あの素晴らしい世界に帰るため   作:桃玉

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7.守りたい希望~君と目指し続ける~

「……あのぉ」

「違うんです」

「いえ、別に何も違ってはいませんから」

 

私のよき友人がまた天界にやってきてしまったようです。

私としては最近この人がいることが常過ぎて、彼がパラレルワールドで頑張っている間のわずかな時間でも静かすぎて退屈――という言い方は不適切でしょうから寂しいということで。

 

それはそれとして、またしてもカズマさんがここに来てしまったということはつまり想定外の事態に見舞われたということに他なりません。

彼が回避できなかったということはそれほどの困難ということだったことでしょう。

いつもいつもこの場所に訪れるときには気まずさを携えてやってくるのですが、正直日本から転生された方の生存率は……常識も知らない環境で特典を持っていたとしても一年も生きればいい方だというのが上の見解です。

転生特典であるアクア先輩を連れて行けない状況――つまり地頭と経験とですべてを相手取らねばならない状況で、理想を諦めず解決しようとしている精神力を持っていることを、私はとても……。

 

「カズマさんは頑張っています、これ以上ないほどに。だからあまり落ち込まないでくださいね?」

「エリス様……」

「ところで今回はどうされたんですか? シルビアの件ではアクア先輩がいなくても問題ないという話でしたが……」

「そ、その……スマホもどきで見てくれるとうれしいっす。百聞は一見にしかずって言いますし」

「そうですか? じゃあ直前まで時間軸を進めて……見ますね?」

 

私としてはあまり人のプライベートをのぞき見しない方がいいのかなぁなんて思って遠慮していたのですが、本人がそうしてほしいというのなら……

私は液晶を操作しながら戦いが始まるあたりまで時間を飛ばす。

 

 

 

 

そこはめぐみんさんの実家のすぐ近く。

ちょうど向こうの世界のカズマさんとめぐみんさんが敵襲を発見したところ。

 

『おいめぐみん、あんなところに魔王軍の連中がいるぞ! ていうかめぐみんの家ん近くじゃないか!』

『どれどれ、性懲りもなくやってきたのは私の爆裂魔法で消し飛ばしてあげたいところですが、家もろとも無くなってしまっては面倒くさいので今日のところは見逃してあげましょう。運がよかったですね、我が本気を目の当たりにすれば生きては帰れないのですから』

 

本当は紅魔の里にみんなに爆裂魔法を使えることを知られたくないというめぐみんさんの強がりが炸裂。

隣で何言ってんだこいつっていう顔をしているカズマさんとともに急いでその場所に駆けつける様子が見られ……

その駆けつけた場所ではダクネスがすでに戦闘を始めていた。

 

『なんだこの女は! 一体どこから出てきやがったんだ! というか何がしたいんだ!』

『シルビア様、助けを呼びに行くでもなく強力な攻撃手段を使わないコイツの考えが読めません! 罠かもしれませんお下がりを!』

『我が眼が黒いうちは悪行を見逃さない! どうしてもここを通りたくば私を倒してからいくことだ』

『ダクネース! 大丈夫か、よく持ちこたえたな!』

 

なんかダクネスとカズマさんがとってもかっこよくみえてしまう。

い、いや、私は二人のことを好んでいますよ?

ただかっこいいというか、トラブルメーカーのような印象が前面に出ているような人なので……

 

『カ、カズマ、もう来てしまったのか……』

『……もしかして、わざと攻撃を大ぶりで繰り出すことで大したことがないと思わせて、本当の意図は援軍待ちだった、それまでの足止めだったって訳ね? ここまで耐えきった防御力からしてかなり高レベルのクルセイダーみたいだけれど、まさかこうなることを見越して……』

『……あ、ああ。バレてしまったのなら……仕方あるまい、な?』

 

……どうやら私の親友クルセイダーがかっこよく見えたのは幻覚だったらしい。

いつもと変わらず頬を赤くして敵に突撃していく彼女の様子になんだか逆に落ち着く。

現地にいるカズマさんも近づけば近づくほどに凜々しいと思っていた顔が赤く蕩けたような表情だったことがわかって微妙な顔になっていく。

今は攻撃が終わってしまったことにがっかりしているダクネスですが、遠近法って恐ろしいですね。

そのようなことを思っているとカズマさんがダクネスの肩を掴み後ろに下がらせ、かわりに自分が前に躍り出て。

 

『確かシルビア様とか呼ばれてたな? そこにいるクルセイダーは俺の仲間だ。魔王軍幹部バニルの不気味な爆発人形にも恐れず勇猛果敢に突撃し、それでも無傷でダンジョンの最深部、バニルが佇む場所へ到達した。その実力をこの短い時間で見抜くとは、さすがは魔王軍幹部といったところか……』

『バニルですって? アクセルの街に行ったっきり帰ってこないって話だったけど、まさか……!』

『そう、そこにいるめぐみんがトドメを刺した』

 

それを聞いてシルビア含む魔王軍がザワついている。

カズマさんの言葉にめぐみんがニマニマしている中、カズマさんはさらに話を続ける。

このまま敵が撤退することや紅魔族の援軍が駆けつけるまでの時間稼ぎか……

彼の性格的に大切なものがかかっていない以上そんな無茶をする性格ではないと思うのですが、なぜそんな無茶をしているのかはわからず首をかしげて画面を見ているとすぐその答えが。

 

『それだけじゃない。デュラハンのベルディア、デッドリーポイズンスライムのハンス、大物賞金首機動要塞デストロイヤーを討ち取った冒険者パーティーとは俺たちのこと』

『な、なんですって! ベルディアがやられたってはきいていたけれど、まさかハンスまで……!』

『魔王軍幹部、観念するといい。この家の者が既に他の紅魔族を呼びに行った。ここに援軍が来るも時間の問題だろう』

『その通り、ここでおとなしく引くことですね。さもなくば我が魔法……は、流石にもったいないのでとっておきますが、我らがパーティーリーダーのユニーク魔法が炸裂しますよ。機動要塞の半分を打ち砕いた威力をその身で味わいたいという変態なら別ですが』

『……私は変態じゃない、と、思うのだが……』

 

そう言いつつ頬を赤く染めニタリと顔を歪ませているダクネス。

正直ダクネスはもう手遅れだと思う。

悔しい顔をして撤退の準備を決め込むシルビアが。

 

『あなたがパーティーのまとめ役かしら。ねえ、お名前は』

『……ミツルg』

『控えおろう! ここにいる者を誰と心得る! 魔王を討伐して世界を平和へと導く勇者、サトウカズマである!』

『おいぃぃいいいつの間にいたんだよっ!? それに何俺の名前を堂々と言ってくれてんの!?』

『あ、アナタは!』

 

そう、そこには圧倒的実力者的雰囲気を醸し出した仮面のカズマさんが不敵に笑っていた。

今まで魔王軍幹部などの大物賞金首との交戦以外に公に存在を表さないように動いてきた彼に対して罵倒が飛んでいますが、罵倒してる口の上――目を見ると彼に対する信頼を確かに感じとれる。

そして、どういうことか仮面をかぶってシルビアの前へ優雅に歩み始めた仮面のカズマさんが。

 

『ふはははははは! 先ほどから黙って聞いておれば……魔王軍幹部の大悪魔であるバニルを討伐した? 嘘は休み休み言うがよい。我が輩こそ諸悪の根源にして過去未来すべてを見通す大悪魔……バニルである』

『……何言ってんだよ』

シィー、合わせてくれ

『……』

 

何か作戦があるようですが敵味方関係なく怪訝な視線を集めて……一体何を企んでいるのか。

そう思っているとシルビアの方へそのまま近づいた仮面が。

 

『もう少し……もう少しで古代兵器を手に入れられたっていうのに……なんて思っている魔王軍の同胞よ、久方ぶりであるな』

『アナタ、一体どういうつもりかしら、ここは私の管轄のはずなのに介入してくるなんて……どういう企みがあるのかしら? それに仮面の色合いが変わって……もし私のかわいい部下たちをおちょくりに来たとかいう悪辣非道な行為なら帰ってほしいのだけれど、土に』

『おやおや、開幕早々故郷に帰れとはなかなかに手厳しい、そのような扱いこそ非道ではあるまいか? ちなみに仮面の色合いが変わったというのはあのパーティーに爆裂魔法を打ち込まれて仮面が砕けてしまったからな。新たに新調しただけのこと。それより、その手に持つ結界殺しで地下格納庫の封印を解き古代兵器を自分の体に組み込むことを目的としている肉体改造女よ、封印は魔法的なものではないのでその目論見は失敗に終わる。尻尾を巻いて帰るが吉とでた』

『なっ……それは本当なんでしょうね!?』

『誠も誠である。直に紅魔族の連中がわらわらと集まって上級魔法の雨あられを撃ち込みに来るので帰るのを勧める……と、以前の我が輩なら言っていただろうが』

『……どういうことかしら』

『ここいらで魔王軍のテコ入れをした方がいいと思ってな。穫りに行くぞ、魔術師殺しを』

 

仮面の裏には極悪非道な目が細まっているのが画面越しにでも伝わってくる。

ヴァーサタイル・エンターテイナーを覚えていないはずなのに芸達者になる魔法を使用してるのではないかと錯覚してしまう…………演技、ですよ、ね?

 

私は息をのんで展開を見守ってしまう。

仮面のカズマさんが敵に落ちたということではないはずですが、自ら魔王軍の幹部を強化しようと案内する状況に戸惑いを隠せない。

それは現地にいた三人パーティーも同じだったみたいで、目を大きく見開き、信じられないもので見たいような様子で。

 

『お前! 今まで俺たちを助けてくれたりしてたのにどうしt』

『バインド』

『グムっ!?』

『味方だと思っていたヤツに裏切られる気分はいかがかな? ふははははっ、嫌悪の悪感情、美味である! 三人とも少々そこで藻掻いてるといい。なぁに、悪いようにはならない。ではシルビア、夜のデートとでも洒落こもうか』

 

口まで縛られた三人を放置して仮面の悪魔(人間)とシルビアは格納庫の方へと姿を消していった。

潜伏スキルでも使ったのか、やけに気配が希薄な二人を追って、辿り着いた先は地下格納庫の封印の前の通路。

正直仮面の下がどんな顔かわからない今正しいことはいえないけれど、きっと鼻の下を伸ばしてるに違いない。

 

 

 

 

「カズマさん……」

「いや待って! どうしてそんなに嫌らしい人を見る目をしてるんですか!」

「でもそろそろカズマ映像が終わりますよ? 私はてっきり魔王軍という巨乳(世界の敵)に悩殺されて、破壊された情緒につけ込まれて洗脳を受けたものかと……」

「そんなことほとんどないに決まってるじゃないですか! なんか悪魔っぽいやつに対してエリス様は厳しいですけど、今回に関してはシルビアのこと別の意味で敵視してないですか?」

「気のせいです。しかし神の目を以てしてもカズマさんの演技は尋常ならざる狂気を感じます……本当に洗脳されてないですか? 最近カズマさんは夜になると……なんというかカズマさんらしからぬ言動をとるので、もしかしたら疲れてるのかもしれませんし……『セイクリッド・ハイネスヒール』!」

「別に疲れてませんしそんな大層な魔法使わないでくださいよ……。それに夜……特に満月の晩ハイになるのは仮面の副作用と、あと夜になるとテンション高くなるんだよ自宅警備員は」

「そうなんですか?」

「そうなんです。それよりも残り数十秒にすべてが詰まってますから」

 

そう言ってカズマさんが私に続きを見るように促す。

仕方ないので画面を見て動画の続きを流す。

 

『さて、封印の地はここであるな』

『あ、あのぉバニル……? 何故か紅魔族が一人もいないんだけど一体どういうことなのかしら……』

『さっきあの三人が言った通りだ。紅魔族が来るように手配した。それさえわかれば奴らの行動など単純期極まりない、高レベルのアークウィザード相手でも手に取るようにわかるバニルさんをもっと褒め称えてくれてもよいのだぞ?』

 

……本当にこの人は味方なんでしょうか。

正体を知っている私ですら敵なんじゃないかと思いますよ?

そう思っていたことが顔に出ていたのか慌てたようにカズマさんが弁明を始める。

 

「これは敵を騙すなら味方からっていう理論ですよ。名演技でしょう? おかげで俺も敵認定されて、敵感知スキルがビンビン反応して避けながら辿り着くことができましたよ」

「……本当に敵に回したくないタイプですね」

「褒めても何もでないっすよぉ?」

「褒めてないです。ですが本当に演技なのかわからなくなりますね……完全に敵対行動ですよこれ」

 

敵を目的地へと誘い封印解除方法も伝授している画面の向こう側の人を見ると言い訳が苦しい気がしますよ?

『我が輩はここを見張っている。なんせ出入り口はここのみであるからな。いくら魔術師殺しを持ち出せたからといって紅魔族に待ち伏せでもされたら大変であろう』

なんて言って自ら協力するし……なんて思っていた。

しかしその次の行動を見ると私の評価は打って変わって反転する。

 

「あ、あれは……デストロイヤーの結界を破壊した古代兵器!」

「そう! ようやく気づきましたかエリス様。俺の目的はこの避けようのない通路に誘い込んで、あの兵器で狙撃して仕留める。ちょうど直線上に打てば仮にシルビアに当たらなくても魔術師殺しは破壊できるって確認したしな。シルビア討伐難易度がぐっと下がるはずだと思って」

「おおっ!」

「ついでに言えば再封印したあの扉だが、封印の解除方法も違うの教えておいたんだ。『XXBBYAYA下右』ってな。万が一なんてない作戦だったんだろ? 日本語(古代文字)で書かれた小並コマンド入力(謎解き)に挑戦して、科学的なセキュリティー(古代文明の遺物)を突破なんて……そもそもコマンドを知らないやつが挑戦しても解けるはずないだろ?」

「すごい…………すごいですよカズマさん! 味方のふりをして目的達成の直前に目的を達成できない絶望感に浸らせながら、それでいて最後に裏切るなんて……! こんな完璧な作戦だったなんて!」

「うん、なんかいざ言葉にされるととんでもない鬼畜の所業だからやめてくれ。しかも今ここにいるってことはその完璧な作戦だと思ってたのが破綻したって訳だからあんまり褒められても嬉しくないといいますか……」

「あ……」

 

確かに今の状況はそういうこと。

私も説明を聞いて完璧な作戦だと納得してしまいましたがどこか穴があったのでしょうか。

どうせ封印は解けない。

出入り口はこの通路しかないし、逃げ道がない場所でレールガンを放てば地下に眠っている『魔術師殺し』ごと魔王軍幹部の一人も破壊し尽せるかもしれない。

そう思っていた作戦が潰えた原因は……

 

 

レールガン自体の爆発。

 

 

動画を進めていくと最後に映っていたのはトリガーを引くカズマさん。

そしてその瞬間に光が銃を起点として周囲を吹き飛ばした。

幸いといっていいのか、爆発の犠牲となったのは、細い通路の中に魔法が吹き込みその火力で肉が爛れ喉の渇きと熱さにもだえ苦しみながら絶命した幹部と、爆心地で跡形もなくなったせいで誰にも知られることなく散った仮面の二人のみ。

3人パーティーが拘束されている方へ紅魔族の人たちはいったので巻き込まれなかったのでしょう。

 

「あのですねエリス様。多分、一度デストロイヤーに使ったじゃないですか。そのときに耐久力限界超えてたんですよ。そう言えば前に一回レールガン使ったときに、その一回だけで熱で溶けてだめになってましたし」

「……」

「それで、どうやってシルビア討伐しましょうかね?」




というわけで何かアイディアないですかね?(募集中)
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