あの素晴らしい世界に帰るため   作:桃玉

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日常回です。
多分二週目カズマは裏の方で行動誘導するために頑張ってます。


1巻 ベルディア
2.最強の攻撃魔法~私の手を取って~


今俺は街の復旧作業に勤しんでいる。

というのも昨日上位悪魔の襲撃があり、凄まじい爆発とともに幕を閉じたんだが、街の一部は瓦礫の山と化していた。

奇跡的なことに負傷者はいれど死者はおらず、回復魔法がある異世界ではその負傷者であっても次の日には元気な顔をしていた。

 

……そうは言っても精神的に心穏やかな訳もない。

襲撃に遭った恐怖、住めない状況の家々、破壊された魔物侵入防止の防壁。

こんな状況で心安まるはずもなかった。

 

俺も今回の被害者と言えるだろう。

なんせ土木工事に勤しんでいるときに丁度あの悪魔が襲ってきたんだ。

あのときの俺はカエルの時のトラウマもあり、モンスターと聞いて思わず逃げてしまった。

 

しかし、しかしだ。

あの時遠目で見えた激しい攻撃魔法は凄かった。

俺のトラウマを上回ってああいう魔法で冒険したいな……とロマンを感じてしまうほどには。

そんなことがあり、少しばかり冒険に出てみようかなと思ったりして。

決して崇高な志ではないが、俺は安全に冒険に出るためにもこの街の復旧を望んで躍起になって……

 

 

「『クリエイト・アース』」

「おおっ、あのもやしっ子で弱っちそうだって思っていた新人が魔法を使えるとは……。俺は魔法のことにゃ畑違いでわからんが、結構やるじゃあないか!」

「うっす! ありがとうございやす親方!」

「この土がありゃ防壁の応急処置はすぐ終わりそうだな! 欲をいやぁちょい土ほしいんだが……いけるか?」

「了解です! 『クリエイト・アース』!」

「おおっ、いい感じだな! これで一先ず材料が足らんってことはねぇだろ、俺たちの作業が捗るぜ! 捗りすぎて一日で応急処置終わりそうだ!」

「さすが親方! 仕事が早い!」

「俺はこの道のプロだかんな……ってかカズマが遅すぎるんだよ」

 

いや、どう考えてもこの人がおかしいくらい早いだけだと思う。

何かそう言うスキルでもあるんじゃないかってくらい早い。

俺が1時間でやるのを親方は1分かそれくらいだ……しかも俺より丁寧な仕上がりになってるんだぜ?

決して俺が遅いわけじゃない、おかしいのはプロを名乗ってるガチムチの変態(褒め言葉)だ。

そう思って腑に落ちないながらも俺は尊敬してる親方に少しでも追いつけるように仕事にかかろうとする。

 

「さ、さーせん……じゃあ俺も仕事を……」

「あー、いや。今日は上がっていいぞ。こんだけ貢献してくれたんだ、後は俺たちに任せておきな! それは給料は2日分出してやる」

「い、いいんすか!? まだ俺仕事という仕事してないですし……」

「何言ってやがんだ、十分活躍してただろ。明日も同じの頼むぜ!」

「……うっす!」

「なあに照れてやがんだ女々しいやつめ。それに昨日の今日だ、休めるときに休んどきな。それがプロってもんよ、ガハハ!」

「あ、ありがとうございます、お先失礼します!」

「おうよ!」

 

俺の職場は泥土に塗れた汗臭い所だが、ホワイトな職場らしい。

ちょっとスキンシップ多めで背中をバシバシ叩かれてヒリヒリすることもあるが、逆に荒くれっぽくていい感じの味だ。

よし、明日もこの調子で働いて、給料アップと昇進狙って頑張ろ!

そのためにも今日は早めに寝て、心身を健康に保ち、明日に備えるんだ。

 

俺は住み込みの宿舎に戻り、カーテンを閉める。

春の風が吹くと僅かに外の陽が漏れてくるが、むしろそれが心地よい。

久しぶりの休日に昼間から惰眠を貪るってのもアリなんじゃないだろうか。

寝間着用に使ってるジャージに着替え、俺の寝床であるちょっと固めの二段ベッドの上で横になり毛布を被った。

目を瞑り、いざ夢の世界へ旅立とうとして……

 

 

「……ってちがぁぁあうッッ!!」

 

 

何土木工事に精だそうとしてんだよ、本職を忘れるな冒険者!

あと転生特典の役立て方が冒険じゃなくて土木工事なの何なの!?

俺は異世界で土木工事をするために特典を選んで転生したわけじゃな……いや、これも街の平和を維持するための活動だし、功労者であると言えなくもないけど!

 

俺が求めてるのは血湧き肉躍る冒険なんだよ!

それこそ昨日の凄い魔法を放った魔法使いみたいに、カッコいいことしていたいんだよ!

そのとき、俺の脳裏に現れた圧倒的天才的ひらめき。

 

 

「そうだ、冒険に出よう」

 

 

「というわけで親方、明日から俺、冒険者兼業します!」

「……急に何言ってんだ新人」

「親方……俺、思ったんです。そういえば俺って冒険者だったんだって。モンスターを討伐してなんぼの冒険者だったんだったって」

「いや、そうじゃなくて冒険者一筋でいけよ」

「お、親方……! 俺のことをそこまで思って……」

 

俺は思いもしなかった言葉で口を手で塞ぐ。

これが職業選択の自由というやつなのだというか、異世界だから労働基準法も何もない野蛮な場所かって思ってた昔の俺をひっぱたいてやりたい。

そんなこと思っていたら親方が。

 

「だってお前、いつまで経っても仕事遅いじゃねえか」

「お、親方!?」

「土の魔法が必要なのも明日と明後日くらいだ。それで急を要する復旧は終わるだろうし、後は普通にいつも通りの作業に戻るからな」

「えっ……じゃあ俺の魔法は……」

「いらないな。……ただでさえヒイヒイ言ってんのに冒険者と兼業なんてしてみろ、筋肉痛で手が回んなくなるかして野垂れ死んじまうぞ」

 

……予想外の裏切りで思わず口が塞がった。

確かにインドア派な俺は肉体労働した後毎日筋肉痛でもだえ苦しんでるが流石に酷い!

そもそも俺は筋肉担当じゃない!

 

「まずは筋トレだ。冒険者になるにしても俺みたいな筋骨隆々のパンパップッボディを身につけてからそういう危険なことはするこった」

「いや俺は頭脳か魔法か、そういう方向で頑張るんでほっといてくださいよ!」

「…………そうか。本当はこの職場にいてほしいんだが……いや、何でもねえ! とにかく、魔法使えるってんなら自分の身を守ることくらいできるだろ!」

「つ、ツンデレ親方……」

「ツンデレ言うな! ……まあ精々頑張るこったな」

「……ッありがとうございます親方!」

「たまには顔見せろよ? そんでついでに仕事してけ、体力と筋肉つけるためにビシバシやるぞ、ガハハ!」

 

ちょっとビシバシは遠慮したいんでしばらくは顔見せないようにしたい。

なんて思いつつ、もはや実家と言っても過言じゃないまである職場を飛び出して……

 

 

 

 

気づけば2週間ぶりの冒険者ギルドの中に入っていた。

とりあえず今回は堅実に、慎重にいこう。

前回の冒険で不意打ちで死ぬなんてことざらにある世界だってわかったからな。

まずはギルドのお姉さんにどんなクエストがあるか確認してから、どうするか決めよう。

そう思って俺はカウンターの方に歩み……何故か受付のお姉さんと目が合った際にギョッとされた。

 

「さ、サトウカズマさんですか!? 死んだんじゃ……」

「人を勝手に殺すなよ」

「す、すみません。この数週間音沙汰がなくて、初心者は引き際がわからない方が多いですから……」

「ああ、そういう……。実はこの2週間は装備を買うお金とか集めるのにバイト漬けだったんで……」

「そうなんですね、よかった……。パーティーを集める前に出発すると死亡率が極端に高まりますから、一人で冒険に行っていないようで安心しましたよ」

 

思わず俺はギクリと背筋を強ばらせる。

今更忠告無視して冒険に行っちゃったんですよーとか、お姉さんの安心したような顔に罪悪感を覚えて言えない。

 

その後も冒険の危険性についてお姉さんが改めて話しているのを聞くと自分が如何に無謀な挑戦をしていたのかがわかる。

本当にどこの誰だかわからないが俺のことを助けてくれた人がいなかったら俺はどうなっていたことやら……

ショックで気絶していたせいで、その人が背負って街の近くまで運んでくれていることに気づいたのは街の近くで俺を下ろす時だった。

なんとかお礼を言いたかったんだが、俺が声をかけようとした途端走ってどっかに行ってしまった……暗くて姿を見ることは叶わなかったが、もし今度があったら改めてお礼を言いたいところだ。

命の有り難みを実感しているとお姉さんが。

 

「では今回はいかがしましょうか? カズマさんは冒険初心者なので、職員としてはパーティーメンバーを募集するのをオススメするのですが……」

「じゃあそれでお願いします!」

「ではこの紙とペンをどうぞ。あちら側の掲示板に募集要項を記載して貼っていただければ。それか自分に合った募集要項を見つけて募集中のパーティーに加入するのもありかと」

「ありがとうございます」

 

用紙をもらった俺は、一度張り出されているメンバー募集の紙に目を通す。

 

【パーティーメンバー募集中してます。希望としては、会話が続かなくても大丈夫な人、毎日尋ねに行っても引かない人、目を合わせて会話できなくても怒らない人。職業不問、年齢不問です】

 

……何だろう。

見てるだけで涙が出てきた。

それと何故か向こうの席に座ってる女の子が凄いこっちをガン見してくるんですが。

何だか厄介なヤンデレの気配を感じ取った俺は次の募集を見る。

 

【パーティーメンバー募集中。現在のパーティーメンバーは、ソードマスター、ランサー、盗賊の三名です。魔王討伐を真剣に目指しています……】

 

うん、こいつはないな。

今の俺の身の丈に合ってない気がするし、すかした感じが鼻につく文面だ。

きっとチートハーレム野郎がリーダーで俺は肩身の狭い思いをする。

別のにしよう。

 

【パーティーメンバー募集中。当方、クルセイダーと盗賊の二人組。募集要項は、鬼畜な性癖を持つダメ人間。募集要項は……】

 

上から線を引いて消したような跡がある。

前半と後半で書いてる人が違うのか筆跡が違うが、なんかゾワリといやな予感がしたのでこの募集要項に関わるのはやめておこう。

 

と、ここまで募集の張り紙を見てきたが、どれもいまいちこれだというのがない。

やっぱ自分で募集して仲間を集めるのが無難か。

俺は先ほどの張り紙たちを参考にしつつペンを走らせる。

単純に最弱職が仲間を募集してるって書いても誰も寄り付かないだろうし、ここはちょこちょこっと転生特典の部分をぼやかしていい感じで書いて……

よしっ、こんなもんだろ。

 

【パーティーメンバー募集中。先日冒険者登録をしました冒険者です。火力調節可能なオリジナル魔法を使います。その人の中身を重視につき職業、年齢不問。その他要相談】

 

うっし、こんなもんだろ。

冒険者っていうのも最弱職って捉え方じゃなく書けたはずだ。

魔法についても嘘は書いてない。

あとはこれを張って待つのみだ。

男の人が来たら厚い信頼関係を築いて馬鹿やってみたり、可愛い女の子が来たらと一緒に冒険して甘酸っぱい恋とか……

 

 

そんなこと思って待っていたら丸一日経っていた。

 

 

ヤバい、誰も来ない。

1日待ってみたが誰も来ない。

いや、来るには来るんだが、俺がレベル一桁の冒険者だって知るとみんな気まずそうな顔して「えっと……荷物運び担当なら?」とか言って去って行く。

これが職業差別ってやつなのか?

いや、きっとそれだけ冒険者という職業が弱く、バランスがとれないんだ。

オリジナル魔法を使えるという言葉も見栄を張って書いた嘘だって判断されたのか、誰もが軽くスルーする状況。

待てど暮らせど待ち人来ず、ついには翌日になってしまったんだ。

 

しかも昨日隣にいた、一生そわそわしてた子もいなくなった。

ギルドの隅っこでトランプタワーを黙々と築くことに定評のある女の子だったんだが、本当にあの技術は無駄にすごかった。

一体どれだけこの道に時間を捧げてきたのだろうか、高々と聳え立つ塔。

暇つぶし感覚でこれを完成させるんだったらこの子はギルドになんかいないでそっちの道で生きていった方がいい気がする。

だからむしろ今日はここにいないのは僥倖か。

 

……そう考えることにしたが、やはり昨日より少しばかり寂しさを感じる。

はぁ……やっぱり冒険者は不人気職業で誰も組みたがらないんだろうか。

なんだか前途多難な雰囲気に呑まれ気分が滅入ってきた。

気分を入れ替えようと立ち上がった。

……そのときだった。

 

 

「冒険者募集を見てきたのですが、ここでよいでしょうか?」

 

 

どことなく気怠げな、眠そうな紅い瞳。

昨日まで俺の隣にいた子と同じ眼だ。

ただし違う点を上げるとするならば、俺の前に突如現れたその少女は発育が……

じゃなくて、ローブにとんがり帽子といった、典型的な魔法使いの格好をしていた。

その少女がバサリとローブを翻して名乗りを上げた。

 

 

「我が名はめぐみん! アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操りし者……! さあ少年よ、我が手を取るがいい……さすれば、あらゆる敵を打ち倒す最強の魔法が手に入るであろう――!」

 

 

最強の魔法使い。

12~13歳の少女が声高らかにそれを宣言し、手を差し出してきた。




【パーティーメンバー募集中。先日冒険者登録をしました冒険者です。火力調節可能なオリジナル魔法を使います。その人の中身を重視につき職業、年齢不問。その他要相談 

追記:最強の攻撃魔法や鉄壁の防御を欲しています】
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