あの素晴らしい世界に帰るため   作:桃玉

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前回はめぐみんとの出会いだったので、今回はダクネスとの出会いをと。


2.最硬の聖騎士~誰かを守りたい~

俺とめぐみんは魔力を使い切りながらもなんとか生還し、ギルドの受付カウンターにいるお姉さんの所へクエスト達成の報告をしに来た。

ひどく体力と魔力を消耗した体は怠く、ズル……ズル……と体を引きずるように動かす俺らを見た冒険者たちはギョッとしたように目をそらす。

そしてカウンターに着き、受付のお姉さんと目があう。

 

「お姉さん、クエスト達成の確認をお願いします」

「は、はい、わかりました……わかったのですが、えっと、その……何があったかお聞きしても?」

「……聞かないで……ください」

 

冒険者カードを渡して報酬の確認をお願いする俺だったが、ギルドのお姉さんはそんな俺たちが醸し出すやさぐれた雰囲気を感じ取ったらしい。

そう、俺たちは闘ったんだ。

闘いは熾烈を極め、生き残るために自分が穢れた身になることを厭わず、耐え難い屈辱をも受け入れ……本当に壮絶な闘いだった。

何があったかなんてこんな場所で言えないくらい俺たちの両手は穢れてしまった。

そのせいでお姉さんの純粋な心配の視線を直視できずに目をそらす。

 

「い、一応冒険者カードからジャイアントトードの討伐を確認しましたが……その、5体でよかったんですよ? あまり無茶な冒険は控えていただきたいのですが……」

「別に私たちだってそんなに討伐する予定じゃなかったのですよ……。それが……それがぁぁあぁぁ……っ!!」

「落ち着けめぐみん! ここには俺たちを脅かすアイツはいない! 気をしっかり待つんだ!」

「うぐあぁぁあっ! 右目が……疼く……っ!」

「お姉さん! 傷を抉るようなこと言わないであげてください!」

「は、はぁ……」

 

過去の出来事を想起させられ、傷を抉られたような痛みで蹲るめぐみん。

普通の生活をしていれば起こり得ない、あんな大群にジワジワと痛ぶるかのように距離を詰められるという過酷な体験があったんだ。

経験があるせいで俺は何とか正気でいられているが、俺も最初はこうだった。

ふとした時にフラッシュバックして狂気に陥り、涙が溢れ出るのも仕方がないことなんだ。

俺はジャイアントトードの粘液がネッチョリ付着した漆黒のテラテラローブを撫で付け、気が動転している少女を宥める。

 

「えっと、それではジャイアントトードを3日以内に5匹討伐。クエストの完了を確認致しました。その、ご苦労様です……それでは依頼達成報酬の10万エリスとカエル2匹の買取を合わせて……あれ? 2匹ですか? 冒険者カードには60近い数が記載されているのに……」

「……それも、できれば聞かないで……ほしい、です……はい」

「は、はぁ。では、ええっと……合計して11万エリスですね。その、ご苦労様です?」

 

俺たちを飲み込もうとする蠕動運動がなくなり、自力でジャイアントトードの口から出れるようになったとき、俺の目に飛び込んできたのは魔法で焼いた残骸。

俺の記憶だと30体ほどこんがりジューシーに調理したはずなのだが、現実に広がるのはまる焦げの炭に成り果てた肉、爆散した肉片……

原形を止めてはいる肉塊は、俺たちを取り込んで一体化しようとしてた残虐無慈悲なカエル――俺たちは何もしていないのに脳天に小さな風穴を開けられ死を遂げたソレの成れの果てだけだった。

 

仕方なかったと言えば仕方なかった。

あんな生命の危機を感じてるときに火力調節なんてできるはずもない。

この世界では魔力を込める技に魔力を過剰に込めることで威力が上昇する。

ただでさえかなりの火力を誇る俺の魔法、一撃一撃に余計な力みが生じてオーバーキルして……結果、魔力が枯渇してしまった。

 

前回の反省を顧みて、そうならないように立ち回ろうとはしていたんだ。

だがしかし、めぐみんか俺かの魔法で呼び覚ましたジャイアントトードは1体や2体ではない。

その数およそ10体。

俺が魔法をドンと撃つたびにその数はどんどん増えていく。

最終的に四方八方から囲まれ、逃げ道が消え失せ、魔力切れでぼやける視界。

今思えば魔法を弱く使っていたなら敵の増援を助長するような事態にはならなかったのかもしれない。

今度から魔力がなくても戦えるように小刀でも買って冒険に出ようか。

一先ず報酬受け取って、その後風呂入って、それで武器屋に行こうなんて思っているとお姉さんが。

 

「で、ではカズマさん、めぐみんさん、冒険者カードをお返しします……。カズマさんのレベルは10を超えていますので、その、スキルを覚えてみては? そうすれば冒険も楽になると思うので……」

「……ありがとうございます。俺、スキル、覚えます」

「私も……いや、私は…………」

「無理するなめぐみん……今すぐ冒険に行ったりするわけでもないんだ」

「しかしカズマだけにそのような負担を……」

「大丈夫、大丈夫だ。いきなり無理に変わる必要はないんだ。ゆっくりでもいい、俺は強くなる。だからめぐみんもすぐ決断しなくていい、時間ならたくさんある」

「カズマ……ありがとうございます」

「今の俺たちには休養が必要なんだ。まずは風呂にでも入ってリフレッシュしよう」

 

新たなスキルを取得しようとしているのか、何か葛藤して苛まれている声が俺の耳に届くが、何も今すぐにじゃなくていいんだ。

ギルドを後にして疲弊した心身を癒やそうと、公衆浴場へ向かおうとした。

そのとき、一つの声がかかる。

 

「すまない、ちょっといいだろうか……?」

「はい、なんでしょう……か…………」

 

俺は声の主の方を見て絶句した。

何故ならそこにいたのはとびきり秀麗な見た目をした女騎士。

身長は俺より少し高い、金髪碧眼の鉄仮面が頑丈そうなフルアーマーに身を包んで立っていた。

無愛想な様子な年上美人にビクビクしながら目を合わせようとすると、俺が張り出した見覚えのある紙を見せつけて。

 

「突然声をかけてすまない。この募集は貴方のパーティーのものだろう? もしよければ私も加入したいと思い声をかけたのだが……」

「あー、そうだったんですね。い、一応まだパーティーは募集してますよ。と言ってもまだまだ駆け出しで失敗続きなのでオススメはしないですけど……それでもいいのなら……」

「ああ、むしろ望むところだ。ぜ、ぜぜぜ是非私をぱっぱぱぱパーティーに入れてはくれないだろうか!」

「……はい?」

 

俺はこの人が言ってることをイマイチ理解できずに、数度まばたきをして、精一杯の言葉をひねり出した。

いやだってこの女騎士さん、俺のヌメヌメしてる手を躊躇なく掴み取って息を荒げ頬を紅潮させながらそんなこと言ってくるんだもの。

思わず疑問に思い、俺はドギマギした心を落ち着かせ平静を装いながら。

 

「ど、どうして俺の募集に? 貴女みたいな頑丈そうな騎士様ならもっと相応しいパーティーがある気がするんですが……」

「いいや、今二人を見て確信した。ここのパーティーこそが私に最も相応しいと!」

「近い! 顔が近いです! ええっとそう思った理由を聞いても……?」

「そうだな、きっかけとでも言えばいいのだろうか。……最初は、強固な私ならば最弱職だろうとなんだろうと、前に出て扱き使わされて役立てると思ったからだ。私は鉄壁の防御力を誇る上位職、クルセイダーを生業としてる。誰かを守ることで役立ちたいと思っていたのだ」

「そんな崇高な志を……。って今扱き使わされるって言ったか?」

「言ってない。……そして今。私より若そうな少年と年端もいかない少女……つまり貴方方が粘液でめちゃくちゃになってる二人を見て、私は貴方方二人のパーティーに運命を感じたのだ」

「ほう。運命……ですか。奇遇ですね、実は私も貴女を見て運命を感じざるを得なかったのですよ。金属をジャイアントトードは嫌う……貴女が守護する鉄壁の盾となるならば、我らは鋭刃の矛となり、来たる敵の悉くを貫いてみせましょう!」

 

さっきまで意識がはっきりしないほどショック状態だったはずのめぐみんが、いきなり顔を上げたかと思うと意気揚々とそんなことを言い出す。

一体どうしちまったんだ……なんて最初の方は思っていたがめぐみんの説明を聞くにつれ、どうしてめぐみんが活力を取り戻したのかが理解できてきた。

俺が2度も敗北を喫している永遠の宿敵、ジャイアントトードの弱点を全身に纏い、それで俺たちを守りながら戦ってくれる崇高な精神を持ち合わせた騎士。

つまり、俺たちはこの人をパーティーに入れることで弱点、そしてトラウマを克服し、死角なしの最強パーティーになり得るってことだ。

俺の幸運値は伊達ではないらしい、なんて思っていると不安そうな声色で女騎士が。

 

「それで、私をパーティーに入れてはもらえないだろうか?」

「もちろん! めぐみんの言うとおり前衛職の盾役がほしかったしな、断る理由なんかない。な、めぐみん」

「ええ、そうですとも! 我らがパーティーに歓迎しようではないか!」

「ありがとう……。では改めて自己紹介だ。名はダクネス。職業はクルセイダーだ。一応両手剣を使ってはいるが、不器用でな。メインの戦力としては期待しないでほしい。代わりに壁役となるのは大得意だ。よろしく頼む」

 

こうして、俺のパーティーは最強の攻撃魔法を操るアークウィザードのめぐみん、鉄壁の防御で俺たちを守ってくれるクルセイダーのダクネスが加入した。

まあ、心の傷が癒えるまではカエルを相手取りにいくなんてことはしないと思うが、それでもきちんとした前衛職が入ってくれたことは俺たちにとっては大きな進歩と言えるだろう。

なんせ、俺とめぐみんは肉弾戦みたいな方はからっきしだからだ。

ダクネスの実力はどれほどのものか見てみないとわからないが、ダクネスが時間を稼いで、その間に俺たちが魔法の詠唱に専念できれば安定した戦闘をすることができるだろう。

 

これで明日からのクエストはなんとかなるだろうと思いつつ、ひとっ風呂浴びにギルドを出ようとすると、受付のお姉さんが。

 

「カズマさんー! ちょっとまってくださいー!」

「何ですか? もしかして新たな冒険者パーティーの結成を祝してプレゼントでも?」

「いえ、違うんですが……その、これを」

 

照れちゃって、やっぱり何か俺たちに渡したいものがあるんじゃないか。

俺はちょっぴりサプライズなイベントに目を細めようとして……

 

お姉さんから差し出されたモップを見て、何とも言えない気分になった。




この後床に垂れた粘液掃除した。

ちなみに、現在のカズマはめぐみんとダクネスがポンコツだって気づいてません。
ちょっと言動におかしな部分がある二人だってくらいにしか思ってません。

爆裂魔法しか使えない爆裂狂、敵前突撃しかしないドMだってことを知るのはいつのことになるのやら。
……そこら辺は原作と大体同じなので飛ばす予定でございます。
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