正義のヒーローの仮面の理由は何だと思う?
ヒーローは人気商売、目立ったりする為だと思うかい? まあ、華々しく活躍する事で人々から不安を払拭するのがヒーローの役割なんだ、それも間違ってやしない。
でもね、私は顔を、正体を隠すのが一番の役割だと思うんだ。逆恨みをしたヴィランや拗らせた厄介ファンにマスゴミもといマスコミから仮面とヒーロー名で正体を隠し、周りの大切な人を守る為の防具こそが仮面だとね。
その正体を隠すって方法はヒーロー名や仮面だけじゃなく、プライベートに関して秘密にするのも手だ。轟君とかはヒーロー一家って公言してはいるけれど、親類縁者が何をしているのかや、そもそも関係性すら隠す手段を選んでいるヒーローだって存在する。
例えば結婚指輪を着けていなかったり、そもそも結婚すらしていなかったり、ね。
「何と言うか……久し振りだね。今日は……」
「今日は貴方の元サイドキックとしてではなく、父親として来ています、オールマイト、いや、お義兄さん」
「そ、そうか」
「何処に誰の目があるかも分かりませんし、この話は此処までで」
はい、今の私が何処かにある目だよ。速攻で試合を終わらせて観戦に戻ろうと思ったら気まずい場面に遭遇だ。
多分私に何か言おうと思ったんだけれど、ちょっと軽率じゃないかな?
「しかし何故此方の方に? 教師が生徒一人にわざわざ何かを言いに行くのは不自然ですし、目立つ真似は控えて欲しいのですが」
「ご、ごめん」
相変わらず伯父さんに心酔しているわりにはプライベートが関わると辛辣なんだから、父さんったら。
そう、サーナイトアイは私の父親、但し諸々の理由で未婚なんだ。堅物だけれどユーモアは大切にしているし、年齢を逆算すると二十二辺りで私が生まれたんだから若い頃ははっちゃけていたのかな?
「ねえ、もう出て良いかな? 次はクラスメイトの試合だしさ」
さて、父と伯父の思い空気の中に入って行くのは抵抗があるんだけれど、何時までも曲がり角でジッとしていられない。
「ああ、急ぎなさい。……また電話する」
父さんは通り過ぎる私に対して伯父さんの方を見ながら言って、そのまま別の方向へと向かって行くけれど途中で足を止めれば声は佐々木未来からサーナイトアイへと変わっていた。
「既に次の芽は育っている。ミリオやあの子といった次代の平和の象徴になり得る存在がです、オールマイト。私は貴方の選択を認めない」
何か私に隠したい事があるって感じだな。重症の体だから次を育てる為の教師就任だってのは知っているけれど、父さんが否定する選択って何だろう?
ちょっと気にしていると響く頭痛、チクチクと虫が刺す程度の微弱な痛みなんだけれど幼い頃は本当に嫌だったよ。
「……駄目だよ、ベル君。君の本当の力は使わないって事になってるじゃないか。モッさんとルシ様は黙ってて、アザゼルは死ね」
気にはなるけれど教えてもらえないなら仕方が無い。今は始まっている試合の方を気にしないとね。
ああ、それにしても相変わらず五月蝿いし、アザゼルはウザイから死んで。
「遅かったわね。試合、始まってるわよ」
「戦況は互角か。長引いたら地力の差が出そうだよね」
吹出君は短期間で個性を伸ばしたけれど、飯田君はヒーロー一家だ、幼い頃からプロの指導を受けて設備の整った所で訓練しているだろうからね。
フィールドの上を漂うのは『フワフワ』、そして上に乗った吹出君から放たれるのは……。
「ビュン! ビュン!」
『おおーっと! 吹出から連続して放たれる小さな文字が飯田を狙う! だが、それを避け続けるぞ!』
「くっ!」
圧倒的な速度でフィールドを駆け回り直撃こそ無し、それでも連続で放たれる文字は一発ごとの感覚は短くて反撃に出る機会は少ない。
今も顔面スレスレを文字が掠めて眼鏡が壊れた所だ。
「このっ!」
多少のダメージを無視して飛び上がって振り抜いた足から発生する旋風。
眼鏡が壊れたせいで距離を測り間違ったのか直撃は……いや、当たった?
排気口みたいな部分からの噴射の勢いを乗せた蹴りは凄まじく、空中の文字は吹き飛ばされる。
このままじゃ場外だと咄嗟に飛び降りた吹出君は相手が着地する前にもう一度浮こうとして、その場でふらついた。
「げっ! さっきのもしかして……」
「爪先が当たってたかぁ。さっきから掠りはしてたけど」
そう、吹出君だって無傷じゃない、強化された脚力の蹴りは掠るだけでもダメージは少なくなく、今のは結構良いダメージを貰ってしまっているみたいだね、
彼もヒーローを目指すだけあって鍛えているけれど、トレーナーの有無の差って大きいんだよ。
実際、雄英BIG3の一人は父さんが急成長させた訳だし。
「ここで一気に勝負を決める! レシプロ……バースト!」
今までとは比べ物にならない加速に吹出くんは対応し切れない。
直撃した強烈な蹴りに彼の体は浮いて場外に向かって吹き飛ばされるだけ……じゃない。
「ズシン!!」
蹴りのインパクトが最高点に達する瞬間、飯田君の頭上に現れたのは巨大な文字。
そして着地する寸前に小さなビュンって文字が着地のバランスを崩してそのまま彼は下敷きになった。
落下地点を中心に大きく広がるヒビ、頭から血を流しながら外に出ている右手で這い出そうとして、その場で崩れる。
『吹出君場外! 彼の場外よりも飯田君の気絶が僅かに遅かったと見なし飯田君の勝利!』
「やっぱり積み重ねた時間の差が出たか。惜しい、あと少しだったのに」
もし途中で彼のバランスを崩せていれば最後と同じ攻撃が決まって吹出君の勝利の可能性だってあった。
でも、たられば言っても世界の時間は戻らない、世界のはね。
「さて、どうやって勝とうかな」
担架で運ばれる二人、特に怪我が重い飯田君を見ながら目を細める。
あの速度は厄介だけれども……どうとでもなるか。
「一番は腹痛からの光線で足を潰して超パワーで殴るんだけれど」
体育祭で選ぶべき戦術じゃないから却下だね。
そして続いてはBブロック、最初の二試合は観客席のミーハーヒーローが全国放送で醜態を晒し、鉄哲君がサポート科に騙されて醜態を晒すけれど、油圧式ジョッキが彼の激突で折れちゃったから騙されて装着したサポートアイテムのアピールは直ぐに終了だ。
「私のベイビーがっ!?」
「えっと、悪ぃ」
落ちて来た彼女を掴んでそのまま場外へと運ぶ何とも言い様のない決着だ。
「暫くは弄るネタが出来たね」
「やめてあげなって」
そして第三回試合、骨抜君の試合なんだけれど……うん。
「貰ったぜっ! このまま場外に……へ?」
対戦相手の腕から伸びたテープが体に巻き付いて、その対戦相手は柔らかくなった地面に胸から下が埋まった所で個性を解除されて固められた。
尚、腕も地面に埋まってる。
「このままでも俺の勝利だが……続けるならこれを使うぞ」
骨抜君が柔化した地面に手を突っ込んで引き出せば握られていたのはコンクリート製のハンマー。
『なんじゃありゃっ!?』
『あの形にだけ個性を解除したって事だろう。器用な真似をするな』
ふーん、あれなら環境に左右されるけれど武器を作り放題か。課題は時間と範囲って所かな。
当然相手は降参、ドンマイコールが鳴り響いた。
そして遂に我が親友いーちゃんの試合、対戦相手は硬化する個性で接近戦慣れしている感じだ。
地面を通っての蔓で拘束しての放り出しが通じそうだと思ったけれど、目の前の光景は違っていた。
「接近戦はそこまで得意ではありませんが、是非この技の練習台になって下さい」
彼女の髪が全身を覆い尽くし、絡み合い編み込まれ捩れて頭と胴体が同化した五メートルの緑の巨人を作り上げる。
いーちゃんの顔は巨人の額から現れて対戦相手の切島君を見下ろしていた。
「ローズ・ネピリム。これが私の必殺技です。さあ、その戦闘力をご覧あれ!」
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