「それにしても先生も酷いと思わない? 私は皆を対等なライバルとして扱ってるからこそ本気で勝ちに行っただけなのにやり過ぎとか言うんだよ」
「これを本心で言ってるんだからエグいよな。いや、確かにルールの範疇だし、漏らさない程度には加減していたけれどよ」
騎馬戦のチーム作りの時間終了が迫る中、早々にチームを決めた私達は他のチームを観察しながら雑談をしていたんだけれど、クラスメイトからの評価が厳しい。
鉄哲君の言葉に二人も頷いているし、私が別に愉快犯的な理由でしたんじゃないって理解してるなら別に良いんじゃないかな?
それとある程度肯定している時点で私側に染まっているからね?
「まあ、クラスを代表して私が後でお仕置きをするとして、厄介なのはどのチームだと思いますか? 無論、全員倒す予定ですが」
「一番厄介なのは今まさに親の仇みたいな目で睨んでる二人の所かな? 実力的に一年でも上位だろうし」
なんとプライドが高そうな爆豪君と一匹狼っぽい轟君が私達の方を並んで見ているし、開幕直後に襲って来るだろうね。
二人の個性を分かっている限り三人に伝え、他のチームの方にも視線を向ければ様子のおかしいクラス混合チームが目に入る。
「あの普通科のちょっと体が貧弱な子、多分洗脳系個性だと思うから注意して」
「げげっ! お前のアレと似た感じか?」
「条件が気になりますね。言葉なのか接触なのか視線なのか……」
「遠距離から観察しかないね。取り敢えず彼相手には無言を貫いて触るのも最後の方で……」
後はチームに入るのを断ったサポート科の彼女、一応個性だけはチームに入れるかどうか考える時に聞き出しはしたけれど、持ち込んだサポートアイテムについては流石に教えてくれなかった。
「じゃあ、他に競技のルール上厄介そうな個性は……」
とっととゴールして観戦していたから余裕を持って観察はしている。惜しいのは至近距離で観察していた物間君が教えてくれなかったし、今も唇を読まれない様に口を隠しながら作戦会議中だ。
「全員敵に回すの読まれてるっぽいね。参った、油断はしてくれないか」
肩を竦めて顔を左右に振る。入学当初の皆だったら私が全員倒すギラギラっぷりを見せるだなんて想像もしなかっただろうに。
「常に一位を目指して全力で挑まない方が理解出来ない、なんて訓練中に何度も口にしていたのは君だよ? 向こうだってあわよくば全員の鉢巻きを手に入れに来るだろうね」
「仲間だってのと同時に全員がライバルだって彼奴も分かってんだよ。……いや、それでも速攻で全員潰しに来たお前には俺もビビったけれど」
さてと、他のチームも編成が終わって開始時間も残り数秒、伝える事は後一つ。
「三人共、革命の準備は大丈夫かい?」
「「「当然!」」」
人生において全て経験、当然だけれども体育祭も然り。全てはヒーローとして多くの人を救い、悪人を捕まえる本物のヒーローになる為のね。
アイドルヒーロー? ファンの支持? 必要性は理解するさ、私は興味が無いだけで。
そんな物は向いてる人が得れば良い、成れば良い。私は実績だけでNo.1ヒーローになってやるのさ!
いーちゃんに背負われる格好で上に乗れば髪の毛である茨が伸びて私達三人に絡み付くけれど、その部分だけは棘が存在しない。
茨の一種である薔薇には棘無しの物だって存在するし、個性はある程度自由に伸ばせる。
まあ、努力と工夫次第、私はその努力を短縮させる工夫の手段を持っているだけさ。
響き渡る競技開始の合図より前に殆どの騎馬が私達に視線を向けて、合図と共に1000万ポイントを奪うべく突っ込んで来た。
「死ねやオラァアアアア!」
「おいおい、将来デビューした時アンチに動画を広げられるよ?」
鉢巻きじゃなくて命を奪う気なんじゃないかって勢いの爆豪君が爆発を起こす掌を突き出して、轟君は足元を凍らせて来る。
先ずは待避、羽を広げて空中に。
「当然読んで来るよね」
「糞がっ!」
騎馬から離れて空中に飛んで来た爆豪君、それって有り? 青春だから有りって流石ミッドナイト先生、朝と放課後の訓練を休日も含めて許可してくれるだけあるね。
「だけど私達だって読んでるのさ」
個性『スティール』鉄哲君の個性は全身を金属に変化させる事、持続には鉄分の接種が関わって来る。
それを正面からぶつけた。
「ぐっ!」
「合体必殺アイアンハンマーって所かな?」
凄いな、彼。人間サイズの金属の塊が勢いを付けて衝突したら大抵アウト、それを咄嗟に後ろに爆破で飛ぶ事で衝撃を殺したのか。
咄嗟の判断、これは警戒度を上方修正だ。
『おおっと! 爆豪の猛攻を正面から叩き返した八木チームに他のチームからの一斉攻撃が迫る!』
第一種目で見たくっつく玉や耳のイヤホンジャックみたいなのや鳥みたいな影! そしてその後ろからは轟君の大氷塊。
爆豪君は騎馬状態に戻って隙を伺う中、A組の遠距離攻撃可能な子達からの一斉攻撃とか、狙われてるね。
「滾って来たぁあ! 先ずは纏めて凌ぐよ、吹出君!」
「出した擬音の形状を変えられる!」
個性『コミック』。漫画で表現される擬音をその性質を持った文字として出現させる個性。でも、本来は固形限定なんだけれど。
「秘技・黒蜥蜴!」
技名は何となく思い付いた私の必殺技で話は変わる。黒い稲妻みたいなエファクトと同時に彼の背中に触れた瞬間、体内で変化が起きた。
『革命』、本来は洗脳系の能力で相手が口にした言葉の通りの思考や精神状態へと変える物。
但し……。
「ベトベト!」
『なんとぉ! 吹出の放った文字が液状になって攻撃を全部絡め取った!』
そう、私の黒蜥蜴は肉体にさえ変化をもたらす。空中で広がった『ベトベト』は強力な粘着性で向かって来た攻撃の大半を氷とくっ付け、その隙に逃れさせて貰ったよ。
「うわっ、目敏いな。訓練で感覚を掴む為に黒蜥蜴を受け続けただけあるや」
流石はクラスメイト、知っている以上の規模で個性を使うって分かっていたから最初から漁夫の利狙いか。
多分工夫の幅が広い二人が何処まで応用するかも考えてるな。
「取陰さんには注意ですね」
「物間もストックの一つはあの個性みてぇだが、もう一つが気になるな」
分解した体を浮遊・操作・再生可能な彼女は片目と片手を浮かして操作して背後から隙を狙って数チームの鉢巻きを奪取、しかも物間君と同チームだから手数は倍だ。
その上、物間君ったら黒蜥蜴で無理矢理引き出した力を使い続けてストック二つ、使用可能時間は五分から八分へと延びている。
コピーの物間と合わせれば本当に厄介だよ、ヒーロー精神に反するから一回しか使わないけれど、本音を言えば騎馬戦も全員腹痛にしてやりたい気分。
「まあ、正直助かるね。狙いが定まるから」
鉢巻き全奪取、常に上を目指すなら当然の狙い。それならターゲットが減る方が楽だ。
「いーちゃん、例のアレを……」
「ええ……」
誰にも聞こえない程度の呟き、でもそれで良い。本人が発したと自覚しているなら革命は行える。
彼女の肩に軽く触れた所で再びの大氷塊、そして離脱。こっちを牽制しつつ鉢巻きを取り戻す気か。
うんうん……都合が良いね。
「吹出君、いーちゃんが防いだら目眩まし!」
迫る大氷塊を大量の茨で防いで勢いが弱まった所で切除、同時に放った擬音は『モクモク』、形状は煙!
同時に再びのアイアンハンマーで氷を砕いて散らばらせる。
『こりゃ煙幕か!? 何も見えねえぞ!』
『その上で氷が散らばって障害物になっている。こりゃ下手に動けんぞ』
「観客の皆さんとアピール不足の皆はごめんね、っと。いーちゃん、いける? 黒蜥蜴って負担は大きいけれど……」
「あら、無理だとでも? 私は煙の中でもハッキリと見える」
いーちゃん、本日二回目の黒蜥蜴。無理矢理体質を変えるみたいな物だから結構消耗するんだけれど、そこは根性って奴だね。
「そうこなくっちゃ! 男も女も根性だ! ……じゃあ、索敵防止の為に煙幕張りつつお喋りは禁止で」
時には潜伏もヒーローの選択肢、派手な活躍以外も必要なのさ。
それからは、うん。観客からすればかなり地味な時間だっただろう。競技時間十五分の内、派手だったのは最初と爆豪君が全力連続爆破で煙を吹き飛ばした後。
「……やられたな」
でも、もう遅い。視界を奪われて崩れたり線から出るのを避けて慎重になり過ぎたね。
物間君が悔しそうに呟いて見つめる先は私達の騎馬。
蛇みたいに動く切除された茨が絡め取った全ての鉢巻きが手元に集まった所。ちょっと邪魔だな、流石に。
いーちゃんだって本来は遠隔緻密操作なんて未取得だから疲れてるし、これ以上の黒蜥蜴は無茶だろうね。
計十二本の鉢巻きを頭と首に巻いて鬱陶しさを感じる中、奪い取ろうと他の騎馬が迫る中、時間も残り十秒。
「さてと、私も大技を使わせて貰おうか」
気合いを入れる為に袖を捲れば現れるのはゴツゴツに鍛え上げた筋肉、因みに腹筋もバッキバキ。
これから使うのは能力そのものは危険だから使えない能力に付随する力。
「暴虐……からの劣化版デトロイトスマッシュ!」
腕の筋肉が更に膨れ上がり、真上に突き出せば暴風が発生する。周囲には既に重石になる擬音が散乱、それに茨が絡み付いてその場に留まる。
「完全勝利。……物間君、結局最後まで二つ目見せなかったね」
『終了ぉおおおおおおっ! なんと! なんとなんとなんとぉおおおおお! 八木チーム、ポイント総取り! ……って流石にこれどうすんだ?』
さっきまでの静寂と戸惑いの反動からか今までで一番大きな歓声が響く。さーてと、本来は上位四チームの所を私達だけが勝ち残っちゃったけれど……。
「第二試合か四人だけで決勝か。前者の方が良いな。ゆっくり体を休めつつ観察に専念出来るんだしさ」
今にも襲って来そうな形相なのがいるけれど気にしない気にしなーい。
「では、昼休憩中にB組を代表してお仕置きをしますね」
「いーちゃん、執念深いね!? そこは流そうよ、活躍したんだし!」
あっ、それはそうと黒蜥蜴の力については周知してた方が良いかな? じゃないと職場体験の時に今回の力を求められても困るだろうし。
え? 体験までに自力で使える様にするから問題無い? そっかー。
職場体験何処が良いかな?
-
リューキュー
-
ホークス
-
サーナイトアイ
-
ミルコ