あくまでもヒーローになる   作:ケツアゴ

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第二話

『おおーとっ! 出場選手の殆どが蹲っている中、唯一飛び出したのは一年B組八木裁兎! 推薦入試一位の強者だぁ!』

 

『B組が一斉に罵ってる辺り、彼奴が何かしたみたいだが、コースアウト以外はルール内だ、問題無い』

 

 静まり返るスタジアムに響くアナウンスの声、観客は開始直後の歓声も忘れて腹痛に耐える皆の方に意識を向けてしまってる。

 あっ、伯父さんとブラド先生みーっけ。頭抱えてるけれど、これって勝負だから。

 

「これもアピールだよ。集団を一気に無力化出来るってね」

 

 

 雄英体育祭はヒーロー科が主役って言われるけれど、それはこの後に控える職業体験の指名やデビュー直後の知名度の補正に関わるからさ。

 他の生徒より優れてるってアピールは当然、何が何処まで出来るかを示さなくちゃ意味が無い。

 

 

 故に私は飛ばずに健脚をアピール。特化型でなければ増強系にだって負けない速度で進めば目の前にはロボット軍団だ。

 

 

 

『門に続いての関門はロボ・インフェルノ! さあ! どうやって切り抜ける!』

 

『ブッ殺ス!』

 

 一般入試はロボットが相手だって聞いたけれど、これがそのロボットか。

 奥には巨大なロボットが控え、口の悪いロボットがアームを振り上げて向かって来る。

 普通に突破するなら駆け抜けるか飛んで置き去りに、それ以外なら?

 

 

「叩き潰して正面突破!」

 

『おおっと! 正面から受け止めて、そのまま持ち上げてぶん投げたぁあ!?』

 

 これで腕力のアピールも出来た。それにしても見た目より軽くて脆い。

 三体に同時にぶつけても一体程度は動けると思ったんだけれど……所詮は中学生を相手にする程度か。

 

 未だロボットは残っているけれど此処で倒し切って後ろの連中に楽をさせるのも癪だし、もう少しアピールして先に進ませてもらうよ。

 翼を広げて飛び上がった私の狙いは巨大ロボ、本来は倒せないポイント0のお邪魔キャラ。

 

 だから倒そう! てか、実際に倒したのが出たらしいし。

 

 巨大な腕が私に迫るのをすり抜けて頭部に降り立つ。当然の様に腕が伸びて来たけれどあまりに鈍い!

 

 

「かぁああああああああああっ!!」

 

『口から出した光線が巨体を貫いたぁああ! こりゃ凄い威力だぜ!』

 

 

 ここに来て、此処迄来て漸く歓声が響き渡る。さっきまで視線を向けられていたスタート地点なんて忘れたみたいに注目を一身に浴びてロボ地点を抜けた所で聞こえて来る爆音。

 そろそろ呪いが解除される距離だと分かっていたけれど、解けた瞬間に凄い顔した主席合格者の彼がこっちに向かって来るんだけれど……。

 

「ぶっ殺すっ!」

 

「悪いが此処から先は消化試合だ」

 

 この高さなら残りの障害だって見えるけれど綱渡りと地面の地帯、飛べる私には無意味な内容だ。

 降りて挑む? 流石に体力の温存だってするべきさ。

 

 それにしても荒くれ者だなあ、彼。ヒーローなんて荒事家業だしヴィランへの抑止力には良いんだろうけれど。

 

 

 まあ、どれだけ実力があろうがイキろうが、この結果は変わらない。深い穴も地雷地帯だったらしい場所も飛べる私には全く無意味。

 最初のリードもあって彼が綱渡り地点に到達する頃にはゴールしているんだから。

 

 

『圧倒的! 圧倒的な差を着けて一位となったのは一年B組八木裁兎!』

 

 頭が割れそうな程の大歓声に応えるべく手を振って笑顔を向けながら門の上に降り立つ。

 さてと、今からレースの様子をじっくりと見せてもらおうか。

 

 あれ? スタート地点で足元が凍ったままの人がいるけれど……。

 

「彼等は解放しても良いのかな? 先生、もう間に合わないだろうけれど今のままじゃ晒し者だし」

 

「オッケー! 参加する事に青春があるわ!」

 

 審判のミッドナイト先生の許可が降りたから氷は直ぐに消すとして、画面を見れば地雷原に轟君と爆豪君とやらが到達した所、かと思いきやマイフレンドである塩崎茨こといーちゃんが髪の毛をロープアクションみたいに使って到達した所。

 

「他の皆も結構上位には入れるかな?」

 

 擬音を出してそれに乗ってるのや、回転させた体を車輪みたいにしてるのや、B組の機動力高め勢も上位には食い込みそうだ。

 

『おおっと! ここに来て他のB組生徒も一気に追い上げて来たぁー! てか、個性の扱いが随分と伸びてんな』

 

『B組は八木を含む何人かが入学初日から個性伸ばしの為に放課後練習を申請して、今じゃ開門時刻に集まれる奴は集まって朝練もしているからな』

 

 下馬評ではヴィランと戦ったA組がメインみたいに扱われているけれど、侮るなと言いたいよ。 

 まっ、実力で黙らせれば良いだけで、今は別に考える事があるんだ。

 

 

 

 

「お昼のカレー、フライは何を乗せようか」

 

 豚カツかエビフライ、フライじゃなくってチーズとオムレツも捨てがたいと物思いにふけていると爆発音が聞こえて来る。

 爆豪君かと思いきや、スクリーンにアップされたのはモジャモジャの毛をしたそばかすの子。

 ロボットの部品で地雷の爆発を受けて一気に飛ぶとかイカれてやがるね、イカしてるじゃないか。

 

 

「緑谷君か。伯父さんと同じタイプだし、早死にするよ、アレは」

 

 命を惜しむのと大切にしないのは別の話、周りを心配させるんだろうけれど、競い合うには悪くない。

 それでも一切負ける気がしないけれど……いや、個性次第か。彼、個性見せていないし。

 

 

 デッドヒートを繰り広げていた二人をイッに抜いて二位になった彼に一瞬だけ視線を向け、直ぐにモニターに視線を向ける。

 競技次第じゃワンチャン有りそうな個性の子が幾人か、妙な状態の生徒に助けられている子もいるし、見ていて飽きないと思っていたら下の方から爆発音。

 

 

「爆豪君だっけ? 何か用かな?」

 

「舐めた真似しやがって、糞女がぁ! 見下してるんじゃねぇぞ、ゴラ!」

 

 両手を爆発させて今にも殺しに来そうだけれど、私が彼を見たのは一瞬だけ、直ぐにモニターに視線を戻す。

 

「私が糞女なら君は糞っ垂れだろう? 他の生徒の様子を見たいんだ、邪魔しないでくれ」

 

 私はあくまでルールに則って全員に便意を催させただけ、ここで彼が攻撃を仕掛けるのとは大違い。だから彼も睨む以上はして来ない。

 

「垂れとらんわ! 誰が漏らすか!」

 

 打てば響く子だなー、面白いや。

 

 そうこうしている間にも次々にゴールして来るんだけれど、轟君を筆頭に大勢が私を睨んでいるや。

 まあ、それだけの事をやったけれど、これって試合だからね? 即漏らす程にしなかっただけ温情なのさ!

 

 

 

「見てやがれ。次の競技で絶対ぶっ殺す」

 

「はいはい。ワンパタで勝ってもアピールにはならないから全国放送で脱糞させるのは自重するよ。その上で私が勝つに決まっているけれど」

 

 おっと、これで締め切りか。さっき解放してあげた子達は途中で脱落、普通科とサポート科からは一人ずつか。

 

 まだ何かを叫んでいる爆豪君の横をすり抜けてB組の皆の所へと向かう。あー、ちょっと怖いな。

 

 

 

 

「ルールの範疇なのは分かりますが、クラスメイトまで巻き込むのは如何なものですが言い訳は?」

 

 やばっ!? いーちゃんの目がマジだ!

 

「当初の作戦を選んだ子達への義理立てかな? 物間、バチギレしてる連中は出し惜しみしなかっただろ?」

 

「……まあ、あんな状況に陥ったんだ。焦りから手の内を隠す余裕はなかったみたいだね。ハッハッハッ、間抜けな事だよ」

 

「良いのは手に入ったかい?」

 

「勿論。抜け目無くね」

 

 流石はクラス一の性悪だ、私の意図もちゃんと理解してたみたいで安心だ。

 

「君も悪だよねぇ」

 

「悪魔に言われたくはないさ」

 

「「フッフッフッフッ」」

 

 さてと、次はどんな手を使おうかなっと。

 

 

 

 こうして第一種目は終わり、第二種目は騎馬戦。第一種目の順位によってポイントが違うんだけれど……。

 

 

 

「僕は1000万ポイントかぁ。狙われるね」

 

「ええ、なので手を離していただけますか?」

 

「やだ!」

 

 参った参った、散々ヘイト稼ぎしたから狙われるのは確定だけれど、B組の仲間まで顔を逸らすなんて酷くないかい?

 いーちゃんの肩を咄嗟に掴まなければ危なかったよ。

 

 

 

「はぁ……。それで誰が必要ですの?」

 

「鉄哲君と吹出君かな」

 

 流石は親友、溜め息を吐きつつも髪の毛は徐々に離れようとしていた二人を捕まえて引き寄せてくれる。

 

 

 

「それで作戦はあるのですか? 逃げ切る……は違うでしょう?」

 

「え? B組のも含めて全部ゲット以外に選択肢ってある?」

 

 何を言ってるんだって思ったら、何を言ってるんだって顔されたよ、解せぬ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「女って怖いな」

 

「しっ! 聞こえるよ」

職場体験何処が良いかな?

  • リューキュー
  • ホークス
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