あの素晴らしい世界に帰るため   作:桃玉

50 / 103
ここから小説第9巻です。
……と言いつつ、実質「続・爆炎1巻」からめぐみん視点から幕開けです。


9.既視感~またどうしているんだよ!~

それは、女神エリス感謝祭の後のこと。

 

エリス祭のあの日、今でも鮮明にその姿を覚えている。

王都でアイリス女王から危険な魔道具を盗み出した正義の盗賊団。

口元をマスクで覆う銀髪の頭。

もう一人は私と同じ漆黒の髪に赤い瞳。

二人はいかした黒装束に格好いい仮面。

以前カズマから5枚ほどいただいたあの仮面と酷似したバニル仮面。

盗賊団に義賊に仮面……メロメロである。

これほどまでに私の琴線を刺激する要素を揃えるだなんてたとえ紅魔族であったとしても只者ではない。

 

「というわけで、私は少数精鋭で頑張る彼らを、陰ながら助けると決意したのです! つきましてはカズマが先日私に託した仮面をもう何枚かいただけないでしょうか。今現在3枚は手元にあるのですが、さすがに足りないのではないかと……」

「へー、そうかそうか、あの噂の義賊のファンなのか。いやぁ、困っちゃったなぁ」

「何をにやついているのですか。そんなことより、追加でいただけるのですか、いただけないのですか!」

「3枚残ってるからやるよ。まあ、ほどほどに頑張れよ」

「おおっ! 感謝しますよ! カズマは我が盗賊団に入団したさいには好待遇を期待していてください!」

「いや、そういうのは遠慮しておくよ」

「なるほど、あくまで入団はせず、裏で協力関係を築く協力者……いえ、共犯者と言いましょうか。くっくっく、今後も我が盗賊団をよろしくお願いしますよ?」

「はいはい」

 

カズマは自身を紅魔族とは違うと否定していますが、私と同じ業を背負っているに違いないのです。

なぜなら、本来カズマの手元には5枚の仮面があるはずなのに、私にくれたのは3枚。

これが意味するところは布教用の3枚を除いて、手元に残しておきたいという私と通ずる何かがあります。

 

まあ、そんなカズマのおかげもあり、盗賊団のシンボルを獲得。

一気に団員が増えるなんて思っていないので一先ずは手元にある6枚の仮面で足りることでしょう。

それに、そう易々と盗賊団になれると思ったら大間違いです。

やはりあの盗賊団の足手まといにならないよう、有象無象を迎え入れるのではなく、私と同じ志を持つ同志のみに厳選するべきなのです。

というわけで私は有志を募るためにギルドで演説活動をすることにした。

 

「さあ、人類の未来を救うための義賊を支援したいと思う我が同志よ! 我とともに正義の盗賊団の団員になりたいと思う者こそ心臓を捧げよ!」

「めぐみんさん、ギルドの中心でそのようなことを叫ばれても非常に迷惑ですし、保護者を呼ばれたくなければ止めてください」

「みなさん聞きましたか! この国の職員は人の演説をやめろと! 発言の自由を奪わんと私に圧力をかけてきましたよ! これこそ、悪徳貴族の策略なのです! ……ああっ、私のことを拘束して何をするか!」

「そんな馬鹿な発言、誰も信じないですよ。本当に冒険者活動の妨げはやめてください。これ以上騒いだら懸賞金を懸けてあげますからね。募集の張り紙も禁止です」

 

くくっ、愚かな人間だ。

私の崇高な行いが何もわからないなんて、世界の闇に操られた者の末路は実に哀れなことよ。

首根っこを捕まれてギルドの外に放り出された……もとい、強制退場させられた私はとぼとぼと街を彷徨う。

盗賊職を見かけたらすぐさま声をかけ、そのたびに断られを繰り返す。

ただそうしているうちに時間だけが過ぎて、私も今日のところは疲れたので最後にギルドで唐揚げでも食べようかと思って立ち寄ると、一人のぼっちと視線が交差した。

ぼっちは 仲間になりたそうな目で こちらをみている。

 

「すみません。ジャイアントトードの唐揚げを2つ。あちらの『私に奢らせてください』と言わんばかりに不躾な視線を送ってくるお客さんのツケで」

「ちょ、それって私のこと!? 私に唐揚げの代金を支払わせようとしてるってことはもしかして遠回しに私のことをお昼に誘ってるってことなのかしら!」

「これがぼっちの悲しき生態ですか。この唐揚げは全部私の分です。ゆんゆんの分は自分で頼んでください」

「うん、だと思ったわ。昔から私のお弁当目当てで勝負を挑んできてたあのめぐみんが私のことをお昼に誘ってくれるなんてそんな奇跡あるはずないって思ってたわよ。お姉さん私に唐揚げ1つください!」

 

めぐみんは 盗賊団の 資金担当を ゲットした。

まあ、元々ゆんゆんには盗賊団の副リーダーとして名簿に書いていましたし、実質今回の成果はゼロに等しいのです。

一先ず『め、めぐみんが私にこのプレゼント(仮面)を!? よ、よく見ると独創的なお面……い、一生大事にするわね!』とかっこいい仮面の魅力に抗えず入団し、人手が倍になったので、本格的に団員募集を始め…………

私は護衛(保護者)と離ればなれになってる王女様(迷子)を見つけた。

 

「ちょっと待ってください、なぜあの子がこの街に……」

「ねえめぐみん、私、未だにその盗賊団が女神エリス様の勅命で活動してるって信じられないんだけど……ってあの子、めぐみんの知り合い?」

 

ゆんゆんが通常のボリュームで私の名前を呼んだせいで王女様に見つかってしまった。

王女様はニコニコと嬉しそうにこちらに手を振りながら近寄って。

 

「めぐみんさん! こんなところでお目にかかれるなんて思いもしませんでした!」

「私の方こそ思いもしませんでしたよ。なんで止ん事無い家の出であるあなたがこんなところに一人でいるのですか! 護衛の人は!」

「……護衛の人とはなんのことですか? 私はチリメンドン屋の孫娘、イリスですので護衛はいませんよ? ……めぐみんさんの陰に隠れていらっしゃるのはめぐみんさんのお友達ですか? こんにちは、イリスと申します。どうかお友達になってくださいませんか?」

「こっこここんにちは! えと、めぐみんのライバルやってましゅゆんゆんです! 私ごときでいいんだったらいくらでも喜んで!」

 

どうしよう、このボッチをこじらせた自称ライバルは年下相手でもコミュニケーションに難があるらしい。

久しぶりに年が近く、まともで、上品で、それでいてお友達になってくれる夢のような幸福に包まれているせいで現実との境界が曖昧となり、変に緊張してしまったのだろう。

私が良識のある護衛ならこの挙動不審なお姉さんとは距離を置いた方がいいとアドバイスすることでしょう。

 

「……しかし、イリス、ですか」

「はい! イリスです! めぐみんさんめぐみんさん。その頭につけているかっこいい仮面は一体どこで入手したのですか? ハチベエもつけていましたし、もしかしてこの街の人気商品なのでしょうか! 是非私にもその仮面を一枚くださいな」

「くっくっく、あげましょう! あげましょうとも! ただしこれは銀髪盗賊団の活動を陰ながら応援する者にのみ与えられる悪魔の仮面……これを得たくば禁断の契約を交わしてもらうことになる。我が盟約により何人たりとも呪縛を振り切ることはできない……それでも、世の悪を陰ながら成敗する彼らについて行くというのならあげましょう」

「盗賊団! 悪を成敗! ぜひ私も! 私もお二人の仲間に入れてください!」

 

あれ!?

自分の身を危うくした盗賊団の名を出し、活動そのものも王女として参加しない方がいいと、そう言ったつもりなのにどうしてこの王女様はこんなにも我が盗賊団の活動に乗り気なのでしょうか……

もしかして、この仮面の抗いがたい魅力は正常な判断をも狂わすのだろうか。

どうやってアイリスを参加させないか、入団試験を実施して「あなたには盗賊としての才能がありません。お引き取りを」と適当言って帰そうか思案しているとゆんゆんがクイクイと私の袖を引っ張り。

 

「ねえめぐみん、とりあえずイリスちゃんは入団の方針でいいと思うんだけど、それよりあそこに仮面の人がいるんだけど。あの人なんて盗賊団に意外と適任なんじゃない?」

「何を言っているのですか、イリスをこんな荒くれた家業に参加など……って仮面の人!? 今、仮面の人と言いましたか!」

「仮面の人! 仮面の人がいらっしゃるのですか!?」

「え、ええと、あそこに……」

 

しめた!

こんなところで仮面の人と遭遇できるなんて!

カズマの仮面の出所は判明していますが、あの人は一体どこからあの仮面を入手したのか。

もしかしたら盗賊団と何らかの関係があるかもしれない!

つまり、事情を話して公式にこの活動を認めてもらえれば……

次の瞬間、仮面の人と目が合った私は……

 

 

 

 


 

アクアがしっかり反省したのを見届けて、地上界に戻った俺。

結局、アクアが変なこと言ってたせいでどうして俺とアクアが消滅しなかったのかはわからず終いだった。

……俺が怒りを我慢すればよかったという意見は受け付けないものとする。

だってあれは怒りに任せて折檻したんじゃなくて、あくまでアクアのためを思って……はあんまりないが、遺伝子に刻み込まれた本能に逆らうことができようか。

 

「否ない! もし、万が一アクアの言い分――女神の不思議パワーで消滅しないってのが本当だとしても、人様を心配させたのには変わらないんだ! 心配させないようにそういうことはあらかじめ言っておくべきだ、うん、そうすべきだろ」

 

そもそも、スーパートップオブ女神(笑)だとしても、世界の異物排除機能を無視できるのだろうか。

いくら世界の管理者を担っている存在だってそこまで万能なわけないだろうし、アクアの言い分に俺は否定的なんだが……

まあ、なんにせよ、だ。

女神の力を使って直接的に地上に影響を与えるのは上の神様から禁止通告されてるらしいし、今後アクアが勝手に堕天するのも禁止になる……はずだよな?

 

「よし、とりあえず次天界に行ったらエリス様にアクアの監視してもらうようにお願いしよう。万が一同じようなことがもう一回あろうもんなら俺があの世界に帰るまで罰として禁酒してもら……おう」

 

何か視線を感じてそちらの方に視線をやる。

そこにはゆんゆん、アイリス、そしてめぐみん。

目と目が合った瞬間、俺の心臓が激しくビートを刻む。

もしかして……これが恋ってやつなのk

 

「ゆんゆん! イリス! 最初の仕事です、仮面の人を捕獲せよ! きっとあの人は銀髪盗賊団に深く関わっているはずです!」

 

あ、違う。

これ、恐怖だ。

今からデッドオアライブの鬼ごっこが始まる予感だわこれ。

俺は心臓を落ち着かせるため、深呼吸を一度だけ。

そして流れるように三人娘に背を向けて走り出した。

 

「あっ、逃げましたよ!? お待ちくださいお兄さ……仮面の御方ー!」

「ごめんなさいぃぃい! 忙しいのでナンパはお断りですぅぅううっ! というか王族ってそうポンポンお忍びしていいもんなのか!?」

「お、王族じゃないです! どなたと勘違いされているかわかりませんが私はチリメンドン屋の孫娘、イリスです!」

 

うそこけ!

そもそもチリメンドン屋ってなんだかわかってないだろ!

かわいい妹に心の中で突っ込んでいると、今度はめぐみんが。

 

「待ってください仮面の人! ナンパではないのです! どうか、私たちと話を! 銀髪盗賊団に纏わるインタビューを! だめならこの仮面にサインをいただけないでしょうか!」

「秘技、黙秘権を行使させていただきますぅうっ! というかそういうファンクラブで人様に迷惑かけんなよ、アクシズ教か!」

 

そもそも仮面にサインって何だよ!

そんなことしたら本格的に犯罪者と関わりのある組織になってご用になっちまうだろうが!

なんでこの頭のおかしい爆裂娘は……

 

「安心してください! これは保存用の仮面です!」

「何も安心できないわよ! なんで本来の目的とかけ離れた欲望丸出しの言葉を言ってるの! めぐみんのことは嫌いになっても私のことは嫌いにならないでください! 私たち、一緒に旅行したお友達ですよね! どうか一緒に遊びませんか! きょ、今日が無理ならいつでも! いつまでも待ってますから!」

「悲痛な叫び止めい! ゆんゆんがそう言うこと言うと非常にいたたまれないんだから! 今度一緒に(魔王軍幹部を討伐するために)王都に行くんだから今日のところはお引き取りを!」

「えっ、ほんとに?」

 

見た目麗しい女性3人組に追いかけられて……なんだこのデジャブ。

どうして俺が気を抜いた瞬間に俺のかわいい妹はアクセルの街にやってくるのだろうか。

どうしてあんな無邪気な笑顔で、無自覚に俺のこと殺そうと追いかけ回してるのだろうか。

意外と役に立たない今までの人生経験をフル活用しながら俺は街中を疾走する。

 

 

その後、なんとか逃げ切れたが、おかげさまで俺の胃に穴が開いた気がする(錯覚)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。