とある科学の無尽火炎《フレイム・ジン》   作:冬霞@ハーメルン

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第10話 『第三位、第六位、超能力者』

 

 

 

 外の世界に比べ、科学技術が数十年の規模で進化している隔絶された世界、学園都市。

 街は各種モノレールで繋がれており、最先端の科学技術があちらこちらでふんだんに使われ、学生たちの生活を豊かなものにしている。

 例えば最も顕著にそのイメージを得ることが出来るのは、街中のいたるところを巡回しているドラム缶のような何かだろう。

 これは未来に憧れる者ならば一度は夢見るだろう、掃除用自走ロボット。ある程度までのゴミならば吸引圧縮し、道端に学生が捨てた空き缶のような固いものであろうと綺麗に食べてしまう最先端の機械だ。

 似たような形のロボットは装備を換えて警備用のそれ、防犯用のそれとして銀行やビルなどに備えつけられており、この型のものにも生徒たちの喫煙を警告したり、不審者のIDを確認したりするAIは備わっている。

 

 もっともこれらにも当然のことながら限界はあった。

 大通りなどは比較的綺麗に保たれている方だが、ゴミが多くなる学生たちの溜まり場などは流石にロボットでも見回り切れずに風紀委員(ジャッジメント)達が自主的に掃除したりしているし、路地裏などはそもそもからして巡回経路から外れている。

 

 簡易ながら警備用ロボットとしての機能も併せ持っているコレらが周り切れない場所。

 則ち其処は、ある程度の無法地帯だ。

 風紀委員(ジャッジメント)警備員(アンチスキル)が見回りこそすれ、やはり彼らも決して数が多いわけではないから手が足りない。

 特にある程度の能力者を抱えた風紀委員(ジャッジメント)などは学生たちの集まりだ。完全下校時間を超えると、当然のこととして彼らは活動出来なくなる。

 そういった時間には警備員(アンチスキル)やロボット達も集中的に路地裏を見回り出すが、やはり穴は簡単に生じるわけであり、そこにはみ出しもの達は好んで集まった。

 

 

「―――って、そんな説明したら僕がまるで不良みたいに聞こえるってことです」

 

 

 第七学区の表通りから少し外れた裏通り。その更に路地裏に、一人の男の影があった。

 初夏とはいえ暑い盛り。だというのに脛まである丈の長い白衣を羽織り、短い黒髪を無造作に後ろに撫でつけた青年。

 身長は高い。百八十ぐらいだろうか。ハンサムで精悍な顔立ちをしているが、灰色の瞳は驚くほど生気に欠けていた。

 

 

「‥‥あれ、一方通行(アクセラレータ)?」

 

 

 人気のない路地裏に、乾いた声が響く。当然のように反応は無く、青年は困った様に頭を掻いた。

 

 

「おかしいな、どこではぐれたっけ? まったく、僕の知らない内にフラフラ歩いて行っちゃうのは勘弁して欲しいってことです」

 

 

 青年‥‥カガリは呆れたように溜息をついたが、その実本当に起こったのは彼が口にしたのとは全くの逆。

 前を歩く一方通行(アクセラレータ)の後を素直に付いて歩けば良いものを、何を思ったのか虚空を眺めながら考え事をしていた彼が、フラフラと路地裏に入ってしまったのだ。

 彼は自分が友人の保護者代理のような気分でいるが、それも定義づけられた精神面での話。

 実際の生活では世間知らずなのはカガリの方であり、意外に気を遣う性格である学園都市第一位は大きな友人のために何度も溜息をついていた。

 ちなみに可哀想に、今も彼はカガリの姿を探して道路脇の店などを猛然と走り回っている。ご愁傷様である。

 

 

「‥‥あと一軒だけ珍品巡りがしたいっていうから付き合おうと思ったのに、これじゃ意味がないってことです。ふわぁ、眠い‥‥」

 

 

 すでに日が落ちて久しく、街灯はおろかビルの明かりすら入らない路地裏に吹き込んだビル風で、白衣の裾が翻る。

 完全下校時刻には微妙に時間はあるが、こんな時間に路地裏を歩くような学生はいない。基本的には大通りを歩くように推奨されているし、彼らも路地裏にはロクでもない連中ばかりいることを知っている。

 特にこの街では素手に見える学生が、拳銃などより遥かに恐ろしい能力(ぶき)を持っていることなどザラだ。大部分が無能力者(レベル0)低能力者(レベル1)の普通の学生たちは、だからこそ余計な危険に首を突っ込もうとはしない。

 

 もちろんこういう場所にたまっている危険な不良達、あるいは武装無能力者集団(スキルアウト)と呼ばれる連中にも高位能力者など殆ど存在しないだろう。そもそも高位能力者なんてエリートが、こんな路地裏にドロップアウトするのも考えられないことだ。

 だが異能力者(レベル2)ぐらいまでの能力者では、喧嘩慣れした不良達にはとても敵わないだろう。戦闘訓練をしていれば話は別だろうが、普通に能力開発を受ける上で、戦闘能力は付随してついてくるものであって、決して鍛えるものではなかった。

 

 

「‥‥帰っちゃおうかね。あまり長く起きてられないし、明日は実験もあるってことです」

 

 

 盛大な欠伸をしながら、カガリは伸びをして辺りを見回す。

 そろそろ学生向けの店は殆どが閉店する。完全帰宅時刻が近いのでゲームセンターなども一部を除きしまってしまうから、不良のような学生でなければ、つまらないので素直に帰ってしまう。

 面白い物、楽しいこと、珍しいものを見て回ること、余計ないざこざに首を突っ込むことが存在意義といっても過言ではないカガリにとって、夜は一方通行(アクセラレータ)の“実験”の立ち会いをするぐらいしかやることがない。

 ましてや彼は体質として長く起きていることが出来なかった。夜は寝る、まるでお子様だが仕方がないのである。

 

 

「あー、眠い。眠い眠い眠い眠い眠―――」

 

「―――何どうしようもないこと呟いてんのよ、アンタは」

 

 

 人気がないはずの路地裏に溌剌とした少女の声が響く。

 ゆらゆらと不審者の如く揺れていたカガリが振り向くと、そこには名門として有名な常盤台中学の制服を着込んだ少女の姿。

 茶色の髪を肩ぐらいまでのショートカットにし、強気な目には自信と信念が現れている。両手を腰に当てて堂々と仁王立ちしているのは、背伸びしているようにも見えて不思議と年相応であった。

 

 

「‥‥あぁ、御坂美琴サンか。こんなところで、こんな時間に何をしてるんだい? 常盤台のお嬢様が素行不良はどうかと思うってことです」

 

「何よ今の溜めは? ていうかすごくどうでもよさそうな顔してるわね。なんか言うこと無いの? 学園都市に七人しかいない超能力者(レベル5)が偶然にも出会ったっていうのに」

 

「別に、いつも一方通行(アクセラレータ)と一緒にいるから、特に感慨深いものはないってことです。ていうか自画自賛? ちょっと恥ずかしいってことです」

 

「やっかましい!!」

 

 

 常盤台中学‥‥に限らず、基本的に学園都市の中学高校などは全寮制なのであるが、その中でも常盤台はお嬢様学校として知られるだけあって非常に寮則が厳しい。

 特に門限は、ヤバイ。美琴の住んでいる寮は鬼のような寮監が厳しく監督しているため、一分一秒たりとも遅刻は許されない。遅刻したものは、なんかよくわかんない武術の餌食にされる。

 まぁ五分前とかにしっかり帰ってくればいいのだが、やはり学生は時間ぎりぎりまで遊びたがるものだ。

 多かれ少なかれ、ある程度の学生が毎年必ず痛い目に遭っている。

 

 

「で、アンタはこんなところで何してんの?」

 

「それは最初に僕がした質問なんだけど‥‥まぁいいか。僕はいつも通り、一方通行(アクセラレータ)とゲーセン、珍味巡りをしてたってことです」

 

「ゲーセン、珍味巡り? アンタ学校はどうしたのよ? その制服、長点上機学園でしょ?」

 

 

 常盤台中学に並ぶ、学園都市の名門学校。長点上機学園。

 生徒全員が強能力者(レベル3)以上などということはなく、一芸があるのならば無能力者(レベル0)でも入学できる。

 学園都市の全ての学校が競い合う超大規模な運動会、大覇星祭では年齢の差もあり、常盤台中学をも破っていた。

 カガリと一方通行(アクセラレータ)、少なくとも超能力者(レベル5)を二人も有している辺り、名門校の名に恥じぬ顔ぶれである。

 

 

「ああ、僕も一方通行(アクセラレータ)も籍だけ置いててね。学校に通っているわけじゃあないってことです」

 

「はぁ?! じゃあアンタ達、毎日遊び暮らしてるっていうの?!」

 

「別に遊んばっかじゃないってことです。僕も一方通行(アクセラレータ)も研究所に所属してるからね、そっちの方の実験があるから、意外に忙しいよ? ‥‥まぁそれでも、遊んでるのは否定できないってことです」

 

「‥‥呆れた。いくら義務教育は卒業したっていっても、それじゃとても“学生”なんかじゃないじゃないの」

 

「余計なお世話ってことです」

 

 

 軽く溜息をついてみせる美琴に、カガリは唇の端を歪めて笑ってみせる。

 虚無的な瞳には、いつの間にか妹を見守る兄のような、ともすればお節介ながらも優しい光が宿っていた。

 

 

一方通行(アクセラレータ)はさ、学園都市第一位だ。顔写真こそ出回ってないけど、目立つ容姿をしているからね。色々と、いざこざに巻き込まれるのも多いってことです」

 

「?」

 

「そんな彼が、のんびり学生生活なんて出来ると思うかい? キミは運良く光の中で育つことが出来たけど、きっと彼は小さい頃から苦労しっぱなしだったってことです。

 気づいた時には、あんな歪んだ性格になっちゃったんじゃないかな。

 力を持つって、それだけで色々なリスクを負うってことです。大なり小なり、キミにも理解できないかい?」

 

「‥‥別に、ことさら非難したいわけじゃないわよ、そのぐらい、言われりゃ分かるわ、私だって」

 

「よくできましたってことです。キミはやっぱり、賢いね」

 

「―――ッ! 軽々しく女の子の頭触んなっ!!」

 

 

 まるで父親か兄が、娘か妹にやるように頭を撫でられる。

 自分に兄はいないけれど、もしいたらこんな感じだったのだろうか。触れた掌から髪の毛越しにも優しい気持ちが伝わってきて、思わず強くカガリの腕を跳ね除けてしまう。

 ‥‥振り払った腕は、大の大人のそれにしては、やけに軽かった。

 まるで、空気のように。

 

 

「やれやれ、お兄ちゃんは悲しいってことです」

 

「確信犯か! 感電死させられたいの?! この変態!」

 

「あっはっは、キミじゃ僕は殺せないと思うけどね。‥‥ところで最初の質問に戻るけど、どうしてこんな時間にこんなところにいるんだい? 常盤台中学の寮の門限は厳しいはずってことです」

 

 

 ビリビリビリビリと軽く体の表面に電気を纏わせて威嚇していた美琴は、カガリのその言葉にハッと当初の目的を思い出した。

 寮の門限破りは厳罰。そして同室の黒子に不在を誤魔化してもらうのも、それなり以上のリスクを伴う。

 見つかった場合は連帯責任というのと、成功したあとの自分の貞操的な意味でも。

 

 

「‥‥そうよ、そうだったわ、ずっとアンタを探してたの?」

 

「は?」

 

「ちょっとツラ貸しなさいよ。人が来なくて広いところ、行くわよ」

 

 

 だらしなく緩められたネクタイを美琴が掴み、締めあげる。脅しているかのような構図なのだが、美琴の方が遥かに身長で劣っているからか、迫力はない。

 その表情は勝気で、楽しそう。ともすれば悪戯っ子な彼女が彼氏に何かを要求しているような、あるいは妹が兄に何かを怒っているかのような、そんな微笑ましさがある。

 

 

「昨日の一件、一部始終見せて貰ったけどね」

 

「はぁ」

 

「悔しいけど皆目見当っつかなかったのよ、アンタの能力」

 

「へぇ」

 

「炎で人間吹っ飛ばして火傷一つさせないわ、炎に包まれても平然と呼吸してみせるわ、空間移動(テレポート)じみたことまでしてみせるわ、挙げ句の果てには電撃も効かないんですって? 初春さんから聞いたわよ」

 

 

 発火能力者(パイロキネシスト)の強盗犯が放った、高位能力者相当の炎。

 それを受けて火傷しないならまだしも、顔面を完全に覆われてしまえば呼吸ができないはずなのに、カガリは平然とお喋りしてみせた。

 それだけではない。強盗犯が逃げ出そうと背中を見せた瞬間には、反対側へと回り込んだアノ能力。順当に考えれば空間移動(テレポート)以外にはありえないが、この男は間違いなく発火能力者(パイロキネシスト)のはずである。

 まるで噂に聞く理論上のみ存在する多重能力者(デュアルスキル)。あるいはこの超能力者(レベル5)の第六位、発火能力者(パイロキネシスト)であると同時に、空間移動能力者(テレポーター)、そして念動力者(サイコキネシスト)でもあるんじゃないだろうか。

 そうでもないと、あの現象の理由が説明できないのだから。

 

 

「でね、いくら私でも傍目に見てるだけじゃ分からないって思ったのよね。やっぱり実際に相手してみて体で感じると分かることってあるじゃない?

 それに思えば、超能力者(レベル5)相手に戦ったことないのよね、私。経験のないことって、やっぱり早いうちに経験しとかないと後になってやっとけばよかったって後悔することもあるし‥‥」

 

「‥‥要するに、僕と腕試しがしたいってことかい?」

 

 

 かくん、と首を傾けて問うたカガリの言葉に、我が意を得たりとばかりに楽しそうな笑みを美琴は浮かべた。

 バトルマニア、と言われるのは心外だが、やはり超能力者(レベル5)までの道を着実に上り詰めて行き、達してしまった自分である。今更かもしれないが、自分の力を試したい、思う存分に力を振るいたいという思いは常に胸中を渦巻いている。

 何せ超能力者(レベル5)なのだ。天候さえ左右するこの力、燻らせておくのは非常に勿体無い。

 

 ‥‥よく格闘技などをある程度身に付けた人間が、自分の力を試したがるという事例が存在する。

 それは非常に不安定なもので、当然のように危険につながる。何せ事故や不確定な事柄というのはいつ何時でも起こりえるし、上には上がいるのだから。

 それに比べ、美琴の持つ衝動はどちらかといえばスポーツマンのそれに近かった。

 どこまでも正道に基づいた、彼女の思うとおりの言葉を使えば、腕試し。

 戦闘ではある。超能力者(レベル5)は一人で軍隊を相手に出来る能力を持っているのだ。当然、そこには死すら可能性として存在しているだろう。

 だが美琴は稀有にも、それら全てを了解した上でなお、スポーツにも似た清々しいスタンスで力比べを欲していた。

 闇に堕ちてしまった者たちにとって、それがどれほどまでに眩しいことだろう。カガリは昨日、

一方通行(アクセラレータ)が始終ごく僅かながらも居心地悪そうにしていた理由を今になって悟った。

 

 

「見かけによらず、随分と好戦的ってことです。まさか超能力者(レベル5)同士で戦って、今まで通りにいかないことぐらい分かってるよね?」

 

「もちろん知ってるわ。超能力者(レベル5)の序列が実力によるものじゃなくて、研究の有用性が影響しているってこともね。

 だから私が第三位でアンタが第六位だからって、油断する気は一切ないわ。それに、まだアンタの能力の正体も分かってないってのに、油断なんてするもんですか」

 

「‥‥ふむ、参ったね、どうやら退く気はないみたいってことです」

 

 

 困った顔をしてみせるカガリに、美琴はぶんぶんと縦に首を振る。

 元々、気になった相手に対してしつこいまでも干渉しようとする性格だ。基本的に場の雰囲気に流されがちなカガリでは彼女を振り切ることなど出来ないだろう。

 

 

「‥‥はぁ、僕もう眠いんだけどな?」

 

「少しぐらい我慢しなさいよ、大人でしょ? それとも目が覚めるぐらい強烈な電撃流してほしいのかしら」

 

「これだからバトルマニアは‥‥。仕方ないな、ちょっと行ったところに河川敷がある。そこで腕試し、やろうってことです」

 

 

 学園都市の能力者は、強能力者(レベル3)からエリートだ。

 大能力者(レベル4)で既に軍隊において戦略的な運用が出来るレベルなのだ。これが何を表すのかよく分からないかもしれないが、要するに戦闘機や戦車、あるいは戦艦などの兵器が持つ役割を、たった一人の人間が持っているということなのだ。

 

 戦車や戦闘機、戦艦同士のぶつかり合いに、公園程度の戦場では役者不足だ。

 ましてや超能力者(レベル5)は、単独で軍隊と戦うことが出来る。言うなれば、戦闘機を束にした一部隊、そしてそれをさらに束にした軍隊に相当するということである。

 公園どころか、草原でも十分かどうか。超能力者(レベル5)同士のぶつかり合いとは、則ち国同士の戦争なのだから。

 

 

「‥‥なんか視線を感じるわね」

 

「そりゃ名門で知られる常盤台中学のお嬢様が、こんな時間に堂々と繁華街を出歩いてたら注目もされるってことです、‥‥警備員(アンチスキル)に見つからなきゃいいんだけどな」

 

 

 家路を急ぐ学生達が疎らに通り過ぎていく。

 学生寮が乱立している地域とは真逆の方向へ歩く二人は確かに目立つ。常盤台中学の制服単品ならともかく、白衣の不審者と一緒にいると違和感MAXである。

 

 

「ほら、ついたよ。ここなら多少暴れても、加減さえしてれば問題はないだろうってことです」

 

「‥‥確かに、この時間なら人通りもなさそうね。思う存分やれそうだわ、楽しみね」

 

 

 暫く歩いて辿り着いた、河川敷。

 さすがに完全下校時刻を過ぎてしまったので、周りには人気がない。そもそも夜にこんなところに来る連中は大概がリア充であるから、容赦しないで戦うことが出来るだろう。

 

 

「私から仕掛けておいて何だけど、覚悟は出来てるわよね? そりゃ当然加減はするけど、うっかりってこともあるし、熱くなったら加減忘れちゃうかもしれないし」

 

「今更だね、最初にそう言って頼むのが普通じゃないかってことです。

 ‥‥まxその辺りを気にすることはないよ。自信過剰に聞こえるかもしれないけど、君じゃ僕に傷一つだって付けられないだろうってことです」

 

「‥‥へぇ、言ってくれるじゃない。上等だわ」

 

 

 ビリビリビリ、と美琴の全身から電撃が溢れ出る。

 弱能力者(レベル1)から着実に着実に強度(レベル)を上げていった彼女は、下地がしっかりと出来ている分だけ、大能力者(レベル4)とは出力が違う。

 溢れ出る電撃はすでに半径二メートル近い空間を完全に制圧しており、装備を調えていない人間では踏み入る事すら出来ないだろう。

 

 

「さっきは序列なんかで油断しないって言ったけど、分かってるわよね? それでも私が第三位でアンタは第六位なのよ?」

 

「もちろんしっかり理解してるってことです。僕の研究成果の殆どは君から生み出された研究成果と酷似している。そういう意味では君と僕とは似たような境遇に置かれているのかもしれないね‥‥」

 

「‥‥え?」

 

「まぁ君が普通に正道を歩いていくなら関係のない話ってことです。気にすることじゃない、君は光の中に居る方が似合っている。

 でもね、目的にもよるけど基本的に戦闘ってことになったら、僕は『絶対無敵』だよ。この看板は一方通行《アクセラレータ》が相手でも降ろしたことはないってことです」

 

 

 不穏な言葉に一瞬気を取られた美琴の目の前、約十メートル弱の間合いを取ったカガリが能力を解放する。

 美琴の電撃が鮮烈ならば、カガリの炎は豪快。足下から、全身から吹き出した劫火は彼の周囲数メートルの範囲を瞬く間に焼き尽くし、生えていた芝生を灰へと変えた。

 学園都市最強の発火能力者(パイロキネシスト)の称号は伊達じゃない。その火力は美琴と同様に、戦車や戦闘機に匹敵する。

 応用性が低いと言われる発火能力者(パイロキネシスト)だが、能力者の数は多いため理論として高いレベルで確立されており、なおかつ高位能力者になると火力は恐ろしい程に高い。

 拳大の火球が炸裂するだけで、大きなトラックや下手な小屋など吹き飛んでしまう。なにしろこの能力は他の能力者と違ってどこまでも、とことん攻撃的なのだ。

 そういった攻撃的な能力者たちの頂点に、目の前の男は立っている。電撃使い(エレクトロハンド)の頂点に立つ自分と同じように、発火能力者(パイロキネシスト)の頂点として。

 

 

「我が身の心配をしなきゃいけないのは私の方だって言いたいのかしら?」

 

「さぁ? それは是非、自分の身で確かめてみて欲しいってことです」

 

 

 上等!

 格下相手の小競り合いなんかより、負けるかもしれない勝負の方が全然楽しいに決まっている。

 自分はまだまだ頂点なんてつまらない場所にきてしまったわけではない、まだまだ乗り越えなきゃ

いけない壁は、乗り越えたい壁はたくさんある。そんな気分にさせてくれる腕試しは大好物だ。

 

 

「大きな口叩いたんだから、吠えヅラかかないでよねっ!」

 

「それは僕のセリフってことです!」

 

 

 瞬間、辺りに炎と電撃が振りまかれる。

 河川敷の全てを覆うかという破壊の奔流。これが本当にたった二人の人間から生み出されたものかと疑う学生は、学園都市にはいないだろう。

 

 もしこれを引き起こした者がどちらも、学園都市の何百万人の頂点に君臨する、超能力者(レベル5)なのだと知ったのならば。

 

  

 

 

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