あの素晴らしい世界に帰るため   作:桃玉

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小説第8巻はボス戦がないのです……
特にリセットする場面なくないですか?

ちなみに、今回は前半カズマ、後半バニマさん視点でお送りしてます。


8巻 アイギス
9.久しぶりに会った君~相変わらずというか~


借金のかたに嫁入りさせられそうになったダクネスを俺が華麗に救出した翌日、アクセルの領主アルダープが突然謎の失踪をした。

それに合わせるかのようにして、今まで隠していた不正の証拠がなぜか次々へ沸きだし、元領主の悪行が明るみに。

結果、アルダープの財産はすべて没収となり……

と語ってみたが、俺にとってはダクネスを連れて夜逃げせずにすんだのが何よりでかい。

 

そして現在、自宅にクリスがやってきた。

どういうわけか結婚式の後、アクセルから姿を消していたお頭だが、俺たちの噂を聞きつけてやってきたらしい。

 

「いやぁ、久しぶりだね助手君。街の噂はかねがね……」

「いや、共犯者が何言ってるんだよ」

「でもあたしに神父役を頼むだなんて言ってきて、一体どんな作戦をするのかと思ったら! まさか一人で義賊を……捕まってなくってよかったけど、それでも花嫁のダクネスを盗むなんて大胆な!」

「言い方っ! 仲間を救出したって言ってくれ!」

 

クリスは赤く染めた顔を手で覆う。

その指の隙間からチラチラと見える目は「盗賊や怪盗家業のなんたるかがわかってるじゃない!」と興奮しているように見える。

正直まさか自分も「奴はとんでもないものを盗んでいきました」をするとは思ってもみなかったんで思い出すだけで大変恥ずかしい。

なんとか仲間のためにすべてを投げ出す覚悟でやっただけだと思うことにして心の平穏を保っているものの、端から見たら俺の行動……

うわっ、恥ずかしすぎっ!?

 

「ダクネスは普段はあんなだけどとてもいい子だからしっかり面倒見てあげるんだよ?」

「イヤですよ」

「えっ!? で、でも二人は結ばれて末永く暮らすことになるんじゃ……あたし、気合い入れて祝福しようとしたのに!」

「中身があれだからな。それに言っただろ、仲間を悪の首魁から助け出しただけだ。大体、今回の俺が起こした盗賊団の騒動、結局意味なくってヘコんでるんだ」

「意味がないってばどういうこと?」

「……わかるだろ? 本当はダクネスの親父さんの体調なんとかして、ダクネスがアルダープと結婚しなくてもいいようにする予定だったんだ。でも結局仮面の人が呪いだのなんだのっていって、知り合いの偉いプリーストのおっさんに治してもらおうとしても無理だって言われて……親父さんのことは残念だが、ダクネスが結婚するのだけはなんかモヤッとして」

「わぁー……それで寝取ったんだ!」

「か、顔を赤らめんな! 俺だって恥ずかしい事をした自覚はあるし……ってかそもそもネトリじゃねーし!」

 

もしかしてお頭はソッチに興味がある系なのだろうか。

そうだとしたらアクシズ教への入信を強く勧めたいところだが……

一つ、確認したいことがあり、俺はこう言葉を投げた。

 

「ところでエリス様、結局ダクネスの親父さんの呪いはどうなったんですか? もしかして敬虔なエリス教徒だからって女神パワーで解呪したんですか?」

「いえ、実は仮面の人が全部やってくださったんです。今回の騒動は例の神器で呼び出したと思われる悪魔が関わっていたのですが、まさか私が到着する前に爆裂魔法で悪魔の公爵を倒して……」

「……あいつはもしかして人間やめてる系なんじゃ……。でもまあ、バニルと同じ悪魔が関わってたからあのゼスタのおっさんでも駄目だったのか。納得いったよ。とにもかくにもアルダープの悪事がばれたおかげで俺は夜逃げせずにすんだし、ダクネスの親父さんも元気になってきたし、終わりよければすべて良しとはこのことですねエリス様」

「はい、そうで……す…………」

「どうしましたかエリス様? 急に固まっちゃって石化の呪いでもかけられましたかエリス様? それとも核心に迫られて動揺してるんですかエリス様?」

「……エリスサマジャナイヨ。クリスサマダヨ」

 

仮面の人とクリスが親父さんと話している様子を盗み見していたとは知らないエリス様は果たしていつになったら自白するのだろうか。

……この後、クリスから「カズマさんは仮面の人とは違うベクトルの鬼畜ですよ……」と表されたとだけ言っておこう。

解せぬ。

 

 

 

 


 

ウィズ魔道具店にて。

そろそろ高純度のマナタイトを大量に仕入れたと思い、バニルがカラススレイヤーの職務を全うしにゴミ捨て場へと行ったタイミングを見計らい店内へ。

ウィズにマナタイトの取り置きをしてもらおうと思っていたが……

 

「ようウィズ! 今日は砂糖水以外食えるかもしれないぞー…………あっ」

「「あっ」」

 

先客2名様……カズマとダクネスがご来店中でした。

そして俺のことをすんごい目で見てくるんですが。

いやな予感を覚えた俺は店のドアノブに手をかけ……

 

「スゥー……新婚さん、お取り込み中でしたね。お邪魔虫は失礼しま……」

「まあ待て、仮面の。お前には感謝とかその他諸々を言いたいのでな。気を遣わずさあこちらへ」

「そうそう、ダクネスの言うとおり。話したいことはいっぱいあるんだ。例えば一番重要な場面で出てこなかった件とか、どうして親父さんの呪いがいつの間にか解けたのか……そこら辺、じっくり話をしようか」

 

……回り込まれてしまった。

どうやら地獄で仲よろしくやっているアルダープのことが気がかりなダクネスと、結婚式に欠席したことで怒り心頭なカズマ。

ダクネスはぷるぷると震え、拳を握りしめて。

 

「……まずは何か申し開きを聞いておこうか」

「イケメン冒険者に買い取られ、親父さんの呪いも解けてハッピーエンドだろうになぜ拳を振り上げる必要があろうか否ない!」

「ないわけないだろうが! めぐみんが『悪い魔法使いが来ましたよ』とか言ってこっち来てくれなかったならどうなってたことか!」

「でもなんとかなったじゃないか」

「なってない! いや、あのときはなんとかなったように見えたかもだが、アルダープを一体どこにやった! 私が優しいうちに吐け!」

「どうどう。どうしてあんな領主のことが気になるんだよ。まさかまた結婚したいとか、あいつが好きだとか言い出すんじゃないだろうな?」

「たわけ! 誰があんなやつのことを! ……いや、確かに前までどういうわけかアイツに対する好意があったが、アルダープが失踪したのを機に何か憑き物が落ちたように、今は憎めど好ましい思いはないんだ」

 

憑き物が落ちた……ね。

その言葉が聞けて一安心だな。

今回のダクネスのおかしな言動はマクスウェルに思考を誘導されていたからだって思ってたが、俺の名推理は見事的中だったな。

でも、ならどうしてそんなことを……

そう思っているとダクネスはいつもの仏頂面で。

 

「極悪非道な罪人は然るべき場所に詰め入れるに限る。罪を償ってもらうためにな。……そこで、最も怪しいお前に声をかけているわけだが」

「なら当てが外れて残念だったな。バニルなら全部知ってるだろうしアイツに聞くことだ」

 

ダクネスとカズマが何か言いたそうな目で俺を見てくるが、二人の言いたいことはちがうらしい。

ダクネスは胡散臭さそうな目で俺のこと見てるが、カズマは嘘こけお前と言いたげだ。

そんなダクネスの口から。

 

「本当だろうな? 結婚式の前後の記憶はいろいろありすぎたせいかあやふやだが、お前があり得ないほど情報を持っていたのは確かに覚えている。一体何が目的でクーロンズヒュドラの討伐や私の結婚について未来予知の如く動いていたようだが? まさかアルダープを匿ってたりは……」

「するか! 目的のためなら如何なる手段をも厭わない鬼畜だのと吹聴されてるみたいだが俺は善人も善人! 人類平等の名の下、目には目を歯に歯を、暴言暴動にはドロップキックを老若男女関係なくかませる男だぞ、ばかにすんな!」

「そ、そうか、そうならよかっ……いやまて、人類皆平等なのはいいことだと思うがドロップキックはどうなんだ!?」

 

俺の言葉に怯んだように後ずさるダクネス。

いや、しょうがなかったんだ。

ここで完璧な善人を気取って話すと胡散臭さ過ぎて信じてもらえないと思って!

 

 

 

 

そんなこんなで俺はマナタイトの購入予約をして撤退した。

ウィズの嬉し涙に、どんだけこの店主にバニルは振り回されてるんだろうと思いをはせていると、後ろから足音がついてくるのに気づく。

歩くスピードを速めてもついてくるストーカーに声をかけることにした。

 

「……どうして俺の後つけてくるんだよ」

「いや、聞きたいことがあってさ今回の事件のフィクサーさん? でなきゃアルダープ失踪の黒幕の容疑でお縄につくことになる」

「何も悪いことしてないぞ? むしろ善行を積んで徳の高い状態だと思う。えっ、なに? バニルに渡した知的財産権をご厚意で、寄越して? いた? だける!! いやぁ、やっぱり徳は積むもんだな、まさかまさかだ! 流石街の英雄様は懐が違う」

「んなこと言ってないし、俺の金だぞくれてやるもんか! 俺の寒くなってる懐はまだ暖まってないぞ!」

「けっ、しけてやんぜ。狭量になってしまった悲しき貧乏人に用はない、失せな」

「誰が悲しき貧乏人だコラ! 明日あさってには通帳にあふれかえるほどの大金が……って、そんなことを話に後つけてきたんじゃないんだ」

 

真面目な顔つきでそんなことを言ってくる。

「黒幕だのフィクサーだの、俺のことを何だと思ってるんだ? お前は俺だぞ!」って言ってやりたいが、何か確証があってそんなことを言ってる感じだ。

そう思っていると……

 

「さて、エリス様も正体を明かしたんだ。お前さんもそろそろ正体を明かしたらどうなんだ」

「……何だって? エリス様が正体を明かした?」

「そう。だから知ってるんだぜ、悪魔と戦って、ダクネスの親父さんの呪いを解いたんだってな? 親父さんを助けてくれたのはダクネスに代わってお礼を言いたいところだが……なんでアルダープのところに悪魔がいるって知ってたのか、アルダープはどうなったのか、正体諸共白状してもらおうか」

 

クリスがエリス様だってばれた……もしかしてこれが世界の強制力ってやつか?

まあいいか、深く考えても結局アクアがいないせいで欠けた部分は俺がなんとかしなきゃ駄目なんだし。

そんなことよりアルダープがどうなったか、だっけか?

エリス様の正体がわかってるってんなら俺の正体以外は話してもいいか。

 

「そうだな……アイツは天国が怖くて今頃地獄で隠居してるだろうよ」

「天国が怖いのはわかるが……世間一般的にそういう認識なのか? てか地獄に隠居ってなんだよ? おもちゃはおもちゃ箱へ、豚は豚箱へじゃないのか?」

「いや、エリス様と一緒に仕組んで、天国の恐ろしさを教育してきたんだよ。そんでアルダープは天国を拒絶したから、残機を消費して復活した悪魔に地獄へ連れてってもらったんだ。以上」

「やっぱ鬼畜仮面、その名に恥じない徹底ぶりに恐怖だわ。極悪人の末路だとしても自ら地獄を選ばせるのは控えめに言ってドン引きですわ」

「いや、お前も同じ状況を体験したらこうするって」

 

だって俺だもん。

小説第8巻ってリセットポイントあります?

  • ないかな。たまには平和もいいよね!
  • ないけど、裏でバニマが頑張ってる
  • 新たな展開! カズマ、リセットしろ
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