あの素晴らしい世界に帰るため   作:桃玉

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いざゆかん、カジノ大国エルロード!


10巻 ラグクラフト
10.不毛な祈り~破滅さえ厭わないで~


拝啓 お兄様へ

最近、王都近くの砦においてまた活躍なされたと聞きました。

相変わらずなようで心配しております。

つきましては、今やこの国において最も高名な冒険者の一人でもあるお兄様にある 依頼をできないでしょうか。

実は私の許嫁である隣国の王子と近いうちに顔合わせがあるのですが、ぜひ道中の護衛をお願いしたいと――

 

つまり、隣国の許嫁と初の顔合わせに行くので護衛をしてほしい。

つい先日、俺の下にアイリスから届いた手紙だ。

 

どういうわけか、最後の一文を読んだ瞬間、手紙が真っ二つになったが、きっとこれは高名な冒険者の一人に数えられるようになった俺のことを妬んだ誰かがライトオブリフレクションの魔法で俺の家に潜入し、俺のことを暗殺しようとしたんだ。

それをアイリスの愛が籠もった手書きの手紙が守ってくれたんだ!

 

「よし、言い訳は終わりだな?」

「言い訳じゃない。俺は、ありのまま起こったことを話しただけだ」

「手紙にそのような効果があると思ってるのか!」

「何でも決めつける……お前のよくない癖だ、ダクネス。お前が知らないだけで世の中には未知がたくさん溢れているものなんだぞ? 例えばこの前討伐した邪神だが、めぐみんの冒険者カードには討伐記録として記載されていなかったり」

「それは……まさか取り逃がしたということではないのか?」

「いや、仮面の人は『アイツは空の上から見守ってるよ……』って言ってたし、大丈夫だろ」

 

嘘は言ってない。

確かに仮面の人がウォルバクのことを助け出してたけど、それはそれ。

魔王討伐するまではこの世界のどこにもいないんだから、それはもうほとんど討伐したと言っても過言じゃない。

もし、これ以上の詳細を聞かれたら面倒くさ……正確なところはわからないので仮面の人に丸投げする算段である。

 

「その話は前にも聞いたが……って、そういう話をしてるんじゃあない! 手紙だ! そのように跡形もない姿になった招待状を持って馳せ参じようというのか! ありえない、ここは私が辞退の文を送るから今回は我慢して……」

「いいや、我慢の限界だね。テレポート屋に頼んでもちっとも王都に転送してくれやしない! 限界だ。俺はアイリスの護衛をするぞ!」

「無礼が服を着て歩いてるようなお前に護衛を任せれば間違いなく外交問題に発展する! この国のためだ、我慢してくれ!」

 

何で仲間である俺のことをこんなに妨害するか、ようやくダクネスの考えがわかった。

俺が無礼者だと勘違いしてるらしい。

ダクネスは俺のことを見くびっている、無礼を働くなら外交問題に発展しないようにちゃんと考えて無礼するのに……

 

というか、どこぞの馬の骨とも知れないヤツとアイリスを結婚させるなんてとんでもない!

ダクネスは貴族としての責任でわからなくなってるだけで、本当はアイリスの結婚には反対なはずだ!

俺も、ダクネスも、アイリスの幸せを願ってる限り、政略結婚なんてさせない!

そうだろ! バツネス!

となわけで、俺に残された選択肢は……

 

「じゃあ野良デュラハン狩りだ。首を狩りに行くぞ! そして、死の宣告を覚えてやる! 俺たちは魔王討伐を志す高名なパーティー。お前みたいな防御力極ぶりのバカとは違って縁の下の力持ちにならないと駄目なんだ! リーダーである俺の能力強化をして、安定した戦いを目指さないと魔王討伐なんて夢の果て!」

「邪神を討伐してからのカズマはおかしい、おかしいぞ! 魔王討伐なんて目指してないだろうにどういった風の吹き回しだ!? どうして私が大人しくしてほしいときに限ってそうやる気に満ちあふれて……ま、まさかとは思うが、死の宣告で王子のことを呪い殺すなんて馬鹿なことは考えてないだろうな?」

「流石に俺に人を殺す度胸はないわ。見くびるなよ?」

「そ、そうだよな? うん、よく考えればそうに決まっている。カズマが人を殺すなんて……」

「そうそう。俺がすることなんて、たかだか『ははーん、これは魔王の仕業ですね。お姫様をさらうのは魔王の仕事。大事な仕事を横取りするから魔王に恨まれたんですよ。ここは魔王を倒すまで婚約を取り消すのが一番では……』つってみたりするだ。殺しはしない」

「お、お前……!」

 

 

 

 

というわけで、ダクネスに王都に行き護衛依頼を受けるか、デュラハン狩りに行くか激しく迫ったところ、渋々護衛依頼の方になった。

義理の兄である俺としては、妹に頼まれたとあっては当然断るわけもなく、かわいい妹をたぶらかすどこぞの馬の骨と戦闘になってもいいようにちっとも手入れしていなかった変な名前の刀の刃を研いだりしていたんだが……

 

翌日、目を覚ますと俺は……体が拘束されていた。

俺のことを拉致監禁しようとしてた主犯はダクネス。

「お前がまいた種だぞ! 俺のカズマさんが粗相をばらまく前にしびんを早く!」などと言うはめになる意味のわからない状況に陥り……

その後、めぐみんにその現場を押さえられたダクネスは正座の体勢でハアハアしていた。

 

「……仮にも良家のお嬢様が、男を無理矢理手込めにするのは感心しませんよ?」

「違うのだ! これは……」

「拘束されて、あとすこしでパンツを下ろされるところだった」

「やはりビッチではないですか! お盛んなことはいいですが、流石に夕食も食べてないのにそういういかがわしいプレイをするのは……」

「本当に違うのだ! だからその、そんな目を向けないでください……興奮してしまいます……///」

 

一瞬反省したのかと思ったら興奮しているうちのポンコツ第二号はもう駄目かもしれない。

そんなことを思っていると、めぐみんが手に持っていた箱に目がいく。

どうやら魚が入ってるみたいだが……

 

「もしかして、今日の晩ご飯の買い出しに行ってきてくれたのか?」

「ええ、今日の晩ご飯はなんと豪華にもフグですよフグ!」

「お前にしては珍し。今日は誰かの誕生日だっけか?」

「いいえ、違いますよ。実は、セシリーお姉さんが『道行く人に食べさせて毒に当たったら解毒魔法をかけてあげて改宗を迫るっていうすごい作戦を立てたんだけど……』なんて言うものですから没収してきました」

 

戦利品を俺にずいと差し出すと、どや顔とピースサインで答えるめぐみん。

あのアクシズ教は一体何をやってるんだか。

もしかしなくてもあいつらがいなければ世界平和が一歩早く近づくのではなんて思って。

 

「そいつはよくやった。お巡りさんにつれていってもらったか? てか、お前、ふぐ調理できんの?」

「いえ、できませんが……代案があります。解毒魔法使えるプリーストがいればフグの毒なんて怖くはありません! ということで……」

「ご相伴させていただきます。美人プリーストのセシあっ」パタン

 

めぐみんのまねをして、どや顔ピースで現れた毒殺未遂犯。

俺は思わずマッチポンププリーストをドアで隠した。

一息すって、落ち着いたところでめぐみんに。

 

「いいか。きっとこれだけ極悪なことを思いつくばかりか実行しようとするやつは常習犯だ。懸賞金がかかってるはずだ。このフグと嘘つくとチンチン鳴るアレを証拠に懸賞金をもらってくるんだ。それで手に入れたきれいなピン札でうまい飯でも食いに行こ」

「ちょっとちょっと! お姉さんになんてぞんざいな扱いしてくれるのかしら! 聞きましたわよ、最近私のめぐみんさんとよろしい関係だそうじゃない? これから私はあなたのお義姉様になるのよ、家族に対しヘブゥッ」

 

ドアが壊れるんじゃないかってくらい激しく開け放った宗教勧誘の人。

同じくらいの勢いでドアを閉めた俺。

鍵をかけておこうと急いでドアに手を伸ばそうとして……

 

「カズマカズマ。お姉さんのこと、家に入れてもらえませんか? 私の口は極楽ふぐの口になってるのですが……」

「明日から護衛だぞ? 体に気を遣っていこ」

「あ、あああ! 私もなんだかふぐの気分になってきたなー! きっと幸運値が高ければ当たらないからカズマと一緒に食べれば当たらないんだろうなー! さあ、遠慮しないで食べさせてやろう!」

「ちょ、おいダクネス!? 俺の口に突っ込もうとするな! おまえ、俺が護衛依頼を受けないようにってのまだ諦めてなかったのか! そんなにフグ食べたいんだったら俺のフリーズで一週間くらい持たせてやるからどけよ!」

「いやいや、新鮮なうちがいいのだ! ほら、遠慮せずにゃああああぁぁあっ!?」

「ぐへへへ、ドレインタッチで体力をすわせてもらったぜいっだああっ!?」

 

このクルセイダー……重いだけじゃない!

俺の手をひねり潰す気だ…………でも負けない!

ダクネスと格闘している間に何事もなかったかのようにめぐみんに招き入れられたセシリーが網でフグ刺しを炙り……

俺の方にうちわで扇いでその香りを飛ばしてきた。

 

「どうですかどうですか? このフグの王様と呼ばれる極楽ふぐの甘い淡泊な香りは……他のふぐに比べて毒素が強いけど、美食家たちに『これを食べて死ねるのならかまわない』とまで言わせる絶品! お姉さんのい・ち・お・し! 食べなきゃ損よ! ほら、脂がいい感じにのってるでしょ? はい、あーん!」

「あーんじゃねーよ! ダクネスもお前も殺す気か! あと勝手に人ん家に上がり込んでるんじゃねぇ! 住居不法侵入でおまわりさん呼んできてやろうか!」

「そんなこといって、お口から垂れているコレはなにかしらぁ? アクシズ教教義には今日を楽しくいきなさいというありがたいアクア様のお言葉があってですね……我慢は体に毒よ?」

「食べた方が体に毒だわ! めぐみーん! 助けてくれ! 痴女ネスたちにやられちゃ」

「…………ん? なんですかカズマ? 目の前にある食べ物はすぐに捕食しなければ横取りされるのが弱肉強食の掟。カズマも早く食べないとなくなりますようまうま」

 

そう言ってめぐみんに助けを求めるも、無意味だった。

めぐみんが誰よりも多くのフグを頬張りすでに食事を始めていたのだ。

きっとこのパーティーは魔王軍を多く倒したのに全滅の理由がフグという、非常に不名誉な感じで歴史に名を残す。

 

 

俺に一口フグを盛って満足したのか、セシリーとダクネスはお酒で乾杯し出す。

お酒を飲んでないのにもうすでにふらふらなロリがセシリーの膝にリフトオン。

悶絶して「もえ~~♡♡」しまくるセシリーが次にダウン。

最後になってようやく危機感を持ち始めたダクネスすらもフリージア。

 

さよなら現世。

こんにちはエリス様。

願わくば来世はかわいい義理の姉妹に囲まれて、かわいい幼なじみがいる生活を送りたい……

アイリスに一目会いたかったと霞む視界の端。

わずかに黒い影が見えた気がした。

 

「いや、フグ食って死にかけてんじゃねええぇぇええっ!!」




おいカズマくん。エルロードに逝くのかい、逝かないかい、どっちなんだい! 
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