何とか砦に辿り着いた翌日。
早速私たちはカズマの作戦に従って魔王軍幹部討伐にかかる。
こそこそと敵の根城に近づき、幹部が出てきた瞬間に私の爆裂魔法で奇襲しようという作戦だが。
まあ、なんといいますか、カズマらしい姑息な戦術だなと。
そう思いながらしばらく進んでいると幹部らしき影が。
私の杖を握る手が強くなる。
しかし心の準備は常に万端、私は、私にできる唯一の準備をするだけだ。
「おい、めぐみん! 気づかれたぞ! ダクネスと俺で時間を稼いでおくから……!」
「はーっはっはっは! 魔王軍の幹部など恐るるに足らず! 我が爆発の餌食となるがい……い……」
そこまで言いかけて、「お姉さん……?」と口が形を変える。
幼い頃の私が憧れ、慕ったそのままの姿だった。
懐かしさとともに胸に広がる痛みが、じわじわと私を締め付ける。
竜頭蛇尾――私が呼びかけた言葉、自慢の詠唱は、今や空しく私の心の中だけに響く。
覚悟が鈍った理由を問われるならば、目の前に立ちはだかる敵対者が、かつて私の恩人だったから……というのが適切なのだろうか。
私の心のざわめきを感じ取ったのか、ちょむすけが腕の中で暴れ出すのを感じつつも、私は何もできずに立ち尽くす。
そんな中、カズマとダクネスが前に出て。
「お風呂好きのお姉さんじゃないですか! どうしてこんなところに……!」
「そういえば、まだあなたには名乗ってなかったわね。私の名前はウォルバク。魔王軍幹部の一人にして、怠惰と暴虐を司る女神、ウォルバクよ」
「くっ、魔王軍の幹部が女神だと……!?」
ダクネスの驚きの声が耳に届くが、私の心はどこか遠くにあった。
今、目の前にいるのは、かつて私を救ってくれた恩人。
しかし、その恩人はもう私の味方ではない――むしろ、敵として立ちはだかる存在だ。
私はどうすれば……
杖を持っている感覚も、口が動く感覚も、地に足をつけて立っているかさえわからない。
脳の処理が追いつかずにすべての感覚が遮断されてしまったのだろう、指一つ動かせなかった。
そんな中でもくぐもった音とぼやける光が耳と眼に勝手に入ってくる。
「あなたは……その装備からしてクルセイダーかしら? 神に仕える者として驚かせてしまったようね。でも私は紛うことなき女神よ。今はとある事情があって魔王軍に身を落としてるけど……こんな私を許せなかったかしら?」
「ああ、許せないとも! どうして男ではないのだ!」
「えっ、どういうことなの!? 女神として堕落したのを怒るんじゃなくてどうして性別で怒られてるの!?」
「日々の善行のおかげでここ数日の私は運に愛されていたのに! 山賊に襲われ、ドラゴンゾンビに襲われ、仲間に拘束され……」
「それは不幸だと言うのではないのかしら? ああ、だからそんな可哀想な頭に……」
「いや、コイツの場合は元々こんなんだし、なんなら自業自得だぞ。だって、最終的にコイツは山賊に襲いかかり、ドラゴンゾンビに襲いかかり、自らバインドを欲したんだ」
「本当にどういうことなの!? さっき襲われてるって聞いたのだけど! なのに立場逆転して襲い返したってことかしら!? 自分で言ってみたけどそれはどういう状況なの!?」
普段なら、こんなやり取りに笑いがこみ上げるはずなのに、今の私はただ、無力感に囚われていた。
私が誇りとしてきた爆裂魔法。
それをお姉さんに向けて放とうとして……恩を仇で返すつもりなのだろうか。
でも魔王軍幹部を討伐するのは冒険者としての義務で、人類を脅かす魔王軍は排除すべきで……
答えが出ない問いが、私の頭を駆け巡る。
本当に私らしくない。
私なら、たった数度言葉を交わした程度の相手に情などわくはずがない。
私なら、敵を爆裂魔法を信じてすべてを巻き込んで蹂躙するだけだ。
戦闘においてそれしか能がない私は、それで役立たないとならないんだ。
そのように思ってみても私の鈍った感覚は戻らない。
只、私の中の「正しさ」が揺らぎ続ける。
「……なあ。俺からしたらお姉さんは悪い人には見えないんだが、どうして魔王軍の幹部に?」
「どうして、ね。こんな時には、こういうのがセオリーなのかしら? ……それが聞きたいのなら私を倒してからにすることね」
「……参ったなぁ、どうしてもアンタと戦わなきゃならないのか?」
「ええ。どうしてもよ」
どうして命の恩人で爆裂魔法を教えてくれた貴方と敵対することになったのでしょうか。
どうして魔王軍の幹部なんてやってるのでしょうか。
どうして私の方を見てくれないのでしょうか。
どうして運命の神様はこうも意地悪なのでしょうか。
どうして爆裂魔法を撃てないのでしょうか。
どうして、どうして、どうして……
……ただ一つ、わかったことがある。
可笑しそうに、それでいて少しだけ寂しそうな儚いその顔。
その浮かべた微笑は、私が爆裂魔法を撃つことを躊躇してしまうには十分すぎたんだ。
「そうかそうか。つまり、私のことを嬲ろうとしているという解釈で間違いないな?」
「間違いだらけよ!?」
「いいだろう、この際性欲丸出しの獣の目で見てくる男じゃないことには目を瞑ってやる。だが、魔王軍の幹部というのなら敵から情報を吐き出させるために拷問や尋問の類いは得意だろう! さあ、早くご自慢の辱めをしてみろ! 私は爆裂魔法でさえ耐えられる……そう易々とは屈しはしないぞ!」
「ひっ、ひぃ! たった今、どうして山賊やドラゴンゾンビの立場が逆転したか身をもって体感したわ! これだからアクシズ教はいやなのよ! 本当に私のことを邪神扱いしたり……頭のおかしい連中よ!」
「お、おい! 私は敬虔なエリス教徒だ! って、あっ! 逃げた!? 逃げるな! せめて私のことを連れていって……あぁ……」
「……と、とりあえず、人のことをドン引きさせるのはよくないが、あれは魔王軍の幹部だしな。うん、よくやったダクネス!」
憧れた人が、今、目の前にいる。だが、その瞳に映るのは、かつての恩人ではなく、今は敵として対峙すべき存在。
そのお姉さんがテレポートでいなくなる。
そこで私の視線は彼女からようやく離れ、顔を真っ赤にしているダクネスに気づく。
「俺らは魔王軍幹部を撤退に追い込んだ! 十分な戦果じゃないか、うん! ……だからみんな元気出そうぜ? 何で三人ともそんな精神的に追い込まれてるんだよ……」
すみません、カズマ。
それはまだ言えません。
その事実をカズマたちに伝えたところで只の私情に過ぎないのですから……
あれから一晩考えたが、私の気持ちはまだ煮え切らずにいた。
それでもお姉さんと言葉を交わせば何かしら解決の糸口になるかもしれない。
そう思って、外に出ようとしていたカズマのそばに行き。
「今日は大丈夫です。お願いです、やらせてください」
「いやでも……本当に大丈夫なのか? っていうか、昨日は一体どうしたんだよ。ゆんゆんも部屋にこもってるし……もしかして、紅魔族が封印してたあの邪神のお姉さんを滅ぼしたくなくて、再封印したいとか思ってるんじゃないだろうな? 人型だし、殺したくない気持ちはわかるし、無理してほしくないんだがなぁ」
カズマが言っていることは、当たらずとも遠からずだ。
お姉さんを封印したいとは思っていないが、滅ぼすなんて恩を仇で返すようなことも、どうしてもしたくなかった。
カズマが私を見つめる。
私は肯定も否定もせず、ただ黙って見つめ返した。
「……まあ、大丈夫って言葉が本当なら、俺としては心強いけど、しばらくは行けないぞ?」
「そ、それはどうしてですか!? まさか私がまたへっぴり腰になるだなんて思っているのなら……」
「違う違う。俺、しばらく外壁の補修にかり出されるんだよ。だから昨日みたいな作戦はできないんだ」
「何でカズマが外壁を?」
「ほら、俺、冒険者になる前には壁の補修バイトで日銭を稼いでたんだよ。この中の誰よりも現場を知ってるし、土を大量に出せるから、需要が高いんだよ……俺のモテ期が来るかと思ったんだけどな……あはは……はぁ」
「そ、それはそれは、お疲れ様です……」
カズマはむさ苦しい男たちに囲まれ、汗水垂らして働くことを想像したのだろう。
彼の目は、まるで死んだ魚のように虚ろだった。
「まあ、そういうわけで、しばらくはゆっくり休んでろよ。ちなみに俺のおすすめの暇つぶしは、昨日のダクネスの一部始終を噂として流すことだ」
「えぇ……ほどほどにしておいてくださいよ? あれで繊細なお嬢様なんですから、後で痛いしっぺ返しを食らっても知りませんからね」
「わーってるって。じゃ、また後でな」
「は、はい…………その、私にできることがあったら、言ってくださいね? とは言っても、私の取り柄といえば爆裂魔法くらいですが」
「おうよ。魔王軍の精鋭が攻めてきたら頼むわー」
カズマが去った後、私は深く息をついた。
命の恩人であるお姉さんと敵対する気持ちの整理はついた……
とは言い難いものの、カズマの気楽な様子を見ていたら、少しだけ胸のつかえが軽くなった気がする。
それでもまだ心の奥底にはまだ不安がくすぶっている。
「……私は、どうすればいいのでしょうね」
自問自答する私の心は揺れ続ける。
私にとって、お姉さんと出会ったあの瞬間は何よりも輝かしい記憶だ。
それが、どうして今になって敵として対峙することになるのか……
どうして運命というものは、時にあまりにも残酷なのでしょう。
ふとカズマがいる外を見る。
そこには仮面の人とカズマが。
「いいか、外壁の補修ってのは、まず壁の中に芯を入れて、周囲を土で固めて、最後に石膏で塗り固めるんだ。ほら、こうして、こうして、こうだ!」
「はやっ!? うまっ!? 親方と同じくらい早いじゃねぇか!? まさか、女神様から壁補修のチートでももらったのか!?」
「いや、ただの練習の成果だ。とある仲間に負けたのが悔しくて、めちゃくちゃ真面目にやってたんだよ。あと、生活費稼ぎでね」
「普段から土木工事で生計立ててんのか!?」
「昔の話だ。さて、補修の基本は分かっただろ? あとはお前がみんなを引っ張っていく番だ。技術が拙くても、圧倒的な質量でなんとかなるさ。前の倍の厚さでやってみよう。……ってなわけで、俺はひっそり応援してるから、後は頼んだ」
「いやいや、働けよ! ここまでしておいて、後は素人に任せるのか!? 親方仮面を頼りにしようと思ってたのに!」
「……この仮面は俺のアイデンティティーの根幹だ。外すことなんてできない。というか、もはや俺の皮膚と言っても過言じゃない。無理やり取ろうとしたら、グロテスクな顔を見せることになるぞ。加えて、王都ではまだ盗賊団の騒ぎが収まってない。……俺に捕まれと?」
「仮面が呪いか何かなのか? ……じゃあ、盗賊団とは関係ないって説得す」
「説得なんて面倒だろう。大丈夫、大丈夫! お前ならいけるって!」
「買いかぶり勘弁してくれよ。別に野郎に褒められても嬉しくないんだぞ、この野郎! 『クリエイトアース』『クリエイトアース』!」
「よしよし、そしたら持ってきたシュワシュワを置いていってやるから、一仕事終わったらみんなで乾杯しろよー」
「ありがたい! ありがたいけど! もっと実用的なものが欲しいんだが!」
宿泊している部屋から外壁の方を見下ろすと、カズマと仮面の人が何かやっているのが見える。
というか、あの人、しっかり着いてたんですね。
私たち紅魔族が人造人間だとか何とか言ってましたが、どうして知ってるのか聞きに行く気力もなく、ただ無気力に外を眺める。
無気力なのは考えすぎて疲れただけで、糖分を欲してるだけだ。
口に角砂糖を放り込み、ガリガリと噛み砕くと、仮面の人が立ち去った現場にダクネスと壁補修に協力してくれる冒険者たちがやってきた。
「聞いたよ。まさか口先八丁で幹部を撤退に追い込むとは……さすが、名門貴族出身のご令嬢だ。演技力が桁違いなんだろう」
「い、いや、それほどでも……」
「俺たちは一撃も食らわせられなかったのに、まさか武力を使わずに爆裂魔法を阻止するなんて! すげぇ!」
「う、うう……カ、カズマ……助けてくれ、ちょこっと話題に出しただけなのに、どういうわけか噂として広がってしまったのだ! 私はそんな大層なことをしてないというか、恥ずかしい話が散々美談として話されて辛いのだが……!」
「そうなんだよ! うちのクルセイダーはすごいんだ。そもそも爆裂魔法の一撃さえ耐えきれる防御力がある。加えて、爆裂魔法を恐れない屈強な精神力! もうこの司令官がいれば、俺たちは無敵だぜ!」
「呪ってやるー! サトウカズマー!」
非常に賑やかだ。
この前の悲壮的な雰囲気はどこに行ったのだろう。
この平和な状態がいつまでも、いつまでも続けばいいのに。
魔王軍幹部のお姉さんに杖を向ける日が来なければいいのに。
そう願ってしまうのは、罰当たりなことだろうか。
数日後。
「どういうことなの!?」
カズマたち冒険者が積み上げてきた外壁を見て驚きの声を上げる。
今日も今日とて外壁の補修……というか魔改造をしていた作業着姿のカズマが真っ先にお姉さんと対峙している。
私も、ダクネス、ゆんゆんも、カズマがその場所に急いで駆けつける。
駆けつけた先にはカズマが、相手が魔王軍幹部にも関わらず堂々と立っていた。
「おい、お姉さん…いや、ウォルバクっつったな! 今日は何のようだ!」
「何用というか何事なのよ!? どうして崩壊寸前に追い込んでいた壁がどうしてあんなことになってるの!? 私が来たときより分厚いっていうか、一体どこからあれだけの材料を持ってきたのよ!?」
「俺たちが建てた最高傑作にいちゃもんつける気かゴルァ! 殺すぞ!」
「ひっ、ごめ、ごめんなさ……いやどういうこと? これあなたの仕業なの!?」
「だから何だってんだよ! またこの子に爆裂魔法を当てに来たってんならこっちも親として出るとこでっかんな! またうちの変態アクシズ教をけしかけてもいいんだぞ!」
「だっだだっ誰が変態だぁあ! そもそもアクシズ教でもないし、あれは演技、そう、演技なのだ!」
「……へぇ。私のことを騙してたのね? 宗教を偽ってまで……神に対する冒涜かしら」
「ち、ちがーっ!」
今にも泣き出しそうなダクネス。今日はやけに強気なカズマ。
自分が手塩にかけて育てた壁にどれだけ思い入れがあるのだろう、相手が魔王軍幹部であることも忘れて噛みついていた。
しかし、私としては……
……どうして来てしまったのでしょう。
あなたとは戦いたくなかったのに、戦わねばならないのでしょうか。
そんな思いが胸の内で渦巻く。
一応、自分に言い聞かせた。お姉さんは敵だと。
何度も、何度も、何度も……自分が大事にすべきは、守りたいものはどちらかを。
それなのに、お姉さんを前にすると動揺し、かたまりかけていた思いが振り出しに戻ってしまう。
どうしようもない自分にいい加減嫌気がさしてたそのとき、ゆんゆんが前に飛び出し。
「あの! 私のこと覚えてますか!? その……ゆんゆんっていうんですけど……」
「……覚えているわ。確か、馬車の中で一緒に旅をしないって誘った子よね。一応聞いておくけどあなたのそれもあだ名じゃないのよね?」
「本名です! あのとき、私を誘ってくれたこと、ずっと忘れてません! あの日の日記にちゃんと書いて、たまに読み返したりもしてます!」
「そ、そこまで重く捉えなくてもよかったのだけど……喜んでくれて何よりよ?」
ゆんゆんもどこかで会っていた。
そしてお姉さんもそれを覚えていた。
それを聞いて少し勇気が出た。
私のことを忘れていないか、それが怖くて一言も発する勇気が出なかったが、旅に誘った程度のことを覚えているのなら、爆裂魔法を教えてくれたこともきっと……
私はぎゅっとちょむすけを抱えたまま、上擦ってしまった声で。
「あの! 私のことは、覚えていますか? 私はめぐみんというのですが……」
「覚えてないわ」
それを言ったお姉さんは興味がないと言わんばかりに背を向け、消えてしまった。
「お、おい、めぐみん……」
覚えていない……ですか……。
たった一言なのに、心に鋭く突き刺さるような感覚。
まるで心にぽっかりと穴が開いてしまったような喪失感。
それでも、顔に出すわけにはいかない。
必死に微笑みを保ちながら、軽い調子で応じる。
「くっ、まさか取り逃がしてしまうとは、魔王軍幹部のくせになんとカズマのようなヤツなんでしょう!」
「おい、俺のようって何だよ。小狡いとか、卑怯とかの代わりの表現として俺を使うな!」
「いいではないですか卑怯で小狡い鬼畜なカズマが私は嫌いじゃないですよ?」
「これは褒められてないな。むしろ貶されてる気がする」
「そんなこと、ないです、褒めてますよ?」
言葉が喉に詰まりそうになるのを無理やり押し込め、胸の奥に湧き上がる悲しみを飲み込む。
爆裂魔法――その名を聞くたびに蘇るのは、初めてその威力と美しさに触れた瞬間。
自分が爆裂魔法に全てを捧げようと誓ったあの瞬間が脳裏をよぎる。
そんなとき、カズマが気遣わしげに口を開く。
「なあ、無理してないか?」
「べ、べ別に別に気にしてません! そもそも、まだ幼女だった私のことを覚えてる方が奇跡ってもんですよ! むしろ、覚えていない方が都合がいいまであります。気兼ねなく爆裂できますからね。ふっふっふ……私が魔王軍の幹部と邪神の称号を獲得する日もそう遠くはないでしょう!」
「……今のお前も十分ロリっ子な気がす何でもないです」
カズマが何か余計なことを言ったので目で黙らす。
私は何を期待していたのでしょうか?
お姉さんが再び自分を認めてくれることを?
そんなものは幻想に過ぎません。
彼女は今、敵として目の前に立ちふさがっている……これこそが現実なのですよ、めぐみん。
「さあ、早速帰ってカズマは作戦を立てください! もう壁の補修は十分でしょう!」
「いや、他力本願か!」
「逆に私がちょっかいかけて何かプラスになるとでも?」
「……ならないな。自分の思い通りにいかなかった時点で切れ散らかして会場を喧嘩騒ぎにする未来が見える。最悪爆裂だ」
「……なんというか、人に言われるのはムカつきますね。まあ、そういうことなので次回の爆裂に期待しててください。私は……もう、躊躇いませんよ」
心の中で泣きそうになりながらも、決意を固めるしかなかった。
お姉さんが自分を忘れてしまった事実を受け入れるしかない。
私の中でお姉さんはお姉さんで、ウォルバクなんていう邪神ではない……その気持ちをどうにかしなければならない。
「さあ、ウォルバク! 貴方が犯したミスはただ一つ、この私に爆裂魔法を教えてしまったこと!」
「ほんとだな」
「ほんとよ」
「カズマとゆんゆんは黙ってください! ……次相見えたが最後! アンデッドの王、リッチーをも上回る我が爆裂魔法であなたを倒し、どちらが最強な爆裂魔法使いか、その格を見せつけてあげますよ!」
涙が流れ出ないように最後にもう一度、全力で笑ってみせる。
ウォルバクに対する未練や尊敬の念を心の奥底に隠し込み、今はただ、目の前の敵に全力で立ち向かうことを誓ったのだった。
原作ではなかっためぐみん視点で書いてみました。
やっぱり、仲間に自分の思いを悟られないように健気に振る舞うヒロインは、なんというか、その、「イイ」と思うんです(癖)