あくまでもヒーローになる   作:ケツアゴ

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六話

「あれはちょっと厳しいかな?」

 

 物間君の予想以上の奥の手に呟きが漏れる、ストックを増やしている方面かと思いきや、今まで不可能だったコピーの同時発動、あれで相澤先生と増強系を組み合わせたら本当に厄介な事になりそうだ。

 

 まあ、教師陣が生徒一人に肩入れは難しいだろうし、取陰さんの個性でミッドナイト先生に触るのはギリ行けるかな?

 

 眠り香を放ちながら縦横無尽に飛び回る体のパーツとか相手にするのは面倒だよ。

 

「あはははは! おいおい、どうしたんだい? 全然効かないんだけれどねぇ!」

 

 次々に放たれる氷塊に対して物間君が選んだのは愚直なまでの正面突破、それだけで事足りる。鋼の肉体に獣のパワーとスピード、やや力任せが過ぎる気もするけれど二人の距離は秒で縮まる。

 

「痛かったらごめんよ!」

 

 高笑いからの大振りな一撃、広げた手での薙ぎ払いは強化された肉体によって回避困難な速度で迫った。

 それでも流石はトップクラスのヒーローの指導を受けただろう轟君だ、避ける動作を見せずに選んだのは防御。

 

「甘いね。今まで砕かれた経験が無いのかな? 無いか、少なくても同世代には」

 

 彼はどうも自分の実力の評価が高いらしい、実際に強いのは強いけれど、周りに自分の力が通じない相手が殆どいなかったんじゃないかな?

 

 盾にする為に出した分厚く大きい氷の壁は砕かれて、増強系の個性で金属と同等の硬度を持つ太い指が届いた。瞬時に氷を放出する勢いを乗せて衝撃を逃がそうとはするけれど殴打の音が響くと同時にフィールドの端まで吹き飛ばされて、あわや場外って所で出した氷の壁で助かる。

 

 

「終わったね」

 

「ええ、これは物間さんの勝ちでしょう」

 

 私の言葉にいーちゃんは頷いて他のB組の仲間も同じ意見だ……一部を除いて。

 

 氷の壁によって場外は防げたとはいえ、叩き飛ばされた勢いを乗せて衝突したのは殴打を喰らった右腕側。ここからでも私の目には赤黒く変色しているのが見えるし折れているだろうね。

 

「ぐっ!」

 

 それでも轟君は左側を使う気が無いとばかりに無理やり上げた右腕で氷を放つけれど通じない。物間君の腕の一振りで叩き落とされて、轟君の体には霜が纏わりついて動きが鈍くなった風に見える。

 

 

 

「何をやっている! 左だ! 左を使え!」

 

 それはエンデヴァーの声が届いても同じ、逆に忌々しそうに睨んで氷を連発している。

 

 

「君さあ、やる気ないなら帰ったらどうだい? 実際僕に負けてるんだし、それとも本気出してないから負けたって言い訳が欲しいのかい?」

 

「黙れ!」

 

 

「……まあ、別に良いや。楽に先に進めたんだからさ!」

 

 高々と跳躍してのスレッジハンマーの構え、でも空中でその構えを解いた物間君は轟君の目の前に降り立つと彼の左腕を掴む。

 

「このまま投げ飛ばして終わらせて貰うよ」

 

「このっ!」

 

 至近距離からの氷も通じず、そのまま物間君は持ち上げたその体を振りかぶる。暴れる彼をものともしないパワーでの全力投擲、そして再び現れる大氷塊。

 観客席に届きかねないそれは警備のヒーローによって防がれて、轟君も場外は免れた、その代償は大きかったけれど。

 

 

 

「あれあれ~? 全力を出さなくても勝てるって態度だったわりにはボロボロじゃないか」

 

 氷に緩い傾斜を作って落下の勢いを殺す事も出来ず、激突の後に急斜面を転がり落ちた轟君は立ち上がる余力もないらしく氷にもたれ掛かった状態で紫に偏食した右腕を伸ばすのが精一杯、凍傷だって酷い事になっている。

 

「もう降参した方が良いんじゃないかい? 喋れないなら横たわってしまえば良いさ」

 

 即座に距離を詰めて殴れば終わりだろうに物間君はその場から動かない、動けないって方が良いのかな?

 

「ねぇ、なんか物間の奴、妙じゃない? 手加減してるっていうか、おっかなびっくりって感じで戦ってるみたいに見えるんだけれど」

 

「拳藤さんにも分かるんだね。まあ、どっちか片方だけなら使っても、両方同時に使ったのはこれが初めてだからだろうね」

 

 物間君がどれだけコピーを繰り返しても幼い頃から使ってたコピー元には慣れの差が出てしまう、個性発現初期の事故とでも例えるべきだろうね。

 要は加減が分からないんだ。あのパワーと金属の体で何処まで力を出したら取り返しがつかなくなるのかって。

 

「最初に平手打ちじゃなくてパンチなら終わってた。個性を随分扱い慣れてる轟君には致命的だったね」

 

 そんな緊張状態で戦い続け、物間君だって少なからず冷気の影響を受けている。

 

 

「ほら、終わりだ。惜しかったね……物間君」

 

 物間君が勝負を終わらせるべく接近して手を伸ばした所で個性が解除される。

 あと五秒もあれば勝っていただろうに、一方的に攻めていた様で攻めあぐねいてしまったのは惜しい。

 

 三度目となる大放出、放った本人も随分とダメージがあるみたいだけれど、これで物間君は氷漬けにされて動けない。

 

 

「やれやれ、侮ってたのは僕の方だったか。降参するよ

 

 最後にこっちに横目で視線を送った彼は溜め息と共にギブアップを宣言、轟君の勝利が宣言された。

 

 

 

「……じゃあ、次の次だから控え室に行ってくるよ」

 

 うーん、こんなのはキャラじゃないけれど燃えて来ちゃった。

 

 

 最後、私が個性を使えば聞こえる程度の声で彼は呟いた。来年見ていろ、二連覇はさせない、ってね。

 私が……いや、B組の誰かが優勝するって確信してるなら応えてあげようじゃないか。

 

 

「彼、もう私達の誰かが優勝する前提で煽って来たよ。それで、乗らない人いる? いないよね」

 

 トーナメント参加組への発破もこれでよし、後は私の中の悪魔と一緒に次の試合に備えていよう。

 

 

 

 

 

 

『此処迄圧倒的な実力で勝ち上がった注目して選手! お前はどこまで凄いんだ! ヒーロー科八木裁兎! vs ちょっと目立った活躍不足! ここで挽回なるか! ヒーロー科青山優雅!』

 

 さてと、彼の個性は第一競技で少し見た、ヘソの辺りからのビームだけれど限界なのか温存なのか放出時間は超短時間。

 

 

『スタート!!』

 

「先手必っ……」

 

「臭かったらごめんよ?」

 

 でもまあ、ビームを撃つ前に倒してしまえば無関係、溜めの瞬間に急接近して顔に息を吹き掛ける。濁った色をした臭い息。

 

 青山君は白目を剥いて泡吹いて仰向けに倒れる。

 

 

『しゅ、瞬殺ぅ!? ありゃ毒ガスかぁっ!?』

 

「正解。ちゃーんと威力は抑えたから一時間もあれば目を覚ますよ、後遺症も出ないだろうね」

 

 私の勝利宣言を聞きながら皆にピースを向ける。会場に響く大歓声、耳を澄ませば私への称賛や畏れ。

 うーん、気持ち良……あっ。

 

「んげっ!? 来ないと思ったのに……」

 

 観客席の中、他のヒーローから少し離れた場所で壁を背にして眼鏡の位置を直すスーツ姿の男性。

 伯父さんと仲違いしているから来ないと思ってた。

 

 

 

 平和の象徴オールマイトの元サイドキック『サーナイトアイ』、本名佐々木未来(38)一応未婚。

 

 

 

「うへぇ、お説教は試合が終わってからにして欲しいな。……優勝したら恩赦出るかも。いや、ここはいーちゃんに協力してもらって一発芸『人面瘡』か『二口女』を!」

職場体験何処が良いかな?

  • リューキュー
  • ホークス
  • サーナイトアイ
  • ミルコ
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