全部のパターン書きたいくらいにはどれも素晴らしかったです。
「味方だと思っていたヤツに裏切られる気分はいかがかな? ふははははっ、嫌悪の悪感情、美味である! 三人とも少々そこで藻掻いてるといい。なぁに、悪いようにはならない。ではシルビア、夜のデートとでも洒落こもうか」
一体こいつは何を言ってるんだ。
いや、どうして裏切ったような言動をしているのかがわからないんじゃない。
こいつは裏切ったと思って行動すべきだってことが頭では理解していても心がついてこれないんだ。
めぐみんもダクネスも俺と同じように思っているのか苦しそうな顔をしていた。
しばらくすると魔法による拘束が解け、それとほぼ同時に紅魔族たちが俺たちの方にやってきた。
そこにはぶっころりーやそけっとといった見知った紅魔族の顔もある。
「カズマじゃないか! 仮面の人に言われてきたんだが、シルビアは今どこに……」
「何から何まで計画済みってことか……」
「ど、どうしたんだよいきなり声を荒らげて意味のわからないことを……。それに仮面の人の姿も見当たらないんだが…………はっ!? まさか、そういうことか」
普段のめぐみんを見ていると紅魔族がどういう特徴を持ってるのかわからなくなる。
紅魔族といえば、赤い瞳、黒髪、中二病……そして高い魔力と知能。
つまり俺の呟きだけで何が起きたかに気づきやがった。
まったく、ニートだからって侮ってかかれないな紅魔族って集団は。
なんて思ってるとめぐみんが。
「カズマカズマ。この引きニートは何もわかってませんよ」
「え? でも『そういうことか』とかいってたぞ?」
「そうだ、我らが赤き瞳はすべてを理解した。これは外の人が我々と同じ感性を有している希有な存在であり、この里を存分に満喫してくれてるってことを!」
「前言撤回、紅魔族ってのはどいつもこいつも馬鹿ばっかだ」
「えっ!?」
ぶっころりーが戸惑いの声を上げる中、俺は全てがあの胡散臭い仮面の手のひらの上であることを悟って悪態をつく。
アイツにとって俺たちはただそこに居合わせただけの存在で、たまたま利害が一致していたから一緒に行動していただけで、元々味方じゃなかったのかもしれない。
「いいか、信じられないかもしれないがアイツは魔王軍の手先だ」
「本気で言っているのかい? あんなにかっこいい仮面の人が悪い人な訳ないじゃないか。ああ言うあからさまに怪しい人は終盤も終盤に裏切るか、結局いいやつだったってのが定番だろ?」
紅魔族ってやつは俺と同じ思考回路しやがって!
……ああ、俺だってそういうもんかと思ってたよ悪いか!
だって異世界だもの、そういうテンプレだと思うだろうが!
でも実際は違った……
「アイツは……シルビアを里の中に手引きするために潜入した裏切り者だ。ここにシルビアがいるって誤情報を流して里の警備を手薄にさせたんだ、シルビアはもうここにはいない」
「里の中に? でもどうしてわざわざそんなことを……俺たちが集団で集中砲火すれば逃げられないってわかってるだろうに」
「世界を滅ぼし得る兵器だ! あれを奪いに行ったんだ!」
「でも封印があるし……」
「駄目だ、あの扉は破られる! というか仮面の人が破ってるところを俺は見た! あの中に巨大な魔道具があるのを見た! 早くあの魔王軍のやつらを止めないと手遅れになるかもしれない!」
俺の言葉を聞いて紅魔族はふざけた様子から一変した。
本物の紅魔族ってのは優秀で、攻撃魔法だけじゃなく肉体強化魔法も使える。
その恩恵を受けて俺たちは疾風のごとく地下格納庫へ俺たちは走り出す。
そうして目的の場所へ着くと、そこには月影に当てられた黒い仮面。
シルビアはいない。
赤い瞳を漏らしながらただそこに一人、迫る紅魔族の集団に物怖じせずに悠々と構えていた。
そこに族長さんが一歩前に踏み出し。
「……ようこそ夜更けに、ネタ種族のご一行殿。俺に構って地下に潜ったお嬢さんを迎えに行かなくともよいのか? とは言っても行くと爆発やもしれんのでな、行かぬ事を勧める」
「下手な言い訳だ。それにネタ種族とはいささか失礼じゃないか、魔王軍の手先。全くもって度し難い、闇の者よ。こんなにもかっこいいやつが敵だなんて、人類の損失じゃないか」
「闇の者、ねぇ……リッチーか何かと勘違いしているようだが俺は人間だ。魔王軍の者とは繋がっていない。今からでも心を清く改め味方に寝返ってもよいのだぞ?」
「……敵やライバルが、何らかの事情か、それとも長年競った友情にも似た何かの末に共闘することは紅魔族的に望むところだが」
「一度裏切った者がそのような命乞いをするときはどのようなときか……言うまでもないか」
「違いない」
「ならば我が輩はこう言おうか。……ここを通りたくば、我が輩を倒してから行くがよい」
和解ができないとわかると残念そうな声を漏らす。
しかしその口を見ると、やはり悲しみとは真逆の愉快極まりない様子に歪められていた。
この人数を何でもないと、計画通りだと言いたげな仮面。
ユラリユラリと俺たちの方へ歩み寄ってくるその奥にある瞳は狂っていた。
俺は得体の知れない厄介さを秘めた敵に思わず後ずさるが、族長さんは面白いといったように、足音を鳴らし。
「我が名はひろぽん! この里の長にして紅魔族を導くもn」
「ドゥレインタァァッチィ……」
「ほああああぁぁ……我が力が奪われぇ……」
「ひ、ひでぇ! あんにゃろう名乗りの途中で攻撃しやがった!」
……そうは言いつつ同じく隙をさらしたやつを「格好の的だぜヒャッハーッ!」っつって襲いかかるだろう俺は鬼畜なんだろうか。
ニタリと笑っている仮面が族長さんにアイアンクローをかけながら地面へと頭を打ち付ける。
手を離すと筋骨隆々といった様子だった族長はほんの少し干からびており、地面から立てないでいた。
「……さて、次は誰だ?」
そんな挑発的な口調が紅魔族の闘志に火をつけた……
実にあっけなかった。
この仮面の男は人心掌握の能力でも持っているのか……
強力な魔法を覚えたからこそ集団戦を覚えない……そんな紅魔族は軍としての強さはなかった。
魔法を放とうとする紅魔族がいれば別の紅魔族の陰へと滑り込み、スキルを行使して戦闘不能へ追い込む。
魔法を全力で放つのを躊躇う状況を意図的に作り出し、その流れで戦力を減らす戦い。
スキルの威力は大したことがないのか1分もすれば復帰しているが、一度スキルを行使されたヤツは疲弊しており、その動きはあからさまに鈍い。
それに加えて第三の目でもあるんじゃないかってくらい攻撃の起こりを見逃してくれない。
魔法が放たれるまでに人質を捕まえられなければ弓矢で杖を打ち抜く。
魔法が放たれようものならヌルリとよける。
俺も戦いに参加しようとするが、集団であることが災いして魔法が撃てない。
気づけば大勢の紅魔族が片膝をついていた。
対して仮面の男はこれだけの大人数を相手取っても息を荒げていない。
それどころか肌が艶々して、ユラリと立ち上がり。
「ふむ、そろそろ魔力摂取しすぎて腹がはち切れんばかりだ。そろそろ潮時……そうじゃあないかシルビア」
虚空に向かって喋りかけるその声とともに、突如あたりに激しい火炎と土砂が飛び散った。
地下への入り口が吹き飛ばされたのだ。
土煙が舞う中で月の光を浴びるのは……
「アハハハハハッ! やったわ! まさか古代兵器が二つもあるなんてね! 貴方が時間稼ぎしてくれたおかげでしっかり体に組み込むことができたわ! こんな堅くて長いブツをどこにしまおうか悩んだけれどね!」
口には地下への通路を吹き飛ばした炎。
体は巨大すぎて未だ全容が見えていない。
メタリックな蛇の体をもつ魔術師殺しをラミアのように体に組み込み、それに加えてデストロイヤーの結界を破壊したレールガンを体の一部にした変わり果てたシルビアの姿が。
その姿に思わず目を見開いていると。
「アタシ達が、ただ兵器を持ち出すだけだと思った? アタシの名はシルビア! 見ての通り、兵器だろうが何だろうが体に取り込んで一体化する力を持つ……魔王軍幹部が一人、グロウキメラのシルビアよ!」
上級魔法より魔力を消費すると言われているテレポートを使えるだけの魔力が残っていないのだろうか。
シルビアの名乗りを聞いて紅魔族の連中は魔法で足止めをしようとしながら一目散に距離をとるために背を向け走り出そうとする……
しかし、どういうことか。
その魔法は発動せずにどんどんシルビアの方へ吸い込まれていった。
普段は冷静を気取っているめぐみんも「あわわわわ、ヤバいですカズマヤバいです! あれが魔法を無効化する魔術師殺しの性能!? 高火力の兵器まで乗っ取られました! 逃げましょう今すぐここから!」と平常心とはかけ離れている。
正直「魔法のエキスパート、紅魔族の里だし、みんながなんとかしてくれるだろ?」なんて思っていたが、本気でまずいかもしれない。
「ふはっははっははは!シルビア、あのゴミどもに食らわせてやれ、古代兵器の雷を!」
「そうね、散々私たちをコケにしてきたのだもの。私の怒りを食らいなさい!」
シルビアが口を大きく開き、魔法を吐き出す。
あれはさっき紅魔族が発動しようとしていた魔法だ。
それが一斉に塊となって発射され、紅魔の里を貫き、燃やし始めた。
「見ろ、人がゴミのようだ! …………ってアレ?」
「あら、どうしたのかしら?」
「いや、あの……俺が魔力込めておいたはずなんだが。その魔力使ってもその威力なのか?」
「ああその魔力ならありがたく使わせてもらったわ、この子たちの取り込みのためにね。なんかこの二つ相性悪くてねぇ、定着させるのに魔力いっぱい使っちゃったのよ。無理矢理取り込んだはいいものの失敗だったのかも……」
「お前的には成功だと思うぞ? まあ俺的には取り込んだのは失敗だって思うが」
「何か言ったかしら?」
「な、なんでも」
仮面の人の表情は見えないが、なんとなくテンションが落ちた気がする。
何か想定外のことが起きたのだろうか。
「……ちなみにだが、魔力使い果たして干からびたりはしないよな? 俺の身近には魔力を使い果たして動けなくなる面白ウィザードがいるもんでそれと同じ現象を狙っ……起こらないか心配だったんだが」
「大悪魔でも見通せなかったかしら? その心配は嬉しいけれど杞憂だったみたいよ」
「ソ、ソウカ、ソレハヨカッタ……」
自滅を狙ってたらしい仮面の男が頭を押さえている。
まるで「あっちゃー、やっちまったかー」みたいな顔で、さっきまでの計画通りみたいな様子はどこへやら。
その目論見が外れて作戦がおじゃんになったらしい仮面の人は「またやり直しか……」なんてため息をはいていたが、一体何のことやら。
俺みたいに転生ができたとして、それはやり直しなんかじゃない。
ここで起きたことはなかったことにはならないし、死んでしまった奴らは神の奇跡でも起きない限り俺みたいなことにはならない。
だからこそどうすればいいかをひねり出すために頭を抱えているとシルビアが。
「それにしてもこの古代兵器使い勝手悪いわねぇ、魔法を完全に無効化してくれるのはいいけど全魔力消費するだなんて。どこぞのネタ魔法じゃあるまいし、紅魔族を根絶やしにした後にでも取り除こうかしら」
シルビアはそんなことを言いつつ里を破壊する。
紅魔族の連中は魔法を使っても無効化されるどころか何倍もの威力になって返ってくることを学習し、地の利を活用して逃げることに専念していた。
しかしウチの少々どころか大分異端児な魔法使いは違った。
シルビアの言葉に耳をピクリと動かし、走るスピードが遅くなる。
俺は「何やってんだ! 早く逃げるぞ!」と手をしっかり握り攻撃範囲外へ逃げるように足を回す。
シルビアはそんな俺たちが逃げ惑う様子に、最初は優越感で気分良さそうにしていたが、徐々に自分の周りをウロチョロする虫のように煩わしくなってきたのか苛立ち、声を出す。
「逃げても無駄よ! 聞きなさい、無意味に私に反抗してきた紅魔族! 今日からアタシがあんた達の天敵よ! 世界中のどこに逃げても必ず探し出して最後の一人まで根絶やしにしてやるわ! お前たちも、そして今後お前たちに関わる者も! これからはいつ襲われるかわからない恐怖に震えながら怯えて暮らすがいいわ!」
そんな宣告をシルビアが発する中、紅魔族の面々は特に気にする様子もなく、誰一人として応じようとはしなかった。
……俺の手をスルリと零れた手を除いて。
「……聞き捨てならないことを言いましたね。これは紅魔族と魔王軍との問題ですよ、シルビア」
現在のシルビア
レールガン取込:魔法吸収→魔法貯蔵→魔法圧縮→一気に発射
魔術師殺し取込:魔法耐性獲得、質量獲得