あの素晴らしい世界に帰るため   作:桃玉

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アニメ第2話、よかったですねぇ。



2.鳴り響く魔法~俺は信じる~

「か、カズマさん! あの邪悪な地獄の使者をぶっ殺すのです! 私がとびっきりの魔法をかけますので滅するのです!」

「ちょ、力強いっ!? エリス様落ち着いてくださいよー!?」

「離してくださいラフィエルさん! このまま勇者カズマさんを生身で送るなんて耐えられません! 祝福を! せめて祝福だけでも!」

「駄目なものは駄目なのですよ! ガヴも何とか言ってくれませんか!」

「えー……今ネトゲするのに忙しいからパスで」

「何言ってるの!? アナタも手伝うんですよガヴリールさん!」

「ええー……」

 

俺は天界で、天使に押さえつけられているエリス様と、ネトゲに勤しんでいる天使を見て戸惑いの声を漏らしていた。

 

暇そうにガチャ課金廃人してる天使さんに聞いたところ、ひっっっじょうに面倒くせーと言わんばかりの顔をされたが答えてくれた。

曰く、前回のアクアの魔力譲渡が上の人的によくなかったとのことで、今回はそういうことしないようにお目付役の天使さんと共に、何があったかを説明する手はずだったのだが……

 

例に漏れず今回もエリス様地雷事案で殺意がマシマシ。

俺は金髪の天使にポテチを勧められ、コーラ片手に神と天使の戦いを観戦していた。

俺にバフを全力で重ね掛けしようとしてたエリス様が十字固めされて、会場(2人)の熱は激しくなる。

白っぽい髪のおっとり天使によって初っぱなから取り押さえられた。

縄でぐるぐる巻きにされてムームー言って藻掻いているエリス様、やりきったとばかりに真っ白になってしまった天使さん。

その激戦の終わりを見て思わず二人同時に立ち上がり拍手を送ろうとして……

 

「……いや、仕事しろよ職務怠慢怠惰天使!」

「この貧弱ボディーであの戦いに巻き込まれたら致命傷だ、仕方……なかったんだ」

「いやそうじゃなくて地上での状況を教えてくれないのか!?」

「あー……それは神様の仕事だし、あと、天界規定的にたぶんギリギリを攻めてて……。まあ頑張ってください?」

 

そのせいで何があったかなんて一切聞けないまま、俺は爆裂魔法を撃った直後の場所に飛ばされていた。

いやホント、ワンチャンもう一回死に戻りしないといけなくなるところだった。

何やってるんですかエリス様。

 

いやまあ、実際に何があったかは想像ついてるし、今回何が起きたかは教えてもらわなくてもなんとかなりそうだし良しとしようとは思うが。

 

……どうして想像ついてるかというと。

俺がギルドで情報収集していたところに『緊急! 上級悪魔が正門を壊し壁の内側に侵入しました!』って警報が聞こえてきた。

そんで俺の知らない展開に突入した……きっとアクアが何かやらかさなかったから変なことになったんだろう。

何事かと思い外に出てみると爆裂魔法が轟き……

その直後、またもや俺はここに来た。

……十中八九、また、めぐみんに何かあったということだろう。

 

というわけで俺はここ数日めぐみんのことを後ろからこっそりと見守っていた。

盗聴スキル、潜伏スキル、敵関知スキル……その他諸々を使用して誰にもばれないように後をつけていた。

……ス、ストーカーとか言うなよ!

こちとら存在が露見した瞬間に消滅だ、ビビってんだよ!

 

 

 

 

そんなわけで俺は温かい目で紅魔族二人を観察してたんだが、何だか、その……

二人娘、約二週間でめちゃくちゃな冒険してた件。

相手取ってるのジャイアントトードなんかどうでもよくなるレベルのモンスターばっかじゃねぇか。

そんな感想を抱きつつ、ついにそのときが来た。

 

『緊急! 緊急! 上級悪魔が正門を壊し壁の内側に侵入しました! …… 』

 

そんな警報を聞き、めぐみんたちはあの爆裂魔法が放たれた場所に駆け出す。

他の冒険者たちも慌てた様子で駆け出すが、俺は慌てない。

このときのために用意周到、合間を縫ってこっそりバイトと言う名のギャンブルをし、稼いできた金をマナタイトに変換していたんだ。

 

「『パワード』『プロテクション』『レジスト』『ヘイスト』『ブレッシング』……『ブレッシング』『ブレッシング』『ブレッシング』!!」

 

俺は戦いに備えてマナタイトを使いバフ魔法をかけまくる。

アクアみたいな専門職の支援魔法には劣るが、それでもないよりかはましだ。

誰かが言っていた、戦いとは、戦う前に勝敗が決まっているものだと。

つまり、準備は大切だってことだ。

 

これで二週間ちょくちょく稼いできた何十万エリスを使い切り、残りは中級魔法一回ぶんの魔力を肩代わりしてくれるほどの欠片のみ。

本当ならギャンブルで荒稼ぎしまくって余裕がある最高の状態で臨みたいんだが、流石に何百万もゲットしたせいで世界への影響がないか心配だって理由で激しく行動できないのがつらい。

まあ、なくなった数十万はまた稼げばいいか。

最悪またギャンブルで元を取ればいい……ってあれ、もしかして今の俺、滅茶苦茶クズカスなやつなんじゃ……

そんなことを思った俺は頭をぶんぶん振りそんな余計な考えを振り落とし、少しだけ遅れてめぐみんたちがいるあの場所へ駆けだした。

 

到着するとゆんゆんが悪魔野郎の手の中で苦しそうに締め付けられており、めぐみんがその悪魔と何か話をしている。

思わず危機的な状況で、今すぐにでも飛び出したい気持ちを抑えつけていると、悪魔がゆんゆんを投げ捨て、めぐみんの方へ急接近し、何かを話し始める。

 

悪魔の腹立たしげな様子からめぐみんが何かをしたのはわかったが、何故か悪魔はめぐみんに攻撃を加えない。

あの時、めぐみんは悪魔に殺されたのかと思って、急いで駆けつけようとしたが、攻撃しないっていうのなら話は別。

自分のことがバレていないっていうのにわざわざ姿を現すのは紅魔族(バカたち)がすることだ。

俺は足音を立てないように注意しながら、壁を伝い隠れつつ、二人の近くまでやってきた。

 

周囲の騒々しさのせいで二人の声は僅かに聞き取れるかどうかだ。

俺は目の前に意識を集中させ、読唇術と盗聴スキルを併用して会話の内容を鮮明に聞き取れるように目と耳をこらす。

すると何やら不穏な会話が聞こえてきた。

 

『ちょっと待ってくれよ……俺たち悪魔は残機があるんだぜ? 馬鹿げてるぜ、オマエ』

『そんなことないですよ? 今残機を減らせばウォルバクとやらの契約も終わりです。そうすれば死なせたくない人を死なせずに済みますからね。それに……自爆は、紅魔族のロマンなんですよ?』

 

その言葉を聞いて俺も悪魔もぎょっとする。

まさかとは思っていたがコイツ……ゆんゆんとかこの街の人を守るために自らを囮として自爆しようとしてたのか!

じゃあ悪魔がめぐみんを殺したわけじゃなく、あの時の爆裂魔法がめぐみんに当たって……

 

その瞬間めぐみんの顔がニヤリとなる。

しかし顔はぎこちなく、額には冷や汗、手先は僅かに震えていた。

強がって、かっこつけてはいるが、恐怖が伝わってくる。

 

……はあ、どうしてうちの仲間はこう無茶するのか。

いや、このときの状態でこの悪魔と刺し違えてでも討伐しなければならない何かがあるのかもしれないが……本当に、まったく。

 

 

「しょうがねーなあっ!」

 

 

俺は決意とともに仮面を装着する。

爆裂魔法が放たれるとき特有のビリビリとした危険な感覚。

めぐみんに迫ってくる悪魔の拳。

まずはこの馬鹿紅魔族の魔法と悪魔の拳、掠っただけでも致命傷になりそうなソレらを避けるために……!

 

 

「『ドレインタッチ』――ッッ!!」

「ほわああぁぁあああ!!?」

 

 

俺は馬鹿を止めるために首根っこを掴み、リッチーの固有スキルを繰り出す。

魔力をわずかに吸っただけだがそれでいい。

魔力を吸い取り、集中力を切らせて魔法を中断させる。

 

そして俺の魔法で強化された腕はそのままめぐみんを思いっきり後ろへと投げ飛ばし、その反動でめぐみんの代わりに俺が悪魔の前へ躍り出る。

悪魔の致命的な拳は目前。

普通なら避けることができないだろうが……

 

 

「『回避』――ッッ!!」

 

 

一定確率で相手の攻撃を避けることができるモンクのスキルが発動する。

体が前に加速して、体と拳がすれ違うように攻撃を紙一重で躱す。

 

……別にチビリそうになってなんかないです、本当です。

 

悪魔は目を見開いていた。

まさか伏兵がいたとも、攻撃を回避されることも考えていなかったのだろう。

悪魔は拳の勢いに振り回されて体勢を崩し、それによって第二撃が遅れる。

 

対して俺は準備万端。

それどころか悪魔が油断してくれてたおかげで予想以上に余裕を持って動けてる。

ドレインタッチと同時に詠唱を始めていた魔法は、もう魔法名を叫ぶだけで発動する。

 

そんな状況を把握した悪魔は攻撃も回避も間に合わないとふんだのか、筋肉を隆起させ身を固め、攻撃魔法に備えているようだった。

が、俺が用意した魔法は攻撃魔法じゃない。

何せ俺は最弱職。

魔法に職業補正は乗らないし、魔力も殆どマナタイト頼り。

そんな俺の中級魔法一発で与えられるダメージもたかが知れてる。

 

俺じゃコイツを倒せない。

だから選んだのは相手の虚を突く魔法だ。

 

 

「『テレポート』!!」

「なッ!!? テメ……!」

 

 

魔法を口に出すとマナタイトが俺の右手から消失。

それと同時に悪魔の姿も消失した。

 

想定外の事態にレジストする間も無く、悪魔は転移したのだ。

その先は俺が設定したテレポート登録地点、アクセルの街の少し外。

街の中でテレポートしようものなら誰かに見つかってしまうと思い、少し離れた場所に改めて設定し直したのが功を奏した。

 

ようやく息を継げる。

はぁーっと上手くことが運べている安心感が気道を抜けていく。

だがまだ途中だ、気は抜けない。

最後の締めが待ってる。

俺は悪魔を滅ぼすための魔法を放てる、将来、最強の魔法使いの名を手にした希代の大魔法使い……

もとい、アタオカな爆裂魔法使いを当てにしてそちらを見た。

 

「……無事だったみたいだな」

「な、なんなんですか貴方は! 私の魔法をよくわからないセクハラ紛いの技で中断した挙げ句、あのホーストを掌で弄び……何よりそのカッコいい仮面は!」

「……我が真名を聞いてしまえば、身を滅ぼす。聞かないことだ」

「陰に隠れた無名の実力者……カッコいいです! ど、どうか私を弟子に! そしてそのカッコいい仮面を是非私に! それと恥ずかしがらずに名前を!」

「アァ、アソコニ人ガ倒レテルゾー。助ケナイトー」

 

ホーストがいなくなり、ことが済んだと思って安心したのか呑気にめぐみんが口走る。

ズイズイ近寄ってくるロリっ子に、俺は棒読みでそんなことを言い距離をとる。

名前名乗ると消滅するのは俺なんで聞かないでくださいお願いします。

 

「なんて崇高な!」とか何とかめぐみんが感嘆の声を漏らしているが、俺はそれどころじゃない。

このロリっ子俺に近づいてくるんだが怖っ!?

もし俺の正体に気づいたら俺はお陀仏なんだよ俺の側に近寄るなぁぁああ!!

心の中でそう叫びながら、悪魔の拳以上の恐怖を感じて俺は逃げるようにゆんゆんの方へ行き。

 

「『ヒール』『ヒール』……! よし、こんなもんか?」

 

気絶していたゆんゆんは苦痛そうに顔を歪めていたが、それが和らいだのか顔は安らかになる。

そんな俺を見てめぐみんが。

 

「い、今何をして……ヒールを唱えたように見えたのですが……でも先ほどはテレポートを……貴方は本当に何者なんですか!?」

「一体何者なんだろうな、俺は。……そんな話は後だ、気を抜くのにはまだ早い。まだ……まだ終わってない」

「ど、どういうことですか……戦いは終わったんじゃ」

「あくまで時間稼ぐために悪魔をテレポートさせただけだ。まだ生きてる」

 

言葉にならない様子で立ち尽くすめぐみん。

コイツが想定外の事態に弱いのは昔からだ。

すぐにテンパっておろおろして……

でも、俺が指示すればそれを信じてとびっきりの魔法を爆裂させてくれるんだ。

なあめぐみん、そうだろ?

 

「悪魔は防壁の先だ。俺が先に行って人がいないところで足止めしておく。お前の因縁なんだ、しっかり決着つけろよ」

 

気絶したままで、すぐには動けなさそうなゆんゆんからドレインタッチで魔力を少し分けてもらい、めぐみんとすれ違うその時にその手で肩をポンと叩く。

これで爆裂魔法に必要な魔力は足りるはずだ。

 

そのまま俺は転移魔法でホーストがいる場所へ、足止めをするために飛んだ……

最後はいつも通り、めぐみんが爆裂魔法を鳴り響かせてくれると信じて。

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