設定:「1つの世界に同じ存在は2つ以上存在できない」「神様は信仰心で消滅に抗える」
問題:「ちょむすけとウォルバクが同一存在」「部下(信者)を失いウォルバクが弱体化し、消滅」
結論:天界(ウォルバクが存在しない世界)にウォルバクを連れてけば、消滅回避できる!
何とかアイリスたち四人が黄金竜を討伐した。
なんだかんだ言ってエルロードでの出来事でアクアがいなくてやばい場面と言ったらここなんじゃなかろうか。
というのもアクアのやらかし能力は置いておいて、目を見張るべきプリーストとしての能力がなければきっとダクネスはドラゴンの一撃に耐えられず、回復を受けられない。
加えてアイリスは「相手がドラゴンともなると流石に支援魔法がないとキツいと思いますので……」と言っていた。
つまり、あのヤバい技でも、爆裂魔法であっても、一撃で仕留めきれない可能性があった。
本当は俺も仮面の人として参加して、ギリギリの戦いじゃなくしたかったんだが……如何せんアイリスはいるし、貧弱ステータスではドラゴンをどうすることもできない。
潜伏スキルを使いながらこっそりと後をつけ、なんかあったらダイナマイトをくくりつけた矢を使ってドラゴンの気を一瞬そらせるとか、アイリスとめぐみんの一撃でも息の根が止まってなくてピンチな場合に備えて爆裂魔法の詠唱も考えていたんだが……
まあ、3人パーティーという一般的に見たら不安定な構成でありながらも強敵を今まで屠ってきた数ではどこにも劣らないこっちの俺たち。
前衛ですべての攻撃を引き受けるクルセイダーのダクネス、後衛ですべてのモンスターを蹂躙するアークウィザードのめぐみん、そして、回復魔法・支援魔法・遠距離攻撃・索敵・上級魔法級の魔法、数多のスキルを巧みに使う万能職のカズマ(俺)は手助けなくドラゴンを見事倒してみせた。
まあ、そんなこんなで残るはラグクラフトが俺たち4人を始末しようとするイベントだけ。
アイリスはいるし、ラグクラフトは俺に化けるし、過去最大級の危険ゾーンな気がしてたんだが……
俺は思ったのだ。
「天界でやり過ごせばよくね?」
と。
「つーわけでただまー」
「私がいないとすぐにモンスターの手のひらでコロコロ弄ばれちゃうカズマさんおかりー」
「……おい、違うからな? 今回はあくまで作戦でだな……」
俺はアクアの人を馬鹿にしたような態度に腹が立って思わず頬を引っ張って懲らしめてやろうかとも思ったが、大人になって、誰かさんにでもわかるよう、得意げにことの経緯を説明しようとして、
「……ねえエリスさん? カズマくんってこんなにぽんぽんぽんぽんお亡くなりに?」
「ええ。それはもうめぐみんさんの爆裂魔法のように」
「おい、それは言い過ぎだと思うんですが? めぐみんの爆裂魔法と比べるとか……流石にエリス様だろうと失礼すぎると思今まで散々お世話になっておりますありがとうごめんなさい!!」
「……まったく。アナタが死んできた回数のせいでこんなことになっているのですからね?」
エリス様の圧に押されてしまい思わず早口でお礼と謝罪をしてしまった。
それはそれとしてやっぱりめぐみんの節操なし爆裂魔法と比較されるのは――ウォルバクさんに呆れ顔されてるし何とか反論したいところだ。
「一応言っとくけど、今回は死んでないからな? それに、転生特典が向こうの俺みたいにしっかりしてたら今まで死んでた場面でも死んでないから!」
「……なにかしら、今、私がしっかりしてない転生特典って聞こえた気がするんですけど」
「気のせい気のせい。というわけでウォルバクさん、そこんとこよろしく」
アクアの言及をうまく躱し、ウォルバクにそう伝えたんだが……
なんだその「転生特典が女神って時点でかなりの特典な気がするのだけど? 普通に他の特典をもらってもあまり変わらないんじゃないかしら……」みたいな表情!
確かにウォルバクさんみたいに爆裂魔法を一発撃っても立ってられる……それこそアクアとめぐみんの欠点をすべて消して融合させたようなお姉さんだったら俺も文句はない。
でも、俺の転生特典の駄女神様なんて、器物破損とか無銭飲食で借金をこさえてくるし、モンスターにちょっかいかけて泣かされるし、かまってちゃんで面倒くさいし……メリットどころかデメリットだらけなんだが?
そんなトラブルメーカーのことを考えているとエリス様が。
「そんなこと言ってますが、今回までのやり直し……一体何回でしたっけ? もう片手じゃ収まらないですよ……」
「それは! あっちの世界でやり直さなきゃいけなくなってんのは『俺が歩んできた通りに物事を進めなきゃならない』からで……」
と、そこまで言い、エリス様の表情――ニヤニヤして様子に気づく。
クリスのときに「いたずら成功!」と、そういう顔するのはわかるが、何というか普段おしとやかなエリス様がやらない系の顔だ。
俺が思ってる以上にエリス様はお茶目なのかもしれない。
「……もしかしなくてもわかってて人のことからかってます? 俺が天界にテレポートしてきた理由もわかった上で言ってますよね!?」
「ふふっ、すみません、思わず遊び心が働いてしまいまして。でもまさか天界でやり過ごすなんて作戦、他の方なら間違いなく全く考えつきもしませんよ? 流石です」
クスクスと笑って肯定するエリス様。
アクアだったら引っぱたいてやるところなのにエリス様だとかわいいと思ってしまう――
やはりヒロインとしての格が違うということか。
「まあそういうわけで、ラグクラフトの討伐が終わるまではここでゆっくりさせてもらいますが……」
「ええ、別に私が止める理由はありませんし、どうぞごゆっくりくつろいd……」
「アクアー! ポテチー、プリーズ、フォー、ミィー!」
「エリスにくつろいでいいって言われたからって、私たち女神の前でいくら何でもくつろぎす……」
そこまで言いかけたアクア。
しかし何を思ったのか、コホンと咳払いをして、だらけきった背筋を伸ばした。
「天界に引きニートとして就職する気満々のカズマさん。あなたは仮にも勇者。そのような人がこんな場所でのんびりしててもいいのでしょうか?」
「引きニートじゃねーよ! てか…作戦聞いてたならわかるだろ? この後の展開で俺が手伝わなくってリセットされるポイントはないんだ。逆に俺が消滅する可能性の方が高いんだし、天界で事が終わるまでゆっくりしてた方がいい。そんな俺が打ち出した完璧な作戦を聞いて……」
「聞いていたのでした! あまり私のことを見くびらないでもらいたいわ!」
「じゃあどうしてそんなこと言い出すんだよ。消滅のリスクがあるってわかってるなら……」
「あなた! それでも勇者かしらあなた! この世のすべての人、魔王軍のことを考えて夜も寝られない人々の心を考えたら……その、わかるでしょう、自分が何をしなければ、何をなさねばならないか! さあ、わかったならお逝きなさい勇者カズマ」
……一体何の茶番なのだろうか。
アクアがいきなり神々しさマックス仰々しさ満載の身振り手振りで転移魔法陣を指さし、俺のことを押し出そうとした。
俺の言葉を一切聞こうとせずにさあさあと……一体何をせかす必要があるんだろうと思って、一つの解を見つけた。
「……おい、もしかしなくても自分のおやつの取り分が減るのがいやなだけだろ。俺にとっとと天界から出てってほしいだけだろ」
「そ、そんなわけ……」プイッ
菓子袋を抱えるようにして俺に背を向ける――つまり、俺から菓子袋を隠した。
なるほど、アクアは俺とのポテチ争奪戦争をご所望らしい。
さて、天界でのんべんだらりしてるだけで何もしてない何も働いていないことが体型だけで判断できてしまいそうな駄女神の手から、怠惰の原因を奪ってやろう。
ラウンドワン……ファイッ!!
アクアのポテチを総取りし、アクアの泣き顔をポテチの肴につまんでた。
……のだが、どういうわけか。
「俺は用意周到慎重な男……ですって? ぷーくすくす、鬼受けるんですけどぉ! お帰んなさいビビって引きニートしてたカズマさん?」
「いやいや! 俺は準備万端だったはずだぞ、本当に! なのに何で……」
「確かカズマさんってば『完璧な作戦』を打ち立てたのよね? 確か、天界で私のポテチを全て貪り尽くすという計画だったはずよ?」
「いやいや、そんな作戦は立ててないわ! つか、お前もどうしてこんなことになったか考えろよ! どうすれば俺がうまい具合に消滅回避しながらアイリスのこと守れるか考えてくれよ!」
「えー、どうしようかしらぁ? 私言ったわよ、こんなことしてないで早く行った方がいいわよって。それを無下にしたのに図々しいんじゃないかしら。それと、私は今から……ええっと、そう、のり塩で魔王城作ろうと思うの。だから邪魔しないでほしいわ」
そう言ってポテチの袋の中から器用にのりと塩を分別し始めた聞かん坊女神。
うざったいメスガキ嘲笑やらがシリアス雰囲気をすべてぶち壊してはいるが、俺はやり直しをする羽目になったのだ。
いや、傲りや慢心して自分の策に溺れてしまったわけではないはずなんだ。
アイリスはどうあがいても強いし、ラグクラフトに負けるはずなんてないんだ。
そう思い、こうなった原因をエリス様に確認してもらったところ――
ラグクラフトの剣はアイリスの腕に当たり鮮血を散らす。
そのまま胴を切り裂くような致命傷を与え……ということにならななかったのだが、ラグクラフトの剣がアイリスの腕に触れ、血が流れたその瞬間で世界の流れは止まったとのこと。
きっとこの後――俺たちが護衛失敗で処刑か冒険者の称号剥奪か――何か流れが変わる決定的な展開だったからこそのリセットなんだろう。
幸いにもアイリスがひどく痛めつけられたり胸を突かれたり首を跳ね飛ばされたり……そんなことになる前にリセットされたのと、アクアがいつも通りなおかげで何とか調子が狂いそうで狂わなかったが、それでも早急に解決せねばならない問題だ。
どうしてこんなことになってしまったのだろうか……そんなことを考えているうちにアクアの魔王城がどんどん完成していく。
「完成度高いなオイ……じゃなくて! ポテチの袋に付いたのり塩でミニチュア建造物生成してないで手伝え!」
「いや! あとちょっとでめぐみんの魔法で見るも無惨な姿になった魔王城ができるの!」
「だったらなおさらだ! こんなもん、俺が地震起こして崩してやらぁ!」
「テーブル揺らさぁああああぁぁあああ゛!!」
「ちょっと小突いただけで見るも無惨な魔王城の完成だ。よし、やることはなくなったな、アイリスを助ける手立てを考えるぞ-」
「私が楽しみにとっておいた今日のおやつを食らい尽くしたあげく、さらには私の傑作を壊して……カズマの人でなしー! 食べ物の恨み、どう思い知らせてあげようかしら!」
「いつまでも根に持つなよ……ほら、後で俺ができたてのポテイトあげてやるから」
「くっ……なんて甘美な誘惑なのかしら……で、でもここで引き下がれば女神の沽券に関わるし、断」
「シュワシュワにマジで合うやつ」
「何をやっているのカズマ! 早くこっちの席に着きなさいな、作戦会議よ作戦会議!」
シュワシュワという言葉を聞いた瞬間一番渋っていた自分が椅子に姿勢正しく座る。
女神の沽券とやらはそんなものでいいのか。
バシバシとテーブルを叩いて催促するアクアを見たウォルバクが。
「天界でゆっくり療養できると思ってたのに頭が痛くなってきたわ」
「い、言いたいことは……まあ、わからなくもないですが、最近はこれが普通のことになってますので慣れてくださいね?」
「ええ。人間がいて賑やかで退屈しなそうな場所だし、嫌いではないのだけど……普通って何だったかしら」
……何で俺の方にジトっと目を向けるんですかね。
一番常識のない駄女神の保護者が人間という立場の逆転に驚いているのだろうか。
そんなことはさておいて。
俺はこれからのやり直しをどうしていけばいいのだろうか、俺が作ったポテチをつまみながらの作戦会議が始まったのだ。
なお、当然のごとくアクアからまともな意見が出たなどはなく、アクアを除いた三人で寄って文殊の知恵した。
原作:カズマとサクネスがラグクラフトに捕まる→アクアに夜這いをかけたラグクラフト→めぐみんがアクアの部屋にいてめぐみんにも言い寄る→アクアとめぐみんキレる→アイリスせめともと夜這いをかけて殺害するラグクラフト→アイリスに討伐される
今作:今作はアクアがおらず、カズマが初級魔法をうまく扱えない結果、ラグクラフトは三人を人質にして冷静に順調にアイリスを害する流れができてしまった。