あの素晴らしい世界に帰るため   作:桃玉

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15.世界の強制力~運命を切り開くことを~

「あの……。あなたが、サトウカズマ様ですか……? お噂はかねがね……数多の強敵を打ち倒し、若くして財を成した偉大な冒険者だと、貴方様のご高名は伺っております。わたくしはプリーストのセレナと申します。……突然ですが、どうか貴方様のパーティーに入れていただくわけには参り――」

「ません!! ……あ、いや、悪い。でも今うちはパーティーメンバー募集はしてないんだ」

 

俺のはっきりとした拒絶の言葉に思わず目を見開くめぐみんとダクネス、そして目の前にいるプリースト風の美人冒険者。

それはいつだったか、ダクネスが俺たちのパーティーに加入する時に加わりたいと申し出てきた時と同じレベルの素早くキレのある……

と、そんな俺の拒絶の言葉に困惑しておずおずと遠慮がちにその冒険者は、

 

「そ、その、何かお気に障ることでもありましたか?」

「そうですよカズマ! さすがに互いに何も知らない間柄なのに私たちのように接するのは……」

「めぐみんの言う通りだ。カズマの遠慮なしな言葉はそれはもう……クッ///」

 

確かにダクネスが興奮しているとおり、俺の言葉は少々トゲがあるのかもしれない。

そしてめぐみんの言うとおり、そんな言葉は初対面の人に対して使うべきではない。

 

一見して俺の目の前で目を丸くしている冒険者はダクネスのように変態な雰囲気を漂わせてもいなければ、めぐみんのように頭のおかしさの片鱗すら窺えない。

長年こいつらと付き合ってきた俺が言うんだ、間違いない。

 

「確かに見たところ、アンタは品行方正で今まで関わってきたプリーストとは大違いの素晴らしい聖職者だよ。えっと、セレナさんだっけ?」

「ええ。まだまだ未熟な身であありますが、お褒めいただき……」

「だからこそ引っかかる。あまりにも違和感なく完璧すぎたんだ。美人でスタイルも良くて性格も穏やかで誰でにも優しい……絵に描いた想像の形そのまま。ここまで完璧にできた人間なんているもんかってな」

「……さすがに買いかぶりすぎですよ? わたくしはどこにでもいるプリーストで、まだまだ修行中の身で善くあるべしと己を律して……」

 

セレナと名乗る彼女が思わず硬直するの俺は見逃さなかった。

そして確信した。やっぱりこの美人冒険者は何かしらのヤバい本性を隠しながら俺たちに近づいてきたんだ。

本当に話をすればするほどその巧みな話術に引き込まれ、まるで俺が悪いかのような錯覚すら覚える。

何も情報がなければすんなりパーティー加入を認めていたことだろう。

でもな、俺はお前に会う前からお前のことを知ってるんだぜ?

 

「猫かぶってるところ悪いが、俺は、お前の本性を知ってる」

「……どういうことでしょうか」

「仮面の人から聞いたぞ? 初対面早々に失礼で悪いが、ウチの爆裂魔法使いと変態クルセイダーに負けず劣らずの厄介属性を持ってるって――」

「『ブレイクスペル』!」

 

困った表情をしているセレナから放たれた魔法に反応できず、身を翻すこともできずに光線に直撃する。

しかし攻撃魔法ではなかったらしく、俺の体は何ともなかった。

名前から連想するに解呪の魔法のようだが――

 

「……どうして今俺に魔法を?」

「いえ、その、仮面の人、ですか? その方に何を吹き込まれたか分かりませんが、もしや魔王軍幹部の悪魔にそそのかれたのかと思いまして、念のために魔法をと」

「ま、まさか! 今までカズマが鬼畜とかロリコンだとか散々言われ続けていたのは元来のカズマの性格ではなく、その悪魔に呪いをかけられて……!?」

「違うと思う。今のところ体になんか変化を感じたってわけでもないし。というかその鬼畜っていうのは知ってたけどロリコンだとかは広まってないはずだぞ! なあめぐみん教えてくれ、どこのどいつだそんな噂広めやがったの! しばいてくる!」

「……ごめんなさい、私の力不足であの強力な悪魔の呪いを解くことはできなかったみたいで……」

「いえいえ、カズマは元からこんなんですので。わざわざ試していただきありがとうございました。今度知り合いの教団に在籍している最高責任者のアークプリーストに相談してみますね」

 

おおっと、遠回しに俺の性格に難癖言ってますね。

というか元からこんなんってなんだよ!

確かに俺は女相手だろうとドロップキックを食らわすことができる男女平等主義者だが、敬意を持って接することができるやつに対しては博愛主義的に接しているはずだぞ俺は!

どうしてこんな性格になってしまったかと問われれば、問題児たちをお世話するのに日々奔走していたからという言葉に尽きるんだが!?

こんな性格にさせた問題児に『こんなん』とか言われたくないわ!

そんなことを考えて俺は今何とも言えない表情をしていることだろう。

俺のそんな表情を見かねたのかダクネスが「ちょっと待て」と声を上げ、それに思わず嬉しくなる。

「そうだダクネス、こいつら2人に言ってやれ!」と目配せをするとダクネスは頷き……

 

「めぐみん! ゼスタ殿に頼む気ではあるまいな! あの変態プリーストのことだ、カズマの初めてを奪われてしまうことは確実だろう……だから下手なことを考えるのはよすんだ!」

「いや、違うそうじゃない! 確かにあのおっさんに預けられるのは想像しただけで恐ろしいが、俺が言って欲しかったのはそんなことじゃないぞダクネス! もっと直接的に言うんだ!」

「では言わせてもらおう!」

「そうだ言ったれ! 俺はわざわざそんなことしなくてもいいってな!」

「うむ! カズマに解呪の魔法は不要だ! いくら最高位の悪魔にかけられている呪いとは言え、万が一カズマの性格が素直で優しいさわやかイケメンになってもみろ! それと、私をいじめてくれるやつがいなくなるではないか!」

「そ、それは良いことなのでは? …………いえ、考えただけで身の毛がよだちますね。はっきり言って今のカズマになれすぎたせいでギャップが気持ち悪いです」

「そうだろう」

「いや違うよ?」

 

さっきまで俺の性格は悪魔由来のもんかどうかって話だったろ、どうして素直で優しい爽やかイケメンな俺が気持ち悪いって話になってるんだよ!

というか今の俺はそうじゃないのかよ!

その言葉の対義語はひねくれ者の鬼畜暗闇引きこもりニートってか……

自覚はあるよ、あるけどさ、流石に泣いてやろうかこのやろう!

このギルドの中を俺が阿鼻叫喚にさせてやろうか!

そんなことをシクシクと胸の奥底で泣きながら思っていると。

 

「ますますあなた様のパーティーに入りたくなってまいりました。とても仲が良さそうで、信頼関係がしっかりと構築されていて……良いパーティーですね」

「どこが?」

 

こんなパーティーの状況を見て「ますます入りたい」とか抜かす奴はろくなヤツじゃない。

俺は目の前にいる黒髪のプリーストを、今までどこのパーティーも拾ってくれなかっためぐみんやダクネスと同列に思い、仮面の人の言葉を抜きにして絶対パーティーに入れてなるものかと固く決意したのだった。

 

 

 

 

その後、俺は猫かぶってると確信したセレナの様子を注意深く観察した。

潜伏スキルで身を隠しながらセレナを監視していたが、彼女の様子は俺がいようといまいと変わりなく、ギルドで怪我をした冒険者たちを癒やしていたり、冒険の前に支援魔法をかけてあげたりを無償で行っていた。

 

ギルド内には列を作っている冒険者たちの姿が見える。

基本的に、プリーストというクラスは需要の割になり手が少ない。

なので、こういった魔法の無償サービスは、プリーストがいないパーティーにとって実にありがたいことだろう……俺たちのようなプリーストがいないパーティーにとっては特に。

 

また、ある日は墓地での何百体というアンデッドが出現するという騒ぎがあったが、セレナが放った魔法で事なきを得て……その実力の高さは普通から逸脱していることは間違いない。

うん、実に完璧なプリーストだ。

俺が今まで関わってきたアクシズ教のプリーストは、ダクネスにかける回復魔法の腕でいえばセレナが手間取っているレベルの傷であろうと回復させてしまうし目を見張るものはあるが、悪質教徒なので比べるまでもなくまるで違う。

 

……まさか、仮面の人に間違った情報渡されて、それをまんまと信用して陥れられたか?

仮面の人に対してそんな疑念を持ち始めた時のことだった。

セレナに呼び出され、とある話をされたのだった――

 

「なんてこった……。そんな、そんな漫画みたいな展開が現実にあるだなんて……」

 

それはとてつもなく壮大で悲しい話。

セレナが語った物語はとても一言では語り尽くせないような、それを聞いた誰もがやりきれなさと切なさを引きずったままになるだろうそんな話だった。

 

「そんな理由で美しい少女は魔王と呼ばれることになりました。今も呪いで醜悪な姿に変えられておりますが、その呪いもやがて解けようとしています。……お願いです、あなたこそは神に選ばれし者。きっと、今も人類を苦しめる魔王を退治したいと願っていることでしょう。ですが魔王も元は1人の少女! 魔王を退治するのはしばらく待っていただけませんか? そしてどうしても待てないと言うのならば、どうか私をこのパーティーに入れて、魔王の元へ連れて行って欲しいのです!」

 

俺の手を両手で掴み下から見上げるようにしてすがってきた。

なんてドラマチックな展開!

これだよ!

俺がこの世界に求めていたのはこれなんだ!

そんなこと思いながら話を聞いていたその時……

 

「セレスディナさん? セレスディナさんじゃないですか! カズマも! どうしたんですかこんなところで? カズマさんてば私といいバニルさんといいセレスディナさんといい、魔王軍の幹部にずいぶんとご縁がありますね! もう皆さんと仲良くなられたんですか?」

「……人違いではありませんか? 私はセレナという名のプリーストです。どなたかと間違われて」

「いいえ、私、これでも魔道具店の店主をしてるんですよ? 人の顔を間違えるはずありません。それにしても本当にお久しぶりですセレナさん! 今日は新しい魔道具を仕入れてきたんですよ! 是非私のお店に立ち寄ってみていってもらえないでしょうか、きっとお気に召しますよ? 例えば虫を退治してくれる魔道具とか――」

 

……あー、はいはい、そういうオチですかそうですか。

セレナさんは魔王軍幹部のセレスディナさんで、本当にばっちり仮面の人が言うとおり厄介ネタを持っていました。

疑ってごめんなさい、仮面の人。

そしてご愁傷様です、仮面の悪魔。

二つの意味で俺は心の中で手を合わせることにした。

 

 

 

 

その後。

哀れかな、仮面の悪魔によってすべてを見通され、悪感情とともに財布の中身まで搾り取られたセレナさんはげっそりとしたような表情でいらっしゃった。

そんなセレナはため息をつきながら。

 

「もう、これ以上嘘言っても仕方ないか。最初からあたしの演技に違和感持ってたみたいだしな。改めて自己紹介といこうか。あたしは魔王軍幹部、謀略と諜報を担ってるセレスディナ。傀儡と復讐を司る邪神レジーナを崇拝するダークプリーストだ。はぁ……全く、これだから勘のいいヤツは……」

「いや、その、何ていうか、ご愁傷様です」

 

何というか、これが魔王軍幹部、ねぇ……?

女神様からチート能力を持ってるせいもあるかもしれないが、残念な商品を仕入れてくることに定評がある魔王軍幹部(貧乏美人店主)が経営する魔道具店の魔王軍幹部(アルバイター)に有り金巻き上げられた魔王軍幹部(プリースト)を見て、恐怖を感じるというより哀れすぎて同情を禁じ得ない。

そんなことを思っているとセレスディナが。

 

「……なんというか、もう少し驚いてくれてもいいんじゃないか? だってあたし、これでも魔王軍幹部なんだぞ? それを知ったら普通もっと、こう、何というか驚くなり何なりのリアクションがあるだろ」

「いや、もうウィズもバニルもいるし、そんな二人の肩書きは貧乏店主とカラススレイヤーだし、天下一の無一文幹部が居ても……。驚くより心配が勝つし…………その、期待外れな反応でごめんな?」

「謝らないでくれ、私が期待外れだったみたいな感じになるだろ! というか同情するなら金をくれ! 冒険者カードにはダークプリーストって表記が出るせいでクエストを受けられねえし、もう宿代も何もないんだよ」

「じゃあ貸し一で」

「……ぐっ、わかった……」

 

無一文の幹部に金を貸してやった。

正直言って、魔王軍幹部ってこんなんばっかなのだろうか。

俺が思っていた異世界像は幻だったんだろうか。

一般冒険者に頭を下げて金を受け取り、それを懐に入れる幹部を見てなんとも言えない気分になっていると。

 

「ちなみにさっきの話、あれも嘘な」

「美少女が呪い云々ってやつか? ……なんでそこまで暴露するんだよ。何か裏でもあるのか?」

「いや、これ以上嘘言って苦しくなるより本当のことは話して取引しようと思ってな」

 

取引、取引ねぇ……

謀略諜報を担ってるザ頭脳系な魔王軍幹部が、赤裸々に真実だけを話すなんて馬鹿らしい話あるか?

あえて自分が不利になる情報を混ぜて、俺の隙を突こうとでもしてるのか?

それとも何か重要なことを隠しているだとか。

真実の中にわずかな嘘を混ぜて話すこの感じ――仮面の人を思い出すなぁ。

あの胡散臭いヤツのおかげでこういう腹の探り合い的な部分が強くなってる気がしなくもないが、俺たちを誘導するときの仮面の人の手口と同じような感じだなこりゃ。

 

「そうやっていっぱい自分が喋って、俺も喋るように誘導して情報を引き出す魂胆だろ。俺からは何も喋らないぞ」

「いや、お前のことは事前調査で大体のことは知ってるから別に喋んなくてもいいぞ」

「ふーん」

 

適当に相槌を打つと、困ったような顔をするセレスディナ。

やっぱり情報を誤認させることが目的か?

考えても相手の腹の内は見えてこないが……

そんなことを思っていると困り顔のセレスディナが話を続ける。

 

「ここ最近のお前の言動や行動を見させてもらったが、魔王がお前を危険視する理由がさっぱりわからねえし、あたしは魔王から、何人もの幹部が姿を消したこの街と、そしていろんなところで名前が出てくる男を調べるように言われたわけだが……。その結果、全ての事柄の中心人物がわかった。……ズバリ、お前なんだよ」

「えっ、ちょっと待ってくれ! 全部俺のせいにされるのは納得がいかないぞ! 俺はどっちかって言うといつも巻き込まれているだけで――」

「それも調査済みだ……だからこそ、魔王軍と取引をしよう。この取引が成立すれば代わりにお前の調査や報告はやめてやる」

 

俺が巻き込まれてるからこその取引?

魔王軍幹部の討伐に関わってる俺じゃない中心人物――黒幕、つまり仮面の人の情報、それが欲しいのか。

だが残念だ、魔王軍があの人の情報を、正体を何も知らないのに俺が知ってるわけない。

そう考えて、肩の力を抜くと。

 

「話を聞く気になったみたいだな」

「ああ。まあ、俺に何を頼みたいかはわからないが……話って?」

「……実はな、誰かさんのおかげで長い間膠着状態だった魔王軍と人類との戦況がここ最近動きまくってる。魔王城を覆っている防御結界を管理しているのは今やあたしとウィズ、それから魔王んとこのお嬢だけで不安定。つまりそろそろ結界が維持できなくなりそうなんだわ」

「ほほう。つまりその誰かさんのおかげで魔王軍はピンチだと」

「……鼻の穴が膨らんでキショい誰かさんの話はおいといてだ。魔王軍もピンチなのは認める。が、人類側もピンチなのは同じだろ?」

「ん? そりゃどういうことだ?」

 

確かに今の話を聞く限り魔王軍がピンチなのはわかった。

結界の維持の話もそうだが、俺たちが仮面の人と一緒に幾度となく魔王軍幹部を討伐してきたわけだ。戦力不足だろう。

でも人類側は特に強いやつが倒されたって話は聞かない。

紅魔族の連中だってピンピンしてるしアクシズ教団も雑草のようにしぶとい。

高レベルの冒険者が死亡したってニュースも見ない。

一体どこに人類が不利になる要素が……

思い当たる節がなく険しい顔をしているとセレスディナが。

 

「どういうことって、今まではどこからともなく現れてた勇者気取りの黒髪黒目の連中がバッタリ出現しなくなったのさ」

「えっ」

「つまり取引ってのは……お前さ、魔王軍に入れよ」

「……は?」

「いや、あたしの仲間になれよっつったんだ。……わかる、お前はこっちよりの人間だ」

「おいふざけんな!?」

「こっちは大真面目だ。変わった名前の連中が急に現れなくなったって。この変な名前の連中……どうも神々が遣わしたんじゃないかって話があるんだ。そしてその連中がお前を最後にぴったりと出現しなくなった。まるで神々が、お前一人でもう十分だというかのようにな」

 

えっ、仮面の人の話じゃないの?

本当に俺の知らない話なんですけど!?

 

「だから、そんなお前だからこそ、最初に、強くなる前に排除、もしくは仲間に勧誘した方がいいって魔王に言われてきた訳なんだが……」

「俺は静かに過ごしたかっただけなんだ……植物のような心で、決して波を荒立てることなく、平和に、平穏を願って過ごしているんだ。だからそういう軍隊所属みたいなのはちょっと」

「別に魔王軍だから嫌とかじゃねえのかよ……」

 

変なことを言ってくるから動揺してる……!

落ち着け、落ち着くんだ佐藤和真!

確かに軍隊所属はハードワークが予想されて体育会系で深夜まで勤務ってのは精神衛生上よろしくない。

俺には貯金がたんまりあることだしこのまま不労所得で余生を過ごすのも一興だろう……って違う!

そうじゃない、俺にはめぐみんもダクネスもいるし、何なら王都には我がスーパーツヨツヨプリンセスシスターアイリスがいるじゃないか!

こんな状況で魔王軍に入ろうものなら「お兄様なんて嫌いです」だなんて言われて……

グフッッ!!(吐血)

お兄ちゃん、そんなの耐えられな違う!!

 

「お、おい? どうしたんだよ急に胸を押さえて、かと思ったら頭を壁に打ち付けるし気でも狂ったか!?」

「あ、お気になさらず」

「怖ぇよ! 頭から血ぃ出てるし! 情緒どうなってんだよ! 魔王軍幹部目の前にしてようやくことの異常性に気づいて発狂でもしたか!? わ、わかった、お前を魔王軍に入れるのはやめる! 代わりにあたしのすることに手ぇ出さなければこっちからも何もしないって条件の取引に変えるから、だからその真顔はやめろ!」

「あっ、ちょ……!」

 

俺が何も返事する前におびえた様子で逃げていったセレスディナ。

お前が変なこというからだろうに、なんだか俺が頭おかしいやつみたいな扱いしやがって。

ひどく、心が痛い、俺、かわいそう……

 

そんなことを思いながら俺の疑問は脳裏をぐるぐると回る。

さっきの俺がアクア様から遣わされた最後の勇者だって話。

もしかして天界ってその名とは違って地獄な労働環境なのだろうか。

それでアクア様がストライキ起こしちゃったとか……でもエリス祭の時には元気に降臨してたし、それはなんかおかしいよなぁ……

 

そんな頭だったせいで、俺は後ろで小さな声が漏れ出ていることに気づけなかった。




次回 解き放てセレナ、必殺の魔法!!
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