あの名探偵が今度はデスゲームに挑む!

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あの名探偵が、今度はデスゲームに挑む!


デスゲームに巻き込まれたら、探偵がしゃしゃり出てきた。

「ど、どこなんだ!? ここは!?」

「なによ、これ!? なにかの撮影!?」

「なんだぁ、ドッキリか!?」

「私を誰だと思っている! 早くここから出せ!」

 

 目を覚ますと、そこは見知らぬ部屋だった。

 明らかに手入れをされていない、廃墟の一室に閉じ込められた四人の男女。

 各々、混乱しながらも、状況を把握しようとしていると、壁に掛けられたモニターに仮面をつけた人物が映し出された。

 

『くっくっく、お目覚めかね? 諸君』

「だ、誰だ!?」

『私の名前はデスゾー。今からキミたちには一つゲームをしてもらう』

 

 こちらをあざ笑いながら、要求だけ伝える仮面の人物・デスゾー。

 あぁ、なんと言うことだろう。どうやら自分たちはデスゲームを仕掛けられてしまったようだ。

 

『どれも命を賭けた、楽しいゲームだ。五人の内、最後まで生き残った一人だけが、ここから脱出できる』

 

「そ、そんな……!」

 

 青年の表情が絶望に染まる。

 

「ふざけんじゃねぇ! ここから出しやがれ‼」

 

 あきらかに乱暴そうな男が、怒鳴り声を上げる。

 

「金ならいくらでも払う! 命だけは助けてくれ!」

 

 会社の重役と思わしき中年が、命乞いをする。

 

「いや! 死にたくない‼」

 

 そして、唯一の女性が泣きながら命乞いをする。

 そんな、醜い人間の有様を観て、デスゾーは愉悦に浸る。

 

「ふざけやがって! ぶっ殺してやる!」

 

 血の気の多い大柄な男が、モニターを破壊しようとするも、デスゾーはそれすらも予想通りと言わんばかりに、あざ笑う。

 

『おっと、いいのか? 私に逆らって?』

「なに!?」

「どういうこと!?」

『キミたちの首には爆弾付きの首輪をプレゼントさせてもらった。少しでも私に反抗的な態度を取れば、あとは言わなくても分かるよねぇ?』

 

 そう言って、スイッチを見せつけるデスゾー。

 彼の言った通り、全員の首には無骨な首輪がつけられていた。

 

「そ、そんな馬鹿な‼」

『ならば、私の本気を見せてあげよう。ゲームマスターに逆らうと、どうなるかをね!』

 

 デスゾーは、首輪の爆破スイッチを取り出すと、まるでテレビのチャンネルを変えるような気安さで、スイッチを押した。

 

「や、やめろぉぉぉぉぉ‼」

 

 木霊する大男の絶叫。

 陰惨な光景に目を覆う者、腰を抜かす者、男を助けようと駆け寄る者。

 三者三様の反応を見せる中、大男の頭部は割れたスイカの様に四散する――

 

『……あれ?』

 

 ……はずだった。

 

「? な、なんともない?」

「え? 大丈夫なんですか?」

「あ、あぁ……」

 

 スイッチを押したにも関わらず、大男は無事であった。

 デスゾーは何度もスイッチを押すも反応なし。

 他のスイッチも押してみても、同じである。

 

『え? なにこれ? どうなってんの!?』

 

 困惑するデスゾー。そこへ、一人の少年が姿を現した。

 

『残念だが、首輪の爆弾は解除させてもらった!』

『!? だ、誰だ!?』

『俺か? 俺の名は江戸田一耕五郎(えどだいちこうごろう)! しがない高校生探偵さ』

『誰!?』

 

 突如現れた不審者に困惑するデスゾー。

 すると、腰を抜かしていた中年が、思い出したように叫んだ。

 

「江戸田一!? まさか、あの名探偵、名探偵太郎(なさがしていたろう)の孫!?」

「誰それ!?」

 

 知らないんだけど。そんな、ド直球極まりない名前の探偵。

 苗字も変わってるし。

 

『ば、バカな⁉ どうしてここが分かった!?』

『残念だが、防犯カメラと人数の確認するのを怠ったようだな。お前が席を立っている間、爆弾は解除。ゲームもすべてクリアさせてもらったぜ‼』

『なんだとぉぉぉぉぉ!?』

 

 まさかの展開に、当初の余裕はどこへやら。狼狽し始める。

 そう言えば、今さらだが、デスゾーは先ほど『キミたち五人に~』と言っていた。しかし、現在、この部屋の中にいるのは四人。

 つまり、最初から一人、足りなかったのだ。

 

「五人目って、アイツだったのか……」

『ば、バカな! どのゲームも最低一人死ななければ、ドアは開かないようになっているはず……‼』

『ならば、最初からお話しよう!』

 

 そうして始まる江戸田一の推理ショー。

 それは全員の予想を超えた、斜め上のものだった。

 

『まず、最初のゲーム!【死のロシアンルーレット】! テーブルに置かれた食事の中から一つ選び、食べる。その中にある毒入りの食べ物を食べたら即アウトのシンプルなゲームだ‼』

『そ、そうだ! あれは誰かが毒入りの食べ物を食べない限り、出口が開かない仕組みだった! しかも、完全にノーヒントだ! いったいどうやって!?』

『ふ、そんなの簡単だ』

 

 すると、江戸田一はデスゾーの疑問を鼻で笑い、いかに攻略したかを語り始めた。

 

『全部食べれば問題なし』

「いや、大ありだよ」

 

 毒入りだって言ってんじゃん。死ぬよ。

 

『ど、毒入りだぞ!? それで、なんで無事なんだよ!?』

『おいおい、俺は探偵だぞ? 捜査中にうっかり舐めたり、犯人が捜査を妨害するために、俺を毒殺しようとした場合のことを考えて、毒に対する抗体を会得するため、日々、身体を馴らしておいているのさ!』

「それ、探偵ちゃう! 暗殺者の発想!」

 

「おかげで青酸カリ程度なら、舐めても平気な身体になった!」と自慢げに語る江戸田一に、青年はツッコミを入れずにはいられない。

 しかし、江戸田一は構わず続ける。

 

『次に真下に高圧電流が流れるネットの上を、幅30㎝ほどの橋からはみ出ずに渡るゲーム『デスブリッジ』だが……』

『そ、それだって、様々な妨害トラップが備わった、難易度の高いゲームだ! どうやてクリアした』

『ふっ、知れたことを……』

 

 焦るデスゾーに、江戸田一はしたり顔で、ゲームの攻略法を明らかにする。

 

『わざわざ、橋を渡らなくても、空中歩行で渡れば問題ない!』

「渡れや」

 

 お前以外無理だよ、この攻略法。

 って言うか、空中歩けるの!?

 

『かのシャーロック・ホームズしかり、どこぞの少年探偵しかり、探偵は高所からの落下とは縁が深い。故に、空中から落とされても無事で済むように、バリツを応用した空中歩行を習得するよう義務付けられているんだ!』

「そんな義務ねぇだろ」

『あと、万が一落下しても大丈夫なように、様々な着地方法も習得している。俺が得意なのは衝突寸前に、手から氣を放って衝撃を緩和するやり方だ』

「それ探偵じゃねぇよ。格ゲーのラスボスの生還方法だよ」

 

「そう言えば、あのゲーム、新作出るらしいな」と思いつつも、青年は冷めたツッコミを入れる。

 

『だ、だが、最後の難関『人狼ゲーム』はどうやって、クリアした!? あれは一人じゃクリアできないんだぞ!?』

『ふっ、それも簡単だ』

 

 そう言って、江戸田一はドヤ顔で人狼ゲームをクリアした、驚きの方法を披露する。

 

「「「「「このように分身して人数を増やして、ゲームを行ったんだ」」」」」

「なに言ってんの、お前?」

 

 印を結び、五人に分身した江戸田一に向かって「キモッ!」と言いつつ、青年は思った。

 こいつ、探偵じゃねぇ。忍者だ。

 

『俺はこうやってゲームの参加条件を満たした』

『あとは生き残ったヤツが主人格として存在する権利を得るという条件で、ゲームスタート』

『ある意味、コイツが一番の難関だった』

『なにせ、対戦相手が、自分だもんな』

『流石は俺の分身だ。頭脳も行動パターンも互角、白熱した戦いになったぜ』

『『『『『ははははは』』』』』

「気持ち悪いんだけど」

 

 って言うか、お前がデス・ゲームのマスターみたいになってるよ。

 精神的に見ててしんどくなるような光景を見せられ、青年はツッコミを入れた。

 

『さぁ! 年貢の納め時だ! デスゾー! 大人しく神妙にしやがれ‼』

『くっくっく……これで勝ったと思えるとは、詰めが甘いな。名探偵』

『なにぃ!?』

 

 全てのゲームをクリアされ、追い詰められたデスゾーだが、彼は余裕の態度を崩さなかった。

 なぜなら、彼には奥の手が存在するのだから。

 

『私には味方がいるのだよ。裏社会の重鎮にして、デスゲームの視聴者という味方がね。彼らの手にかかれば、貴様程度の小僧、簡単に抹殺できる』

 

 そう言って、デスゾーは狂ったように笑い始めた。

 同時に青年たちは絶望する。

 自分たちを拉致した相手の強大さ。そして、悪意の底知れなさに。

 

「く、くそ……! 打つ手なしかよ……‼」

『さぁ、デスゲームの仕切り直しだ‼ 今度こそ、命を賭けた人間の本性を暴く、ゲームを始めよう‼』

 

 デスゾーは高笑いしながら、勝ち誇る。

 

 

 

 

 ……しかし、それはフラグでしかなかった。

 

『江戸田一! 無事か!?』

『ッ!?』

『銭持のおっさん‼』

「どちらさま!?」

 

 突如現れた、謎の中年。

 そう、彼こそは江戸田一の頼もしい味方、銭持警部である。

 

『遅くなってすまない! デスゲームのスポンサーたちを鎮圧するのに時間がかかった‼』

 

 そう言うと、モニターが二分割になり、おそらくデスゲームのスポンサーであろう、セレブ達が拘束された姿が映し出された。

 

『貴様ら! いったい、どこから現れた!?』

『なぜ、警察がここに!?』

『行方不明になった江戸田一を探していたら、とんでもないところを見つけてしまった! ど~しよ~?』

 

 最後にわざとらしく、煽りながら現状を伝える銭持。

『まぁ、見てしまったものは仕方ない! お前たち、殺人教唆の現行犯で逮捕だ!』と部下たちに命じて、闇のセレブ達の捕縛を開始。

 

『えぇい! SPたち! こいつらを始末しろ!』

『もみ消しはあとでいくらでもやってやる!』

『はっ!』

 

 そう言って、SPたちが銃を構える。しかし、それよりも早く、銭持の部下らはあの有名な龍の玉の主人公、もしくは格ゲーの代表者とも言える人物の必殺技のポーズを取り――

 

『撃て!』

『破ぁ‼』

『ぎゃあああああ!?』

 

 気功弾の一斉掃射でSPたちを返り討ちにした。

 

『えええええええええ!?』

『日本警察を舐めるな‼ 現在警察では、増加する凶悪犯罪に対抗するため、警察官の強化が促進されている。最近じゃ、テロリストの一部隊くらいなら巡査一人でこと足りる程度にはなったぞ‼』

『嘘だろ、おい!?』

 

 圧倒的戦闘力を前に全滅したSPたちを見て、闇セレブたちは恐れおののき、逃げ出そうとする。

 しかし、それすらも無駄であった。

 

『さすまた用意‼』

『了解!』

『討てぇぇぇぇぇ‼』

『ぎゃああああああああああああ!?』

 

 すると、今度は用意したさすまたを投擲し、拘束を開始。

 セレブたちは全員、さすまたで壁や天井、床などに縫い付けられ、拘束される。

 

『いや、さすまたの使い方!』

『これが、日本警察の底力だ‼』

「物理的すぎる」

 

 しかし、これで障害はなくなった。

 

『さぁ、年貢の納め時だ‼ バリツ奥義・顔面ニー・ドロップ‼』

『ぎゃあああああ‼』

 

 最早、身を護る手段を失くしたデスゾーの顔面に江戸田一の飛び膝蹴りが容赦なく襲い掛かる。

 デスゾーの仮面は粉々に砕け散り、そのまま壁に叩きつけられた。

 

『文字通り、ゲームオーバーだな』

 

 そう言ってデスゾーの襟首を掴み、引きずりながら、江戸田一はクールに去った。

 

『あ、警察はデスゲームのスポンサーたちの移送で忙しいから、迎えに来るまで、もう少し待っててくれ』

 

 画面の向こうの青年たちに向かって、それだけを言い残して。

 

「……」

 

 残された4人は、呆気に取られ、ただ江戸田一の後姿を見守るしかなかった。

 やがて、モニターの映像も消え、辺りは静寂に包まれる。

 すると、大男がポケットから何かを取り出し、差し出した。

 

「……迎えに来るまで暇だし、トランプでもするか?」

「「「……賛成」」」

 

 

 




【CAST】
・みんな大好き主人公 江戸田一 耕五郎

・日本警察の秘密兵器 銭持警部

・本当なら主人公 普通の青年

・スリーサイズは82/62/83 唯一の女性

・本当は心優しい好青年 柄の悪そうな大男

・実は闇セレブの経営する会社の役員。 明日から無職だぞ! 中年の人

・全治4か月 デスゾー

・よくワインを転がしている 闇セレブのみなさん

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