あくまでもヒーローになる   作:ケツアゴ

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二十話

「ヒュー! 皆、相当揉まれたって感じだね。現場を経験してレベルが上がってるよ」

 

「汗1つ流さずに嫌味かなぁ!?」

 

 プロの現場を体験する職場体験が終わろうと私達のする事は変わらない。学校での授業再開初日の早朝、実習施設での自主連は普段通りに行っていたよ。

 

想定した状況は市街地での対ヴィラン戦。ヒーロー・ヴィラン・一般市民・モニター室での観戦の四チームに分かれて、一般人を保護しつつのヴィランの撃退もしくは所定の場所までの避難誘導ってルールで役割を一巡、各試合が十五分でちょうど最後の試合が終わった所さ。

 

 

「物間君は相変わらず元気みたいだね。じゃあ、校舎まではランニングで戻るかい? 私は平気だし、多分A組にも可能なのは居るだろうね」

 

「上っ等じゃないか! 僕達なら楽勝なんだけれどっ!」

 

 体を暖める為の準備運動や柔軟を終えてからの本番後、膝を折るまでは行かなくても汗を流して息を乱した物間君だけど挑発すれば簡単に乗るんだから面白いよね。

 最近はA組だって施設の申請をする様になったし、B組だけで使うのは難しいかな?

 

「これって私達も付き合わされる奴?」

 

「まあ、朝は座学だし……」

 

 取陰さんも拳藤さんも文句を言いつつも物間君だけ走れば良いってならない辺りが染まって来たよね。

 反吐吐くまで体を酷使してこそのヒーロー科だ、授業以外でもどんどん伸ばして行かないと。

 

 

「そろそろ時間だな。おい、お前達。そろそろクラスに移動しろ」

 

 朝練に付き合ってくれたブラキン先生から声が掛かったし、さっさとクラスに行くとしようか。

 訓練だけでなくって座学だってヒーローを目指すなら必須、朝から体力を消耗してようが気は抜けないさ。

 

 

 

「へー。物間君はエンデヴァーの所でそんな事を体験したんだ」

 

「エンデヴァー自体は息子の指導に熱心だったけれど、ちゃんと課題は考えてくれたしサイドキックは多いからね。味方や敵の個性をコピーしつつの立ち回りを鍛えてもらえたよ。寧ろステインに遭遇して怪我した彼よりも僕の方が伸びたね、絶対に! いやー! リベンジが楽しみだよ!」

 

「私はシンリンカムイと最後まで悩んでプッシーキャッツの所に行きましたが、広大な敷地での救助訓練は参考になりました」

 

「いーちゃんの活躍ならニュースで知ったよ。雨の影響で起きた土砂崩れで活躍したってね」

 

 校舎までのランニングの最中、話題になるのは当然ながら職場体験だ。

 運が良いのか悪いのか特に大きな事件や事故に遭遇しなかった(ヒーローの立場からすれば事件がないのは喜ぶべきだけれど)のも居れば遭遇して戦闘を経験したのまで。

 

 特に今年の体育祭はガチバトルだった事もあって戦闘許可が出やすかったのもあるんだろうね。

 

「活躍っつたら八木もだろ! ビル火災からの救助やら戦闘で凄い評価じゃねぇか!」

 

「過大な評価は足枷になるから勘弁して欲しいんだけれどね」

 

 次期オールマイト候補とか大袈裟にも程がある。これで世間からの評価基準が厳しくなるだろうし、周囲への注意も必要じゃないか。

 

 

「所でそろそろ期末試験だけれど、例の情報はA組にも流すのかい?」

 

 そう、私達は学生故に試験が待っている。体育祭に職場体験と行事が立て続けにあったから試験と聞いた途端に何人かは目を逸らしたよ

 そして私が言った情報は先輩から聞いた例年の演習試験の内容さ。

 

 

「例年通りならロボの相手か。それなら楽なんだろうけれど……」

 

 ぶっちゃけロボなら秒殺超えて瞬殺可能、無限湧き相手の耐久戦なら別だけれど対人対物両方可能だからね、私の個性って。

 

『オレ様だぞ! このオレ様の力っつーのを忘れるな!』

 

「勿論秘密に決まってるじゃないかぁ! 手に入れようと思えば手に入る情報なんだし、わざわざ手間を省いてやる必要はないよねぇ!! 存分に悩むと良いさ、A組ぃ!」

 

 うわぁ、凄くイキイキしてるぅ! 物間君係の拳藤さんも今は動く気が無いみたいだし……鬱陶しくなったら腹を下させるか。

 

「君は何時まで経ってもA組に対抗心を燃やすねえ。派手な個性が多いのは暴走しても担任が対応しやすいからだろうし、体育祭の後からB組だって注目される様になっただろうにさ」

 

 いや、そもそもヴィランの襲撃を受けたからネットで注目されて、マイク先生が体育祭で他はオマケみたいな事を言ったから拗らせたんだろうけれど……。

 

 

 

「所で演習はどうやって突破するんだい? チームなら良いけれど、個人だったら対ロボ厳しい人がいるし、対策は練っておかないとさ」

 

「うっ!? あ、あらかじめ誰かに触れておくとか?」

 

 いや、私の方を見てもコピーはさせないよ? 意地悪とかじゃなくって、入学して直ぐ辺りにコピーしたら大変な事になったんだから、君。

 頭の中で響く声のせいで自分の思考と悪魔の声の区別が付かなくなって、結局記憶を全部食べても当時の事を話せばトラウマが甦るから記憶を食べる必要が出るしさ。

 

「入試の時はレスキューポイントがあったし、他の生徒が壊したロボのパーツが武器になったけど、試験の状況次第じゃ厳しいノコ。助けてくれたけれど入試は落ちた黒い子の分まで頑張りたいんだけれど……」

 

「まあ、ヴィランの活発化を考えたら例年通りのロボじゃない可能性もあるけれど……さて、そろそろ校舎だね。他の生徒だって大勢居るし……」

 

 軽く拭いたけれど皆揃って汗を流しているし、夏場なのもあって汗臭い。個性が広まる前の運動部みたいなものだから私は気にしないで良いとは思うけれど、他の女子生徒(一部男子)に期待の目を向けられたらねぇ。

 

「この程度なら誤魔化せるけれど、一応スプレーは軽く使っておいてよ? 見逃す側も誤魔化される為の建前が必要だからさ」

 

 ルシ様の力である傲慢は対象の個性因子に効果を阻害されるけれど、そんなの持たない物質相手なら問題無い。

 さてと、ここで一つ疑問だ。何処までが体の一部なのか? 例えば分泌物、汗や滲んだ皮脂や垢は体の一部と言えるのか?

 

 指を鳴らせば答えは直ぐ出る。あっという間に匂いの原因やベタつく汗とはおさらばだ。

 

「相変わらず便利だよね。汗臭い状態で過ごすのかってのが悩みだったけれど、これがあるから自主トレに躊躇いが無くなったよ。サンキュ」

 

「この程度ならりんごジュース一杯でお釣が来る消費具合だからね。ところで試験中は予約が殺到するだろうから施設は使えなさそうだし、グラウンドでの組み手を中心にしないかい? ……まあ、演習試験以外にも筆記試験もあるんだけれどさ」

 

 この瞬間、一部の顔が強張った。

職場体験何処が良いかな?

  • リューキュー
  • ホークス
  • サーナイトアイ
  • ミルコ
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