あの素晴らしい世界に帰るため   作:桃玉

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一先ず、きりがいいところまで書きました。


1.私は叫ぶ~遙か遠くに届け~

今現在の私は所謂危機的状況、というやつに陥っている。

アクセルの街へ向かう際になんやかんやあって護衛の冒険者たちは疲弊。

そして上位悪魔に格の違いを見せつけられ地面に倒れ伏している。

さらにゆんゆんの魔力は枯渇しており、そんな状況で上位悪魔に攻撃を仕掛けられている。

まっとうな攻撃手段を有しているのは私だけだ。

 

学園で教わったテンプレなるものでは「危機的状況でこそ盛り上がり、絶体絶命こそが覚醒イベントへの第一歩!」という、紅魔族的に言えば反撃の狼煙を上げる絶好の機会というやつに当たる。

そう言うわけで私は今の今まで温存していた魔力を解き放ち、上位悪魔を滅ぼすために。

決定的な隙を生み出すための策を打って出た。

 

「そぉぉぉーーーーいっ!」

「ちょっとめぐみん何やってんのよおおおおおおお!」

「我が使い魔をポーンと放り投げただけですが?」

「だけですが? じゃ、ないわよおおお! 何詠唱してるのやめてえええ!」

「ちょ、やめ、今が絶好のチャンスですよ! 泣きながら腕にしがみつくなんて紅魔族としての自覚はないんですか!」

「めぐみんの薄情者ー! ちょむすけが死んじゃうじゃない!」

 

そんなこと言っても、こちらは何十人という大所帯。

大勢の人の命と毛玉一匹の命、どちらを選択すべきかなど明白です。

私たちのために我が半身は喜んで星となったと後世で語り継げば……

そんな代案を出す暇もなくゆんゆんは私の方に掴みかかってくる。

この無駄に環境に配慮がない肉体を有するぼっちが目を爛々と輝かせ、本気も本気でかかってくるので詠唱に集中することもできず……

 

「『カースド・ライトニング』!」

 

女性の甲高い声が響き渡り、雷鳴が轟く。

正体を隠そうともしない憎き上位悪魔、アーネスは背に翼を生やし冷ややかな表情で地上を見下ろす。

私は詠唱の半ば。

巨大な雷炎の塊が地上に墜ちるまでに詠唱は間に合わない。

 

巨大故にゆっくりに見える錯覚か、死の恐怖に直面しているから時間が引き延ばされているのか、嫌にゆっくり落ちてくるように見える絶望の塊。

 

「紅魔の里に封印された、名もなき邪神に破壊神、そして女神エリス様! あとついでに水の女神アクア様! せめてめぐみんだけでも……ッッ!」

 

ゆんゆんが叫ぶように神頼みし始める。

そんなに大きな声を出しても神様がいる天界には届かないと知っていながらも声を張り上げずにはいられないようだった。

 

目の前が黒色一面の絶望に覆われても、

ゆんゆんが私をかばうように覆い被さっても、

私は切望していた、あの爆焔がもたらす奇跡を。

 

止まらない、止まらない私の詠唱。

終わらない……

終わりたくない……

まだ始まってすらいないのに……

 

私は叫びたかった――

 

 

 

 

『エクスプロージョン』

 

 

 

 

……えっ。

そんな私の声は轟音にかき消される。

 

爆裂魔法の激しい爆風が帽子を吹き飛ばし、ちょむすけを宙に放り投げる。

激しい熱を帯びた轟音が、雷鳴をも打ち消す轟音が、打ち込まれた死の楔を焼き払った。

 

なんとか私の詠唱……間に、合ったのでしょうか。

そんな考えとは裏腹に「間に合わなかった」という現実を私の体が教えてくれる。

私の口は未だ止まらず、大好きな爆裂魔法を口ずさんでいる。

内包する魔力を外界へ向けて打ち出す準備が始まる。

 

爆煙が晴れると空の上から必死に黒毛玉を探しているアーネスが見える。

私は、それに向けて練り上げた魔法を叫び放った。

 

 

 

 


 

 

 

 

「ゆんゆん、さっきのはきっとお姉さんですよ。やはりそけっとの言うとおり、この街には私の運命の人がいるんです。……遠くにいても運命の鎖に繋がれた私とお姉さんは通じ合っているのかもしれませんね」

「お姉さんって、昔めぐみんを助けてくれて爆裂魔法を教えてくれたって言うはた迷惑な人のこと?」

「は、はた迷惑!?」

「私はきっと女神様が私たちのことを助けてくれたんだと思うけれど」

「おおっと、ここにアルカンレティアでもらった入信書の束があるのでこれをあげましょう。敬虔なアクシズ教徒として頑張ってください」

「ご、ごめんって! 恩人をはた迷惑って言ったのは謝るから押しつけないでぇ!」

 

アクセルの街に入ってきた馬車からそんな声が聞こえてくる。

そんな声を聞いて一先ずなんとかなったかなと安堵の吐息を漏らす。

 

 

時は遡ることおよそ40分前。

めぐみんが死んだ。

そんなエリス様の突拍子もない一言で凍り付いた俺だったが、よく考えてみても納得いかない。

 

「ど、どうしてアイツ死んじゃったんだよ……。も、もしかしてまともな食事をとれずにそのまま……」

「いえ、私の把握している限りではそのような死因ではなく」

「じゃあどういう理由で」

 

原因がわからなきゃ対策しようがない。

そういう思いで聞いてみたんだが、エリス様が今までの慈しむような目つきからゴミかすを見るような目を見て、思わずヒュっと息が止まりそうになった。

何か聞いちゃいけないことを聞いたのかと思い心配になっていると、どうやらそうではなかったようで。

 

「悪魔です」

「あ、悪魔?」

「めぐみんさんは上位悪魔の魔法を受けたのです。カズマさんカズマさん」

「な、なんでしょうエリス様……顔が近いです」

「あの悪魔はなんとしても滅ぼさないと、そうですよね先輩」

「わかってるじゃない! 悪魔滅ぶべし、アンデッド祓うべし、魔王しばくべし、よ! カズマカズマ!」

「カズマです」

「アンタの転生特典は私なんだから、私を一緒に連れてきなさいな。そうすれば私の溢れ出す神聖なオーラで一発よ!」

 

エリス様とアクアの目の中にあったハイライトが消し飛んだ。

怖いんでやめてほしいんですけど……

そんなこと思っているとアクアが馬鹿なことを言い出した。

もちろん俺は何だろうとこいつを連れて行く予定はない。

そりゃ、回復魔法とか解呪魔法のプロがいれば安心だろうが、それ以上にこいつがいるだけでやり直さなくていいポイントポイントでやらかしまくって強制送還されまくりそうだ。

コイツは酒が入った弾みで変な言動し出す、そんな経験から来る確信がある。

 

「私が下界にいないなら、私が消滅する可能性はゼロ! 悪魔が来る前にダッシュでめぐみんと合流すれば悪魔なんてちょちょいのちょで滅してやるわ!」

「いや何言ってんだコイツ、駄目に決まってるだろ! ねえエリス様」

「そうですね……あくまで平行世界にいけるのはカズマさんだけなんので、私たちが行くことは認められていないですね」

「ほれ見たことか!」

 

やっぱり俺一人でなんとかしなきゃなんないんだ。

アクアの代わりにエリス様が付いてきてくれたら助かるんだが、やっぱそうも言ってられないらしい。

そうなれば、どうやってめぐみんを助けるかが本題になってくるんだが……エリス様が。

 

「ですが」

「ですがっつった? ですがってナニ!?」

「私たち女神が宿敵である悪魔をサーチアンドデストロイしないのも甚だおかしいです。女神アクアが平行世界に行くことを特別に許可します。ついでに私もついて行きます」

「エリスってば、昔やんちゃしてたときの血が騒いだのね!」

「何言ってんだエリス様! 正気に戻ってください!」

「私はいつでも正気ですよ? それにカズマさん、知ってますか?」

「……何だよ」

「バレなきゃ犯罪じゃないんですよ」

「さっすがわかってんじゃない、それでこそ私の後輩にふさわしい女神よ!」

「『バレなきゃ犯罪じゃないんですよ』『さっすがわかってんじゃない』……今のセリフ録画しておいたから」

「じょ、冗談ですよ、もー何を本気にしてるんですかカズマさんってば……いや、あの、はいすいません本当に勘弁してください……」

 

天界にいる女神って種族はどうして悪魔となると牙むき出しになるんだろうか。

アクアに私の後輩にふさわしいとか言われて嫌な顔一つしてないところとか、普段言わないような台詞を言ってしまったりするところとか、昔やんちゃしてたって言うアクアの信じるか信じないかはあなた次第な話に何も物申さなかったり、本当に正気じゃなくなってる。

何とかいつものエリス様に戻ったみたいでよかったと笑顔になっていると。

 

「何にやついてるんですか、私のことを脅していたのに……」

「脅しって……あれはほんの冗談ですって。悪魔のことになると狂気じみて怖いんすもん」

「つまりカズマはエリスより私を選んだってことね! さあ、冒険へ出かけましょう!」

「いや何言ってんだ、連れてかねーよ。そもそもお前を選ぶんだったらエリス様選ぶわ」

「じょ、冗談よね? それもカズマさんのほんの軽い冗談ってやつなんでしょ?」

「一応言っておくが、一緒についてきたらお酒は飲ませないからな」

「行ってらっしゃいカズマ! 私はめぐみんとダクネスに事情を伝えるために一度地上に戻るわね!」

 

このアマ、仲間より酒の方をとりやがった!

宴会芸の神様なだけあるなオイ!

まあ俺の思い通りになってよかったが、なんかこう、釈然としない。

そんなモヤモヤしているときにアクアが。

 

「……じゃあしっかり悪魔は倒すのよ? めぐみんの敵よ? 本当は嫌なんだけど魔力ドレインしてもいいわ。だから……絶対倒すのよ?」

「お、おう。やけに協力的だな、普段ならめんどくさがんのに……」

「悪魔は悪魔だもの。私たちの代わりに情け容赦なく倒してもらわないと」

「そうですね。悪魔ですからめぐみんさん助けるついでに滅ぼしてきてください」

 

もう本当に何この二人嫌だ!

顔は笑ってるのに目が死んでて、怖すぎてちびっちゃいそうなんですけど!

そんなこと言っているとアクアが手を握ってきた。

どうして、どうしてアクアと手を握るときはドキドキしないのに、今日に限ってはドキドキしてるんだろう……恐怖的な意味で。

俺はさっさと終わらせるに限ると思ってドレインタッチを開始する。

と言ってももともと魔力ほとんど満タンの状態だからな、ものの数秒で終わった気でいたんだが……

 

「なあアクア」

「何かしらカズマさん」

「手、放してくんないかな」

「あらあらカズマさんってば照れちゃって。大人のお姉さんであるこの私がエスコートしてあげるから安心してちょうだいな」

「そうじゃなくて。もう魔力満タンなんだが?」

「……お構いなく」

「いやこれ以上いらないから、お構いなくじゃなくて……。オイ! いらないって言ってるだろその手離せ!」

「あとちょっと、あとちょっとだけだから」

「ドレインタッチしてないのに俺の方に魔力流れてくるんだが!? 無理矢理魔力を俺の方に流そうとするな!」

 

なおも俺の中に流れ込んでくるアクアの魔力。

もともと満タンの状態なのにさらに魔力を押し込むな!

満腹すぎて苦しい時みたいな感じになってるから!

吐くぞ、吐いちゃうからな!?

 

そんな限界超ギリギリの状態まで詰め込まれた俺は、何か吐き出す前に転移させられる。

そして、俺は抑えられない魔力を人目のつかない場所に行って解放すべく、城壁の外へ一目散に駆け出した。

そもそもこんな状態で上位悪魔と戦えるかってんだ!

どこか手頃な場所はないかと探していると、向こうかなり遠くの方で、ビリビリとした強力な魔法を放つとき特有のやばい気配を感じ取る。

 

昨日までの俺が持ってるスキル、魔法じゃ届かない、遠い、遠い場所だ。

そしてさっきまでの俺でも()()()()届かない遠い場所。

 

そう、普通なら届かない。

だが今の俺なら1キロ先だろうと2キロ先だろうと関係なかった。

 

爆裂魔法。

射程は魔法で最も射程が長い。

 

そして狙撃スキル。

幸運値が高いほど命中率が上がる。

 

この二つを組み合わせ、二度目の詠唱を終え、叫んだ。

 

 

 

『エクスプロージョン』

 

 

 

轟と激しい音が鳴り響き、魔法は遠くにいる仲間の所に届いた。




ということで、いろいろな解決パターンがあったのですが、アクアたちを勝手にしゃべらせていたらこの展開に落ち着いてしまいました。

多分他作品の執筆で土日は書けない気がするので、その場合はまた水曜日から再開しようと思います。
と、自ら投稿の期限を設定して追い立てるドMクルセイダーじみたことをしてみる。
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