あの素晴らしい世界に帰るため   作:桃玉

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11巻 グリフォン・マンティコア
11.立ち止まることなく~さぁ行こう~


エルロードでの騒動が収束し、早数日。

俺は時間の流れが違うらしい天界にいたから実際の体感時間はそれよりかは短い。

 

……天界を利用して時間短縮、消滅回避してけば意外とここからはサクサクっといけちゃうんじゃないか?

 

なんて思ってはいけない。

俺、サトウカズマは知っている、ここで油断したら秒でリセットされることを。

油断大敵という格言をエルロードの一件で学んだばかりの俺は、騒動やらなんやらが落ち着いた頃合いにテレポートでアクセルの街まで戻り、あくせくと次に向けて準備を始める。

 

まずは何と言ってもあの一件――クレアに記憶を消去するポーション(副作用:運が悪いと馬鹿になる)を飲ませられる件をどうするべきか、だ。

 

正直、ポーションを飲ませられる前に帰って来いって話だが、変に改変して想定外の事態になるんじゃないかって不安だし、何よりアイリスから「お兄ちゃん。大好き……!」の言葉をもらわないといけない気がする(使命感)

 

もちろん俺にそんなポーションの効果を打ち消す魔法は使えないし、アクアは頼りがいがないし、そういう効果を消す魔道具なんかも心当たりがない。

だが、アクアの代わりになりそうな奴なら心当たりがある。

という訳で、状態異常ごと回復させる魔法(セイクリッド・ ハイネスヒール)を使える助っ人を呼ぼうと思い……

 

「カクカクシカジカ……というわけでゼスタ。女神アクアの導きに従って、俺とともにアクセルの街へ…………って言おうとしたんだけどなぁ」

 

「どきなさい烏合の衆! 今度こそ私に神託が下りました! 『ゼスタ、汝は教主をやめ、アクセルの地に赴きなさい。女神アクアの名の下にかわいらしいロリっ子を見守るのです』――と! 教主をやめねばならないことは残念、ええ、誠に残念です。がしかし! 私は敬虔なるアクシズ教徒! アクア様の名に従い、アクセルの街へ馳せ参じることこそ私が今まさに最もすべきことなのではないでしょうか!」

「まだそんなこといってるんですか! そんなことはさせません、させませんとも! くそぼけゼスタ様はただ単純にロリを愛でたいだけでしょ! 本当は私に神託が下ったんでしょ!」

「バカ! 平プリーストなあなたが神託の任を任せられるなんてあり得ない! これはいつも中間管理職としてのストレスをエリス教の邪教どもに向けて発散していた私に対するご褒美に違いない! 自分こそが真のロリを見守り隊隊長になる! ロリコン主教に任せてなるものかぅぁああ! 『パワード』ぉおお!!」

「ぬぅぉぉおおおおおおっ!! 私の邪魔を、いや、女神アクア様の言葉を無下にする背信者め! 選ばれた私を止められるものなら止めてみなさい! 力こそパワーァァアアッ!!」

「ゼスタ様がご乱心よぉおお! エリス教徒を呼んできてぇええっ! 事態が落ち着くまで私はアクセルの街に一人避難してますから!」

「抜け駆けしようとするな!」

 

なんでアクシズ教同士がパワードを重ね掛けして殴り合っているのか……それは一通の手紙が原因だったそうな。

アクセルの街に住まう自称美人アクシズ教プリースト、セシリーが――

『盗賊団員募集中。現在アクセルの街にて、ロリっ子3人が盗賊団を結成いたしました。盗賊として動きやすいように無駄を省き、かつかわいらしい盗賊衣装を仕上げようとした結果、布面積の少ないえっちぃ服ができましたのでそれを着させて活動しています(予定)。現在盗賊団員大募集中だそうです。私は真っ先に加入いたしましたがアルカンレティアの皆々様もいかがでしょうか。美人プリースト、セシリーより』

 

これが送られたのは数日前。

つまり、それまでずっとこんな馬鹿みたいな騒ぎを永遠しているとのこと。

俺は再度認識した、アクシズ教はアクシズ狂であると。

そして心より誓った。何があってもアクシズ教徒にはならない。

セレスディナの二の舞にならないためにも、絶対だ。

 

 

そんなこんなで、セイクリッド・ハイネスヒールを使えると豪語し、主教の名に恥じない魔法の腕前のゼスタは大勝利。

テレポートでアクセルの街へゼスタを連れ帰り、俺は、記憶を失ってしまった俺の帰りをアクセルの街で待つのであった。

 

 

「ところで、めぐみんさんのお宅はいつまで空いているのでしょうか?」

「確か後5日くらいだったか…………なあ、なんとなく嫌な予感がするから聞くが、どうしてそんなこと聞いた」

「いえ別に、ただ私の記憶が正しければこの家のパーティーメンバーはかわいらしいお方が多かったなぁ、と。それとは別に、こんなに早入りさせられて無一文の私は一体どこに泊まればいいのか、無償で魔法を使用するのに何もお布施――もとい、ご褒美がないのは悲しいかなぁ、と」

「……盗賊団の一員となるため、いち早くアクセルの街へ~っつって、俺の話を一切聞かなかったのはどこのどいつだったか」

「なんと、そんなせっかちなお方がいらっしゃったのですか? 私の記憶にはございませんが大変ご苦労様です。その人の顔を見てみたいものですな」

「鏡を見ればいつでも見られると思うぞ」

「ふむ、鏡の世界の住人というわけですか……私にはいつも通り、すらっとした顔立ちのイケメンの姿しか見えませんが」

 

皮肉は皮肉として受け取れよ!

前に「すべてを愛する愛の伝道師――」的なこと言ってたが、まさか自分のことまで含んでいるとは思わなかった。

 

 

 

 


 

 

 

 

私たちがエルロードから帰還し、王都に到着したその日。

武装国家ベルゼルグ中に激震が走った。

魔王に対抗するための支援要請、王子とのギャンブル勝負、宰相として潜入していたドッペルゲンガーの正体を見抜いて 国家の危機を救い――アイリスの護衛としてエルロードに出向いていた私たちは、そこで様々なことに巻き込まれ、結果としては偉業を成し遂げたのです。

 

「ドラゴンスレイヤーの師匠は私です」

「ど、ドラゴンスレイヤーと呼ぶのはちょっとやめてください……その、恥ずかしいです……」

「何が恥ずかしいものですか、かっこいいです! いいですか、ドラゴンスレイヤーの弟子であるアイリスにはもっとその称号に誇りを持ってほしいのです。あと、私の一撃があったからこそアイリスは一撃で仕留められたことを忘れずに広めておいてください。お頭特権を行使させてもらいます。下っ端なら言うことを聞くのが道理ですよ?」

「えぇ…………」

 

謙遜が過ぎればただの嫌みだということを知らないのでしょうか。

世間知らずなお姫様にはやはり師匠が必要……ふっ、この我が師匠!

素晴らしいのです、姫の師匠として名を残す伝説の魔法使いに、私はなる!

私のテンションがここ一番高くなっている最中、私をもしのぐテンションで一番喜んでいたのはアイリスの近衛であるクレア。

 

「めでたい! 非常にめでたい! 今日は私のおごりで宴会を開こう! そこで報酬を渡そうではないか!」

「ふっ、報酬は決まってただろう?」

「……そういえばそうだったな。夜は長い。楽しみだ」

「ああ、今夜は朝まで寝かせないからな」

「「「えっ!?」」」

 

最初こそ驚きのあまり変な声を出してしまいましたが、どうやらアイリスのかわいらしいエピソード大会をするらしい。

まったく、私たちの仕事ぶりとして妥当な報酬が欲しいものですが……

まあカズマがとても嬉しそうなのでヤレヤレと肩をすくめておきましょう。

 

 

王城で過ごし始めて2週間。

私とダクネスはカズマを置いて一足先に帰るべき場所に帰った。

何故カズマのことを置いていったかと言えば、元々は3人で一緒に帰る予定だったのですが、アイリスの寂しそうな顔にカズマが折れてしまったのです。

アイリスの真っ直ぐな思いに、カズマのことを他の女にとられたくない独占欲は薄れ、苦笑しながら認めてしまいました。

というわけで私たち2人はテレポートで――

 

「稀代のマジックキャスターめぐみん! ただいま帰還!」

「バァーンと激しくドアを開けるな、立て付けが悪くなってしまったらどうする。それにこの家には誰も……」

「お帰りなさいお嬢様。ご飯にしますか? それともお風呂にしますか? それとも寝ます?」

 

……なんということでしょう。

私たちが家を出ていた間に妖精が住み着いてしまったらしい。

どう見てもおじさんなので座敷童などではなさそうですが……これは屋敷しもべでしょうか……いや、シルキーとかブラウニー?

さも当然のごとく顔を見せたおっさんに私たちは硬直してしまった。

いわゆる現実逃避、というやつである。

 

「どうしたんですか? もしかしてお二人とも体調が悪いので? ……はっ! もしかしてここで私がセイクリッド・ハイネスヒールを……」

「あ、空き巣だぁあああぁぁあっ!! めめめめめめめぐみん! 私が取り押さえておくから警察に!」

「……はっ!? そそそそうですね! 私がけけ、警察に……!」

 

よく見たら見覚えのある顔というかアクシズ教の主教と同じ顔ですが、きっと他人の空似でしょう。

私は動揺しつつも急いで警察を呼びに走ろうとして――回り込まれた。

 

「非常識なお嬢さんだ。いいですか、アクセルのような都会とは言えない、むしろ田舎といえる場所のセキュリティー事情をご存じない? はぁ……これだから全くエリス教徒は自分の価値観だけしか信じず頭が固くていけない」

 

まるで自分が正しくて私たちが非常識であるかのごとく説教を始めたおっさん。

箱入りお嬢を混乱させる巧妙な罠ですよこれは!

すでにダクネスは相手の術中にはまり混乱し始めてます!

 

「いいですか、田舎は基本鍵をかけません。近所の人が勝手に上がり込んできて勝手にものを持ち込みお茶し始めるなんて当たり前。人が家に上がり込んだくらいで犯罪者扱いで大騒ぎとは……全くもって度しがたい。いつでも客人を拒まないという精神で常に鍵は開けておくべきだと親から教えられなかったのですか?」

「そ、そうなのか!? す、すまない、世間知らずなもので……これからは鍵を開けておくように……」

「何を馬鹿なことを言おうとしてるのですか! そんなわけないでしょう! 鍵をかけたのにそれを突破してくる顔見知り程度の変態が不法侵入してくるのは普通に事案です! 紅魔の里でも鍵をかけないで外出なんてしませんから!」

 

……まあ、私の実家は盗るものが何もないのと雨風もしのげない風穴ハウスでしたので例外ですが、私は蛇足を言わないように口を塞いだ。

というかこの人は一体どうやってこの屋敷に侵入したのでしょうか……

見るからにプリーストという出で立ちですが、盗賊に転職し、鍵解除スキルを習得したとか?

 

「普通に合鍵を持ってるだけです。この前エリス教徒のお嬢さんを治療してる最中、片手間に型を取って……」

「ヘイポリスメン! ここに住居不法侵入罪が適応される歩く猥褻物がいます! 早くしないと爆発しそうなので処理を!」

「めぐみんさんは欲求不満なんですか? 私でよければ受け止めてあげますとも」

「駄目だぞ、めぐみん耐えるんだ! ここでエクスプロージョンしたら屋敷はどうなる! 私が外まで運んでやるからそこで……」

「私が爆発しそうという意味ではありませんから! 単純に何しでかすかわからない侵入者を爆弾に例えただけで……ちょ、私のことを担いで街の外へ連れ出そうとしないでください! この肩に担がれた状態だとパンツ丸見えじゃ……のぞき込もうとしないでくださいセクハラで訴えますよ! というか何という辱めですか! やめ、やめろーっ!」

 

 

 

しばらくして、何とか詰め所に引き渡すことができました。

知り合いの顔に似ているのでびっくりしましたが、きっと大丈夫でしょう。

そう思ってみようと努めていたのですが、流石にあんなんでもアクシズ教の最高司祭、前科者になってはいろいろとまずいと現実逃避をやめて仕方なしに迎えに行くことに。

詰め所に行くと、そこには髪がボサボサでどこか辛そうな職員さんが。

 

「あの、不法侵入の件でしょうか……?」

「あ、はい。実はその不法侵入された者なんですが、面会をお願いできないかなと」

「そう……ですか……」

「どうかしましたか、そんなに死にそうな顔をして……」

「す、すみません! その、できれば早く引き取ってほしいなと…………ここに入って『これが噂の拘束プレイ……しかも無料!』とか『腕を拘束されたままですよ! このままではお手洗いが! 手伝わないとひどいですよ!』とか『いやぁ、アクセルの街に来てよかった!』などと……」

 

どうやらアクシズ教だと知らないこのお姉さん。

ニシンですよと渡されたそれがシュールストレミングで、何の気構えもなく初体験を奪われてしまったときと同じような衝撃でしょう。

 

「ここの施設をそういう類いのいかがわしいお店と同列に扱われて……それだけならともかく、手錠は外したはずなのにどういうわけかいつもつけてるし、セクハラばかりで……まだ半日もたっていませんがそろそろ我慢の限界といいますか……」

「すみません、知らない人なので」

「この匂いはめぐみんさん? めぐみんさんの芳醇で香しい幼女成分が香ってきます! めぐみんさーん、おーい、あなたのダーリンはこちらですぞー!」

「……今、めぐみんさんのお名前を呼ん」

「知らない人です」

 

こんなのが私の知り合いだと思われたくない。

カズマ以上のセクハラ大魔神の面倒を見なければならないとかどんな地獄なのでしょう。

私はそっと詰め所を後にしようとして……

 

チーン

 

そんな音が後方から鳴った。

 

「どこへ行こうというのですかめぐみんさん?」

「ワ、ワタシハフニフラトイイマス」

 

チーン

 

「……めぐみんさん。爆裂狂のめぐみんさん。変な知り合いをお持ちのめぐみんさん。あの頭のおかしいおじさんを持ってってください」

 

……私、あの魔道具嫌いです。

 

 

 

 

「いやぁ、なかなか楽しい施設でしたね! アルカンレティアの方は環境が劣悪な場所しかなくて、今度の仕事は『罪人にも人権はある』として詰め所の環境整備を求める署名活動をしようと思っているのですが……めぐみんさんも署名いただけませんか?」

「そう言って差し出す紙は入信書なのでしょう!? アクシズ教にする魂胆なのでしょう!?」

「……いいアイディアですね。ご協力ありがとうございます」

「やぶ蛇でした忘れてください……」

 

どうして詰め所から出てきたばかりでこんなツヤツヤした顔をしているのでしょうかこの人。

代わりに私の顔は一段老けた気がしますよ……

もしかして常時は発動型のドレインスキルでも垂れ流してるのでしょうか。

 

「はぁ……」

「どうしましたか? 幸運が逃げますよ? 私でよければ相談に……」

「……アクシズ教の最高司祭である貴方がいると治安が悪くなる懸念があるのですが、相談というか帰ってくれませんか」

「それはできかねます。今回の件は仮面の人案件なのであと1週間ほどこの街にいる必要があります」

「そ、そうなのですか?」

 

まさかの名前が出てきて驚きだ。

先日エルロードでお世話になったっきり見かけないなと思えば、まさか裏でそんな工作をしてたとは。

……ゼスタである理由はあるのだろうか。

 

「実は私の最上位回復呪文がカズマ殿に必要になってくるそうでして」

「ど、どういうことですか! もしや、1週間後にカズマが大けがをするとかですか!?」

「……そこは聞いていないのですが、どういうわけか必要だということで」

 

どうしてこう肝心なところを聞かないで引き受けるのだろうかこの人は。

お人好しなのだろうか?

そんなことを思っていると。

 

「それと、ロリっ子3人が盗賊団を結成いたしましたとちまたでは噂でして。その盗賊団に加入したいのですがどちらに行けば募集しておりますかな? 私としては盗賊に準ずる隠密行動能力や鍵解除能力など有しているので是非加入できたらうれしいのですが……」

「それが本題ですか! おかしいと思いましたよ、アクシズ教がどうして人のお願いをそう易々と聞くのかと。とりあえず犯罪臭がするのでその盗賊団のことは放っておいてください」

「なりません、なりませんぞ! 盗賊として動きやすいように無駄を省き、かつかわいらしい盗賊衣装を仕上げようとした結果、布面積の少ないえっちぃ服ができましたのでそれを着させて活動しているとセシリーから話を受けました! これは守ってやらねば!」

「そんな話どこからわいたのかと思ったらお姉さんですか! 嘘ですよそんなの! そんな衣装は未来永劫着ませんのでお引き取りください! ……というか先ほど話していた隠密行動能力や鍵解除能力ってストーキング行為で培った技術ですよね?」

 

だとしたらより加入はしてほしくないのですが……

そう言い切る前にゼスタは視線をそらさず。

 

「当たり前です!!!!!」

 

澄んだ目でそう言い切った。

とても盗賊団に加入してほしいステータスなのにどうして加入してほしくないかは言うまでもなかった。

とりあえず私が言っても地面に頭をこすりつけて絶対に加入するまで引き下がらないという意思を玄関前で見せつけられたので、変な風評が飛び交う前に暇そうなゆんゆんに預けて説得を試みさせることにした。




しかし、結局ゆんゆんも駄目で、アクシズ教会へ預けられることに。
その後、なんやかんやあって「美少女の中におじさんが入ることは解釈不一致」とセシリーが突っぱねるも、なんとかして盗賊団員として紛れ込もうとするゼスタなのであった。

11巻ってリセットします?

  • 記憶消去のポーションでリセット
  • ルーシーゴーストでリセット
  • グリフォンマンティコアでリセット
  • リセットしない
  • その他
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