あの素晴らしい世界に帰るため   作:桃玉

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3.残酷な明日~変えて行け~

終わった……今回は誰もいなくならずに済んだんだ。

活気を取り戻す街の様子を見て、俺は思わず涙を堪える。

 

だがこれは2年近くの冒険のうちの1ヶ月。

俺の冒険はこれからだ!

サトウカズマの次回作にご期待ください……

 

じゃなくて!

これからもっと大変なことに巻き込まれるんだ、しっかりしろ俺!

 

 

 

 

というわけでしっかりした俺、めっちゃ頑張ったんです。

アイツらが無茶して死にそうになるたびに裏からサポートしてやって。

なのにアイツラときたら……

 

ぬぁにが「カズマの幸運値さまさまだな」「そう思うんならもっと俺を甘やかしてもいいんだぞ?」だ!

この世界の俺、よく調子に乗りすぎて死地へ突っ走りやがって、俺がン狙撃ッとかで補助しないと後ろからざっくりだったぞ!

俺を甘やかせ!

……嘘です、正体ばれると消滅するんでやめといてください。

 

まあ、あの三人を見張ったりしながら誘導してたわけなんだが……

良いニュースと解決した悪いニュースと未解決の悪いニュースがあります。

聞いてくれませんかありがとうございます!

 

 

まずは良いニュースから。

この世界の俺、冬将軍に殺されなかった件。

借金がないおかげで急いで資金を集める必要もなく、冬場の危険過ぎるクエストは受けずにすんだ。

その代わり、一撃熊の討伐クエストは受けて、ダクネスが熊と取っ組み合ってる間にチートと爆裂魔法の準備をして、割と安定して倒すことができてた。

強いて言えばダクネスが熊と白熱した相撲をして、爆裂魔法の巻き添えになりそうだったくらいだ。

異世界で体験した1回目の死はめでたくも回避できたって訳だ。

以上、良いニュース。

 

 

そしたら解決した悪いニュースだ。

というかここ最近の俺の胃がキリキリする理由だったんだが、アイツらゾンビメーカーの討伐クエスト受けなかったんだ。

だから魔道具店の高名な貧乏アークウィザードのウィズと出会わず、ドレインタッチ(必殺スキル)の習得も、意図せずマッチポンプ的に手に入れることになったあの屋敷もない。

 

つまり何が言いたいかって、アクアがいなくなったせいでサキュバスイベント(終わらない男の夢)がなくなっちまったんだ!!

……これは由々しき事態だった。

あの素晴らしいサービスの味を知らずにアクセルの街から離れるなんてこと、男として見過ごすわけにはいかないッ!!

 

……いや、ふざけてないです!

マジで由々しき事態なんですって!

家も無ければこの街の魅力的なサービスも無い、加えてステータスを確認したら既にレベル20くらいあったんだ。

つまり、現状この世界の俺がアクセルの街に執着する理由はないってことで。

他の街に拠点でもおいてみろ、アクセルで起きることに関わらなくなって、俺が知っている魔王討伐の筋道通りにならなくなってリセットだわ!

 

まあ、この件については、さっき言った通り滅茶苦茶頑張って何とかしたんだ。

その時の会話をダイジェストでどうぞ。

 

――共同墓地にて

「ゾンビメーカーと聞いていたが、まさかリッチーとは」

「ほ、ほえー!? 何で私の正体バレちゃってるんですか!? プルプル、み、見逃してください、私、悪いリッチーじゃないです……よ?」

「なるほど、守銭奴な僧侶に代わって霊を成仏させてたのか。見逃す代わりに、これからは俺がここを引き受けるからゾンビを生み出すのはこれっきりにしてくれ」

「な、なんてものわかりのよすぎる方なのでしょう!?」

 

――アクシズ教会にて

「入信ですか? それとも入信ですか?」

「入信書押しつけるな! ……エリス教徒に一発ギャフンと言わせる方法があるんだが、どうだ」

「やります! あ、でも面倒くさいのは嫌ですよ?」

「簡単な方法があるんだ」

「kwsk」

「まず、共同墓地の浄化作業を買って出るんだ。守銭奴プリーストよりアクシズ教の方に評判が来る」

「でも毎週やらないと駄目でしょ? 浄化作業とか面倒いし、このお話はなかったことに……」

「そういうと思ってた。が、秘策があると言ったら?」

「聞くだけ聞きますが」

「墓地に霊を寄せ付けないように結界を張るんだ。そうすれば墓地の除霊は必要なくなるだろ?」

「やります! というか今からやってきます! これでにっくきエリス教徒をいびれるしアクシズ教徒をもっと増やせるわ! そしてゆくゆくはアクセル支部の支部長の座を……!」

 

てなわけで共同墓地の幽霊があの屋敷へと溜まり、幽霊屋敷になったんだ。

そして三人は無事屋敷をゲットできたってわけだ。

 

えっ?

マッチポンプ?

知らない言葉ですね……

 

(ついでに言っておくと、あの三人とウィズは知り合いじゃなかったが、一緒に屋敷を浄化する流れになり、近所の共同墓地からゾンビが出現したことでリッチーばれした。ドレインタッチを覚える日も近いだろう。)

 

 

そして未解決の悪いニュース。

デストロイヤーが来たときに最悪ダクネスがデストロイヤーに轢き殺されるって話。

どういうことかって?

いや、流石にこの世界の俺が仲間を見捨てるなんて事しないとは思うが、デストロイヤーと対峙しようなんて思わないはずで。

 

つまり、その場に残ると頑固なダクネスを担いで逃げるために、鎧をスティールしようとして、内側からじわじわと剥ぎ取ることになり、鎧の中が裸になって……

喜んでるダクネスに「喜んでる場合かっ!」って突っ込んでる間に轢かれる。

ね?

ありえそうでしょ?

 

じゃあどうやってこれを回避しようかって思ったときに、俺は誰にも頼れないし、しょうがないから一人でなんとかするっきゃないって思ったんですわ。

それに、アクセルの街にデストロイヤーが来るってわかってるんなら、街の外にいる住人たちの被害とかを抑えるためにも街から離れた場所で処理した方がいいだろうし。

それにアイツ、最後に大爆発するし、リスクは減らすに越したことはないと思って。

だから俺はこの悪いニュースを解決するために……

 

 

 

 

「はぁ……ついに始まっちまったか」

 

俺は迫ってくるデストロイヤーを千里眼スキルで確認してそう呟く。

……確かに俺は今日という日のために俺は準備を怠らなかった。

それでも今まで練ってきた作戦が確実かどうかと言われると、何とも言えないため息が出る。

 

近づけば踏み殺される。

なら遠距離で応戦すればいいと思うだろうが……

魔法は結界で無効化する。

物理でも魔法金属製のボティーにダメージを負わせられない。

……つくづくあの駄女神のありがたさが身にしみる。

 

「あいつがいれば結界破って、爆裂魔法叩き込めるんだけどなぁ」

 

アクアがいないせいで結界破りができない。

魔力障壁のせいで爆裂魔法で足を壊せない。

 

「まったく、こんな状況でデストロイヤーの蹂躙を止めろだなんて、無茶ぶりにもほどがあるだろ……。こんなことになってんだから、アクアもアイデンティティーだの何だのとケチケチ言わないで魔法スキル教えてくれればいいのに」

 

今更嘆いても仕方ないのはわかってるが、それでも愚痴が零れる。

失敗したらアクセルの街が滅びる。

滅びれば冒険者のレベルは上がらなくなる。

レベルが上がらないと稼げない。

稼げないとサキュバスサービスが利用できなくなる。

そこに待ち受けているのは絶望。

そりゃ愚痴を漏らしたくもなりますわ。

 

「はぁ……。しょうがねーなぁ! やってやらぁ!」

 

あんだけ愚痴ってても策は立てたんだ。

やれるだけやってやる!

人間死ぬ気でやれば大体なんだってできるって誰かが言ってた気がするしな!

 

 

『デストロイヤー警報! デストロイヤー警報! 機動要塞デストロイヤーが、現在この街へ接近中です! 冒険者の皆様は、装備を調えて冒険者ギルドへ! そして、街の住人の皆様は、直ちに避難してくださーいっ!!』

 

街ではそんな警報が鳴り響いてるのかもしれない。

だが俺がいるのは街の外、そんな警報は聞こえない。

いや、普通ならけたたましい警報音はここまで聞こえてくるだろうが、俺の耳はそんな警報が鳴っているのかどうかすらわからなかった。

何故なら……

 

目の前には激しい振動を起こして地面をナらすデストロイヤーが迫っていたから。

俺はそんなデストロイヤーの襲来を目の前にして弓を構える。

 

 

「『ティンダー』……からのン『狙撃』ッッ!!」

 

……別に自棄になって自殺しようとしてるわけじゃない。

こいつには火をつけた弓矢程度の物理攻撃でかすり傷一つすら与えられないのはわかってる。

俺が狙ったのは……

 

自作ダイナマイトを埋め込んだ場所だ。

魔法攻撃が効かなくても近代兵器ならある程度効くだろ?

お前の厄介な機動力、ここで潰させてもらうぜ!

……なんてかっこつけてみたんだが。

 

 

「げぇっ!? コイツまだ動くのか!?」

 

俺の有り金溶かして作った全部を受けて結構なダメージを受けた脚だったが、それでもスピードは落ちない。

ここで止まってくればよかったのに空気が読めない機械め!

 

本当はここで終わらせたかったんだが、念のため練っておいた第2の作戦を実行に移すしかなさそうだ。

嫌な顔をしながらも苦いマジックポーションを飲みほし、俺は魔法を唱えた。

 

 

「『テレポート』ッ!」

 

俺が転移した先はデストロイヤーの斜め上。

先日、アクセルの街の少し外れに設定していた場所を変更して、『クリエイト・アース』で作った足場を転移先にしたんだ。

もちろん今はもうデストロイヤーが起こす振動で崩れて跡形もないが、それでも空中のその位置に転移した。

 

デストロイヤーの移動スピードが速いおかげで地面に落下しきる前にデストロイヤー自らが俺を迎えに来てくれた。

動きが完璧にわかって、準備できてたからこそできるスタイリッシュな乗り方だ。

……床にうまく着地できなかったり、慣性の法則で壁に激突されたり、そういうことがあったかどうかは黙秘する。

 

 

「……っし。『潜伏』」

 

無事、デストロイヤーの中に乗り込めた俺は迷わずに潜伏スキルを発動。

機動要塞の中には中を守護するゴーレムがウヨウヨしてるから、それ対策にだ。

あんな数のゴーレム相手にしてられっかってんだ。

 

そう思ってコソコソ行こうとしてたんだが、魔道技術大国ノイズの名は伊達じゃないらしい。

ゴーレムたちが俺の潜伏スキルを無効化してきやがったんですが。

 

 

『侵入者発見。侵入者発見。直チニ敵ヲ排除シマス』

「と、『逃走』ッッ!! くそっ潜伏無効化するとか聞いてないぞ! そんでわんさか来やがった! 『スティール』『スティール』『スティール』ッ! ……ッヒ、『ヒール』ッッ!!」

 

俺は逃げつつも機械系モンスターにとって即死攻撃となるスティールを連発した。

一応言っておくが、俺は同じ轍を二度と踏まないことで定評があるカズマさんだ。

前回、スティールでゲットした大きな部品に手を潰された経験があったが、その経験を無駄にはしない。

今回は手を下向きに調整して発動させることで大きな部品をゲットしてもそのまま下に落とせるようにしてる。

……そのせいで足の指にガンってなったなんてことはない。

 

 

「『スティール』『スティール』『スティール』ッ! マジでこいつらきりがないな! 一体ずつ倒してたら先に俺がやられちまう!」

 

潜伏スキルが通用しないのは想定外だ……

この状況を切り抜けるために何かいい方法はないのか!?

 

水とかどうだろう。

電気で動いてるならワンチャン漏電し……いや、電気で動いてるとしてもさすがに防水加工されてるか。

いや、でも水か……それなら!

 

 

「『クリエイト・ウォーター』! からの『フリーズ』! そんで『ウインドブレス』!」

 

俺はポーションを飲み干し、魔法で氷を張り、強風を吹かせた。

いくら重心がしっかりしてるからって「氷の上で強風に煽られる」なんて状況想定して設計されてないだろ。

俺の目論見通り、俺を追いかけてくるゴーレムたちの先頭がバランスを崩して転んだ。

一体が転ぶと次から次へと後続のゴーレムが倒れていく。

倒れたゴーレムに別のゴーレムが引っかかり倒れを繰り返す様は玉突き事故のようだった。

しかし転んだゴーレムもタフで、すぐさま立ち上がろうとしてくるが、そこに……

 

 

「『バインド』ッ!」

 

魔力を強めに込めた数本の縄が網のようにゴーレムたちに纏わり付き、立ち上がろうとする動きを邪魔する。

なんならゴーレムたちが氷の上で引っ張り合うことで互いの動きを邪魔し合ってうまく立てないようだった。

 

 

「やりぃ! このままコロナタイトの部屋に着くまで仲良くしててくれよ?」

 

そう言葉を出して、しばらく探索すると俺の目の前に見覚えのある扉が。

……なんとか一人でここまで来れたな。

自分で自分を褒めて褒めて甘やかしたい気分だが、まだもう一仕事待っている。

 

コロナタイト。

 

こいつをどうにかすればエネルギー供給が止まって、デストロイヤーの機能が停止するはずだ。

つまり魔力障壁も、動く足も、熱を排出する機構も止まる。

そうすると内部に熱が溜まって大爆発するらしいが、その前にウィズとめぐみんが爆裂魔法を撃ち込めば街への被害は回避できる。

 

だからこれが俺の最後の仕事って訳だ。

……前は考えなしな俺がコロナタイトをスティールで取り出して、手が大やけどして、それからウィズのランダムテレポートして、極悪幸運値なアクアがいたせいで領主の屋敷を爆破して借金が12億増えた。

いや、本当は手で触れなくてもテレポートはできるんだが、問題はランダムテレポートすれば今度はどこに飛んでいくかわからないってことだ。

俺が設定してるの転移場所はどこもコロナタイトを放るには不適だ。

ならどこか設定して来いよって話だが、流石にアイツラから長期的に目を離すなんてできなかったし、テレポート地点登録するための旅なんてする暇はなかったんだ。

 

……いや、素直に認めよう。

第1の作戦が成功するって思ってたんで、あとは街の冒険者任せにする予定だったんだ。

ああそうだ。

俺に第2の作戦なんてない!

念のため空中にテレポート地点を設定しておいたが、それ以外は即興で考えたんだよ!

本当はどっかに緊急停止装置とかないかなって思ってたんだが、この馬科学者のおっさんの日本語日記に『ブレーキが壊れててどうしようもなかったんだ! って作戦でいこう。うん、そうすりゃ死刑回避余裕っしょ!』とか……

 

なめんなッ!!

そりゃ、異世界人は日本語読めないだろうが、書き残すな!

 

そんなこと思いながらも俺はテレポートの詠唱を始める。

……俺は幸運値が高いことに定評があるんだ。

きっとテレポートしても一が密集してる場所に落ちるなんて悪いことにはなんないはずだ。

自分に言い聞かせて、少し不安に思いながら魔法を発動させた。

 

 

「『テレポート』」

 

これで残酷な明日は訪れず、平和な日々に変わっただろ……

 

 

 

 

「って感じなんですけど、どう思いますエリス様」




このすば第2巻、アニメ1期後半時期のできごと。(カズマのコメント)
※6、8、11番目に問題点あり。

1.ブルーアリゲーターの討伐でアクアが泣いた。(アクアいないし関係ねぇ……けど2.別の依頼請け出すから監視は必要だな)
2.駄女神を賭けてミロロギが勝負をふっかけてきた。(アクアがいないと関わらないし放置)
3.ベルディアを討伐し、借金返済生活が始まった。(無事倒せたし、借金はない! 最高!)
4.借金のせいで冬を越せないため雪精討伐クエストを受けて、冬将軍に首ちょんぱされた。(借金がないし首ちょんぱされない! やったぜ!)
5.ダストとパーティー交換して、アクアたちが泣いて帰ってきた。(アクアがいないだけで変わらないだろ……放置で)
6.千里眼とドレインタッチを覚える。(キースに千里眼は教えてもらえるだろうけど、ウィズとの関わりが未だないからな……大丈夫か?)
7.キールダンジョンでキールを浄化。(アクアいないとキールは目覚めないからパス)
8.幽霊屋敷を拠点にした。(アクアがいないから屋敷を浄化するヤツがいない……そもそもマッチポンプもしてないし……あれ? もしかして拠点入手困難でヤバい?)
9.サキュバスサービスを利用開始。(超大事! アクアいないが邪魔させないように動く!)
10.ウィズがヴァンパイアがドンパチ。(吸血鬼はウィズが倒すだろ。一応監視しとこ)
11.デストロイヤーが到来(結界破りができない、ウィズと知り合ってない、どうする!?)
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