あの素晴らしい世界に帰るため   作:桃玉

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9.悪ふざけ~どうしようもないぼくら~

父さん、母さん、カズマです。

お元気ですか?

 

「お待ちくださいお兄さ……仮面の御方ー!」

「ごめんなさいぃぃい! 心が揺らぐ提案だが、忙しいのでナンパはお断りですぅぅううっ!」

「何を抜かすかこの怪しい男! この方を何方と心得る! この王国を統べる王家の血筋、ベルゼルグ・スタイリッシュ・ソード・アイ……」

「クレア様ストーップっ! 今はお忍びですのでその名前を言うのは! ですがこの盗賊団にそっくりな男の人! 嫌疑を晴らしたければお待ちください! 魔道具ですぐに取り調べは終わりますので私たちにご同行を!」

「その前にそこの剣を抜いたおっかない人を何とかしてくれたまえ! 近づいただけで斬り殺されそうでかなわんのでな!」

 

今俺は、見た目麗しい女性3人組に追いかけられてます。

俺はなんて罪な男なんだ……

いや、モテ期じゃなくて!

 

非常にやっかいなことになった。

アイリスがまさかお忍びでアクセルにやってくるとは……

今の時期の俺は家の中で氷柱をコツコツ作ってクーラー代わりにして、贅沢の極みを実行しているから気づけなかったのか!?

過去に戻れるんだったらしっかり外出してアイリスに会いたかった……

いや、ちょうど今、念願叶った状況だけどそういうことじゃなくて!

 

二人世界に存在してるってばれた瞬間に消滅するリスクを背負ってるから、ただでさえアイリスは天敵なんですぅ!

絶体絶命とはこのことだろうが、今の俺はその絶体絶命を超えた何かを体験中だ。

というのは……

 

「ふはははは! 我が輩の偽者め! 汝のせいで我が輩の評判が下がったということはないが、貧乏店主がまた赤字をこさえてきたぞ! ついでにあの時の借りを返そうと思うので待たれよ!」

「誰が待つか! ちゃっかりウィズの商才のなさを俺のせいにするな、こちとらお前んところの店のお得意様だぞこら! お客様は神のように敬え!」

「なぬ、それはつまり我が輩の天敵……手厚く歓迎させてもらおうではないか!」

「そうじゃない! 何だかんだいちゃもんつけて金を請求するって意味に聞こえたぞ! それは手厚い歓迎じゃない!」

「流石センスのいい仮面をこさえている者、我が輩の心まで見透かそうとは! というわけでいと見通しにくき者よ、大人しく金品を置いていけばそれ以上追求はしないので……」

「カツアゲは勘弁してくださいぃい! 財布は先日お宅で買い物したからすっからかんでなんにも無いんだ! わかって言ってるだろ! 最高品質のマナタイトならあるから……」

「残念ながら当店は商品の回収をしておりません。金品の代わりに悪感情でお支払いいただけるのですが……」

「てめぇ、それが本当の目的だろこんの悪魔め!」

「失礼な! 我が輩はここにいらっしゃるお得意様の、チリメンドン屋の娘イリス様の護衛ハチベエである! 任務中にそのような……我が輩のことを陥れようとした汝から漂ってくる悪感情大変美味である!」

 

……バニルにも追いかけられて、死んじゃう!

俺、本当に死んじゃうから!

仮面の下で涙を流しながら必死扱いて走っていると……

いいところに!

銀髪の頬に傷があるいい人が!

 

「クリス! ちょうどいいところに! こいつら俺のことを盗賊団の一味だと思って攻撃してくるのだ! 俺は銀髪盗賊団の助手じゃないって言ってやってくださいよ! どちらかっていうとあっちの仮面の方が怪しいって言ってやってくださいよ! さあ!」

「どぅえぇえいきなり何々仮面の人!? 君とがたいのいい仮面のタキシードの人の怪しさはどっこいどっこいだと思うよ!?」

「お頭!? もしかしてあの盗賊団のお頭様ですか!?」

 

アイリス、やはり恐ろしい子!

あの服装じゃなくても一瞬でクリスが盗賊団のお頭だって見破った!

しかし、護衛の二人やバニルは頭に疑問符を。

 

「アイリス様、何を……? 例の盗賊団のリーダーは少年だったでしょう? なあレイン」

「ええ、確かに。この人は銀髪ですが女性ですので……しかも見るからに低レベルな装備で……あの王城を襲撃して高レベルの兵士や冒険者相手に無事で帰れるような、そのような技術を持っているとはにわかに信じがたいです。人違いでは?」

「どういうことだ、我が輩の見通す能力が適応されない? どう見ても普通の駆け出し冒険者……だが、実力を偽っている高レベルの冒険者か?」

「バニル様? ……確かにその線もありますし、念のため伺いましょう。貴方はこの仮面の人とは……」

「知らない人です」

「!? さ、流石に冗談だろう? 見捨てたりしないだろうな!?」

「キャー、タスケテー! オソワレルー! ……ごめん。捕まったら脱獄手伝うから

「くそったりゃぁああーーーっっ!!」

 

俺は逃げた。

バニルに潜伏スキルは通用しない。

いっそのこと仮面を外して「おっ、一体何の騒動だ!?」と惚けて出て行きたいが、それは消滅のリスクが高すぎて怖い!

恐怖に支配された脳は逃げることを選択したのだった。

 

路地裏を。

人混みを。

逃げて逃げて……

それでも奴らはついてくる。

 

どうしようかと思っていると途中、貴族みたいな服装ででっぷりした男と女性冒険者が睨み合っていた。

そこに野次馬が集ってて、その人混みを利用して追っ手を巻こうと突っ込んだ。

 

そうしたらどういうことか、どこからか兵士の人がやってきて俺のことを捕まえようとしてるのだろう、前に立ち塞がった。

だがそんな奴らにかまってる暇はない。

先手必勝とドレインタッチして無力化しながら体力を回復させ逃げ道を切り開く。

 

前には待ち伏せしていたかのように現れた兵士。

後ろからは人類最強と魔界最強が迫り来る。

 

どうやら兵士はバニルが俺と似た仮面をしているから敵だと勘違いして足止めしてくれている。

最強になればなるほど手加減に手を焼くのは世の理なのだろう。

俺は人を傷つけまいという信条を持つ悪魔を置き去りにし、ドレインタッチや小技を駆使しながら人混みをスルスルと進んでいく。

そして……

 

「お前たち! 私にこの低俗な者を近づけさせる……な……」

「邪魔だぁ! 俺の行く手を阻むやつは容赦しない!」

「ひぃっ!?」

「混乱時乗じて逃げるためだ、悪く思うなよ! 『ドレインタッチ』ッ!」

 

こうして俺は死人は出さず、逃げることに成功し……しばらく外出は自粛することにしたのだった。

 

 

 

 

大体5日後か。

騒動のほとぼりが冷めただろうと思って、潜伏スキルを使いつつアンダインという貴族の屋敷へ出かける。

きっとそこに行けば俺が会いたかった人物に会えるだろうと思って。

しばらくして、夜明けまで後数時間という頃合いだろうか、聞きなじみのある声が近寄ってくる。

 

「助手君、どうしてこんな時間なの? もう少し早めの方がよかったんじゃない?」

「人間、この時間帯の方が深く眠ってるものなんですよ。眠ってすぐだとちょっとした物音で目が覚めるもんなんです……経験者が日常で積み重ねてきた知恵ですよ」

「一体助手君は何を経験してきたんだろうね……。それよりさ、この大荷物はなんなのさ? 小柄な人なら一人くらいすっぽりと入っちゃうんじゃない?」

「これにはプチプチと消音の魔道具が入ってるんだよ」

「なるほど、この中に聖鎧を入れて……って正直そこまで音うるさくなるかな? 徹底的すぎないかい? ……もしよければなんだけど」

「だめです」

「まだ何にもいってないけど!?」

「お頭の考えることなんて、『別に魔道具かプチプチか、片方だけで十分だろうしプチプチの方をくれない?』とかでしょ」

「……もしかして人のこころを覗く神器でも持ってる?」

「ないな。お頭が純粋にわかりやすいだけですよ。それに、プチプチは必要なので……仮面の人情報によるとこの屋敷の鎧はしゃべるらしいんで」

「喋る神器? その情報は確かなのかい?」

「知らないけど、準備できるんだったらすることに越したことはないだろ? 魔道具は設置型ですし、どのみち帰りに包装できるものはほしいですよ」

「確かにね。じゃあこの箱の中身はそう言う君が用意した秘密兵器が! ほかには一体何が入って……」

「とう!」

「「うおわぁああーーーっ!?!?」」

 

俺はゆっくり物音を立てないようにその箱の陰に身を隠すと、クリスが箱を開けるタイミングで潜伏スキルを解除して大声を張り上げた。

驚いて尻餅をつくクリスを見て心なしか心が晴れやかな気分になるのを感じていると。

 

「ちょ、仮面の人!! 気配なく近寄って大声出して驚かせんなよ! 屋敷の人が起きるだろ!」

「や、わるい、ここまで驚くとは思ってなくて。ちょっとした仕返しというか、この前の報復を成し遂げようとしてな、極上の悪感情を得るタイミングが合ったのでつい……」

「つい、じゃねーよ! てか報復って何だよ、ぶん殴ってやろうか!」

「一応クリスが悪いとだけ弁明させてもらおう」

 

俺のそんな言葉にこっちの俺は訝しげな目をしながらクリスの方に視線をやる。

クリスは俺の言葉を受けて微妙に気まずそうにしながら。

 

「わ、悪いとは思ってたよ? でも王都で盗賊してたときの見覚えある追っ手から逃げてたし、私はまだ捕まりたくなかったんだよ!」

「結局巻けたからよかったものの、手を拘束されて仮面を剥がれた時点で俺の人生は終わりなんだよ、今度からは助けてほしいんだが」

「えっ、何? 捕まりたくない? 手を拘束されて人生が終わる? 盗賊団……悪いことは言わない。すぐにでもお役所に行って罪を償おうぜ?」

「おい、自己保身に走るがあまり知り合いを身代わりにするのはどうかと思うぞ鬼畜め」

 

我ながらなんて冷静で非道な仕打ち!

仮面の盗賊団員を俺に仕立て上げ、自分は助かろうとするとの姿勢……

まさに鬼畜の所業!

目を泳がせても自分のことだから何を考えてるかよくわかる。

 

「じょ、冗談だって仮面の人! ……それにしてもそう言うことか、点と点がつながったわ」

「何と何がつながったって?」

「いや、最近家で祭の案を考えてたから外に疎くてな。『鬼畜仮面はやっぱり鬼畜だった』って言ってるやつと、『鬼畜仮面はいけ好かない貴族の顔を足で踏んづけるような素晴らしい鬼畜だ』っていってる奴らがいてな。なんでそんな話題になってるのかわからなかったんだが……。そのお前を捕まえようとした奴らが街の奴らにも手を出したからついでに伸しちまったんだろ?」

「……違う……ということもないか。とりあえずさっきの話をしてたやつらの名前を教えてくれないか? 一度俺がどれだけ鬼畜なのかわからせる必要があるし、頼むよ、俺が大変なときに贅沢三昧してた引きニート」

「ひ、引きニートちゃうわ! 働かなくても生きてけるから働いてないだけだわ!」

 

俺は俺の叫びをスルー。

王都であった盗賊団の騒動で張り込んでたお役人たちが撤退したから普通に街中をぶらついてたときに起きた災難なんだが……

こっちの俺が言ったこともあながち間違えでもないし、丁寧に説明するのもめんどくさいのでそういうことにしておいてるとクリスが。

 

「いや仮面の人、違うでしょ?」

「チガワナイヨ」

「いや、確かに悪い感じの貴族を倒してたのはその通りだけど、君を追いかけてたのはアイリス王女とその護衛の……」

「アイリス!? 何それお兄様聞いてないんだが詳しく!」

「何でもお忍びで社会見学だそうだ。だが、盗賊団に感化されたのか、悪しきを罰する正義のヒーローに憧れてて、俺のことを追っかけてきたんだよ」

「おいおい、なら神器を回収するなんてことしてる場合じゃないぞ! 早くアイリスのところに行って俺が盗賊団の仮面ですって公言してこないと!」

「何馬鹿なこといってるんだい助手君! 君が王女様の遊び相手してたのはわかるけど、そんなこと言ったら捕まるどころの話じゃないってダクネスがいってたでしょ! ……仮面の人も助手君を止めるの手伝ってよ! なにウンウンうなずいてるの!」

 

わかる、その気持ちは痛いほどわかるぞ俺!

正直俺も死なないなら今すぐにでもアイリスのところに行って尊敬の眼差しで見られたい!

あと、本当なら一緒に遊びたかった!

そんなことを思っていたら屋敷の電気が……!

 

「おいお頭さん! アンタが騒ぐせいで屋敷の人起きちゃっただろ!」

「ええっ、これってあたしのせいなの!? いや、絶対違うよね! どちらかっていうと助手君とか仮面の君が…………ところで二人揃うと見分けがつきにくいね? どっちが助手君?」

「俺だよ! そんな暢気なこと言ってないで撤退ですよお頭! それと俺は悪くないんでこの仮面の人をおいていきましょう。きっと囮を自ら買って出て……」

「出るかアホーッ! さっさとトンズラするぞ!」

「アラホラサッサー!」

 

俺たちは屋敷に入るまでもなくスタコラサッサ、撤退を余儀なくされたのだった。

……オレノセイジャナイヨ。

どっちにしろこの作戦は正規ルート通りに失敗した方が都合がいいし、大丈夫だ、問題ない。




作者の脳内時系列(正確ではない)
1日目:結婚式をカズマにぶち壊されたあげく拉致されたダクネス
2日目:マクスウェルに見初められて地獄に誘拐されるアルダープ
 | 
 |カズマに正体がばれて正式に神器回収の依頼をするクリス
 |カズマの知的財産を売りさばき巨額の富を手にするバニル
 |最高品質のマナタイトを買い、店のお金を使い切るウィズ
 ↓
7日目?:バニルの甲斐甲斐しい世話で無事に孵化したゼル帝
8日目?:朝 エリス祭取りやめを手伝う面白い状態なクリス
     昼 セシリーに怪しい白い粉を進められるめぐみん
     ダストとゆんゆんに出会って相談屋を始めるバニル(相談)
     アクアに唆され土地を買って赤字を生み出すウィズ(相談)
9日目?:次の標的のアンダイン邸を下見するクリスとカズマ
     ウィズの赤字補填のために聖水量産機になるアクア(相談)
     この間に予行エリス祭でハチベエと接触するイリス(相談)
 ↓
14日目?:夜 貴族の屋敷へ侵入し聖鎧を見つける銀髪盗賊団(失敗その1)
15日目?:祭りの準備(セミ討伐)にやる気なアクアと男冒険者
 |
 |忙しくも充実した日々を感じている祭アドバイザーカズマ
 ↓
21日目?:祭りまで残り1週間 売り子の制服は水着になった
 ↓
25日目?:祭りまで残り3日間 花火と浴衣を用意するカズマ
 ↓
28日目?:祭りまで残り1日間 仮装パレードの許可申請受諾
29日目?:祭り当日朝 偽金魚や偽竜を出店で売るアクシズ教
         夕 YAKISOBAで稼ぐアドバイザー
30日目?:祭り2日目 祝賀会でいっぱい飲んだアドバイザー
31日目?:祭り3日目朝 デート予定なのに二日酔いなカズマ
          昼 言葉巧みにドキドキさせためぐみん
          夕 花火大会で期待を裏切られたカズマ
          夜 カズマの頬にキスした痴女ダクネス
            めぐみんに見つかるカズマとクリス(続・爆焔1巻)
            働きたくないからと逃げるアイギス(失敗その2)
祭り最終日:ミス女神エリスコンテストで神器回収したカズマ(成功)

後日:後夜祭的な催し(第8巻終了)
   めぐみん盗賊団結成(+ゆんゆん+イリス)(続・爆炎1巻)
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