あの素晴らしい世界に帰るため   作:桃玉

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4.勇気が掴む未来~未来はきっと~

「って感じなんですけど、どう思いますエリス様」

「えっと……カズマさん?」

「いや待ってください! 俺は悪くないんだ! そもそも死んでないし、どうしてまたやり直しになってるのか理解不能なんだが! 原因の説明を求む!!」

「まだ何も言ってないんですけれど!?」

 

エリス様の「……いくら何でもやり直しすぎでは?」って表情を見てすぐさま抗議の声を上げる。

未だかつてないほど頑張ってより良い方向に進めようとしてんのに、どうしてまたこんなことに!?

本当になんだこの仕打ちは!

何でリセットされたか説明を求む!

そう思って騒いでいるとエリス様が。

 

「その、私が言いたかったのは、半年もしないうちに4回もやり直してますけど、アクア先輩がいないせいで難易度が極端に跳ね上がっているので気落ちしないでもいいって事で……」

「いやでも何ですかその顔! 眉間にシワ寄せた何とも言えない表情してるじゃないですか!」

「い、いえ、これはそういう事ではなくて……!」

「いや、みなまで言わなくてもいいです。わかってます、わかってますから」

「カズマさんは何一つわかってないと思います! それに私だって……」

「私だって……? なんだ?」

 

「まーた死にやがって……こっちの仕事をどんどん増やしやがって、殺すぞテメェ」みたいなヤクザ化エリス様が顕現するもんかと思っていたがいつまで経ってもそんな雰囲気はない。

そこから察するに「気落ちしないでもいい」って話は本当なんだろう。

だが、エリス様の意味深な最後の台詞は何なんだ?

俺のことを直視できず、顔を俯かせているエリス様が。

 

「……私だってわかんないんです」

「俺の気持ちがわかんないってことですか? ならもっと親密な関係を築いて……」

「違います、めぐみんさんとダクネスに言いつけますよ! 本当にそういうことじゃ……ありませんから」

「…………冗談ですって。だから二人にだけは何とぞ」

 

俺の渾身のボケがバッサリ一刀両断されてしまった。

思わずエリス様を見ると、さっきまで俯いていた顔が上がっており、真剣な眼差しが俺を捉えていた。

思わず背筋が伸びて。

 

「……じゃあ何がわかってないんですか」

「その、カズマさんがこの場所に来た原因です。私は、カズマさんがどうしてリセットされたか、調べてみてもわかりませんでした」

「……はい? ……大事なことなのでもう一度言うぞ……はい??」

 

俺の思考がしばらく止まった。

……いや、本当にどういうことだ?

今までは誰かが死んだってことでやり直すことが多かったが、それをエリス様はしっかり調べて教えてくれた。

だが今回は調べてもわからなかったという。

どうしてなんて考えているとエリス様が申し訳なさそうな様子で視線を外して。

 

「すみません……お役に立てなくて」

「いやいや、謝るほどじゃないが……一体どういうことだ? エリス様が天界から見れなかってことか?」

「はい……私が調べられるのは過去と現在でして。えっと、この機械を、こんな感じでいじると……ほら見てください、指定された地点の様子が見れるんです」

「…………スマホじゃねーか」

「む、これでも立派な神器ですよ? 『まるで将棋みたいだな』と迷言を残していた転生者さんが持って行った物を回収して再利用してるくらいには便利なんですから」

「やっぱりスマホじゃねーか」

「……それでこれで調べた結果、何もわからなかったのですが、そうするともしかしたら未来で何か取り返しのつかない事態が起きたのではと」

 

あれだ、つまりその神器は指定した場所を動画にして見せてくれるって訳だ。

加えて過去と今その瞬間は見れても、未来とか思考まで見透かすバニルみたいにはできないってことか。

バニルもアクアとかウィズみたいな同格の存在は見通せないって言ってたし、能力に制限はつきものってことか。

 

だが、エリス様の言うとおり未来に原因があるとして、どうして俺はリセットになったんだ?

コロナタイトをテレポートした瞬間、気づけば俺はここにいたって感じなんだが……

そうなるとやっぱりテレポートが原因か?

 

「エリス様エリス様」

「エリス様です」

「思ったんだが未来がおかしなくなったとして、そのおかしくなるきっかけってのはテレポートが原因くさいだろ? コロナタイトをテレポートした瞬間にこうなったんだし」

「そうですね。私もそう思います」

「じゃあ転移が失敗して王都とかそう言う場所に落としちゃったとか……」

「その、私もその可能性を考えてカズマさんがここにくる直前の様子を見たのですが、コロナタイトは遙か上空に放り出されてて。人的被害も生態系の破壊も特になかったようです」

 

つまり俺が誰かを殺しかけてたとか、そういうことじゃないってことだ。

……えっ、じゃあ何が原因なんだよ!

俺が前にウィズにランダムテレポートしてもらったときも死者ゼロだったろ!

この後めぐみんにデストロイヤーの機体を爆裂してもらえば「めぐみんがデストロイヤーにとどめを刺した」っていう同じ状況が作れるはずなのに、本当にどうして!?

 

原因が予想できない限り俺がもう一度あの場所からやり直してもどうせもう一回やり直すことが確定してるようなもんだ。

思わずため息が出そうな状況だったが、エリス様が何か閃いたのか「あっ」と声を漏らす。

 

「どうしたんですか、もしかして何かわかりましたか!?」

「あっ、えっと、いや……」

「何ですかもったいぶって……はっきりしてください! 俺のこれからの運命が決まるんですよ!」

「そ、そう言われると余計プレッシャーなんだけど!? ……その、これから結構酷なことを言うかもしれないのですが、怒らないで聞いてくれますか?」

 

確かに俺は変なこと言う仲間には、突っ込みという名の攻撃を加えるかもしれない。

だが、王道ヒロイン清楚担当であらせられるエリス様が変なことを言うなんてあり得ない、そうに決まってる!

エリス様のビクビクと俺を見る視線で俺の心はボロボロだぁ!

そんな吐血しそうな俺は気力を振り絞って。

 

「俺はあくまで激しい突っ込みに定評があるだけだ! アクアとかはわざわざ突っ込み待ちしてるから本気で突っ込んであげてるだけで、誰にでもするわけじゃないですから!」

「そ、そうですか? そう言うのであれば言いますよ……? …………あのですね、その、カズマさんってこの戦いの後借金を背負ってましたよね?」

「……ソウダナ。ウィズノテレポートデソウナッタナ」

「もう一回背負っていただきたいのですが……」

 

俺のツッコミメーターがぐーんと上昇した。

いや、だってなんでわざわざ借金を作る必要があるんだよ!

 

「あのひもじい生活が必要なのか? できれば体験しないほうが精神衛生上いいと思うんだが」

「えっと、あっちの世界のカズマさんには申し訳ないのですが、必要なのかな、と。というのも今回カズマさんがやった方法では被害がなかったじゃないですか」

「まあ、けっこう頑張ったしな。……えっ? もしかしてこの頑張りが駄目だったのか!?」

「いや、もちろんそれは良いことなんですけどね? ですが、魔王を討伐して幸運値が私に迫る勢いのカズマさんがテレポートしたせいで本来の位置とは別の場所に転移してしまって……その幸運のせいで家の物が差し押さえられなくなったのが原因じゃないかと」

「何言ってんだこいつ」

「えっ!? 今なんておっしゃいました!? ……もしかして怒ってません?」

「ないです。続きを」

「は、はあ……」

 

ぐーん。

俺のツッコミメータが半分くらいまでたまった。

というか思わず突っ込んでしまった……

いやだってしょうがないだろ、家の物が差し押さえられなくなったのが原因って何だ!

ふざけてんのか!?

……いや、だが落ち着け俺。

エリス様が言いたいことが的外れなわけない。

いくら俺のつらい過去を掘り返され、その経験をもう一度味わえなんて言われたって……

 

「って幸運値が高いことが徒となるってことなんてあるか!! もう一回つらさを味わえとかふざけてんのか!?」

「そんなことは……ってやっぱり怒ってま……!?」

「ません!」

「そ、そうですか……?」

 

ぐーん。

俺のツッコミメータがあと1カウントでマックスまで上がりそうなんだが。

まあ待て俺、落ち着けジェントルマン。

今の状態は「押すなよ? 押すなよ? 絶対押すなよ!?」だ。

「押せよ!」って言わせてから勢いよく押すべきだろう。

俺は仏の顔と同じ3回までだ。

 

「も、もちろん通常ならそのような経験を再びしなくてもいいのですが……ほら、カズマさんが辿ってきた歴史を繰り返さなかったせいで未来でものすごいズレが生じて、それでリセットされたのかと」

「まあ、理解はできた。納得はできないけどな」

 

つまり俺がアルダープのおっさんの屋敷をぶっ壊して、それで借金と国家転覆罪の容疑をかけられればワンチャンリセット回避できるかもってことだ。

……最終的に借金から逃れられないという俺の扱いのひどさにげんなりしてきたわ。

 

「まあでも、頑張ってみますよ。過去の自分に裁判とか借金させることに必死になってるとか意味不明すぎるが」

「あ、あはは……まあ国家転覆の容疑とか、裁判で死刑判決とか、納得できないところはあるかもしれませんが、頑張って、その……デストロイヤーの魔力結界を破壊してみてくださいね?」

 

……デストロイヤーの結界を破壊?

無茶ぶりが過ぎる言葉に俺のツッコミメーターが天井に達した。

 

「……よぉし、俺は女にドロップキックを食らわせることができる男女平等主義者だ。言い残すことはあるか?」

「ちょ、ちょっと待ってください!? 怒らないって言ったじゃないですか!?」

「ぅるさあぁあいっ!! 結界破壊なんて無理ゲーだろ! 本当は俺の突っ込み待ってたんだろそうだろ!」

「いや違うんです! カズマさんのダイナマイトで倒せないならやはり結界を破るしか方法が……」

「つまり何か? 俺は借金背負わないといけない運命で、死刑にならないとどっかで詰みになるからリセットになって、それを回避するにはデストロイヤーの結界破りが必要ってか?」

「そう、そうなんです!」

「よしわかった!! ならお前のその幻想をぶち壊すッ!!」

「そう言って右手を突き出してスティールの構えしないでください!? ごめんなさいごめんなさい! 正史の通りに動いてもらえれば原因がわからなくても何とかなるんじゃないかって浅はかな考えでした! もうちょっと考えてみるのでそれだけは許してください! あのスースーする感じはもういやなんです!」

「問答無用!! 男女平等スティールッ!!」

 

 

 

次の瞬間俺は天界にはいなかった。

どうやらエリス様のことをからかいすぎたらしい。

だが解決案はエリス様が授けてくれた。

この世界の俺に借金返済の苦しみを味わわせたくなかったが仕方ない。

どうにかしてウィズにテレポートさせることで借金を作ってやろう。

 

後悔の文字はない。

 

勇気を振り絞って掴んだ未来はきっと輝いてるに決まってる。

俺の掌に覚える感触が、期待に満ちあふれているって言っているんだ。

 

一先ずは何をすべきかと問われたら。

俺は御神体を奉る社を用意しようと思った。

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