あの素晴らしい世界に帰るため   作:桃玉

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重大な警告
これから先、アニメ3期では触れなかった内容(重大なネタバレを含む)が出てきます。

特にアニメ勢の方。
「アニメで触れなかったクリス関連のネタバレ」と言われてわからない人は書籍第7巻のラストを読んでから今回のお話を読むことを強く推奨します。きーっとびっくりしますよぉ(宣伝)
ネタバレが問題ないという方は自己責任でよろしくお願いします。


8.重ねたこの日々~怖くないわけじゃない~

「えーと、」

「待ってください違うんです」

「待ちませんし何も違わないですよ?」

「あの頃のクリスさんは若かったといいますか!」

「俺の一個下自称してるくせに若いもないですよねエリス様?」

「あぅ……じ、自称じゃないです……」

 

なんか新鮮!

いつもは俺が開口一番に「違うんです!」っていう展開なのに、今回はエリス様が弁明を始めるなんて。

まあ何に対しての弁明かはわかってる。

クリスが言った例の中二病台詞に対してだ。

もともとお転婆で茶目っ気たっぷりの盗賊様は確か……

 

「『……君はどこまで知ってるのかによるよ、正体不明くん。答えによっては今ここで君を始末しなきゃなんだけど……』」

「うわああああ! 忘れて忘れて忘れてくださいーっ! そもそもあれは向こうの世界のクリスであって、私の管轄している世界とは違う性格かもしれませんし!」

「そんなわけないだろ、むしろ昔からあんな調子で面白い感じだったわ」

「そ、そんな目で見てたんですか!?」

「たりまえじゃん」

 

だってクリスって言えば、俺にスティールを教えてくれて、調子に乗ってスティール勝負するもんだから俺にパンツ剥がれて、全所持金を交換する羽目になったかわいそうな子だぞ?

それに、いつの間にかめぐみんが立ち上げた「銀髪盗賊団を応援し隊」(仮名)に加入させられ、銀髪盗賊団のお頭なのに下っ端に成り下がるという面白……かわいそうな子なんだぞ?

元の世界でもこの世界でも面白半分に足突っ込んで面白い目に遭うのは変わらない。

 

俺はさも当然ことを知らなかったエリス様に事実を突きつけた。

そのことに対してエリス様はとてつもなく不服そうな顔をして……

 

「そ、そもそも! どうしてあんなことを言い出したのかカズマさんは理解していないです!」

「と言うと?」

「まず、単純に調子よくノリに乗っていたことは認めましょう。ええ、認めますとも。ですが本当に怪しかったじゃないですか! あれでも今まで結構やんちゃし……修羅場を幾度となく潜った身なのです」

「清楚担当がやんちゃしてたのか?」

「おいそれとあんな怪しんでくださいと言わんばかりの風貌をしたカズマさんを見て警戒しないわけにはいかないじゃないですか!」

「スルーしないでくださいよ……てか、一応アレで警戒してたんですね」

「一応じゃないです、しっかりです」

 

俺の感覚、機織り職人のモヒカンのポチョムキン4世(荒くれ者)と同じ、なんか意味深なことを言ってみるけどその実何も考えてないノリと勢いの精神に思えるが……

断固として警戒していたと主張するエリス様。

 

「でも最終的に信用してましたよね俺のこと。やっぱり決め手はベルディアの一件ですか?」

「……それは否定しません。信頼はなくとも、私達に徒なす邪悪な存在を倒してくれたあの一件は判断材料の一つだったと」

「じゃあどうして……」

 

 

クリスさんは王城に来なかったんですかね?

 

 

俺が言わんとしていることを察したエリス様が気まずそうな顔をして目を背ける。

そう、エリス様の反応を見てわかるとおり、今回はクリスが「いってみよう」と来ることはなかった。

おかげで俺の作戦はおじゃん。

 

「やっぱりベルディアの話で信用したってのは嘘だったんだ! クリスは向こうの俺のことも、この俺のことも信用してなかったんだ……グスン」

「そ、それは! だって怪しげな仮面の人とはほとんど初対面ですし、今まで向こうのクリスさんは向こうのカズマさんの人柄をほとんど知らなかったんです! そう、パンツをスティールされただけの仲だからね巻き込みたくないって思っても仕方ないですよね!」

「巻き込みたくない? 俺のスティールに巻き込まれたくないの間違いでしょうが……何かつらいっすわ」

「う、嘘泣きはやめてください、涙は嘘でも良心が痛みますから!」

「泣いてねーし……けどよ、なんで信頼値変わったんです?」

「それはほら、普段地上で活動してる、盗賊としてのクリスはすごく、その、親しみやすいでしょう?」

「今のエリス様と同じくらい茶目っ気たっぷりで親しみやすいですよね」

「……ちょっと私の理論が通らなくなるのでお口チャックしててください」

 

どうやら俺は意図せずしてエリス様の論を破綻させてしまったらしい。

というかエリス様が親しみやすいかどうかがどうして論理のポイントになってるんだ?

そこまで考えて……

 

「あ、そう言えば今回の世界線の俺、まだ1回も死んでないじゃん」

「お察しがいいようで。そう。カズマさんは天界で私と会ってないんです。たった2回3回程度ですがそれが重大な影響になってるのかと……というのもですが、女神としての力は、その、神聖なオーラっぽくないと使えないのはご存じですか?」

「……ああ、そう言えば聖職者やら神様やらは俗な行動すると神様の力が十分に働かないんでしたっけ? アクアも言ってたわ。状態異常無効もシュワシュワの前では効力がないとか何とか……」

「正義のために盗みを働く義賊は崇高な行いで……ゾクジャナイデスヨ」

 

俺から視線を外し頬を掻くエリス様。

行いが崇高でも動機が俗なんだなぁ……

つまり、人柄を見通す目は十分に俺のこと見てなかったと、アルコールのせいで目は濁っていたと、そういうことだそうだ。

チクショウ、何がアルコールは人間関係を円滑にする道具だ、嘘っぱちめ!

そんなことを思っているとエリス様がはっと何かを思い出したこのように。

 

「そ、それと、よくよく思えばカズマさんが言い出したことも影響があると!」

「何を俺が言い出したって?」

「『これ(胸もみ)を回避するためにも、まずはあのアルダープの別荘には近づかない方がいい! あそこには神器はないし、行くんだったらアルダープの屋敷の地下を探してみるんだな』っておっしゃってたのはカズマさんです」

「……うん? 確かに俺が別荘には近づかない方がいいって言ったが、ちゃんとクリスは別荘に来たぞ?」

「そうではなくて、アルダープの屋敷の地下にっていう話ですよ。別荘でカズマさんの予言にも似た卑猥な実体験通りになってしまったので、その話が確かならばと……」

 

そう言ってエリス様が、スマホをいじりだし、論より証拠とスマホを見せつけてきた。

映っているのは何だと思いながらのぞき込むと……

 

「……何ですかこの真っ黒な画面。もしかして電源ボタン触っちゃいました? あはは、お茶目だなエリス様は」

「ああ、すみません! たぶん屋敷に潜入したのでこんなことになったのかと……時間を戻すので少々お待ちください」

「それはいいけど屋敷って? どこぞ王都在住悪徳貴族の屋敷の地下にでも潜入したのか? だとしてもこんなに真っ暗なことあるか? ブラックボックスかよ」

「もしかしたら、何か魔法的な効力が働いているのか……情報漏洩対策の魔道具かもしれません。実際に屋敷に潜入した後はこのように暗闇に包まれていてその実体が掴めないですし。……っと失礼しました。こちらが見せたかったものです」

 

何か気になることを言っていた気がするが、エリス様は改めて俺にアルダープの屋敷を俺に見せる。

アクセルの街にあるその屋敷の付近にいたのはクリス。

丁度屋敷の柵を乗り越えて潜入しようという段階だった。

 

「ええ……何でアクセルの街にいるんですかお頭。確かに言いましたよ、俺。アルダープの屋敷探せばあるって。でも王城にいるアイリスの首飾りが神器だっても伝えましたよね? 近い方から順々に行きましょうよ……」

「た、確かにそうですが、それも仕方がなかったんだと思うんです。ほら、向こうのお屋敷は再建中で警備が薄く、領主も不在ということで『潜入する絶好の機会じゃん! するなら今しかない!』と……」

「さすがエリス様。クリス様のモノマネがお上手で」

「ええ、本人ですから」

 

パッド疑惑のある胸を自慢げに張っているエリス様はやっぱりノリがいい。

だが…………それにしても盲点だったなぁ。

警備が分厚いお城に入って『他者と体を入れ替える』神器を奪う。

警備が薄い屋敷に潜入して『ランダムにモンスターを召喚する』神器を狙う。

眉唾だが神器の場所がわかってる。

その場合、確かにリスクが低い方先やるか……

 

「はぁ……まさか俺の言葉が一因だったなんて。俺としたことが一生の不覚だ!」

「そんなこと言って、一人で王女様の首飾りを奪取できてたでしょう?」

「そりゃあんな危なっかしい神器はとっとと奪う方がいいでしょ?」

「本当にこの人はシスコンを拗らせすぎですよ……」

「俺は拗らせてない。拗らせてるのはめぐみんとかその同級生の……えーっとブラコンの方だ!」

「……正直、存在抹消の危険を抱えながらも一人で頑張るアナタは負けてませんよ?」

 

だってしょうがないじゃん。

あの神器を送ってきたのってアルダープだろ?

あんな愛らしい妹の中身がどぎつい豚になるなんて許せない。

しかも俺と違ってあいつはきっとロリコンだ。

そんなこと断じて、断じてさせない!

 

そう思って俺は一人でアイリスのところへ行って、こっちの俺のふりをして平和的にネックレスを奪ってきたのだ。

厳密に言えば、鍛冶スキルで同じ形のネックレスを作成し、交換してきた。

騒動にならずに済んだはよかったものの、何故かこうしてリセットされてしまった。

 

「なあ、そんな自分の身を投げ打って頑張った俺なんですが、やっぱりクリスと一緒に盗賊団しないといけない感じっすかね? 平和的解決ができるんならそれがいいんですが」

「そうですね……やはり今後の私の行動がいろいろ変わってしまうと思うので、やはり友情を深めるためにもこの一連の騒動は必要だと思います」

「そっか……だよなぁ。ダクネスのアイアンクロー、めちゃくちゃ痛いっていうか脳みそ破裂しそうだから回避したかったんだが」

「あはは、確かにあれは痛かったですね……もう二度とごめんリストのトップ5入りしてます」

 

……怖くないわけじゃない。

だって俺が二人いるって気づかれたら存在抹消だ、死ぬよりも怖い。

でも前に進むには1ミリでも歩かないとな。

 

俺は行ってきますの挨拶代わりにぐっと親指を立てる。

行ってらっしゃいと返事をしてくれたエリス様を見ながら俺はまた……




カズマの目標:大体原作と同じように展開させる。
作者の目標:アニメが終わってもモチベを維持させる。
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