あの素晴らしい世界に帰るため   作:桃玉

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季節の変わり目ですね。皆さんは体調管理には注意してください。
それはそれとしてアクア視点です。


5.それこそが現実~目はそらせない~

私は「かくかくしかじかだから、カズマさんが生き返るまでちょっと待ってて」ってめぐみんとダクネスに説明して、再び天界に戻ったのだけど……

目の前には虚無顔のカズマが。

私は全知全能なる女神だからこのアホな顔してるカズマを見て全てを悟ったわ。

 

「……まーた死んだのね? 流石に何度も何度もぽっくり逝きすぎよ……そろそろ恥ずかしがってもいいと思うんだけど」

「いやいや待てよ! 俺死んでない! 借金返済するためにキールダンジョンに来るはずのバニルのこと待ち伏せしてたのにまただ! 本当にどうじでだよぉぉお゛ッ!!」

「な、泣かないでくださいカズマさん! まだ! まだたった5回目です! アクア先輩もナーバスマさんをいじめないであげてくださ……」

 

流石にこの私でも5回もやり直ししてるなんて見抜けなかったんですけど……

やっぱりコロコロ死んじゃうカズマさんには私がいないと駄目ね!

もういっそのこと私のことを頼って一緒にパラレルワールドに連れてってくれないかしら?

パラレルワールドとこっちの世界の時間が歪んでて、めぐみんとダクネスの二人の待ち時間は短いけれど、カズマさんの肉体はどんどん……

何十回ってやり直して、カズマさんがおじいちゃんになっちゃわないか心配なんですけど。

 

「ねえカズマ、そろそろちゃちゃっと魔王討伐しちゃって? 私の眷属はやればできる子なんだから普段は眠れる引きニートなカズマも」

「誰がお前の眷属だよ! いくら詐欺集団のまとめ役だからって言っていいことと悪いことがあるぞ!」

「こっちの台詞よ! 誰が詐欺集団のまとめ役ですって! そこの自分を偽ってる上げ底エリスより誠実に自分をさらけ出して生きてるはずよ私は!」

「エリス様とお前を比べるなよ烏滸がましい! お前の場合はただ単に傍若無人な身勝手の極みなだけだわ! エリス様は皆の期待と夢を背負って生きてんだよ! ねえエリス様? …………エリス様?」

 

私は無礼者に喧嘩(クォーラル)ボンバーを食らわそうとしてたんだけど、カズマの呼びかけに応じないエリスのことが気になって動きを止めたの。

で、そのエリスの方を見たら、なんと、スマホに目が釘付けの現代っ子が。

この子ったらもしかしてスマホ依存症になっちゃったのかしら……!?

私がお母さんだったら平成初期を思い出してもらうためにスマホを取り上げて、ガラケーみたいに半分に折りたたんじゃうところよ?

なーんて思っていると、エリスが顔を上げてニコリと死んだ目で。

 

「……今さっき、バニルとか言いましたか? あの名前を呼んだだけで虫唾が走る神の天敵の名を呼びましたか? 呼びましたよね?」

「え、エリス様怖い! 超怖い!」

「怖くないですよー? 今キールダンジョンの内部を見てて、そこに骨皮しかないリッチーがいたとしても私は普通ですよー?」

「ね、ねえエリス? 流石に暗黒微笑が似合い過ぎると思うんですけど。ちょっと私も怖いかなーなんて……」

「……怖くないです、よ……ね? そんな顔されると流石に本気で怖がられてるみたいでシュンってなっちゃうんですが」

 

そう言うと心なしか本当にシュンってなるエリス。

こ、この娘ってば本当に無自覚なのかしら!?

一気に圧が失せたエリスを見て、カズマが安堵をホッと漏らす。

そして何かを思い出したのかポツリと。

 

「……そう言えば、今回、キールダンジョンに行ってないな。前はデュラハンの人のせいで借金が4千万あったから優先的にお金になりそうなクエストを受けてたんだっけ」

「ああ、なるほど。カズマさんカズマさん!」

「どうしましたエリス様」

「私、わかっちゃいました! キールさんがダンジョンにいるせいでクソ悪魔がダンジョンに居なくて、それで未来が変わっちゃったんですよ!」

「流石私の後輩、私譲りの考察力ね! ま、まあ私も気づいてたけど!」

「うそこけ」

 

カズマが何か余計な突っ込みを入れた気がしなくもないけれど、余計なことは聞き流す私の耳には届かなかった。

これが日本人が保有する特殊能力「空気読み」かしら?

私もついに会得してしまったようね!

そんなことを思ってるとカズマが。

 

「それにしても……リッチーは普通に呼んであげるのにバニルはう○こ呼ばわりって…………もしかしてエリス様、良いアンデッドと悪いアンデッドの差は理解できるんですね」

「い、一体私をなんだと思ってるんですか!」

「過去の話を聞いても悪魔かアンデッドだったら生かさず絶対殺すウーマン」

「ひ、酷い! 酷いですよ! 私はそんなに残酷無慈悲ではないです! というかアンデッドは殺してあげることが救いだからと言いますか……」

「死こそが救済……か。やっぱ冷酷ですね」

「言い方が悪い!? 私はただ世界の理に、輪廻に戻してあげて救ってるだけなのに!」

「とかなんとかカズマの前では言ってるけど、暇さえあれば嬉々として悪魔狩りと不死者狩りの趣味をしに下界に遊びに行く娘よ? 私は、救済とかは一時も思っていないに一票投じておくわ」

「せ、先輩まで私を裏切ったー!? うわああああ!!」

 

ちょっぴり涙目のエリスが心外だと言わんばかりに私とカズマにポコポコ攻撃を仕掛けてくる。

私的にはもう少し肩の左側を集中的に叩いて……ああ、そこ、そこよ、そこそこ!

肩のコリに効くわね!

今度専属マッサージ師に任命してあげようかしら?

 

しばらくするとゼーゼーして肩たたきが止まってしまった。

どこか空しさを感じるエリスの顔だったけど、対照的に私とカズマは艶やか。

元気を十分もらったと言わんばかりにカズマが。

 

「よし! じゃあ俺、ちょっと行ってくるわ」

「はいはーい、行ってらっしゃーい」

 

そう言って、テレポートの魔方陣に飛び乗ってまたあの世界に旅立った……

 

 

 

 

……のが数秒前のこと。

 

 

「ああ……女神様がいらっしゃる。……ということは私の身はようやく朽ちたということでしょうか」

「それは少し語弊があります。確かに私は10,000,000人の信者を各地に持つ女神アクアその人ですが……」

「おおっ……本当に死後は女神様に会えるとは」

 

今までめぐみんとかダクネスに女神じゃないって思われてたけど、そう、私は女神なのよ……久しぶりに信じてくれる人がいてなんか感動なんですけど!

この私のことを一瞬で女神であると見抜いた良き目を持ったお伽噺の魔法使いに、これから女神らしく導きの言葉を贈ろうとしたのだけれど……

向こうの方の騒がしい二人を見て思わずため息が。

 

「アンデッド火葬すべし……アンデッド絶やすべし……アンデッド祓うべし……ッッ!!」

「おち、落ち着いてくださいエリス様! やっぱり分別ついてないじゃないですか!」

「放してくださいカズマさん! 存在すること自体神の意志に反しているアンデッド風情が! こんな天界の地に侵略をかけてくるとは思ってもみませんでした!」

「ち、ちがっ! クソッ! やっぱ良いアンデッドと悪いアンデッドの差は理解できるなんて思った俺が馬鹿だった! 今のエリス様は分別ない駄女神様だよ!」

 

アンデッドぶっ殺すと息巻いているお淑やかさのかけらもないお転婆っ娘とどさくさに紛れて胸の装甲を弄ろうとしてる助平がギャーギャー揉みくちゃになっていた。

どうやらここでまともなのは私しかいないみたいね。

 

「……少し騒がしくてごめんなさいね?」

「いえいえ、これから私を行く先へ導いてくださるのでしょう? それともこの騒がしくも楽しげな場所が天国ですか? てっきり私は地獄へ堕ちるものかと思っておりましたが」

「貴方は先ほどまで眠りについていましたからね。現状を理解できないのは当然です。私が順を追って説明しますね」

「ありがとうございます女神様」

「じゃあえっと、まずキールダンジョンで深い眠りについた貴方ですが、テレポートで連れてこられたのです。そう、言うならばあそこにいる女の子のパンツを盗むのに秀でた盗賊によって天界に誘拐されたのです」

「ま、まさかテレポートの呪文で天界に……人生何があるかわからないもので。……って今パンツを盗む盗賊に誘拐されたとおっしゃいました!? 私のこの身はパンツと同列扱いなのでしょうか!? ということは性的な目で私を見て……!? い、いけません! 私には鎖骨のラインが素晴らしい妻がいたのです! 一途なのです!」

 

カズマの「俺がパンツ好きのネクロフィリア盗賊みたいだろ! あくまでノーマルな冒険者だって訂正を求む!」という声は無視。

めぐみんとかクリス、それ以外にもアイリスの護衛の人のパンツをスティールした前科者に対する正当な評価だと思うしね。

頭を抱えてる迷える子羊を私はなだめるために言葉をひねり出す。

 

「安心なさいな、あの男はあくまで男女平等主義を自称する私の眷属」

「だから眷属じゃな」

「何をとち狂ったか誘拐するという凶行に及んだけれど、腐男児であっても根腐れは起こしていないことでしょう」

「く、腐ってないわ!」

「きっとあなたの思いをしっかり伝えればいい感じにまとまります」

 

向こうで暴れているエリスに卍固めを実行しつつ何か声を飛ばしてるカズマ。(雑音として捉えられた音は女神の能力「ノイズキャンセリング」によって阻まれたので全スルーである)

私のふわっとしたアドバイスがよかったのか、キールが傅いて感謝を述べる。

 

「なるほど、助言ありがとうございます女神様。……ではそう言うことですので、そこの下着泥棒君」

「下着泥棒じゃないです。カズマです」

「カズマ君。私は一途に思い続けている娘がいるのです。貴方の想いは受け取れません、ごめんなさい」

「……なんか俺フラれたんだけど? 告ってもないのに」

 

何とも言えない渋い表情でこちらを見つめているカズマの方から、体を私の方に向け戻したキール。

私は説明の続きに取りかかる。

 

「それで、向こうの方で卍固めされてる、胸の膨らみが不自然な女の子がいるでしょう? あれが幸運の女神とか何とか言って信者を増やしたこの世界の女神様やってるエリスよ」

「だ、誰が不自然な胸の膨らみって!? 冗談はやめてくださいアクア先輩!!」

「……何だか可愛らしい女神様ですね。私に孫がいたらあのような可愛らしい子でしょうか」

「か、かわ……っ!?」

「効いてるわ! その調子でもっと褒めちぎるのよ! これから貴方の処遇を決める娘だからもっと媚び売っておくのよ! ついでに私からも口添えしてあげるわね」

「そ、そんなこと言われたって私はアンデッドは例外なく滅しますからね!」

 

さっき「私はただ世界の理に、輪廻に戻してあげて救ってるだけ」って言ってたけど、無慈悲に消そうとするあたりやっぱり私の予想通りだったわね。

あとでエリスにはポテチ奢らせるわ。

本当はエリスに成仏を頼もうと思ったんだけど、ここは私が女神らしくこの子の罪を赦して、それから平行世界の方のエリスに任せるしかないわね。

 

「神の理を捨て、自らリッチーと成り果てたアークウィザード、キール。貴方がリッチーに身を墜とした理由は知ってるわ。愛ゆえに……でしょう?」

「ど、どうして知って……!? いえ、お天道様に嘘はつけないということか」

「そんな大層なものじゃないわ、ただ私の知り合いにもリッチーはいるの。とっても優しくて、仲間思いの良いアンデッドの。……年が離れていようと、男女の仲でなくても、どんな形でも願うのなら貴方の愛が来世でも結ばれることを、私も願いましょう」

「ああ……ありがとうございますアクア様……」

「私は、水の女神アクアの名において、貴方の罪を赦します。在るべき場所に逝きなさい」

 

 

『セイクリッド・ターンアンデッド』

 

 

深く頭を下げて跪いていたキールは光に包まれるようにして、その姿が失せた。

重々しかった空気を切り替えるために一息ついて、私は二人の方に向き直ろうとして……

そこにはこそこそと内緒話していた二人が。

私は気になって聞き耳を立ててみると。

 

「エリス様。あそこにいるのって本当に誰ですか? 俺、目釘付けだったんですけど……もしかして夢っすか? 俺の望んだ女神がアレってことですか?」

「ちょっとやめてくださいよカズマさん現実ですから! そんなこと言ってるとアクア先輩が泣いちゃいま……あっ! ちょ、違うんです先輩! 先輩の仕事モードとお休みモードのオンオフの切り替えが凄いなーって褒めていたんですよ?」

「そ、そうそう! いやー、本当にメリハリが凄いなーって…………チョロいな」

「チョロいですね」

 

私は二人に褒められて、先輩風を吹かせたくなったので何か奢ってあげよと思って、コンビニ天界支部へ足を運んだ。

お金がなかったから笛ラムネの駄菓子だけにしておいた。

帰ったらこれで超絶技巧聴かせてあげましょ。




このままリセットされなかった場合について。(ネタバレ注意)

問題1.
 借金生活が続く
→カズマたちがアルカンレティアに行かない
→ハンスの毒によりアクシズ教の総本山が壊滅的被害
→アルカンレティアに割いていた分の魔王軍が王都などに侵攻
→魔王軍との戦いの前線の均衡が崩れる
→人類滅亡エンド

問題2.
 めぐみんのレベルが上がらない
→魔王軍幹部を一撃で仕留めきれるか疑問が残る

問題3.
 バニルが魔王に「ベルディアが討伐された」と報告に戻る
→少人数偵察部隊派遣から、カズマたちを殺すため、アクセルに魔王軍襲来
→魔王軍撃退し、カズマパーティーは生き残るが、死者多数

→もしかしたら一般人にも死者が出て、ウィズが激怒して戦う
→するとウィズが魔王軍幹部であるとバレる
→ウィズがおとなしく捕まり、最悪処刑
→レベルドレインができなくなる、魔王軍が一般人に加害しだすetc…
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