」

 

「落ち着け、私はいたって正気だ。……今回ばかりは業腹ではあるがな」

 

 あっ、本当に変なだけでヴィランだったんだ。普段から口にしているユーモアだと思ったよ、面白くないだけで。

 

 

 

 

「事の発端は三日前、電車が二時間に一本来るかどうかの地方駅で起きたのだが……」

 

 その日、電車が止まるも普段通りに通学の学生達は乗り込まず、代わりに駅から聞こえたのはパニックに陥った子供達の声。

 

 怪訝に思い覗き込んでみれば男子制服を来た幼い少女と女子制服を着た幼い少年達がいたらしい。

 その上……。

 

 

「トップヒーローの一人が偶々立ち寄っていたらしく、咄嗟に退避して完全に個性の影響を受けなかったらしいのだが」

 

「成る程、それは公に出来ない訳だ。ヴィランを調子に乗らせる

 

 

 トップヒーローが被害を受けて犯人を取り逃した、そんなのマスゴミの格好の餌だ。涎をダラダラ垂らして食い付くだろうさ。

 それがどれだけのマイナスに繋がるかなんて考えもせずに騒ぐんだから嫌になる。

 

 相澤先生がアングラ系ヒーローをやる訳だ。

 

 

 

「それでヴィランの…。このヴィランって呼び方、ちょっと嫌いなんだよ。格好付けさせているみたいでさ。犯罪者でしょ、ただの。それでヴィアの個性は若返りと性転換って所かな?」

 

 

「ああ、犯行声明でヴィラン名が、残った指紋と防犯カメラの映像から分かった。吐き出すピンクの煙を吸うと先ずは性転換を、続いて子供になるらしい」

 

 

 そりゃ厄介だ。私も似た事は出来るからよーく分かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで被害にあったヒーローって?」

 

「ミルコ」

 

「そりゃ視界の暴力」

 




デクってギリギリはみ出さなかった

職場体験何処が良いかな?

  • リューキュー
  • ホークス
  • サーナイトアイ
  • ミルコ
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