あの素晴らしい世界に帰るため   作:桃玉

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最近、歌詞からタイトルを決めて、それから話を書くのにはまっている筆者。


2巻 デストロイヤー
3.心の拠所~お家に帰りたい~


ベルディアを討伐してから1週間くらいたった。

あれ以来、大きな事件もなく俺とめぐみんとダクネスのパーティーで毎日日銭を稼ぐために冒険を続けている。

強いて言うなら、めぐみんが不幸を招くマジックアイテム「魔王の血(デーモンブラッド)」の見た目の禍々しさに惚れ込み、執着して、タンスの角に小指をぶつけたことが事件だったが、本当にそんなもん。

 

「……いや、何で俺たちこんな生活してんだよ!」

「どうしたカズマ、いきなり声を荒らげて。鬱憤が溜まっているのなら私にぶつけてくれてもいいんだぞ? むしろお願いします」

「黙ってろド変態」

「ど……へん、たい……! いいぞ、その調子だ!」

「こいつ無敵か!? じゃなくて、どうして魔王軍幹部を討伐したパーティーなのに貧乏な生活送ってるのかだよ! ……ううっ、どうしてこんなことに」

 

そう、俺たちはベルディアを倒した。

そんな大物を討伐したんだ、討伐報酬も莫大なはずだろ。

なのに未だに日銭を稼ぐとかいう言葉が出てくる俺らには金がない。

 

「ほれは私が爆裂魔法を廃城に撃ち込んはへいですへ」

「食い終わってから喋れよロリっ子」

「ゴクン。私は悪くないのです、あの城を再利用する予定だったのは先日決まったばかりのことで。悪いのは急遽そんなことを言い出したアレ臭いとか言う貴族です」

「ちょっとくらい悪びれろよ。いや、建築物に爆裂魔法撃ってもいいって言った俺も人のこと言えないけどさ」

 

そう、ベルディアの懸賞金は俺たちではなく貴族に渡った。

討伐後にギルドで賞金をもらおうとしたんだが、貴族様の使者が報酬の代わりに感謝状をよこしやがったんだ。

街の治安のためにもベルディアの懸賞金を使わせてくれてありがとうございますってな。

 

「何でこんなことになったんだよ! 全額寄付ってか!」

「落ち着いてくださいよカズマ。元々あの作戦を立案したのは仮面の人で、私たちはそれに乗っかっただけですし。私たちパーティーの名声が高まったので良しとしようではありませんか」

「そんなこと言ったって! あの金があれば俺は夢のマイホームが買えたんだ! これを惜しまず悲しまずいられるか!」

「まあまああの仮面の男が報酬を受け取りに来なかったおかげで借金はなしですんだのだ。それに、報奨金を譲ったのは……」

「はい、カズマです。……ああああ! 何でこんな目に!」

 

本当なら断りたかった。

俺の好きなことの一つは、自分が有利だと思っているやつにノーと断ってやることだし、断ってやろうと思ったんだが……

いや、本当にしょうがなかったんだ。

 

「なんて崇高なパーティーなんだ! 男は鬼畜なのに!」とか

「流石、街の英雄は考えが違うぜ! ドン引きする悪魔っぷりだったが」とか

「よ! 鬼畜のカズマ! 俺にも金恵んでくれよ! 有効活用するぜいてて!?」

「アンタはギャンブルに注ぎ込むだけでしょうが!」とか

 

冒険者のみんなが尊敬の念を送ってくるもんだから、俺はそっちの方に行ったんだ。

決して鬼畜だの何だのと言ってるヤツらに対して殴りかかったわけじゃない。

だがそんなことがあったせいで俺は断る機会を逃してしまったのだ。

俺が袖を濡らしているとめぐみんが。

 

「悲しんだり怒ったり、騒がしい人ですね。しかしパーティーの拠点ですか」

「いや、俺のマイホームだけど」

「私もそろそろ宿での生活とはおさらばしたいところだったので丁度よかったのです。さもなくばアクシズ教のお世話になるところでした」

「何でお世話になるって? 悪名高きアクシズ教の紅魔族所属するパーティーとか嫌なんだが」

重大な資金不足(家庭の事情)があるのですよ」

 

よくわからないがめぐみんも大変なんだな。

毎日爆裂爆裂言って悩みなさそうなのに。

深く踏み込むとプライバシーの侵害とやらになりそうな予感がしたからこれ以上は聞くまいと思っているとダクネスが。

 

「ではアクシズ教紅魔族の誕生を阻止するためにも拠点は必須だな。私としても拠点があれば都合がいいな」

「いや、だから俺のマイホームだってば」

「あればより充実した冒険ができそうだし賛成だ。最近お見合いお見合いと五月蠅くてな。避難場所にぴったりそうだ」

「お見合い? ダクネスはもしかしていい家柄だったりするのか?」

「そそそ、そんなことより私のお小遣いで買える程度であれば捻出させてもらうがどうだろうか!」

 

お小遣いで家を買うって……一体いくら出す気だよ。

慌てた様子でそんなことを言ってくるダクネスはどこかのお嬢様なのだろうか。

案外頭ショッキングピンクな変態も事情やら悩みがあるもんなのかもしれない。

 

「てか話を進めるな! 俺の家だって! 何勝手に俺と一緒に住み込もうとしてるんだよ! もしかしてアレなのか、魔王軍幹部討伐という快挙を成し遂げたカズマさんに恋したってか? モテる男はつらいz」

「違いますが」「いや違うが?」

「……二人同時に全否定することはないだろ。泣くぞ」

「ほ、本当に泣きそうな顔しないでください! 私はカズマのこと好きですよ? 冒険仲間として」

「私はカズマの中身が好きだぞ? 鬼畜という意味で」

「本当に泣くぞ。有言実行の鬼と言われたカズマさんは泣くっていったら泣くからな!」

 

泣いた。

 

 

 

 

「私たちもからかいすぎましたが、いい加減泣き止んでくださいよ」

「そうだぞ、これから不動産屋の話を聞きに行くのだ。今度私の愛読書を貸すから泣き止んでくれないか? きっと気に入るぞ」

「泣いてねぇし。慰められると余計惨めになるからやめてくれ。あとその愛読書ってのは卑猥な香りするから遠慮しておくわ」

「ひ、卑猥じゃない!」

 

二人にからかわれてちょっとだけ気分が落ち込んでるだけの俺は、不動産屋の前に着く。

何か手頃でいい物件はないかと相談に来たんだが。

「いやぁ、アクセルの街は平和ですからねぇ。他の都市と比較してどこもかしこも土地の値段は張りますよ。貴族の別荘が多いのもそういうわけです」だってさ。

どうしたもんだかなぁ……と思っていると、一つ、格安の物件が。

 

「あれ、これだけ桁間違えたのか?」

「ああ、それは私は管理している屋敷で……お客さん、これは違うんですよ。実はこのお屋敷……出るんですよ」

「で、出るって……まさか」

「……はい。一応どこの家でもゴーストは沸くんですがね、今回は異常でして。プリーストに除霊はしてもらっているのですが、呪いでもかかっているのか祓っても祓っても湧いて出てくるみたいなんですよ。何でも、元の住人である貴族様は原因不明の病で倒れなくなったとか。いわくつき、というやつです」

「な、なるほど」

「そういう訳なので、これから高名な魔法使いに除霊を頼もうとしていたのです。それまでは売りにも出せませんよ。……はぁ、持ってるだけで税金がかかるのでさっさと売るか手放すかしたいんですがね」

「はあ、大変そうですね。じゃあ他の物件を……」

 

この世界ではゴーストが出るくらいは日常茶飯事らしい。

呪われた屋敷……俺はこんなところに住みたくないな。

別のところにしよう……そう思っていたら。

 

「ここにしましょう!」

「そうだな、ここにしよう」

「……お二人は何をおっしゃっておいでで?」

「いいですかカズマ無料ですよ! 私たちで幽霊など木っ端みじんにしてやりましょう! それに呪われた屋敷! 何と興奮する響き! ここ以外に私たちに相応しいかっこいい物件があろうか、否ない!」

「あるわ!」

「いいかカズマ。毎日幽霊が私の四肢を不意に触り、それで……それで私はどうなってしまうのだろうか!」

「呪い殺されるんじゃね?」

 

幽霊をアトラクションか何かだと勘違いしてるこいつらはもう駄目だ、早くなんとかしないと。

そう思っていた時期がありました。

 

「ただまー」

「おかえりなさーい。今日はサンマの塩焼きですよ。ダクネスに大根をすらせたので少し辛いかもしれません」

「お、おいめぐみん! それは私が大根の一つも上手くすれないといいたいのか!?」

 

どうしてこんな幽霊屋敷に住むことになってしまったのだろう。




拠点はカズマたちがアクセルに留まるために必須。
というか活動の中心を王都とかにするとどんどん正規のルートから外れていくのでリセット対象。
それに気づいた仮面の人の胃が荒れた。
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