あの素晴らしい世界に帰るため   作:桃玉

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9.想像を超える事態~繰り返して~

祭り開始まで残り3日。

とある祭りを企画する集会場にて。

俺はアドバイザーとしての手腕を買われ、お祭り男どもとともに熱く企画を練り上げていた。

 

「だから何回言ったらわかるんだおっさんども! 祭りとは何か、その常識を一度捨て去るんだ! 物事は破壊と再生の繰り返し! 商売魂逞しいアンタたちならわかるよな! 新しい祭りの概念を受け入れよう!」

「受け入れてたまるかぁあっ! 花火の代わりが爆裂魔法でいいわけない! こんの小僧、アドバイザーが何でも欲望のままに幅をきかせられる暴君のような役職だと思ったら大間違いだぞ!」

「でもお宅ら、ほかに花火の代わりになる何かはあるんか! そこに、案はあるんかって! ないだろ! なら、めぐみんとウィズが協力させるからさ! なんなら仮面の人をとっ捕まえて、ヤツが買い占めた最高品質のマナタイトを使い放題してやろうか!」

 

吐故納新、マナタイトを吐き捨て、爆裂魔法を射る……ンッン~ 名言だなこれは。

この固定観念に固執した時点で時の流れに淘汰される残酷な世界……

そんな世界で新しいことに挑戦して体験を得ることがどれだけ大事か表す、我ながら最高にいいこと言った!

 

「気でも狂ったかこの男! 爆裂魔法なんて一日一回も聞けば十分すぎるくらいだ! 大体、この街の住人が狂ってる! なんで毎日毎日ぽんぽんぽんぽん爆裂三昧で平然としてるんだ! 『爆発音、永久繰り返す、ラビリンス……うむ、いい句だ』だの『爆裂は春の季語……無情を感じる』だの……おかしいだろ!」

「わかったわかった、爆裂が駄目なら俺の魔法でいこう。結構燃費もいいし、そこそこ良質なマナタイトを買ってくるからそれで100発くらい連続で炸裂させよう。俺の花火はちょっとばかし熱いぜぇ! 今から行って買ってきてやるから待ってろよお前らァ! ジャパニーズ大和魂見せつけてくれるわぁああっ!」

「やめろぉおおぉぉおおっっ!! おいお前たち、ヤツを追え、追うんだ! 決して逃がすな! 逃がしたらこの街が火の海に沈むことになると思えぇえっ!!」

 

俺含め祭り開始前からこの気合いの入りよう。

さすが、本当に神様がいる世界は祭り一つとっても気合いの入りようが違う。

だがな……お前らがこの祭りにかける思いが人並みならないように、俺だってこの祭りにかける思いにゃひと味どころかふた味も違うんだぜぇ!

何せこれが終わったらめぐみんとデートするん……

 

 

 

 

「なあカズマ……どうして仮面の人に抱えられてるんだ? それとどうしてそんなにボロボロなんだ?」

「男には、負けるとわかっていながらも、戦わなきゃならねぇ時ってのがある、ん、だ……」ガクッ

「私がいない間に一体何が!?」

「何というか、花火をすることにかけて人一倍熱心なコイツは俺を資金源の一つとして提案したんだ。『爆裂も俺の魔法も駄目なら爆発でいこう。さっき思い出したんだ、ウィズの店に置いてある爆発ポーションシリーズ……有り金はたいて全部買い占めてやる! ……仮面の人が!』とかほかにもいろいろ……」

 

いや、悪かったとは思ってるんだ。

でも街中の人が俺の魔法のすごさをイマイチよく理解してないし、魔王軍の幹部を討伐してるって言っても大体MVPは仮面の人だし、この街で社会的地位が高い……もとい、鬼畜仮面の異名で恐れられてるのは仮面の人なんだ。

その名前を出すだけでジャイアントトードは蛇に睨まれた蛙みたいに硬直するし、チンピラと犯罪者は自身の身の安全を求め警察署に駆け込み、500年生きた大魔族は自害する。

そんな名の知れた怪物の名を出すだけタダだと思って使ってたらこれだよ……

 

「『一体何を勝手なこといってんだこら!』ってな感じで殴りかかったら、役員会議室が大いに盛り上がってな。盛り上がりすぎて全員参加型の大乱闘に発展したんだ。ちなみに勝者は最後まで立っていた俺」

「……お祭りの企画を考えるだけで何故そんなことに? それだけエリス祭にかける皆の気持ちが熱いということなのだろうか……」

 

くそぉ、なんでダクネスはそんなに簡単に納得するんだよ、もっと突っ込め!

ほとんど俺が勝ってたのに……俺が最後まで立ってたのに……

何でゲームのラスボス倒したと思ったら、実はそいつはラスボスじゃなくて、最後の最後で別に現れる真のラスボスみたいなことするんだよ……

俺は……俺は体力ギリギリで立ってたのに、どぉおしてこんなひどいことするんだよぉぉおおぉお!!

 

「おお、おお。どうしたんだいそんなに泣いて? もしかして花火の代わりに爆裂魔法を使うっていう案が通らなかったのがそんなに残念だったのか?」

「お、おい、そんな案を考えていたのか! いや、アクセルの街の住人は爆裂魔法慣れしてるから迷惑とか棄却はされないのかもしれないが! ……しかしなるほど、それでその代わりにこの『爆発ポーション使用許可願』……か。危険だと思うのだがよく通ったな?」

「最初はそれも却下されたんだがな、カズマが爆裂魔法を使用するってのを言ってたおかげで通りやすくなって……」

「切れ者の貴族や商人が使う手口と同じではないか!」

 

やはり鬼畜、あくどい手を使いなさる。

ダクネスが激昂する中、まるでそよ風でも吹いているような顔で仮面の人は。

 

「ちなみに、今さっきアクシズ教の教会を見てきたんだが……金魚すくいと銘打ったオタマジャクシすくい……もとい、ジャイアントトードの幼体すくいを画策していたんだが」

「おい、話をそらそうとしても無駄だ、ぞ……。な、なあ、流石に止めてきてくれたのだろう? ただでさえこんな『爆発ポーション使用願』がましな方で、もっと『エリス教出店取り下げ願』とか、それに対抗して『エリス教出店取り下げ願をしたアクシズ教の出店取り下げ願』とか……もっと変なのでいうと『ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲を模した神輿で街中を練り歩くイベント開催願』など…………もう何を言っているのかわからないので却下したが」

「その神輿のイベントを考えてくれたら止めてやろうと思ってたんだが……残念、非常に残念なことだ」

「これ出したのお前か! いや、そもそも本当に私に対する嫌がらせかと思ってだな……アームストロング2回言ってるし。……そうだ! 今からでも遅くはない、このネオ……なんちゃらとはどういうものか教えてくれ。もしかしてお前の出身に伝わる崇拝対象とかで、邪神の類いでなければ採用して……」

「ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲……バルカン戦役の惨劇「火の七日間」を引き起こしたあげく、江戸城の天守閣を吹き飛ばし、新たな時代を切り開いた俺の故郷に伝わる決戦兵器……別名、走る(いかずち)

「な、なるほど、つまりはその戦争に勝利をもたらした勝利の大砲……とでもいおうか。それを神輿にするんだな? それくらいであれば……だからアクシズ教を止めてきてくれ!」

 

大砲のフォルムは一体ナニに似てるんだろうな?

それを確認しないままわからないまま仮面の人を派遣させるダクネス。

だが俺は知ってる……大砲の形がアレに似ていることを。

 

アレじゃん、この男、異世界で奇祭しようとしてるじゃん。

絶対この仮面俺と同じ国出身じゃん、ネオアームストロング砲知ってたし。

どうせ聞いてもはぐらかされそうだけど。

 

それはそれとして俺、一生この人について行くわ。

さっきの敵は今日の仲間、これからはアニキって呼ばせてください!

 

 

 

 

そうこうしているうちに時間というのは早いもんで……

神輿を作ったり、蝉を駆逐して森を灼熱焦土に変貌させかけクリエイトウォーターしたら洪水被害一歩手前になったり、神輿作ったり、栄養強化ポーションと無駄に買ってしまったマナタイトを駆使して徹夜でかき氷用の氷を量産したり、神輿作ったり……そんなことしてたらいつの間にか祭り当日。

 

これこそ、ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲……!

再現度高ぇなオイ。

我ながら渾身に完成度を誇る神輿。

遠目から見ても存在感ダダ漏れ、いきり立つフォルムはまさに敵の戦意を打ち砕く超兵器そのものだった。

俺の肩には神輿の重さ……の代わりに別の重しが乗ることになった。

 

「エクスプロージョン! ……はへぇ。かじゅまおんぶおねがーしゃす」

「ううっ……」

「かずま……一体何をないてるのでぇ?」

 

どうしてこの背中にいるロリっ子はそんな鈍感系主人公みたいな台詞をそう易々とはけるのだろうか。

絶対ことの重大性を理解していない。

俺がこの日を誰よりもどれだけ楽しみにしていたかも、毎日コツコツコツコツ虎視眈々と神輿を我が息子を育てるかのように大事に作成に取り組んでいたことも、何もわかっちゃいないんだ!

 

「お前……お前ってやつはさぁ! 俺が大事に大事に苦労して育てた神輿を……! 何にも悪びれずに!」

「悪びれぬ! 媚びぬ! 顧みぬ! 私は過去より今を見ているリアリスト。それに比べてあなた方は未来ばかりを気にしている悟りの地を開拓していない人の子。遠くを見据えすぎる、其れ即ち足下を疎かにすることなり……。上を見ていては下は見えない、今あなたに足りないのは現在地を見返ることかもしれない」

 

いやいや、お前は悟りの境地に達した仏か!

年下のくせになに偉そうに「地に足着けろよ小童め」みたいなことを!

お前は爆裂魔法に目を奪われすぎて盲目だろうに……

 

「……めぐみんに足りないのは人の大事なものをさも平然とぶち壊すその道徳心そのものだと思う」

「何を馬鹿な。私は道徳心の権化といっても過言じゃないですよ? あんな巨大な猥褻物……肩に担いで街中を練り歩くとか、カズマも、それを許可したダクネスも疲れてるのですよ。一歩間違えば社会からの信用は最底辺。地位をどん底へ失墜させるどころか司法も行政も黙っていなかったでしょう……。それを阻止することのどこが非道徳的であろうか」

「お前の爆裂魔法が容認されてるこのアクセルで、神輿がちょっと男性が持ってる聖剣エクスカリバーに似てるからって逮捕されるわけないだろ!」

「わかった、わかりましたからとりあえずカズマは一回しっかり寝てください。栄養強化ポーションを飲んでから一睡もしてないカズマは頭がおかしくなってるんですよ……一体どういう思考回路になったらそのような発想ができるのか逆に気になって仕方がありません」

「何を勘違いしてるかわからないがあれはネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲だぞ! 男の夢と希望が詰まった宇宙戦艦にも匹敵しうる破壊力を持つ超兵器なんだぞ! 頭のおかしい爆裂娘に頭がおかしいとか言われたく……あっ、タンマ、首絞まって……」

 

 

久しぶりに寝た。

 

 

「おはようございます、カズマ。いつまで寝てるのですかシャンと起きてください! 今日は絶好の花火大会日和……もとい、爆裂魔法日和ですね! さあ、今日も朝から元気に爆裂散歩に行こうじゃないかぁああああああたまがあぁあああ!」

 

布団を引っぺがし、俺の顔を食い気味にのぞき込むめぐみん。

美少女の顔を見ながら目覚めるなんてなんて幸せな朝なんだろう……

今日が花火大会のある祭り3日目で、丸1日寝過ごしたという事実がなければそう思っていたに違いない。

俺はアイアンクロードレインタッチを一切の躊躇なく繰り出し、それを喰らっためぐみんは悶絶した。

 

「くそっ、ロリっ子俺のことをシメ落としやがったな! 何が一緒に花火デートしようだ! 俺は自由を愛する男サトウカズマ! 束縛系とは相容れない!」

「ううっ、人の善意を仇で返して、一体何を激高してるのですか……私は単純に何日も寝ていないカズマの体調を気にしてですね……」

「元自宅警備員なめんな! 時には(ネトゲの)ホームに敵陣が攻め入るのを防衛するために丸2日戦い抜いたりした猛者にたかが不眠不休で徹夜の2日や3日、気にするまでもないわ!」

「敵が攻めてくる!? 不眠不休の戦い!? どういうことでしょう、この男から一切嘘を感じませんよ!? やはり特殊能力を持っているということはそれほど過酷な土地の出身ということなのでしょうか……。その、差し出がましいことをしたようで」

「……いや、わかってくれたらいいんだ」

 

なんだろう、嘘は言ってないのにすごく申し訳ない!

すごい尊敬の眼差しで見てくるし、嘘じゃないんだけど……嘘じゃないんだけども!

僅かに騙してるような罪悪感を感じつつ起床。

俺は街にめぐみんとデートをするために繰り出……

 

 

 

 

……すことなんてなかった。

めぐみんのやつ、ゆんゆんを連れてきて……んなもんデートじゃないだろ!

ぬぁにが「2人きりになるのはまだ少し早いですよ」だ!

人の心をもてあそびやがって!

 

神輿も担げない、花火大会という名の風情ぶち壊しモンスター退治でデートも恋情もくそったれもない。

加えて途中、屋台で醤油ベースの海鮮串を売っていた仮面の人から聞いた話によると、昨晩の会議室はサキュバスのお姉さんたちに酌してもらえる素晴らしいご褒美の日だったらしいし……

本当になんて日だ!

 

ただ、唯一の救いは仮面の人が「お前が休んでたからな、俺は遠慮して飲まなかったよ……」って血涙を流しながら言ってたことだろう。

俺のことを考えてそんな、抗いがたい誘惑を断ってたなんて!

仮面の人……アンタこそ悟りの境地に立っている真の賢者だよ!

俺は改めて仮面の人を心の中ではアニキと呼ぼうと決心し、アンダインの屋敷へと行くことになった。

 

「さて助手くん、準備はできてるかい?」

「おう、もちろんですよお頭! 防音シリーズの準備も視界も良好っす!」

「よし、じゃあ行ってみよう!」




カズマ「アンタって日本出身だろ? 俺とおんなじ異世界転生した口だろ?」
バニマ「……俺は日本出身だが、俺はお前と同じ日本出身じゃない」
カズマ(魔道具がチンチン鳴らない!? 日本出身なのか!? それとも日本出身じゃないのか!? どっちなんだ!?)

次回 バニマ、死す

血涙流すバニマ「何で……何でサキュバスのサービス受けられないんだよぉ! いや、受けた時点で脳内見られて消滅するのはわかるけど! 意図的に誘惑を断ち切らないといけないなんてなんたる苦行!」(涙)

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