あの素晴らしい世界に帰るため   作:桃玉

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そう言えばカズマは私やめぐみんより身体面ではか弱かったのだな……
失念していた、反省している。

……だが、あのときの行動はすべて私たちの首が跳ね飛ばされる前にと思ってのこと。
しかもあのフグはおいしかった……罪悪感はあるが後悔はしてない。 byダクネス


10.ただ強いだけじゃない~Heart of Gold~

俺はダクネスの策略を見事に脱し、王都に到着。

到着早々ダクネスとレインが。

 

『ダスティネス様、今回の依頼はどうにかして断念させるという話ではなかったのですか!? あの方にアイリス様を任せるなんて間違いなく外交問題に……!』

『分かっている、こちらも努力はしてみたのだが思いのほか抵抗が激しくてな。幸いなことにあの男は私が折れたと思って油断しきっている。隣国の首都に着いたら一服盛って、アイリス様が滞在なされる間、ずっと眠らせておくつもりだ』

『おお、さすがはダスティネス様! そういうことなら安心です!』

 

などとコソコソ話をしているのを読唇術スキルで読み取った俺。

今すぐに王都中に「ダクネスの腹筋バッキバキ」とか「ララティーナはぬいぐるみ好き」とか「仲間の冒険者の男と裸の付き合いを」とか、根も葉もある噂をばらまいてやりたい衝動に駆られたが、すぐに出発とのことでそれができないのが悔やまれる。

そんな中、今度はいきなり頭のお堅いクレアに絡まれたが……

 

「これは貴族が政敵を葬る際に使われる、ご禁制の劇薬で、食事にほんの少し垂らすだけで無味無臭、毒検知の魔法にも引っかからない特別製の」

「ぽいっ」

「ああっ、なにをする!」

「こっちの台詞だわ! 人を暗殺者に仕立て上げるんじゃねーよ! そういうことするんだったらもっと確実な方法をとるべきだ。例えばだ。この前ダクネスに却下されたがデュラハンに死の宣告ってスキルを教えてもらって、魔王軍の仕業にしつつ婚約破棄をさせようと……」

「謂われのない風評被害を魔王軍になすりつけ、エルロードを焚きつけて我が国を支援するように仕向けるなんて。貴様……まさか天才か? 私はお前のことを誤解してたようだ。アイリス様のことは任せた!」(血涙)

「ああ。帰ってきたら一緒に酒を飲みながらアイリスの子供の頃のかわいらしさを教えてくれ。それが今回の成功報酬だ」

「いいだろう! とびきりのエピソードを用意して待っているぞ!」

 

と、シンフォニア家の気高き意志と秘薬を託され、アイリス護衛の任務に就く。

かわいい妹を眺めながら旅をできる、生きてる喜びをかみしめながら赴いた先はカジノ大国エルロード。

アイリスが料理を楽しんで喜び、アイリスが襲い来るモンスターを一撃で屠り子犬のように褒めてあげるとうれし恥ずかしそうに笑顔を見せ……和やかな時間をこれからも送るためにも王子との婚約なんてさせない!

俺は同士クレアに誓ったんだ。失敗は許されない!

 

 

エルロードについて約1週間後。

 

 

――失敗した。

いや、途中までは快進撃をし続けたと言っても過言じゃない。

なんせ旅の目的「ベルゼルグ王国へ防衛費の継続」と「戦いで攻勢に出るための資金の支援」のうちの「防衛費」は俺とアイリスによって成功したんだ。

加えて俺とクレアの婚約破棄を願う強き意志も叶ったんだ。

成功してたといっても過言じゃない。

 

……だがあのクソガキ王子、うちの妹に

「防衛のための支援はこのまま続けてやるが追加は出せない。これは絶対にだ。というか防衛費の支援を打ち切るべきだという案を出したのはラグクラフトなのだ。俺としては田舎娘との結婚などをごめんだったからこの話に乗っただけだ」

だなんて抜かしやがった。

それを聞いたアイリスは「私の力不足で、攻勢のための資金を獲得できなくてすみません」と……悔しくて悲しくて……そんな、今までの頑張りを踏みにじられたのに、どこまでも自分に原因を求める優しい子だった。

 

「というわけであのクソガキに痛い目を見せてやろうかと思うんだ」

「よし! よく言ったカズマ! 金を稼ぐしか能のないエルロードごときに我がベルゼルグがなめられてたまるか! アイリス様をここまでコケにするとは……あのガキは私直々にぶっ殺してやる!」

「私としても文句などありません。ええ 何でも任せください! 下っ端とはいえ、私の仲間が馬鹿にされたのです……こんな屈辱、ここで大人しくしている私ではありませんとも!」

 

ということで俺たちは真夜中に爆裂魔法を放ちに行き、魔王になすりつける作戦を決行したんだが……

爆裂ブッパしたら俺たちの元へアンデッドが集い、そいつらを相手にしてたせいでその場から逃げられず、俺たちはその現場を取り押さえられ……

爆裂魔法で騒音騒ぎを起こした犯人として詰め所へ連行された。

ちくしょうこのお守り嫌いだ!

 

髪の毛が飛び出てるしアンデッドを呼び寄せるし捨ててもいつの間にか戻ってくるしどう見ても呪いの品なのにお守りとはこれ如何に。

そんなお守りより貴族の紋章入りペンダントの方が役に立つ。

 

というわけでダスティネス家とシンフォニア家の紋章入りペンダントを見せつけると外交問題にしないようにと解放された。

しかし、資金獲得のためにこれと同じ手法はもう使えない……どうやって攻勢に出るための資金の支援をさせようかと頭をひねっていたら――

 

 

 

 

 

ドラゴン

光り物が大好きで宝を集める習性がある カラスの亜種みたいなこの巨大生物は倒せば名声と共に莫大な富が得られることで有名だ。

それは、この世界の人間はおろか存在するはずのない地球ですら知らないものはいない、最もメジャーなモンスター。

いわば、力だけではなく知能が高い種類もおり、最強であり最高であり最強の存在。それを倒したものは英雄と呼ばれ、望むがままの報酬を得られる最強のモンスター。

 

俺たちはそんなモンスターの王様を倒しに行くことになった。

唐突に決まったことだが、俺たちの中に「ドラゴンを退治するだなんて馬鹿じゃないの! ねえバカなの、みんなバカなの !?」などという薄情者はいない。

これはエルロードから課された試練なんだ。

ドラゴンを倒せたら防衛費だけではなくさらなる支援をしてくれるんだ。

 

アイリスのためにも諦めるわけにはいかないと、俺たちが森の中を進むこと数時間。

鉱山まではまだまだだが強敵が多くなってきた。

俺の潜伏スキルである程度体力を温存しつつ進行できていた。

そんな中、めぐみんが人差し指を立て、アイリスに。

 

「さて、強敵が控えていることですし、野外での休憩の注意点を教えてあげます」

「勉強になります!」

「まだ何も勉強になるようなことは言ってませんよ? ……ではまず、モンスターを呼び寄せてしまう場合があるのでこういった凶暴なモンスターの生息地 なのでは火を起こさな――」

 

「カズマ。 実は今日は紅茶セットを持ってきたのだ。アイリス様に紅茶を召し上がっていただきたいから、ティンダーをくれないか?」

「こんなところに紅茶セットなんて持ってきたのか。しょうがないやつだなぁ、俺にもくれよ。ほい、『ティンダー』っと」

 

ダクネス に促され 俺は着火魔法で火をつけ……

荒ぶるめぐみんのステップによってかき消された。

 

「うおおおお!!」

「わああああ!? 一体何をするのだめぐみん! 火が消えてしまったではないか!」

「これだから! これだから箱入りお嬢は! 何をするんだ、じゃあありませんよ! こんなところで火を焚いたらモンスターを呼ぶじゃないですか!」

 

そんなことをしていると森の奥からメキメキと嫌な音が。

この前討伐しに行った初心者殺しの比じゃない大きな物音。

するとめぐみんが慌てたように。

 

「ほれ見たことですか! きっとドラゴンです! ドラゴンに見つかってしまいました!」

「いや、これはめぐみんが大きな声で騒ぐから……」

「私ですか!? この状況はどう見ても …… 私が招いたんですよねすいません! 謝りますがなんだかとても釈然としませんよ!」

 

まだドラゴンが住むという鉱山の前だというのにこれは運がいいのか悪いのか。

木々を踏み潰し地響きを立てるその巨体は――まさにモンスターの王と言われるのも納得できる様相だった。

 

 

 

 

「カズマ当たりだ! こいつは黄金竜。数多の龍種の中でも最も買取価値が高いドラゴンで、肉を食べれば一気にレベルが跳ね上がり、その血は希少なスキルアップポーションの材料にもなる。恐ろしく硬い角や鱗は最高品質の武具に変えられる」

「そりゃ宝の山だ……で、コイツの弱点は? 倒し方は?」

「そんなもの簡単だ。私が耐久して、アイリス様がとどめだ! というわけですのでアイリス様! ドラゴンは私が引きつけますのでその間に安全な位置から攻撃を!」

「は、はい! 相手がドラゴンともなるとさすがに支援魔法があってもきついと思いますが、どうかララティーナもご武運を!」

 

ダクネス、お前が『策ならある。私に任せてくれ!』なんて啖呵切ったもんだから任せたんだが?

任せた俺が馬鹿だったよ!

んなもん作戦でもなんでもないただのごり押しだろうが!

 

そんな俺の叫びなど聞いちゃいないダクネスはデコイを発動させてドラゴンの矛先を自分に向けさせる。

こんなにポンコツなのに、たったいま、このワンシーンだけは今までのポンコツ具合はどこに行ったのかというくらいにかっこよかった。

いつもこんな感じだったらいいのに。

 

「たく、しょうがねーなぁ! めぐみん! 爆裂魔法の詠唱を始めろ! できれば貴重なドラゴンの体がこっぱみじんになるような爆裂魔法は控えたいところだが、アイリスがどうにもできない場合は迷わず撃て! 俺はみんなに支援魔法をかけて、そのあと加勢しにいく!」

「わわわわ、分かりました。なな、何、ドラゴンごとき我が爆裂魔法の前ではただのトカゲと変わりない!」

 

ダクネスに血走った目を向ける。

黄金竜は巨体に似合わない素早さであっという間に距離を詰める。

硬い鱗には俺の攻撃なんて通用しないだろうし、 そもそも近くに寄っただけで死んでしまう。

余計な魔力を消費してる余裕はない。

俺は筋力強化の魔法を唱え、ダクネスの物理攻撃力と物理防御力を底上げさせる。

 

「『パワード』! おいダクネス! あんまりむりすんじゃないぞ! 俺のヒールなんてたかがしれてるし、ゼスタのおっさんもいないんだ! 慎重に行けよ! 性癖出して後遺症残すなんてあったら承知しないからな!」

「ああ、心得た。さあ来い、黄金竜! 盾の一族と呼ばれたダスティネスの力を見せてやる! はぁ……はぁ……!」

「…………グルッ!?」

 

やはり言っても聞かないうちのクルセイダーは淡く体を光らせて立ち塞がる。

迫る巨体に一切引くこともなく、むしろ支援魔法を受けたからと強気に前へ突っ込む。

だがあのドラゴンは近づいたら汚れる存在だって察知したようだ。

さすが頭がいい。

 

だが、そんなドラゴンも流石に敵を放置しておけず、物理はいやだと言わんばかりに、炎のブレスを放つ。

そんな炎を受け、砂風呂が大好きだという防御力お化けはいた気持ちよさそうに顔をゆがめる。

余裕そうな表情でその一撃を受け止め、耐え切ったダクネスだが、本職の支援魔法がない今、いかにダクネスだろうとドラゴンの連続攻撃に耐えられるわけではない。

じわじわと体力は限界に近づいているはずだ。

 

「めぐみん!」

「ほわっ!? なな、何でしょうかカズマ! わ、私は全然へっちゃらですよ!」

「お前、この前ドラゴンゾンビ倒したろうに何びびってやがんだよ! 誰もいってなかったがそりゃもうほとんどドラゴンスレイヤーだろ! 胸張って爆裂魔法撃ってけ!」

「私が……はぁ……ドラゴン、スレイヤー?」

「そうだよ! 何なら神殺しを成し遂げた大罪人に一番近い存在だろ! 今から俺が空にドラゴンを誘導する! そしたらそれを撃ち落とせ! そしたらアイリスがとどめだ!」

「ふふっ……ふははは、ふわーっはっはっは! いいでしょういいでしょう! 私はドラゴンスレイヤーめぐみん! 今日の手柄は下っ端であるアイリスに譲ってあげましょうとも! アイリス、いいですね! 抜からないでくださいよ!」

「めぐみんさんこそ!」

 

そうしたら今度はダクネスだ。

俺は遠距離から魔法を放つ。

 

「『ティンダー』『ウィンドブレス』!」

「な、カズマ! 一体何をしている! せっかく私の方に敵意が向いていたのに!」

「そろそろ限界だろ! 俺のリュックに体力回復のポーションとか入ってるから飲んどけ!」

「ま、まだ限界じゃない! もうすこし、後もう少しで何かが来るのだ!」

「それは来るんじゃなくて天国に行く一歩手前だから!」

 

ダクネスを攻めあぐねていたドラゴンを引きつけようと魔法をどんどん放つ。

俺の魔法は上級魔法相当の威力……

そして、相乗効果があるもの同士を組み合わせればそれは炸裂魔法相当。

――だが、そんな高火力な攻撃を食らってもその鎧が魔法を反射するのか、大ダメージとまではいかない。

きっとめぐみんの爆裂魔法でも瀕死に追い込めるかどうか。

だから俺は相手の注意を引くことだけに専念。

 

「きたきた、来やがった! って初っぱなブレス!? く、『クリエイトアース』!」

 

ダクネスに散々苛つかせられていたドラゴンは初手から様子見なしで最大火力のブレスをぶちかます。

が、俺の魔法は普通に使うだけならためが必要ない。

即座に反応して土壁で防ぐ。

しかし、そのブレスはやむどころか、どんどん激しく、そして地面の揺れもどんどん激しくなっていく。

まさか……俺に突進かましてひき殺す算段か!?

 

「やばいっ!? 『ウィンドブレス』イッッタァアア!?」

 

地面に風魔法を当てて、反作用の力で体を宙に浮かび上がらせる。

そんなことどうでもいいほどめちゃくちゃイテェ!!

脱臼したか骨折したかしたもしれない。

そりゃそうだ、手から放たれた魔法だけで俺の体を浮かび上がらせたってことはその分の作用が手に集中するって。

 

だがピンチはそれで終わらない。

ドラゴンの顎が俺のほう……つまり上に向いたのだ。

喉元を見ると火炎を吐き出す気満々である。

 

「ああああっ! く、『クリエイトウォーター』『クリエイトォーター』!!」

 

空中に放たれたブレスをかき消そうと放った水魔法は高温のブレスとぶつかり、爆発した。

そしてあたりは霧で包まれた。

視界が悪くなった地上では、ドラゴンが俺の位置を把握しようとその最大のアドバンテージである翼を利用して飛び上がる。

宣言通りドラゴンを空中に飛ばせた。

逆に俺はドラゴンと入れ替わるように地上へ……アシクビヲクジキマシター!

 

「いたぁ……けど、作戦通りだぜ!」

嘘である。ただの偶然である。

「霧の中は見えにくいだろうが……俺たちからは太陽の光でどこにいるか丸わかりだぜ! アイリス! 準備はどうだ!?」

「はい、カズマさん! セイクリッド・エクスプロード、最大限まで溜めています! めぐみんさんが打ち落とした瞬間に必ず決めてみせます!」

「よし! じゃあ頼んだ……じゃあめぐみん! 撃て!」

「はっはっは! 了解です! 黄金の太陽は天から堕ちろ! 『エクスプロージョン』ッ!!」

 

めぐみんの詠唱が最高潮に達し、杖に集まっていた魔力が解き放たれる。

激しい爆音とともに、地面がドッシンと揺れる。

墜落したんだ。

 

アイリスの方を見れば、聖剣なんとかカリバーを構えて、周辺に漂う静電気みたいなパリパリと輝く光。

多数のアニメや漫画知識から一瞬で判断した。

 

――やばいやつだ。

アイリスが使おうとしているのは 多分最強にやばいやつだ。

全身全霊を込めて 最終決戦とかの最後に一撃にすんごいやつを放つやつだ。

 

それまで集中を続けていた アイリスが目を かっと 見開く。

当たりに漂っていた魔力の残滓が掲げていた剣に集結し、いつにも増して光を放つ。

俺が確認できたのはそれに気づいた黄金竜がアイリスを見て驚き怯んだ姿だけだった。

 

「『セイクリッド・エクスプロード』ッ!!」

 

アイリスの全身全霊の叫びとともに、金鉱山がまばゆい光に包まれた。




次回は土曜日……になると思います。
(お盆明けで忙しくて書けなかったらすみません……と念のため謝罪をしてみる)

追記――2024/8/18 21:09に余計な文などありましたので修正しました。
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