……んなもん、とっくに。
今回のお話は「魔王の血」「不死の王」「中二の病」の三本です。
ベルディアを討伐してから数日後のこと。
「ない! ない! 私の
「紅魔族が欲するというのならもの凄い力を秘めたアイテムなのだろう? 私は魔道具については疎いが、それであれではないか? 王都を騒がせている義賊の犯行とか」
「くっ……義賊ごときが私の物に手を出すとは生かしてはおけませんね!」
寝起きの俺がギルドに顔を出すとそんなやりとりをしていた五月蠅い二人。
テーブルの上に大きく広げた地図には、あちらこちらを探し回ったのか、赤バツが。
どうやら捜し物に難航しているらしい。
「ふぁぁ……なんだよ朝から騒々しい、静かにせよ」
「ふ、不覚にも悪の墳墓の支配者みたいでかっこいいと思ってしまいましたが着崩れた服で紅魔族ポイントはマイナスです! あともうお昼です!」
「俺の一日は今始まる。一日の始まりといえば朝だ。オーケー?」
「私たちはもう4時間ほど探し回った後なんです!」
どんだけ探し回ってるんだよ。
いや、今はまだ11時だぞ?
7時とか早起き過ぎるだろ。
「……そんなに早くから探して見つからないのか? 俺も手伝うか?」
「ええよろしくお願いします! 我が手から抜け出した
「何だよそのデーモン何ってのは。死ぬほど不吉な名前だな……」
「流石は我が同胞カズマ、周囲を不幸にするという不吉極まりないアイテムの存在を認識しているとは」
なんでそんなアイテム取り戻したがってんだよ。
呪いの装備みたいに着脱不可じゃないなら捨てとけ捨てとけ。
そう思っていると「えっ!?」とダクネスが顔を上げて。
「聞いてないぞ!? 見た目だけ言ってそんなアイテムを私に探させてたのか!? そのような危険のものは見つけ次第私に渡せ! 街中に放置しておけば治安が悪くなりかねないし、私がしっかり有効活用するから……」
「今有効活用するって言ったか?」
「言ってない」
「いや言っただろ! んなもん捨てとけよ」
「他人の不幸を一心に背負い込むのがクルセイダーの役目だ、ここで引き下がることはできない!」
「いや゛です! あの禍々しい赤黒いフォルムは私の物なのです! ダクネスにだって譲れない物なんです!」
ラッキーボーイな俺は不運に焦がれている二人についていけず、その場から離脱した。
そんなことがあった数ヶ月後。
俺たちの念願叶ってマイホーム。
いや、譲ってもらう予定だって言った方が正しいのか?
不動産屋で幽霊屋敷の除霊をしてくれたら貴方方に住んでもらってもと言われ、かつては名を馳せていたという魔道具店のおっとり店主ウィズさんと一緒に除霊をすることに。
幽霊を滅ぼすこともできる爆裂魔法だが、んなもん使ったら屋敷が駄目になるってことで「私は、いらない子、じゃない……」と連呼してるめぐみん。
一応クルセイダーなダクネスは新聞紙を丸めた筒を持参して「ようやく私も攻撃役として役立てるかもしれないな」とにっこりしている。
が、攻撃が当たらないことはともかく、ゴキ特攻の武器で幽霊退治をしようとしてるダクネスはきっと箱入り娘なんだと思う。
役に立たなそうな二人を見て呆れているとウィズさんが。
「では皆さん、聖水は持ちましたか?」
「おう! というかターンアンデッド覚えてきたぜ!」
「ぼ、冒険者の方だって聞いてましたが、何というか、用意周到ですね……」
「俺、スキルポイントだけは有り余ってるんで」キラン
「えぇ……」
ウィズさんの困惑顔。
俺、またなんかやっちゃいました?
なんて鈍感系主人公には俺はならない。
「それじゃ俺がちゃちゃっと除霊するんで! 『ターンアンデッド』っ!」
「ううっ、ピリピリしますぅ……」
「あれ? どうしたんですかウィズさん? というか顔色が悪いような……」
「き、きっと気のせいです」
そっか気のせいか……と流される俺ではない。
気遣いができる紳士はそんな女性を見て働かせるような真似はしないのだ。
「ウィズさんはここで休んでてください。俺が屋敷の中に入ってちゃちゃっとゴーストを滅してきますから」
「あ、ありがとうございます?」
そんな感じで始まった屋敷のゴースト退治。
残念なことにいつまでたってもゴーストが尽きることはなかった。
つまり俺は……
「もう、身動き一つできましぇん」
「……おんぶほしいですか?」
「お願いしまーす」
「躊躇いないですね……」
幽霊に襲われていたところに聖水を投げつけてもらって、めぐみんに背負われていた。
いや、何かこれ超恥ずかしい!
最初はおんぶされるくらい何でもないと思ってたのにロリっ子と立場逆転とか……!
しかもそんな姿を外で待ってもらっていたウィズに見られてしまった。
なんたる屈辱! 殺すなら殺せーっ!
「あ、お帰りなさい! 屋敷の中の幽霊はどうでしたか?」
「……一応結構討伐してきましたけど、次から次に出てきて」
「お屋敷の中に何か怪しいものとかはありませんでしたか?」
「見た限りは」
「なるほど……そうすると、もしかすると原因はどこか外にあるのかもしれません。近くにある共同墓地から変な気配がしますし……私、そこ見てきますね。カズマさんは、その、お疲れでしょうし私に任せてください!」
なんか気を遣われてしまった。
気がつけば現在は18時。
体調がよろしそうな店主さんが小走りで行ってしまった。
この後のこと。
俺の魔力も回復してきたんで、めぐみんとダクネスを連れて墓地に向かったんだが……
「もー、バニルさんの仮面を被った人にお任せしたのに、どうしてこんな迷惑なことを……。でも週に一度はお店の商品を買って帰るお得意様ですし、紅魔の里の職人さんを紹介してくれる素晴らしい人格者さんに限って……。まさかこの人がエリス教で、その評判を落とすためのアクシズ教の犯行でしょうか……世の中恐ろしいものですねぇ」
そんなことをぼやいていたウィズさんの周りにはうじゃうじゃとゾンビが。
俺は思わず剣を抜くが、いつまでも襲いかかってくる気配がない腐肉。
そのことが原因で彼女の正体がノーライフキングのリッチーであることが判明したのは別のお話。
さて、そんなこんなあったが屋敷が手に入った。
マイホームの予定だったんだが、なんか勝手に冒険者仲間二名が拠点であると言い張り、俺の家に侵入してきたが、まんざらでもない俺。
今まで宿暮らしだったため毎日5000エリスくらい取られていたが、この家はただで手に入ったし、税金も免除!
浮いた金は例のサービスに使おう!
……なんて思っていたそのときだった。
『デストロイヤー警報! デストロイヤー警報! 機動要塞デストロイヤーが、現在この街へ接近中です! 冒険者の皆様は、装備を調えて冒険者ギルドへ! そして、街の住人の皆様は、直ちに避難してくださーいっ!!』
すべてをぶち壊すアナウンスが聞こえてきた。
「なあ一体何だってんだ!? デストロイヤーって!?」
「もうジタバタしても始まりません。全てを蹂躙する機動要塞が迫っているのですよ」
「な、なら戦うべきだろ! 前に言ってただろ、この街が滅びるとどうなるかって……オイ、耳を塞いで聞くまいとするな!」
「……仕方のないことなんです。あのワシャワシャ動く子供に妙に人気のあるアイツを退けようとする試みは今までもありましたが、全てが失敗に終わり滅ぼされています。例外はアクシズ教徒と魔王城以外ありません」
何それ怖い!?
でもだからって小さな鞄一つ横に置いて、お茶をすすりながら達観すんな!
確かに俺だけこの状況を正確にわかってないのかもしれないが、さすがに諦めが早すぎやしないか!?
念願の家を手に入れたばっかりなのに捨てようとする判断が早い!
……鱗滝さんは俺をビンタしないでください!
そんなことを思っているとリビングのドアが開き、ダクネスが。
「遅くなった! 早くギルドへ行くぞ!」
「な! ダクネスは何を言ってるのですか!? 常識枠ぶるのであればここはカズマのことを私と一緒に止めるべきですよ!?」
「……すまないな。街の住人を見捨てて逃げることは私にはできない」
「ダクネス良いこと言った! 今お前は良いこと言った! めぐみんもコイツを見習え! 長く過ごしたこの屋敷に愛着はないのか!」
「……過ごしたのまだ半日程じゃないですか」
俺はめぐみんの突っ込みを聞き流し、嫌がるめぐみんをダクネスと一緒に冒険者ギルドに引きずるのであった。
「お集まりの皆さん! 本日はお集まりいただきありがとうございます! 只今より対機動要塞討伐の緊急会議を執り行います! 皆さんがこの街の最後の砦なんです! よろしくお願いします!」
ギルドに入ると受付のお姉さんがそんな声を上げていた。
見知った男性冒険者が多い中、会議は進む。
デストロイヤーは元々は魔王軍対抗用の兵器として魔道技術大国ノイズが作成した超巨体ゴーレム。
魔法金属が使われており、その固さはさることながら、馬をも超える速度で移動。
8本脚に踏みつけられれば大型モンスターでさえ挽肉にされるので近距離からの攻撃は難しい。
魔法攻撃は強力な魔力結界のせいで意味をなさない。
物理攻撃では攻城用の投石器が一番有用かと思われますが、機動要塞の速度からして運用が難しい。
上空からの攻撃も搭乗している中型ゴーレムの小型バリスタが撃ち落とす。
回避方法は確立されてなく、通り過ぎるのを待ち、街を再建するしか方法がない天災。
だそうだ。
……うん、ムリゲー。
冒険者がどんどん案を出していくが、その全てがデストロイヤーに対して行って失敗してきた過去の出来事。
巨大バリケードですら踏み潰される。
巨大な落とし穴に嵌めてもジャンプで脱出する。
ドラゴンナイトの攻撃はバリスタで反撃。
魔法は効かない、近接戦は無理、空からは撃ち落とされる、その他の奇策も通用しない。
誰の声も聞こえなくなる。
俺も何か案はないものかと必死に脳みそを回転させるが、小手先の何かでどうこうできる相手じゃない。
強力な結界を破れたらうちのアークウィザードがなんとかしてくれるんだけどな……
案が出尽くした冒険者ギルドは日中にも関わらず暗かった。
だがそんな暗いギルドに一筋の希望が木霊した。
「俺に案がある」
そんなことを言い出したのは誰なのか。
今まで下を見ていた俺を含めた冒険者たちは声の主を探して、見覚えのある仮面を見つけた。
「あ、アンタは魔王の幹部ベルディア討伐に貢献した!」
「そうだ、散々水攻めしてた鬼畜仮面さんだ!」
「あ、あれが噂になっていた魔王の幹部を倒すのに一役買ったという鬼畜仮面……!」
ミララギが最後になんか言ってたが、いたのはあの仮面の男だ。
その手には近代兵器のような何かを握りしめており、仮面越しではあるが、なんとなく前より痩せているような気がした。
だがそんなことを気にかけてる余裕はない。
俺は早速その案とやらを聞くために口を開いた。
「それで、その案って何だ? その手に持ってる武器が何か関与してんのか?」
「カズマ、なんかあの棒、どこかで見たことがあるような気がするのですが……ああ、思い出しました! 私の近所にいる服屋の店主が物干し竿として使ってい」
「これは魔法が効かないという特性を持つ紅魔族の天敵『魔術殺し』に対抗可能な兵器、通称レールガンだ。魔法を圧縮して結界を貫通させ得る威力を発揮できるだろう」
「えっ!? 紅魔族である私ですら知らない情報がつらつらと出てく」
「「「おおーーっっ!!」」」
めぐみんが何か言っていたがそれに被さる大きな期待。
これなら勝てるかもしれない。
やたら詳しい説明がなんか怪しいが、俺も思わず声を上げようと思ったそのときだった。
「しかし、これだけでは結界を破壊し、貫通するだけだ。動き続けるだろう。動力部分に直撃すれば極めて甚大な被害が出ることは確実だ」
その言葉を聞いて冒険者たちが項垂れる。
普通の魔法じゃほとんど効かないことだろうことがわかっているからだ。
だが、俺は違った。
普通の魔法なら効かない。
そう、普通の魔法なら、だ。
「なあ、めぐみんさんめぐみんさん」
「な、何ですか急にキラキラした目で私を見て? 急に敬語は気持ち悪いのでやめていただきたいのですが……」
「いや、爆裂魔法で、いっちょデストロイヤーをぶっ壊してほしいなーなんて」
「む、無茶言わないでください! あんなに固くて、黒くて、大きいんですよ! さすがの私でも片側の脚を破壊することしか……」
「そうか、なら大丈夫だな!」
「何が大丈夫なんですか!」
「だって俺、爆裂魔法よりは火力ないけど、上級魔法以上の魔法連発できるぞ?」
「ほ、本当ですか!?」
「うおっ!?」
近い!
ギルドのお姉さん当たってます!
何がとは言わないですがプリンがふよんって感じの感覚です!
「え、ええまあ……この魔法のおかげで今やレベル20ですし」
「レベル20!? この短期間でですか!? しかも15レベルになったらこの街から離れる人が多いのに何でそんな人が!?」
「おねーさん、私も爆裂魔法を放てる凄腕魔法使いなのですがその件について話し」
「期待してます!」
トゥンク!
俺の心に火がついた音がした。
「よし! そういう訳だ。俺とめぐみんで機動要塞の脚を破壊する。万が一脚を破壊し尽くせなかった時を考えてハンマーか何かで攻撃の準備をできればいいな。そんでその後はデストロイヤーの中に入って、中にいる研究者を引きずり下ろす! そのためにアーチャーは弓とロープの準備を!」
作戦を立案して俺はデストロイヤーの方に駆け出した。
理不尽な未来を書き換えるための覚悟はできてるぜ!