あの素晴らしい世界に帰るため   作:桃玉

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聖鎧アイギスとは?
圧倒的物理防御力。魔法無効。チートです。

魔法無効ってことは、魔法やスキルの認識阻害も無効化されるってことでして。
無策に突っ込んだらリセット予定だったんですが、流石に切れ者のカズマさんはそこら辺理解して行動するだろうなと。


9.芽生えた想い~呆気なく消えてしまう~

「……逃げられた?」

「そうなんだよ仮面の人! というかどうして君はあたしたちと一緒に来なかったのさ!」

「そりゃ…………大人数で押しかけるようなことしてみろ、足音も大きくなるし、無駄にスペースとるから逃げにくくなるだろうし。正直2人以上はデメリットしかないからな。そもそも俺は盗賊団員じゃない」

「何を言ってるの……あたしたち、仲間じゃん。そんな水くさいこといわないでさ、苦楽をともにして一緒にレベルアップしていこうよ」

「つまり死なば諸共みたいなもんじゃん。やだよ」

「ええっ! お、おっかしいな……男の子は友情、努力、勝利の三大フレーズが好きなんじゃないの?」

「嫌いではない。が。仲間って言ってホイホイごまかされるのはゆんゆんくらいだ。都合がいいときばっかり耳障りがいい言葉使うんじゃあない! 裏では鬼畜だとか信用ならないとかいってるのしっかり知ってるんだからな!」

「……もしかして小型の盗聴器でもあたしたちに貼り付けたり?」

「いや、癖になってるだけだ……気配を消して歩くのが」

 

さすが仮面のアニキ、情報収集はお手の物ってか?

……いや、何で二人でこそこそしゃべってるときの内容を的確に言い当てるんだよ。

ストーカー的な気味の悪さじゃなくていつでも暗殺されそうだっていう意味での恐怖を感じるレベルなんだが!?

 

「君のストーキングスキルはきっと盗賊団としての活動をよりよいものにするよ! だからさ…………あっ、耳塞いだ! ねぇねぇ! 本当はさっき言ってた3人以上はデメリットしかないって話は思いつきなんでしょ、ねーえ! ねぇったらぁ!」

「やかましいわ! 俺には俺の事情があるんだよ……あの鎧は俺なしで2人でなんとかしてもらわないと」

「なんでさぁ! ほら、三人寄れば文殊の知恵って言うでしょ?」

「三人寄れば公界っても言うな。……まあ、一緒に行動はできなくても知恵は絞ってやるよ。というかもう案自体はあるから」

「やったー!」

「流石仮面の男! おれたちにできない事を平然とやってのけるッ そこにシビれる! あこがれるゥ!」

「おい、それだと俺が後々吸血鬼になるフラグが立つから! 石仮面じゃないけどやめろ!」

 

怒られてしまった……が、持ち上げられて心なしか嬉しそうだ。

それにしてもまさか案があろうとは。

本当に未来を見通す悪魔さん並みに未来の先々を見通してるんじゃなかろうか。

多くを語ってくれないのと胡散臭いのは欠点だがそれを含めたとしても補って余りある素晴らしい人材だ。

これからも胡麻すりしとこう。

 

 

 

 

祭りの最終日。

炎天下にもかかわらずアクセルの街の大広場には多くの人であふれていた。

そこにマイクのような魔道具により鳴り響く男の声。

 

『本日お集まりの皆様方。わたくし、この度の司会に選ばれたことを誠にうれしく、そして光栄に思います……これより、エリス教団主催によるメインイベント! 第一回! ミス女神エリスコンテストを、ここに開催いたします! それではまず、最初の方となりますが……。お名前と年齢、そしてご職業の方をお願いします!』

 

司会が放った叫びとともに、ステージ前に集まった観客から盛大な歓声が。

会場の熱気も相まってジャイアントトードも干からびる最高気温を更新中。

仮面の人が打ち立てた案。

それが「ミスコンで美人集まれば変態鎧はノコノコ顔出すだろ」という……

正直、鎧の性格や仮面の人の実績を何も知らない状態だったら圧倒的に「何言ってんだお前?」って言い返してただろう。

 

「ねえ助手君。あたし、これに参加しないと駄目なのかな?」

「駄目です。ほら、安心安全信頼信用ゼロの仮面の人が絶対成功するって言ってたでしょ? しっかり参加して、ついでにお祭りを盛り上げちまいましょうよ! でないと来年からアクシズ教に祭りを乗っ取られるらしいですよ?」

「……正直に言ってくださいカズマさん。私の本来の姿を見たいだけじゃないですよね?」

「急にどうしましたかお頭。そんなわけ……」

「……」

 

クリスの女神様口調とジト目が俺を射貫く。

一体何を見てそんなことをいったのか、全くもって理解不能だ。

今の俺は祭りの参加者に紛れるにはごくごく普通の格好をしているはずだ。

額にはタオルを巻いて、飲み物はすでに準備済み。

もちろんお手洗いは済ませた。

エリス祭公式グッズの一つであるエリス様うちわを片手に、気合い万端。

魔道カメラを縦に構え、被写体のすべてを記録せんとステージの最前線でステンバァイ。

 

「……一体どこをどう見たらそう思うんですか!」

「全部だよっ!」

「ちっちっち、わかってないですねエリス様。これは参加者に紛れるための、言わば変装のようなものです。木を隠すなら森の中。参加者の中に紛れるなら……それは俺たち自身が祭りを楽しむ一参加者と同じくらいの熱気を持って……」

「一参加者以上の熱気だよ! カズマ君の気合いの入りようがすごすぎて周りの参加者遠ざかってるじゃない! 今の君は一参加者どころか十参加者くらいの熱気を放ってるよ!」

「十参加者……ちょっとなにいってるかわからないっす」

「何でわからないの! 目立ってるんだよ君! 木を森中に隠せてないパターン初めて見たよ!」

 

確かに俺の周り半径5メートルには結界が張り巡らされたかのように人がいない。

しかしそれは俺の背中に祭り実行委員の法被を着てるからであって、むしろ被写体を撮るには最高のコンディション!

 

「本来の目的を果たすために入念な準備をしてきたんだ、これくらいいいじゃないですか」

「本来の目的を今の行動ですべて水の泡にしてると思うんだ! 本当に、本当にミスコンで美女たちをカメラに収める目的がメインじゃないんだよね!」

「もちろんです。アイギスを確保するために必要なことだって仮面の人が言ってたならそれは必要なことで、ついでに本物の女神様の尊い姿を眼に焼き付けようと思ってるだけで、エリス様のこと以外は本来の目的じゃないですよ」

「や、やっぱり私の姿を見たいんじゃないですか! なんか恥ずかしいのでそんな期待を込めた目でマジマジと見ないでください! と、とりあえず私は準備をしてくるので……」

 

そう言って顔を赤らめながらもしっかり自分の役目を果たそうと小走りで会場の外へ走って行くエリス様。

……正直、期待しかない。

ときどき焦って女神様口調が漏れるクリスはなんか一瞬だけ後光が差したような感じがして……

もう、めぐみんとダクネスに迫られてるけど、もしかしたらクリスという一度で元気っ娘と清楚を二度楽しめる、色物枠じゃない新・真ヒロイン枠の到来の予感に想いを馳せずにはいられないのだ。

 

≪おっ、誰もいない特等席みっけ! ようあんちゃん、隣いいかい?≫

「もちろんいいぜ! 写真の邪魔だけはすんなよ……特に最後のフィナーレに脚立を揺らしたりしてブレた写真になったりしたら……」

≪心得てるぜ兄弟! 俺もその気持ちはわかる……もしよければ後で写真安く焼き増ししてくれよ。なんせこのイベント……水着審査がある! これの開催者はわかってる、ひっじょうにわかってる! アニキとしておしたい申し上げたいくらいだ≫

「実は俺と、もう一人、仮面の男が関わってて……」

≪お前ら最高だぜ! アニキって呼んでも?≫

「ちなみにあの売り子さんいるだろ? 熱中症対策で売り子は全員水着で参加してもらってるんだ」

≪賢い! 熱中症対策ならしょうがないよな! さすが参加者のみならず運営の人にも快適に大会を運営してもらうためにそんな優れた案を打ち出すなんて! 俺、一生ついて行きやすアニキ!≫

 

……なんだろう。

こんなにあっさり敵の術中に嵌まっていいのか神器さん。

 

 

 

 

エリス教団主催、第一回ミス女神エリスコンテストは波瀾万丈の展開だった。

今月の家賃を払うために参加するウィズ。

飛び入り参加したサキュバス娘3姉妹。

そのうちのお姉様が化けの皮を華麗に脱皮して中から現れる仮面。

嵐のような大ブーイング。

板チョコみたいないい腹筋してるララティーナお嬢様参戦。

お嬢様と激しく戯れる会開催。

係員に取り押さえられ別室で宥められる暴れ回っていたダクネス。

 

もはやミスコンじゃなくスマブラと化していたイベントだったがそんなイベントももうすぐ終わりを迎える。

未だ若干の騒がしさはあるものの、ようやく進行が可能な程度には静かになった会場で、ステージ上の司会者が。

 

『さて、会場の観覧も収まったことですし、参加者も残っては……あれ? まだお一方いらっしゃったようで――』

 

 

――ざわめいていた会場が、一瞬で静寂に包まれた。

誰も彼もがステージの中央、ただ一点のみを見つめている。

視線の中心は、一人の優しげな笑みを浮かべる少女。

銀髪、紫紺の瞳、どの街にでもいる女神様の像の雰囲気と同じ、人間離れした麗しさ。

 

『……えっ……あ……あの……これは、参加者全員にお尋ねしていることなのでどうかお許しいただきたいのですが……。その、お名前の方を……』

『名は……エリスと申します』

 

その瞬間、会場に歓声が轟いた。

熱狂的な叫び、噎び泣く嗚咽、恍惚とした表情、頬を伝う涙、頭を深く下げた祈り、天を仰ぎ驚喜する。

そのすべての声が会場中に。

かく言う俺も、我を忘れていた。

女神が降臨することを知っていた、かの女神の正体を知り合いと知っていた、女神アクア様を知っていた……

その知っていた知識情報すべては女神の威光の前では無駄だった。

しかし次の瞬間、どこかで聞いたことのある声が会場のざわめきを止める。

 

「エリス! 私をほっぽって何勝手に降臨してるのよ!」

「せ、先輩!?」

「私、我慢してたのに! お祭りと言えば私の領分なのに私そっちのけで出しゃばっちゃって!」

 

一度、見たことがある女神様。

俺をこの世界に送ってくれた女神様が瞳に映る。

誰もが銀髪の少女の正体が女神だと気づいている中、その女神に対して説教を垂れる青い髪。

誰もがその女神様に気さくに話しかける様子を見ても、青い彼女のことを女神と気づいていない馬鹿とは思わない。

青い髪、青い瞳、いつかアルカンレティアで見た……いや、俺が死んで生まれ変わる瞬間に見た女神様そのものがいつの間にかステージ上におり……

 

『……えっ……あ……あの……!? と、飛び入りの参加者で、しょう、か……』

『そうね、その認識は間違いではないわね。さっきダクネスとみんなが喧嘩してるのを見てつい楽しそうで。あとアクア祭なのにエリスだけいい顔はさせられないわ』

 

もう、ほとんど答えを言っているその女神様。

エリス教に紛れて参加していたアクシズ教の連中はもうすでに嗚咽を漏らしかけ、目は充血し、今にも狂う寸前という状態。

口をパクパクさせながら司会の人が。

 

『……その、お名前の方は……』

『ふふっ、愚問ね。お察しの通り私はアクシズ教団の崇めるご神体……アk』

「おまっ、天界規定ねじ曲げてんじゃねぇ!」

 

その瞬間、目の錯覚だろうか。

仮面の人がアクア様を蹴り飛ばしたと思ったら、仮面の人とアクア様の姿が消えた。

……一体どういうことだってばよ。




次回 天界で説教編
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