特に多分アニオリのクリスのと小槌のストーリーの伏線が……アニメ勢にはネタバレになりそうなんで、やっぱり何でもないです。
週1で書くと言ったのに何の手違いか深夜テンションで書いてしまった今回。
エリス様視点でお楽しみください。
1.顔を見れない~ねえ、今どんな気持ち?~
転移魔法の魔法陣が強い光を放ち、しばらくして淡くなり、やがて収束した。
その魔法陣の中にいたカズマさんはもういない。
無事、平行世界へ旅立ったことでしょう。
つまり天界の何もない空間にいるのは
そんな騒がしい人が消えた空間に一人の啜り泣く音が、嫌に印象的に反響する。
きっと、今まで我慢していた涙が、嬉しさやら悲しさやら、複雑な思いによって溢れ出てきたのでしょう。
私はそんな彼女――後ろにいる先輩に声をかけた。
「行ってしまいましたね、カズマさん」
「…………」
「よかったんですか、先輩」
「……いいわけ、いいわけ! ぐずっ……いいわけ、ないじゃない……女神であるこの私を殴るし、バカ扱いするし、勝手にやりきった顔して満足げに逝っちゃうし……私だって一回思いっきりぶん殴らないと気が済まないんですけど……」
口では強がっている先輩。
でも、その姿を見ると肩を震わせてボロボロと涙を流している。
普段はそんな顔しない先輩のそんな顔を見て、思わず肩に優しく手を置いた。
先輩はその私の手を取って、胸元に顔を埋め、しゃくり上げながら肩を震わす。
「うぐっ……ひぐっ……ずびびっ……」
「先輩……。私に泣きついてくるのはいいんですが、お鼻をチーンってしましょう? 私の服が先輩の粘液まみれになりそうなので……」
「だっで……だっでガズマざんがぁあ゛!」
「大丈夫、大丈夫です。あの人なら、一度魔王を倒したカズマさんならきっと試練をやり遂げてアクア先輩のところに帰ってきますから。それに、おかえりって言うんでしょう? そんなお顔がぐちゃぐちゃなままではせっかくの美人さんがもったいないです」
「おかえりじゃないわ……ぐすっ……怒りと悲しみを込めた愛の拳を叩き込んでやるの! ……でも、カズマさん、似合わないくらい強くなっちゃって、向こうの世界でちやほやされて、ハーレム作って帰ってこないんじゃないかって……ちょっぴり心配よ」
確かに様々なスキルと魔法を覚えたカズマさんは、セクハラとかを除けば、割と誠実で、顔も悪くなく、モテるのではと、ふと思ってしまう。
でも、カズマさんが強くなった理由の全ては、アクア先輩を恋しがっていた天界に返すため。
そんな彼がアクア先輩のことを忘れて女の子たちに囲まれながら生活するなんて……するなんて!?
「そ、そんなことない、です、よ……?」
「うわあああ゛ぁぁあぁぁああ゛っっ! 目をぞらぜながら言っだぁぁあぁあ゛!」
「ああアクア先輩!? 冗談! 冗談ですから私の胸を揉みしだかないで! ずれちゃう! 話とかその他諸々いろいろずれちゃいますから!」
「……本当に。本当に帰ってぐるのよね」
「ええ。本当です。ですので本当に一度お鼻をかみましょう、ね? 服とお鼻の間に糸が引いてるので」
「エリスがぞう言うんだっだら、その言葉、信じるわ。となればこんなことしてる場合じゃないわね! チーン!」
「ちょ、私の服でかまないでください!」
うわぁ、私の服が先輩だらけに……
いくら水の女神だからって、触れたものは全部聖水に浄化するからって、流石にこれはないんじゃないか。
確かに私の服にかかってるのは聖水だけれども、流石に元が元ですので早く着替えたい……
しかしそんな私をお構いなしに先輩は涙が乾き、若干腫れぼったい目を擦りつつ、元気を取り戻して。
「はー、スッキリしたわ!」
「ううっ……せめてそこにあるちり紙使ってほしかったです」
「なぁにしょげてんのよ、そんなみともない顔と姿でカズマにお帰りを言う気なのかしら? い・い・え! そんな顔見せられないわ!」
「さっきまでみっともない顔してたのは先輩で、私をみっともなくしたのも先輩……」
「何か言ったかしら」
「いえ、なんでもないです」
「よろしい! じゃあ一先ず私はめぐみんとダクネスに事情を伝えに行ってくるわね! きっとあの子たち、急にいなくなった私とカズマのこと心配してるわ。そのうちいてもたってもいられなくなって私を探しにどこかに行って迷子になっちゃわないか心配よ……」
迷子の心配は自分にした方がいいのではないかと言いかけた口をそっと噤む。
それと、一度天界に戻ってきてしまったアクア先輩をもう一度ダクネスたちのところに行かせるのは天界のルールに反します。
だから本来は止めないといけないんですが……
私は面倒くさ――再びアクア先輩の泣き顔を見るのは非常に心苦しく、ダクネスやめぐみんさんもアクア先輩の帰りが遅いと心配するでしょうと思い、何も言わずにその後ろ姿を見送ろうとしたのですが……
いつの間にだったのか、カズマさんが転移した魔法陣が淡く光り始めた。
つまり、私が組み立てた魔法陣が再起動している。
一体何が起こってるのでしょうかと思って魔法陣の中を凝視していると、徐々に影が見え始め……
「……随分と早いお帰りですね、サトウカズマさん」
数分も経たずしてカズマさんが天界に戻ってきた。
時空の歪みを加味すると、向こうの平行世界の30分ほどでしょうか。
さっき「ただいまを言うのはもう一回魔王討伐するまでとっておきますね」とか意気込んでいたのに、こんなすぐに帰還してしまったことが恥ずかしいのか、顔を真っ赤にして涙目でプルプルしてきましたカズマさん。
そんなカズマさんは恥ずかしさをごまかすためか、目をそらし、頬をかきながら。
「あ、えっと……ただいま?」
「かぁじゅまぁさーんっっ!」
「うぉっ!? あ、アクア!?」
感極まって思わず飛び出したアクア先輩がカズマさんの体に触れ、形と温もりを確かめるように、何度も何度も抱きしめるようにカズマさんの体にひっつく。
カズマさんは今までアクア先輩がいることに気づかなかったのか、驚いたような声を上げる。
「カズマ、カズマ……カズマ! 何勝手に死んでるのよ!」
「そんなに何でも呼ばなくたって俺はここにいるぞ、アクア。……天界に帰ってこれたみたいでよかったな――って鼻汁! 鼻汁が暴発してるから! きたねぇよ離れろよ!」
「き、汚い!? この麗しき女神に対して汚いだなんて、それはないんじゃないかしら! 謝って! 私の体液は女神の力によって浄化された神聖な聖水なんだから汚いって言ったこと謝って! それと勝手に死んじゃったこと謝って!」
「変な謝罪させようとすんな……ってガ、ガチ泣きしてんじゃねぇか!?」
先輩は本気で泣いてるのに、私は何故か少しだけほっとしている自分がいることに気づいた。
いつもの光景が見られたことでカズマさんは三人を置いてけぼりにしないという、確信に近い何かを得たからかもしれない。
それに先輩の泣き顔の裏に、喜びが見え隠れしてて。
カズマさんも心なしか困り顔の裏に、しょうがねーなって言葉が潜んでて。
そんな二人を見ていると何だか心が温まって。
しかし、ふとどうしてこの場所にもう一度帰ってきてしまったのか、そんな疑問が湧き上がり。
「あの、一体何があったのですか? 向こうの世界の時間的にまだ30分も経過してないような気がするのですが……」
「あ、そうそう、そうなんですよエリス様! 聞いてください! 異常事態です!」
「い、異常事態ですか?」
「あ、ありのまま起こったことを話すぜ……。俺は確かに30分間、過去の世界を体験してた。そして向こうの世界の俺とアクアが転生する瞬間を潜伏スキルと千里眼スキルを使って遠くから確認しようと見張ってたんだ。そしてそのとき、確かに俺の転生は成功した……んだが、どうにもアクアの姿が見えない。どうしたもんかと思っていたら、いつの間にか、俺は死んでないのにここにいた。な、何を言ってry」
カズマさんのお話を要約すると、つまり……
転生特典としてカズマさんとお得なセットでついてくるアクア先輩がいない。
そして何故か向こうの世界のカズマさんが転生した直後に強制リセットされた。
……そういうことでしょうか。
不可解な状況に思わず深く考え込んでいると先輩が。
「どういうことよ! まさかスケベでエッチなカズマが麗しき私に欲情して下界に引きずり込むのは確定事項じゃなかったってこと!? この世界線のカズマさんは屈強な精神の持ち主だったってこと!?」
「おい、俺が何だって言ったオマエ! まさかすっかり俺の転生特典になった経緯を忘れてるのかもしれないが、お前が散々煽りまくったせいだからな?」
「またまたまたぁ、ツンデレカズマさんってば冗談がお上手ねぇ?」
「正直俺はお前のことをヒロインとしてみようと頑張った。でも……ごめんな」
「ね、ねえカズマさん? なんで謝るの? 何かその謝罪は受け入れがたいのだけど、本気で言ってるわけじゃあないわよね?」
鼻で笑うカズマさんと、それで掴みかかる先輩。
なんて騒がしい二人なんでしょう。
でもそんな五月蠅い二人が微笑ましい。
「私とカズマさんの付き合いは長いんだもの、私の抗いがたい魔性の魅力に堕ちてるはずよね? ……ちょっとなんで顔をそらすの!?」
「……ブフッ」
「うぁぁああぁあぁ! 今カズマさんいけないことしたっ! 『ただいまを言うのはもう一回魔王討伐するまで』とかなんとかかっこつけてたくせに!」
「ど、どこでそれを!? お前あんときいなかったろ! まさかエリス様がリークして……」
「私、エリスとカズマの会話、実はずっと後ろの陰で見てたんですけど」
「う、うわぁぁああぁああ忘れろ忘れろ忘れろォォオオォッッ!!」
「ぷーくすくす。ただいまって言うのは……なんでしたっけぇ? ねえ、どうして顔を隠すのかしら、恥ずかしいことでもあったのぉ? ねえねえ、私の顔見て今どんな気持ちか言ってみて? NDK? NDK?」
「よし、表でろ! さっきのお前の泣きっ面、鏡で見せてやるっ!」
いつの間にか立場逆転して、今はカズマさんが先輩に掴み掛かろうとしてる。
そんな二人の攻防を観戦しながら、私はカズマさんの言葉――不可解な状況について思い出して、原因を思案する。
まず、アクア先輩がカズマさんに付いてこなかったこと――その原因は先ほど軽く調査した結果、原因が判明したので問題ないです。
というのもこの世界線は「カズマさんがアクア先輩に死因を笑われなかった世界線」。
カズマさんは転生特典で強力な魔法を選んで転生して、アクア先輩はカズマさんと一緒にいなかった。
問題は次です。
カズマさんが死んでないのに強制送還された――これがどうしてそんなことになったのかわからない。
カズマさんが転生する直前までは私の世界と違う点はないのに、どうして。
強制送還されるのはカズマさんが死亡した際。
それと、魔王討伐が困難になる、取り返しのつかない事件が生じた際。
大きく分類するとこの二点だけのはずなのに、一体どうして。
一度その世界で何があったか、カズマさん以外に何か問題が発生したのかもしれないと思い、自分の世界と平行世界との差異を見比べて……
思わずぎょっとした。
「カ、カズマさん。大変なので先輩をからかうのはその辺にして、話を聞いてください」
「はいはいカズマです、どうしたんですか?」
「大丈夫ですか、心構えは……」
「何ですか急にもったいぶって」
「あの、ですね……」
めぐみんさんが……死にました。
本当はカズマがもう一回魔法陣で転移するまでを書きたかったのですが、何というか、シリアスな雰囲気を醸し出しつつキリがよかったのでこの辺りで。
別に投稿時間に間に合いそうになかったからカットしたわけじゃありません本当です。
読者に想像の余地を残しておく、そういうテクニックもあるはずです!
ちなみに好評だったら好評だっただけ頑張ります(作者を苦しめる魔法の言葉)