あくまでもヒーローになる   作:ケツアゴ

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二十二話

「何度も言ったが私は……リ・デストロ率いる異能解放軍のメンバーだ。構成員は政治家やマスコミにヒーローにまで及び、本拠地では日夜訓練を積んだ者達が決起の日まで準備を整えている最中で……」

 

 なーんか聞かなくて良かった事まで聞かされている気分。いや、離れた場所からイヤホン着きで【暴露】を使っているだけだし、唇も所々尋問官が邪魔で読めないんだけれど。

 

 母さんの会社のライバル企業がテロリストのボスだったぜ、ビックリ!

 

 別件で捕まったけれど組織がらみについては証拠も証言もなく嫌疑止まりだったらしいのに、ホークスの頬を汗が伝う程度には不味い情報を持ってたみたいだね。

 しかし、結構な情報持ってる奴が捕まったもんだ。よく消されなかったね。

 

「いや、何か大人の汚い部分見せちゃってごめんね?」

 

 イヤホンを通してホークスの声が聞こえて来る。大変だねえ、本業と公安のWワークって。顔が売れてるから遊びに行ってもファンに囲まれるだろうし。

 

 え? アザゼルはホークスが性欲発散させてる方法が知りたいって? その手の店に行けなくてもハニトラ要員の同僚口説くワンナイトラブとかネットで本や動画でも買ってんじゃないの? てか私にセクハラすんな。一応私の一部だろ。

 

「悪魔そのものな連中を物心宿す前から宿しているからね。今更さ」

 

 敢えて口にしないけれど悪魔の職能を使って他人を弄るのは私の性癖だし、個性を自在に使いたいって考えは分からないでもないけれど……。

 

「確実に治安悪化しそうだね。個性社会になる前の銃社会の某国みたいな感じで」

 

「分かってると思うけれど今回の事は……」

 

「分かってるさ。私の様子を伺っているお偉いさんに怒られるし、ホークスが女教師物と乱行物が好きな事と同じでペラペラ喋らないよ」

 

「この会話聞いてるって分かってて!?」

 

 うん、分かってて。

 

「まあ,色々察してるなら良いさ。テスト前なのに悪いね、時間取らせて」

 

「これでも推薦入学組だよ? ちょっと位平気さ。精々順位が一つ落ちる程度だからね。社会貢献の方が大切だよ。素敵なヒーローが悪党を退治するだけで万事解決するのはコミックの中だけさ」

 

 じゃないとヒーローに全部押し付けて市民は観客気分のヒーロー依存社会になっちゃいない、肩を竦めながらそう付け加えるとホークスは苦笑いだ。

 だって昔の事件映像とか見てたら銃撃戦で市民は悲鳴を上げて逃げるのに、ヒーロー社会の市民は歓声を上げるんだよ?

 

「分かってると思うけれどそれは人前じゃ控えようね? 俺の性癖を暴露するのも控えて」

 

「そりゃそうさ。マスゴミを相手にしないのと餌を与えるのは別だし。じゃあ、このペースで進めれば良いね?」

 

 それにしても数万人規模の過激派組織って収監や裁判やら解決後も仕事は山積みになりそうな話だよ。経済も確実に混乱するだろうし……。

 

 

 

 

 

 

 

「今回の話に関係する企業の持ち株を今から売るのアウトかな?」

 

「表向きにはできないけどインサイダー取引になっちゃうかな」

 

 

 

 この後、他の連中も含めて色々喋らせて、ホークスに夕ご飯を沢山奢らせた。未だ資格が無い以上は秘密の依頼でも金品で報酬は受け取りたくないので高いのを奢ってもらったよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  早朝、部屋の鏡の前で軽くポーズを取ってみる。うん、少し大きくなったかな?

 

「大胸筋も上腕二頭筋も良い感じに仕上がって来たな。この調子この調子」

 

 父さんによる経験を積む為のトレーニングに加えて個性因子を鍛え抜く訓練,そして伯父さんが学生時代に行っていた筋トレ。ホルモン増し増しで順調に鍛え上げられている。

 

 

「なんや相変わらず色気無い奴やな、サバちゃんは。ワイの力ならおっぱいどーん! も簡単やのに」

 

「色気で人気を取りに行く気は無いって言ってるだろ? 黙れ、アザゼル」

 

「それはそうと見苦しい物をさっさと隠して朝御飯にしませんか、裁兎さん。カレーパンとかどうです? いや,ここは実技試験に向けてカツカレーで」

 

「今日は母さんが一緒に食べようって言って来たんだよ、ベーやん」

 

「おいおい、俺だぜ? 頼りになるのは俺だぜ! 葉っぱだぞ、葉っぱ!」

 

「サラダはちゃんと用意してるよ、ルシ様」

 

 今日も今朝から頭の中で悪魔が囁く。ぶっちゃけウザい。この思考が混ざる感じが昔から嫌なんだよなぁ。

 

 跳ねた髪を適当に手櫛で整えて欠伸を噛み殺しながらリビングに行けば母さんが経済新聞を広げてコーヒーを飲んでいるところだった

 

 

「おはよう、母さん」

 

「ええ、おはよう。それと髪はちゃんとブラシで整えなさい」

 

 八木 智恵(ちえ) 個性『ハイスペック』 雄英高校サポート科を卒業後,オーダーメイドのサポートアイテムから個性の弊害による不便を解決する日用品まで手広く扱う会社を設立して急成長させた私の母親だ。因みに伯父さんの天敵でもある!

 

「ちょっとくらい別に良くない?」

 

「駄目よ。ほら、ちゃんとなさい」

 

尚、私も母さんには逆らえない。私が姿を見せるタイミングでちょうど出来上がった朝ご飯を食べつつ言葉を交わす。忙しい人だから普段はメールで済ますんだけれど、偶にこうして親子の時間を作るんだ。父さんともコッソリ会ってるらしい。

 

「兄さんは相変わらず? あの人、経験は豊富だけれど鍛え方が異常だったし細かい技術を教えるのは向いてないでしょう? もう限界が近いのね。……本当に馬鹿な人」

 

 平和の象徴である伯父さんの引退、その影響は直ぐに出るだろう。潜伏していた裏家業の連中やらお祭り騒ぎに釣られて道を踏み外す馬鹿。犯罪者の鎮圧者としてのヒーローならエンデヴァーが居るけれど、市民に安心を与える象徴としては難しい。ミリオさんもデビューして数年じゃ次代の象徴にはなれるかどうか。

 

 伯父さんの引退がもたらす物についてはヴィラン連中がよーく理解しているだろうし,だからこそ襲撃して学校への信頼を削りに来た。

 

「私も更に強くならないとね」

 

 出来る事は増え続けている。だから次は手札の質を上げるべきだ。やるしかないよね、ヒーローだったらさ。

 

 

 それからご飯を食べ終えて歯を磨いて髪を整えて便所でクソをひり出して学校へと向かう直前、母さんに呼び止められた。

 

 

「裁兎、多分同級生が一人くらい辞める……いえ、消えるけれど気にしないのよ」

 

「それは一体……いや、成る程ね」

 

 何故誰かが急に消えるのか一瞬分からなかったけれど、切っ掛けになる事は思い付く。

 

 

 

 

 

 

 この日、A組の青山君が登校しなかった。先生が連絡しても繋がらないらしい。

職場体験何処が良いかな?

  • リューキュー
  • ホークス
  • サーナイトアイ
  • ミルコ
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