あの素晴らしい世界に帰るため   作:桃玉

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紅魔の里から、ちょっとアルカンレティアに寄り道した後、帰宅したカズマ、めぐみん、ダクネス。
それから数日後……


6巻 アイリス
7.意地の悪い声~笑い飛ばして~


『数多の魔王軍幹部を倒し、この国多大なる貢献を行った偉大なる冒険者、サトウカズマ殿。貴殿の華々しいご活躍を耳にし、是非お話を伺いたく。つきましてはお食事などをご一緒できればと思います。――ベルゼルグ王国第一王女 ベルゼルグ・スタイリッシュ・ソード・アイリス――』

 

俺たちがアルカンレティア在住変態アークプリーストのお世話になっていた間にそんな手紙が。

俺とめぐみんは顔を見合わせ……

 

とうとう俺たちの時代が来たか……(とうとう私たちの時代がきましたね)

「や、やめろーーッ!! 何故こういうときだけ乗り気なんだ! 二人ともこんなものは辞退しようそうしよう! 第一王女のアイリス様に何かあれば首が飛ぶのだ! この中の誰かが無礼を働いただけで大問題になるんだ! 礼儀作法なんて知らないだろう? そんな堅苦しいのは嫌だろう? な? 辞退しよう! そ、そうだ、ダスティネス家がどこかの美味しい店を貸し切って、身近なものを集めて宴会を行……」

 

涙目のダクネスがぶんぶんと首を振りながら立ち上がった俺の腰に、街の皆に吹聴する予定のめぐみんのスカートに手をかけてきた。

クソっ、国家権力の横暴だ!

だがこれしきのことで止められると思うなよ。何よりも自由を愛する冒険者である俺たちは貴族の圧力なんかに屈指はしない!

 

「もともと俺は妹がほしかったんだ! 聞けば王女様はまだ10歳かそこららしいじゃないか……貴重な妹枠の確保の機、逃さずにはいられない!」

「バカ! 本当に貴様というやつはどうしてこういうときに頭のネジが複数はずれるのだ! いいか、相手は王女様なのだ。賢いお前なら妹枠の確保と王族に対する非礼、どちらがよいかなど少し考えただけでわかるだろう?」

「もちろん妹枠の確保が最優先だ。というか王女様に会ってみたいよ俺は。やっぱり純粋でおしとやかな非色物枠なのか? それとも天真爛漫で遊び盛りのお転婆さんか? 今から妄想が膨らんで膨らんでたまらない! きっとアクア様なら許してくれるだろう」

「ゼスタ殿の影響をモロに受けてないか!? そんなこと女神アクアが許しても私とエリス様は許さないぞ!」

 

失礼な、ゼスタのおっさんをばかにすんなよ?

アクシズ教の最高責任者……ちょっとダクネスやめぐみんだけじゃなく俺を見る目にもヤバさを感じたが、それはそれとしてウチのパーティーに欠如してた回復魔法や支援魔法をタダで教えてくれた聖人だろ。

 

「回復魔法をかけるときが一番至福の時間……これは女神アクアが私に与えてくれた天恵でしょう。肌を直に触る方が回復力が高まると信じているので、ええ、これは健全な治療ですとも。乙女の背中がこんなにも焼き爛れてしまっているのですからこれは正当な治療行為です。いくら私がアクシズ教だからといって変なことをするだけのために背中を触らせろだなんて。私とお嬢さんの体が一体化になってる感じがして素晴らしいとは思いますがしっかり治療してるので……ほら、スベスベの柔肌が戻ってきましたよ? ハァ……ハァ……! 治療効果がきちんと現れているかの触診ですから、ついでに嫌らしい手つきになろうとそれは仕方がないことなので……」

 

とか早口で言っていたが、結局手を出さなかったし。

俺がプリーストの魔法を教えてくれないかって頼んだら「治療と私の心の平穏を保つことができたお礼に回復魔法など何でも教えてあげましょう! 手始めに『セイクリッド・シェル』など如何です? これは私一押しの魔法でして悪魔っ娘に手を出してはいけないという教義を守るために重宝してます。『イェス悪魔っ娘、ノータッチ』ですからね」などといろいろ教えてくれた。

まあ、説明してくれた使用用途は明らかに狂っていたが、どれもこれも工夫次第では使いようがありそうだ。

まあ、スキルポイント的に『ヒール』と『パワード』だけ取得して、残りの支援魔法とか上位の回復魔法とかは温存してるが。

 

そんなことを考えていたら、だんまりして納得してない態度をしていた俺にダクネスが。

 

「なあ、本当に私にできることならなんでもするから考え直してくれないだろうか……そ、そうだ、妹枠ならめぐみんという適材がいるじゃないか、もっと年下をご所望ならこめっこでも……」

「何を言い出すのですかこのクルセイダー! 私の妹を生け贄に差し出さないでください! この男が何をしでかすかわからないでしょうに、せめて私ならまだなんとかセクハラに耐えられるものの……というわけで私で妥協しませんか?」

「めぐみんはロリ枠だし王女様に会いに行かないっていうのはなしだからな。いい加減諦めて俺と王女様を会わせろよ」

「ろ、ロリ……!?」

「そうか……ならば私は何てどうだろうか……年上だしクールなお姉さん枠とかだろう? 何でも言うことを聞いてやるから……そ、それこそ不本意ではあるが卑しい雌豚だのと罵ってこの体を好きに使ってくれても……ハァ、ハァ……。こ、こほん、とにかく。アイリス様には会わない方向で何卒……」

「はんっ、なぁにがクールなお姉さん枠だ。その大きな胸に手を当てて考えてみろ……自分の性癖挟みやがって、オマエは、どう考えても、エロ枠だろ! その提案却下も却下、ド却下だ!」

「え、エロ担当……!?」

 

めぐみんとダクネスが何かショックを受けて落ち込んだ様子だが俺は気にしない。

今頭の中を埋め尽くしているのは未だ見たことのない本物の王女様の妄想。

俺、王女さんに「カズマお兄ちゃん!」って呼んでもらうんだ!

 

「こうしちゃいられない、王女様に会うんだったらそれなりの装いをしなくちゃな! なんせ今まで死なない冒険者をやってた俺だ、正装の一つも持っていない……そうだ、KIMONOなんてどうだろう! 俺の国の由緒正しき服装といえばKIMONOだ! ブラジルのリオのカーニバルかサンバかで着想を得たというマツケ○のキラキラした着物みたいに、俺も生地で仕立ててもらって笑顔を届けるべく……」

「カズマ、いやカズマ様! その服装だけはやめ……やめてください本当に! 私の貴族としての立場が……ホストである我がダスティネス家がおかしな道化師冒険者を連れてきたと吹聴され評判が地の底へとたたき落とされてしまう!」

「仮面の人とかいるし今更だろ。それより、KIMONOが駄目だって言うんだったらきちんとした上流階級のお嬢様に会うときの服装は何がいいんだよ?」

「わ、私だって一応歴とした上流階級のお嬢様なのだが……タキシードをこちらで見繕っておくから変なまねをするのはやめてくれ。……めぐみん、お前にも言っているのだぞ」

「なっ! なめないでいただきたい! これでも紅魔族は王都に引っ張りだこの種族……故に、紅魔の学園では礼儀作法などその辺りのことは教育済みです。鬼畜とか言われているカズマを差し置いて常識人な私を指名するとは、一体どういうことか言ってみるといい。……あっ、ちなみに何を着ていきたいかと問われたら私は黒のドレス1択です」

 

お前ん家が貧乏なのも、お前自身が仕送りで金欠なのもわかるが、ダクネスにドレス代を集る気だろ。

……俺ももちろんこの波に乗らせてもらうが。

というか普段から頭がおかしい爆裂娘だと言われているお前が俺よりなんだって?

俺には鬼畜とかハイエナマスターとか、どこかの仮面と混同してつけられてしまった不名誉な二つ名があるがめぐみんのは身から出た錆ってやつだろ、一緒にしないでほしい。

 

 

 

 

そんなこんなで翌日。

ダスティネス邸に行って俺たちの正装の採寸をしてもらった後のこと。

めぐみんはダクネスのお下がりでどうだろうと服をあてがわれて、発育の差に絶望して家に引きこもってしまった。

いくら呼んでも上の空で「私は偉大な魔法使い……すでに魔王軍幹部を4人も討伐している私は偉大な魔法使いです……つまり巨乳になるのは逃れようのない運命(さだめ)なのです、そうに違いありません、ええそうですとも……」とブツブツ呟いてるのでダクネスに頼み、俺はその間にウィズ魔道具店へ。

というのも俺が密かに考案していた画期的魔道具「ライター」がウィズの店で販売されはじめた。

考案者として初日の売れ行きがどんなものか気になり、ドアをたたいた。

 

「よう、バニル。景気の方どうよ? もうかってまっか?」

「うむ、ぼちぼちでんな……つまりウハウハで笑いが止まらんとはこのことである! そこで目を回している儲けを無に帰す程度の能力を有する非リッチな店主もきっと久しぶりに砂糖水にありつけてうれしいだろう」

「バ、バニルさん、そろそろ固形のものが食べたいです……。流石に毎日水だけは……」

「甘ったれるなこの才能を魔術にすべて変換しておかげで絶望的に商才が欠如した穀潰し店主! 最近は魔法の才能すら感じさせず働けば働くほど借金をこさえてくる才能を極限まで磨きおってからに!」

「そんなひどい!? 私だって頑張っているのに……!」

 

またこの商才がない店主はやらかしたらしい。

バニルの儲かってるとの言葉とは裏腹に顔色がよくないのはそういうことか。

まあアンデッドと悪魔なんてもともと顔色悪いのがデフォルトなんだしいつも通りっちゃいつも通りだが。

 

「我が輩はいつも世話になっている婦人方と我が輩のよき味方であるお子様方に商品を買ってもらうべく宣伝をしてくる。一万エリス以上お買い上げの方には『夜中に悪魔的に微笑み貴女の睡眠を見守るバニル人形』をプレゼント! 五万エリス以上お買い上げの方には『子供ならこぞってほしがる色違いバニル仮面』をプレゼント! 期間限定と接頭語を言っておけばお得感と子供の笑顔の効果でぞろぞろお買い求めいただいている未来が見える、見えるぞ!」

 

正直あの仮面はかっこいいとも思わなくもないが……うちの隠しもせずバニル仮面をほしがっていた爆裂魔法使いは子供だったらしい。

そんなことを思っているとバニルはシュタッと華麗に、いつの間に用意していたのかわからない広告を瓦版のように街中にばらまき始めた。

店はもともと繁盛している様子だったがその広告の効果のおかげでさらに人が殺到し始めた。

消費者でもない俺はここにいても邪魔かと思って家に帰ろうとしたのだが。

 

「おっと小僧! そこの隙あらば問題商品を仕入れてくるアホ店主を見張っててくれるとありがたい。報酬はこの当店の売れ筋商品特製バニル仮面のレアバージョンをくれてやる。この量産型バニル仮面を月夜につければ謎の悪魔パワーで魔力上昇、血行促進、肌もツヤツヤ、絶好調になれる代物だ」

「……仮面の人の仮面じゃねーか」

「いらぬと申すか?」

「いります」

 

……別にほしかったわけじゃないから!

俺の中二病が再発したとかじゃないから!

ただあげると言われたのだ。もらっておかねば失礼だろうし、何よりめぐみんの機嫌をとれると思ってだな……

あっ!

それに、きっとあいつのことだ、まだ家で自分のコンプレックスと向かい合っているはずだ。

自慢げにこれを見せびらかして「ああ~! 私もほしいですぅ!」とか言わせて、機嫌取りのためにプレゼントしてやるためにもらっていくだけだからな!

 

「……頭の中で言い訳しているところ悪いが、それはそれで彼女にプレゼントする的な展開なので何も言い訳になっていないぞ、年がら年中発情期で避妊具の開発も密かに行っている小僧よ」

「べ、べべ、別に彼女のプレゼントじゃねーし! 世話の焼ける妹みたいなもんだし! …………ううっ覚えておけよ!」

「フハハハハ! とっとと店から出たいのにこの仮面がほしいから逃げられずぷるぷると震えている小僧の羞恥の悪感情、大変美味である」

 

チクショウ!

この悪魔嫌いだ!

 

そんなこんなで俺はこの店でしばらくバイトをした後、帰宅した。

どういうわけか、俺がバイトをしてる最中にブラックバニル仮面がなくなってしまったので、仕方なく通常バージョン量産型バニル仮面を十枚ほどいただいて帰ってきた。

バニルは「我が輩の見通す目を掻い潜って盗みを働く輩がいようとは……見つけ出し役所に突き出してやらねば」などとブツブツ呟いていたが、俺からしたら……

 

仮面、こんなにいらねぇ




「カズマさんが二人いることを知られたら異分子として存在そのものが抹消されちゃうので気をつけてくださいね?」
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