あの素晴らしい世界に帰るため   作:桃玉

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後書きに補足(前々話でカズマが強制リセットになった理由)を書きました。

※後書きにはアニメ3期のラストのネタバレであろうことが含まれてます。読まなくても物語の進行に支障はないです。知らなくてもいい方、ネタバレしたくない方は後書きはスキップしてください。


4.素晴らしい仲間~全力で今を~

街の前には冒険者たちだけではなく、街の住人も集まって即席のバリケードをくみ上げている。

爆裂魔法などの戦闘の余波を押さえるためだろう。

……つまりこの街に住まうものは誰一人として諦めてなどいなかった。

 

さっきまで誰もが死んだような顔をしていたのにも関わらず、あの仮面の男の言葉を信じて全力で今を動いている。

まったく、アクセルの街は逞しいな。

 

あんな名前も知らない男の言葉は妙に説得力があり、誰も素顔も名前も素性も何もかもが謎に包まれているアイツの言うことを信じて……

いや、ベルディアの討伐に多大な貢献をしたという事実が信用するに足りたということだろうか。

 

何にせよ、アクセルの者たちが懸命に動けているのはあの男のおかげに違いない。

私は貴族の端くれとして、この街を代表して感謝の言葉を述べねばなるまい。

デストロイヤーが真っ先に向かってくる先頭に独りで居る男に私は近づこうとして。

 

「……何だ、偵察にでも来たのか?」

「すまない、邪魔したか?」

「いや、準備は昨日のうちに終わってるし大丈夫だ」

「き、昨日? もしかして前回あったときより少しやつれているのは……」

「……レールガンに膨大な魔力を毎日コツコツ注ぎ込んでたせいだ。マジで疲れたわ……爆裂魔法4発分以上はあったぞ」

「それはそれは……ってあれ? デストロイヤー警報が発令されたのはつい先ほどのことだぞ? どうしてこの街に機動要塞が来ることを知っていたかのような……」

「そんなことより、お前、悪いこと言わないから下がってろよ。この後お前には馬車馬のように働いてもらうんだからな」

「馬車……馬……! 流石鬼畜仮面と呼ばれた男……期待以上だ!」

「……いつも通りぶれないな」

 

仮面の男がどこか懐かしげな様子で私の言動に引いていたが、本当に鬼畜仮面の名に恥じない男だ。

しかし、私はそんなことをしにここに来たわけではない。

赤く熱くなった顔をパタパタと扇いで冷ましてから、私は表情を引き締めて。

 

「本当に、ありがとう」

「……俺の罵倒にありがとうとか、コイツ真性のヘンタイだ!」

「ち、ちがー! 確かに先ほどの罵倒はいいものだったが違うんだ! わ、私が言いたかったのは……その、私含めて、この街の者が諦めずに戦うことができているのは貴方のおかげで、それについて感謝を述べただけで……」

 

男の言葉にとっさに否定を入れる。

もちろん多少その意味も入っていたかもしれないが、街を救う手立てがあることに関しての感謝だと言葉を続けようとして。

仮面の男のにやりとした顔を見て私の眉間に皺が寄った。

 

「……まさかとは思うが私をからかったのか?」

「いや、さっきの会話の流れは誰だってそう思うだろ」

「そ、そうか、いやすまない、てっきり私のことを弄んでたのかと……」

「まあ俺はそういう意味だってわかってたけどな」

「こ、このー!」

「まあまあ、落ち着けよララティーナ。ノブレス・オブリージュだか貴族の義務だかは知らないが、あんま肩肘張り過ぎんなよ」

 

私は思わずビクリと反応する。

なぜこの男は私の正体を知っているのか。私はこの男について何も知らないというのに……

仲間にすらバレていないのに、そのことを知ってる男を不気味に思っていると。

 

「一応言っておくが、金髪碧眼なお嬢様が、どうして貴族だってバレないと思ってるんだよ。絶対お前の仲間もお前のことどっかの箱入りお嬢くらいには思ってるからな?」

「ええーっ!? そ、そうなのか!?」

「たりめーだろ」

「な、ならばあえて聞くが、貴族の令嬢にそのような言動をするのは無礼なのではないか?」

「俺は貴族のお嬢様に告られて、それをフった男だ。今更肩書きでビビるような人生は送ってねぇよ。それに身分差関係ないパーティーとか、最高だろ?」

 

なんだその話は!?

社交界では私の耳にそのような話は一切入ってこなかったぞ!?

……もしやこの男、嘘をついているのでないだろうか。

いやしかし、この堂々たる物言い、実体験だと考え……平民の男に振られたのがよほど恥ずかしくてもみ消した令嬢でもいたのだろうか。

 

それはそれとして、身分差が関係ないパーティー、か。

私が貴族の娘だと聞いてパーティーの空気が悪くなったり、解散になったりしないかを考えると怖くてたまらないが、もし……

もし、あの二人とそんな関係を構築できるのなら、それはいいなぁ。

友人に恵まれて、今日までのように危なっかしい冒険を続けられたら……

 

「ああ、最高だな」

「だろ? そう思うんだったらさっさとお前のやるべきことに備えておけよ」

「もちろんやるべきことはやった。後は私がやるべきことと言ったら……最前線にいるお前と場所を交代することじゃないだろうか」

「……いや、なんでそうなる!? やっぱお前はデストロイヤーに蹂躙されたいだけのド変態だろ!」

「ん……くっ! 私のことをなんだと思ってるんだ! そんなこと少ししか思ってないに決まってる!」

「やっぱ少し思ってるじゃん!」

「たった3割だ! 貴族と知っておきながらこの扱い、本当に私じゃなければ極刑ものだぞ!」

「はいはい」

 

はいはいって……

まるでこの男は私がそんなことをしないと確信してわざとやっているようだ。

まあ私としては一向に構わないというかむしろ望むところだが。

 

そんなことより、この男は街の方に行く気はないらしい。

私の考えでは、自分が最前線に立つことで士気を上げようとしてるものだと思っていたのだが。

ならば私が代わりに立つことで、仮面の男には撃ちやすいであろう高い位置から攻撃を放ってほしいと思っていたのだが……

 

「残りの7割は何を思ってたのかはわかんないが俺はここを動く気はないぞ。絶対成功させてみせる。だから盾役はいらない。そもそもあの重量で体当たりされたら即死だから気にすんなって。……もしやり直すことになっても仲間が死ぬのはごめんだしな

「ん? 何か言ったか?」

「いや何も。とにかく俺はここを下がる気はない。近い方が狙撃の精度が上がりそうだしな。だから下がってろよ」

「そうかそうか。ならば私もここで待たせてもらおう」

「下がれっつったろ!? ……はぁ、そのどうしようもなく我が儘で頑固なところ、やっぱダクネスはダクネスだな」

「お、おい! もしかして今私の名前に別の変な意味を持たせてなかったか!? 私は確かに卑しい雌豚だが、流石に変態と書いて私と読むのはどうかと思う!」

「……やっぱダクネスはダクネスだな」

 

ため息とともに吐き出されたそんな言葉に私がさらなる反論をしようとしていると。

『冒険者の皆さん、そろそろ機動要塞デストロイヤーが見えてきます! 街の住人の皆さんは直ちに街の外に避難を! 冒険者の皆さんは戦闘準備をお願いします!』

激しい警告音とともにそのようなアナウンスが。

いよいよ始まったのだ、機動要塞デストロイヤーの討伐作戦が。

 

 

 

 

目の前の男は地面に伏して、レールガンを射撃角度調節のためのスタンドに設置する。

未だデストロイヤーの姿は確認できないが、軽い振動が地を伝わる。

 

「……来たか」

 

男がそんな声とともに引き金に指をかける準備をする。

しかし私にはまだ見えない。

遠視スキルでも持っているのだろうか、ため息を大きく吐き出す男を見てすでに戦いは始まっているのだと、私の緊張が筋肉を堅くこわばらせる。

 

しばらくすると土煙が激しく、こちらに近づいているのがわかった。

それとともに小さかった振動は大きく、激しさを増して……

その姿の全貌が明らかになった。

 

でかい。

とにかく巨大な八本脚の動く要塞がとてつもない移動速度で接近していた。

姿が露わになったばかりだというのに、このまま進行を抑えねば数分もせずにアクセルの街を蹂躙するだろう速度。

戦慄を禁じ得ない。

 

しかしどうしてだろう。

私の口角は獰猛に引き上がっていた。

恐怖のあまりおかしくなり引きつったのか、期待以上の破壊力を秘めた大物賞金首をみて沸き立つ高揚感からか、隣の男が汗をポタリと地面と落としつつもその表情に釣られたからか。

 

俯いている男の口から紡がれる祝福の呪文が何重にもかかる。

呼気が続く限り何度もはき、はき、はき出した魔法が唱え終わり息を吸い、吸い、吸いこんだ。

肺いっぱいに吸い込まれた空気は男に天を仰がせ、一つのスキルとなって一気にはき出された。

 

 

「『狙撃』――ッッ!!」

 

 

トリガーが引かれた。

兵器の口に一瞬魔力の眩い赫きが溜められ、それが線となり吸い込まれるように目の前の敵へ走る。

地を穿ち、空を切り、光は敵へ突き刺さる。

結界に阻まれた光が散り散りに霧散する光景に落胆の声が上がりかけたが、直ぐに変化が訪れる。

 

息をのむ光景に惹かれた。

放たれ続ける光は結界を押し込み、ガラスが割れるときのように、ソレを粉々に打ち砕き、そのまま赫きは敵を貫いた。

 

要塞の裏に抜ける光の筋。

しかし、それでも機動要塞は動き続ける。

だがそれは想定通りの事態だ。

後は私の頼れる仲間がなんとかしてくれる。

 

 

そう信じていると、期待通り、魔法陣が宙に浮かぶ。

片方は頭がおかしい爆裂娘の名をほしいままにしている、唯一つの魔法にすべてを捧げた紅魔族のアークウィザード。

もう片方は鬼畜のカズマの異名を轟かせている悪名高い、不思議な魔法を持っている最弱職冒険者。

どちらも私の大事な仲間だ。

そんな二人から放たれるビリビリとした魔力の気配で胸が高鳴る。

そしてついに……

 

 

「『エクスプロージョン』――ッッ!!」

「『ティンダー』『ウィンドブレス』――ッッ!!」

 

 

輝く杖からは究極の複合属性魔法。

輝く両手はソレを再現した二重詠唱魔法。

同時に放たれたそれらは機動要塞へ向かい、脚一つ残さず粉砕した。

 

 

街が歓喜に包まれる。

喜びを分かち合うためにめぐみんを背負ったカズマがこちらにやってくる。

私も喜ぼうとしてたそのとき、男がこう言葉を出した。

 

 

「ヤッタゾー。ナンダ、機動要塞デストロイヤーナンテ大ゲサナ名前シテオイテ期待外レモイイトコロダッタナ。サア、帰ッテ酒デモノモウ、ナンタッテ一国ホ滅ボス原因ニモナッタ賞金首ダ、報酬ハイクラカ楽シミダゼー……」

「うん? なんだその片言な台詞は?」

「ちょ、お前! フラグ建てるな!」

「そうですよ! フラグは言霊ですよ! 世界がそういう方向に……」

『この機体は、機動を停止しました。この機体は、機動を停止しました。排熱及び、機体のエネルギーが消費できなくなっています。搭乗員は速やかにこの機体から離れ、避難してください』

 

 

 

 

……終わってはいなかったようだ。

 

「計画通り……!」

「計画通りって何だよ! お前が余計な台詞口走るから自爆するぞ!」

「じ、自爆!? デストロイヤーは自爆するのか!? それでは街が火の海に……!?」

「落ち着いてくださいダクネス。自爆は紅魔族のロマンですが、第二形態という可能性も……」

 

第二形態の方が被害がすごそうな気がするのは私だけじゃないと思う。

しかしまさかこのような事態をも考えていたというのか、用意周到な仮面の男は鉤爪がついた矢を弓にセットし始め、言葉を続けた。

 

「とにかくデストロイヤーの中に突入する必要がある。そんで中にいる研究者たちを引きずり下ろして自爆を止めさせないとな! まったく困った困った!」

「お前が始めた物語だろ! 俺はもう十分貢献しただろうし危険なことには首をできれば突っ込みたくない。俺は下りさせてもら」

「日和ってるヤツいるぅ? いねぇよなぁッ! 俺に続けーっ! 『パワード』! ン『狙撃』ッ! ダクネス、この上にカズマ連れて行け!」

「あ、ああ! 了解した!」

「ちょ、ダクネスさん!? 俺は行きたくないんですが……行きたくないっつってるだろ! HA☆NA☆SE! いやーっ! 痴女に誘拐されるーっ!」

「街の危機に駄々を捏ねるな!」

「め、めぐみんた、助けっ!」

「めぐみんは、魔力切れで、動けない。というわけで足手まといな私は大人しくここで待っています。女騎士に連れ去れる貴方に幸あらんことを……」

「これから俺傷物にされるんだーっ! 酷いことされるんだ、エロ同人みたいにっ! いやだ死にたくなーい!」

 

エロ同人……聞きなじみがないがとっても興味深いな!

そんなことを思いつつ、いざとなったとき以外はヘタレで頼りがいのないパーティーリーダーを、俵のように担ぎ、侵入し……

 

 

その後のことだ。

ウィズのテレポートによりコロナタイトを転移させ、その後、爆裂魔法で機体を破壊し、アクセルの街の被害はなくなった。

私が愛してるこの街と人が無事で済んでよかった。

それもこれも皆の頑張りあってのことだ。

 

しかし全てが丸く収まったわけではない。

農村の被害は無視できるものではないし、そこは私の家で何とかしないとならない。

というのも本来はあの領主が補償すべきなのだろうが、被害補償をする気がないらしく農民は私たちの方に縋り付いてきたのだ。

加えてアレクセイ・バーネス・アルダープに借金までしてしまったが仕方がない。

 

……うん?

どうして私は本来補償するべきアレクセイから借金として保証金を借り入れ、農民に分け与えているのだろうか?

いや、それは貴族は本来補償する義務はなく、ノブレス・オブリージュの精神で動いているのを良しとするからであって、アレクセイは貴族としては良くない精神だが当たり前の権利を行使してるだけに過ぎず……

なんだろう、頭がこんがらがってきた。

 

まあ今はカズマの背負ってしまった借金を返済し、国家転覆の容疑のすべてを晴らすことからか。

全力で頑張るしかないな。




カズマがデストロイヤーを早期撃墜した場合の変更点。(原作準拠)

1.アルダープの屋敷が壊れない。
 →アニメ3期の際にアルダープが別邸にいない。
 →カズマはアレクセイ別邸に行かないので義賊クリスと遭遇しない。
 →銀髪盗賊団結成しない。
 →アイリスが体を入れ替える神器を封印できない。
 →アイリスかジャスティス王子の体が乗っ取られ、アルダープの肉体が滅びる(リセット)
 →ダクネスがパーティーから離脱&幽閉生活(リセット)

2.カズマの借金&容疑なし。
 →むしろ報酬で富と名声があるので商売に手を出し権力を手にして、この世のすべてを手に入れるまである。
 →バニルとの商談(20億エリス)をしなくても問題ない。(とは言いつつ、この時点でアイリスが死亡して闇堕ちしてるか、王子様相手に楯突けずダクネスのパーティー脱退を認めざるを得ない状況になっている)(リセット)

3.裁判がないのでダクネスはバルターとの見合いをない。農村が被害を受けないのでダスティネス家の借金はなし。
 →ダクネスが借金で身売りすることがなくなる。
 →アルダープが入れ替わりをするために別の手段を使ってくる可能性。(原作とパターンが変わってしまうのでリセット)

4.家名と本名がバレない。
 →ダクネスがララティーナいじりされなくなる。……されてほしい(願望)

つまり……
アルダープの屋敷をこの世界のカズマの責任で吹き飛ばす必要があるという。

転移させるにはウィズのテレポート×カズマの幸運×アクアの不運の要素が必要。
今回は擬似的にウィズのテレポート×カズマの幸運×魔王の血で再現。
テレポート地点をアルダープのおっさんの屋敷に設定するのは故意が過ぎるのでやめときました。(責任転嫁されたくないカズマさん)


ついでに補足しておくと。
原作では
「ホーストとの戦いで城壁や街に被害なし」
「デュラハンとの戦いで防壁崩壊(ダスティネス家が多くを負担した)」

今作では
「ホーストとの戦いで城壁や街に被害が出た(ダスティネス家が負担)」
「デュラハンとの戦いではほとんど被害なし」

と帳尻を合わせております。
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