あの素晴らしい世界に帰るため   作:桃玉

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今までの流れ。
1.レールガンで倒そうとしたら自分も巻き添え食らって死んだバニマ
  リセット
2.1.と同じ流れで、今度はシルビアにレールガンを撃たせて自爆させようとしたバニマ
3.結局爆発しなかったので、発想の逆転で魔力枯渇を狙ってみたバニマ
4.魔力枯渇しなかったので……


7.迷宮の果~暗闇を裂いて~

「……聞き捨てならないことを言いましたね。これは紅魔族と魔王軍との問題ですよ、シルビア」

 

そう言って俺の手をすり抜けて前に出たのは、どこに沸点があるのかわからないウチの短気な魔法使い。

ただ静かに杖を構えるその様子にシルビアはおろか紅魔族たちまで怪訝な表情を浮かべている中、俺の息が止まる。

逃げていた者の足が止まる。

シルビアも動きを止め、舌なめずりをして笑みを浮かべる。

 

「あら、さっきから影の薄いお嬢ちゃんじゃない。紅魔族がみんな貴方みたいな凡人だったら、見逃してあげてもよかったのだけれどねぇ……」

「……私はめぐみん、紅魔族に生まれつき、魔法の申し子と持て囃された紅魔族随一の魔法使いとは私のことです」

「本当に珍しい。あの変な名乗りをしないのかしら、紅魔族ならはったりが大事でしょう?」

 

からかうようなことを言うシルビア。

それに対して平坦な声で、一切動じることなく冷静に敵と対峙するウチのアークウィザード。

この里では爆裂魔法しか使えないことがばれたら落ちこぼれ扱い……魔法は使わない方がいい。

俺はそう思っていたのに、めぐみんの声が本気を伝える。

こいつには、やると言ったらやる………凄味がある。

 

「立ち止まるんじゃないめぐみん! あいつに魔法は……!」

「そんなこと承知の上です。これは、カズマとダクネスには関係のない、私の紅魔族の矜持の問題ですから。それに、何だかんだ言って我が魔法は最強。すべての魔王軍幹部を滅した人類最大威力の攻撃手段が、兵器を自分の体に取り込んだだけで制御できていないキメラごときに後れをとることなどありえません」

「馬鹿者! 本当にめぐみんは大馬鹿者だ! ハンスの時でさえ、ウィズやゆんゆんがいなければ……」

「私ですが討伐したのは私です! 冒険者カードでも見ますか? 凄いのは私なのです! わかったら部外者は先に逃げてください、私の冒険者カードに新たな幹部の名前が刻まれる瞬間をとくと見よ!」

 

俺の言葉に耳を貸さず冷たく俺たちのことを言葉で突き放す。

……ヤバい、コイツ、本気も本気だ。

俺はめぐみんの魔法の威力を知っている。

紅魔族、そして俺たちがいるこの位置はギリギリ巻き込むか巻き込まれないかの位置だ。

そして、それより前にいるめぐみん。

まるで、自分一人で助かるのなら、魔法に巻き込まれても仲間が死なないのならどうでもいいだろうとでも言うかのように。

俺たち三人の関係はそんなものだったのかと、一瞬「そんなこと言うんだったら勝手にしろよ!」と怒りと悲しみから言いたくもない言葉が出かけたが、それはダクネスによって遮られた。

 

「部外者なわけあるか! 前々から無鉄砲な猪だと思っていたがここまでとは思ってなかったぞ! いいから私たちと一緒に……」

「五月蠅いですね……はっきり言わせてもらいますが魔王軍に臆する貴方方は足手まといです。我が覇道を邪魔立てするというのなら……!!」

 

俺とダクネスはめぐみんの手を再び繋ぎ直そうとして、キッとめぐみんに睨み付けられたじろいでしまった。

怖かったとか、恐ろしかったとかじゃなく、今まで見たことのないほどにちぐはぐな様子に驚いてしまった。

 

片目を覆っていた眼帯は外されていて、種族の名を冠した瞳。

この中にいる誰よりも紅く、静かに、燃えさかっていた。

未だかつてないほどに恐ろしいまでに紅く紅く輝いた瞳に宿っていたのは……懇願。

言葉は俺たちを突き放すように冷たいのに、涙と不安そうに歪められた眉は何かを俺たちに求めるようだった。

 

「私と幹部の戦闘の余波に巻き込まれたくなくば逃げるがいい弱者よ。この圧倒的強者である私が、借り物の力で威を借る醜き愚物に我が必殺の一撃で引導を渡してやりますので」

「あらあら、紅魔族は頭が良いって聞いていたけれど何事にも例外はつきものね、自称紅魔族随一の魔法使いさん?」

「いかにも、私は天才故に紅魔族の枠から外れた、謂わば戦闘民族の中でもエリート、スーパー紅魔人なのですから」

 

その様子を見た紅魔族たちがざわつく。

やれ「もっと切れがあった」だの「皮肉に気づかないなんて、知能が下がったんじゃないか」だの「売られた喧嘩は買わないと」だの……

本当に「そんなわけあるか!」って、「俺たちのめぐみんはこんなもんじゃない」って声を高らかに言い返してやりたい。

 

コイツは普段はもっと中二病で、頭がおかしくて、短気で……仲間を誰よりも大事に思ってる頼りがいのあるやつなんだ!

それが今は何だ……こんなにも背中が消え入りそうだ。

 

効かないと言われている魔法攻撃……爆裂魔法が効くかどうかなんてわからない。

もし、倒しきれなかった際にめぐみんを担いで逃げ切る自信はない。

だからといって仲間を見捨てるような男にはなりたくない。

はぁ…………しょうがねーなぁ……ッッ!!

 

 

「普段は敵いっこない相手に喧嘩を売るなんてしたくないが、今はなんだかはっちゃけたい気分だ」

「奇遇だな、私も普段は喧嘩をしたら止めるポジションなのに今日ばかりは無性に暴れたい気分だ」

「いや、お前は割と毎回俺の制御から外れて暴れまくってるだろ……まあ、今日くらいは俺公認だ……だから俺も問題児になってもいいだろ?」

「あらあら、死にたがりがもう2名追加かしら? 仲間を見捨てないその気概は褒めてあげるけど、今まで散々こけにしてきた紅魔族の関係者なら容赦はしないわ」

 

そう言ってめぐみんの前に出た俺たちのことを睨み付けるシルビア。

魔法を吸収して、それをレールガンに取り込ませる算段なのだろう。

その場から動かず余裕そうにニヤニヤと嫌らしい笑いを浮かべていた。

……あのレールガンの耐容魔力量を超えた爆裂魔法を放つことで、魔法吸収されない分の魔法が炸裂してくれるはずだ。

 

「余波は私がすべて防いでみせる。だから私より後ろにいるんだぞ?」

「何を馬鹿なことを! ここにいれば余波が直撃しますよ! 我が爆裂魔法を耐え抜けるとでも?」

「お前こそ、耐えられるとでも?」

「そ、それはあれです! 我が身に秘めたる邪神の力が覚醒してですね……」

「結局のところ奇跡だよりではないか。あの凄まじい威力の魔法と私の防御力、どちらが上か一度試してみたところだったのだ……ハァ、ハァ……」

「この興奮してるドMは放って魔法の詠唱しておけよ、俺の魔力やるからさ、一発盛大にな」

「お、おい、さすがにスルーされると辛いのだが! それと私の使い道のない魔力も是非吸ってほしいのだが……」

 

通用しない可能性の方が高いが、せっかく爆裂魔法をぶちかますんだ……

後悔しないように全力でやんなきゃな!

ダクネスと俺の魔力全部持ってけと言わんばかりに無理矢理めぐみんに流し込んでいると、ぽつりと声が聞こえる。

 

「…………何で。……何で逃げてくれないんですか」

「そう言われてもなぁ……さっきあんな顔しておいて逃げられるわけないし、助けてくれって顔してたぞ? あ、今から帽子で顔を隠しても無駄だかんな?」

「……あんなに酷いことを言ったのに、どうして私に構うんですか」

「……仲間だから?」

「何で疑問形なんだカズマ。そこは断言するところだろうに……」

「いやだってさっき散々ひどいこと言われたんだもん、本当に言い切っていいかなって思っ……ああ、悪い悪いからかいすぎた! 正真正銘俺たちは仲間だから一蓮托生的な? だから……」

「ひたむきでか弱い少女を泣かせるなんて何て鬼畜外道のゴミかすなんだ! もう少し極めたら是非私と結婚を前提としたお付き合いを……」

「付き合いません! というか本当に何なの!? 俺のこと好きなら正直にそう言えよ! いや、今そんなことしたら死亡フラグ建つからやめてほしいんだが」

「ふっ、あははははははは!」

 

俺とダクネスのやりとりを聞いていためぐみんが吹き出した。

何がそんなに面白かったのだろうか、盛大に笑った後もめぐみんは口元をニマニマさせていた。

 

「……本当にこの人たちは、どうしてくれるのですか? さっきまでとってもシリアスな感じで紅魔族的に趣深かったのに」

「んなこと言って、なんだよその顔は」

「いつも私たちの尻拭いをさせてばかりですが……今日は二人も共犯ですよ? こんなに嬉しい日には、涙より笑顔の方がふさわしい! そうに違いないのです」

 

めぐみんの詠唱が始まった。

ビリビリと空中に迸る魔力の塊。

ダクネスと俺の魔力を上乗せしたら仲間パワーで何倍かにならないかななんて思っていたが、さすがにそんなことはなく1.5倍くらいだろうか。

いつもより多めに魔力を込めております一発芸は爆裂魔法。

オーディエンスである紅魔族もシルビアもただならぬ魔法の気配を感じているのか、額に緊張を走らせていた。

それでも受け止める自信があるのか、事の行く末を見守りたいのか、動こうとする気配はない。

 

そろそろ俺の魔力もダクネスの魔力もめぐみんに送り終わった。

あとは魔法を完成させるだけだ……

 

と思っていたそのときだった。

めぐみんから放たれる気配とは別の、強大な魔力……爆裂魔法の魔法陣がめぐみんの魔法陣に重なる。

魔法の術者を探すと、そこにいたのはやっぱりあの男だった。

 

「レールガンに込める魔力は爆裂魔法の4倍相当だって言ってるのに……毎度のことながら無茶する3馬鹿ども! 駄目で元々だが俺も加勢するぞ……ほら、魔力もっとくれよ紅魔族! 上級魔法打てるやつは全魔力込めて撃つ準備しておけ!」

「ふっ……闇の者と本当に手を組むことになろうとは。……だがそういう展開、むしろ嫌いじゃない!」

「ええ、むしろわかってるわねアナタ! 外の人なのに!」

 

この短時間でどうやって和解したのだろうか、紅魔族の皆から魔力をもらいつつ爆裂魔法を制御していた。

今まであの人があんなに巨大な魔法を放ったことがあっただろうか。

ベルディアの時はクリエイト・ウォーターだけだったし、デストロイヤーのときも自分から魔法を使ったことはなかった。

バニルのときもハンスのときも……

実力を隠してたって訳か、憎たらしいやつめ……頼りにしてるぜ!

 

「バニル……一体どういうつもりかしら、私に向かって攻撃しようとしてるなんて」

「フハハハハ! 今やっているのは『オラに元気をわけてくれ!』作戦である。ちなみに俺の爆裂魔法は魔力量3倍相当だ! 魔法を最大まで耐えた後にこそ至高の一撃が放てるというもの、容量超えてボンッとなるやもしれんが頑張ってくれたまえ!」

「さ、さすがにその威力は聞いてないんだけど。アタシ死なないかしら?」

「ワンチャン死んでくれると助かるがどうであろうな」

 

その言葉を聞いてようやくこの仮面がバニルでないことに気づいたか、シルビアの顔は真っ赤に染まる。

それこそ、「味方だと思っていたヤツに裏切られる気分はいかがかな?」だ。

 

「しかしながら予言しよう、破滅の相が出ている汝に未来は訪れないと」

「バニルでもないのに知ったような口を! 占い師か何か知らないけれどこの里にいる赤い瞳の黒髪……アンタも紅魔族だったのねッ!!」

「俺が紅魔族、か。そう思うのであれば貴様の中ではそれが真実なのだろう。死人に口無だからと言って『冥土の土産に……』と死亡フラグを口走るまい。すまないが事実は墓まで持って行くことにするのでモヤっとした気分のまま果てるがいい」

「ずいぶん口が達者ね……その癪に障る口、すぐにきけなくしてあげる!」

 

怒りに駆られ、何か行動を起こそうとしたようだったが、もうすでに俺たちの準備は終わっている。

加えて、紅魔族も仮面の人も、見たところスタンバイオッケーだ!

 

「よしっ! めぐみん、仮面の人、紅魔族のみんなッ! 盛大にぶちかましてやれぇぇええッッ!!」

「よいでしょう! 魔王軍幹部シルビア、我が滅びの呪文を聞くがいい! ……

 

 

『エクスプロージョン』――ッッ!!

 『エクスプロージョン』――ッッ!!

 

 

重なった赤い魔法陣はシルビアに吸い込まれていく。

紅魔族の放った上級魔法を含め、俺たちの魔法が吸い尽くされ……

最後の数発だけ、吸い込まれずシルビアの体に当たった。

俺が想定した作戦自体は間違っていなかったみたいだが、魔法が体に当たり爆ぜた部分は一切の傷なし。

 

「これが、魔術師殺しの防御力……これが、世界を滅ぼしうる兵器の最高火力……! あははははははは! 私のために魔力提供ご苦労様! そして、さようならっ!!」

 

……無駄なあがき、だったのか?

爆裂魔法何発分の威力を秘めてる一撃を撃たれたらこの辺一帯が灼熱浄土と化すだろう。

むしろ敵の攻撃威力を底上げしてしまっただけなんじゃないか?

俺は魔力が足らなくて霞む視界でそんなことを思いながら、その場を離れようとなんとか立ち上がろうとして……

 

シルビアを中心に盛大に爆発した。

 

轟と耳がつんざけそうなほどの凄まじい音と共に荒れ狂う熱気が肌を掠めた。

俺とめぐみんに直接当たらないよう俺たちに覆い被さるように庇い、熱風の嵐の壁となっているダクネスが苦しげな声を漏らす。

 

「ダクネス!」

「ぐっ……心配するな……はぁ……かなりきつめのプレイだと思えばなかなか……~~ッ!」

「おまっ、本当に大丈夫か!?」

「カズマ!? ダクネス!? 一体何が起きてるのですか!? 私の爆裂魔法で仕留められたんですか!?」

 

めぐみんの心配そうな声とは裏腹にダクネスの顔は嬉しそうに歪められていた。

その冷や汗の量、顔色の具合はちょっとヤバめだが。

10数秒くらいだろうか、しばらくして熱さが暑さに変わったところで外を確認すると、そこには見るも無惨な魔術師殺しがなんとか辛うじて形を保っていた。

上にあった肉体やレールガンは見当たらなかった。

そこにザッと足音がしたので慌ててダクネスとめぐみんを引っ張ろうとして……

 

「いやぁ終わった終わったー! お疲れさん、応急手当してやるから無理して動くな……ってダクネスひっど!?」

「お、お構いなく……もう少しで、後もう少しで何か新境地が見えそうなのだ……」

「構うわ! 痛すぎてガクガク震えて意識消失の一歩前じゃねーか! ほら『ヒール』『ヒール』『ヒール』『ヒール』!! ……本当に応急処置って感じだからこの後ゼスタの変態のところに行くぞ、痕残したくないだろ? 一応おっさんの治療の腕は確かだし、ほかのアクシズ教徒と違ってエリス教も受け入れるだろ」

「ううっ……痛みが引いていく。……まあアクシズ教の変態に治されるのは吝かではないから機嫌は悪くならないでおいてやる」

「……大分余力あるのな、ダクネスもアンタも」

「このド変態はギリギリだぞ? まあ俺は紅魔族からあれだけ魔力もらえばある程度は。あとマナタイトも使ったし……こりゃ当分カジノ生活かぁ?」

 

そんな暢気なことを言う仮面の人。

胡散臭さは相も変わらず。

敵対したように見せかけて実はそんなことない、どの場面でも味方なこいつだが……

何をどこまで知っているのか、何が目的か、何も知らないわからない、正体も何もかもが不明な人のまま。

コイツの仮面の裏を見ることになるのはいつになることやら……




ようやく紅伝説終了です。
本当はレールガンを地下格納庫で撃たせて致命傷を与える手はずだったんですが、何か皆さんが思う予想通り過ぎると少々つまらないかと思いまして、ちょっと盛ってみました。

そして次回からアニメ3期です!
カズマは調子に乗って戦場に乗り込みコボルトに袋だたきにされないですむのか!?
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