あの素晴らしい世界に帰るため   作:桃玉

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ささやかな日常は少し続く。


2.見つめる勇気~仲間とともに~

「我が名はめぐみん! アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操りし者……! さあ少年よ、我が手を取るがいい……さすれば、あらゆる敵を打ち倒す最強の魔法が手に入るであろう――!」

「…………めぐみんってなんだ。冷やかしに来たのか」

「ち、ちがわい!」

 

その少女は慌てた様子で否定するが、どうにも怪しい。

特に名前、偽名を名乗るにしてももう少しマシな名前を名乗れよ、あだ名じゃん。

それと最強魔法を放てると言ったが、本当にそうなら俺みたいな最弱職の募集に来るわけがない。

さてはインチキ魔法使いかと思い渋い顔をしていたのだが。

 

「私の名前について言いたいことがあるなら聞こうじゃないか。それに紅魔族からすれば貴方方の方が奇妙な名前に感じるのですよ」

「うん? 紅魔族だって?」

「如何にも! 我はアークウィザードに成るべくして生み出された紅魔族の血を継ぎし者。種族名を冠するこの赤い瞳こそが証明なのです」

「へー、じゃあ昨日のそこに一人ぽつんっていた子も……」

「私のライバルを自称するゆんゆんのことを言っているのならきっとそうでしょう。とは言っても私ほどではありませんが。なんせ、私こそが先日の上位悪魔を滅ぼしたアークウィザードなのですからっ!」

 

あの子、頑なに名乗ろうとしなかったがゆんゆんって言ったのか。

恥ずかしがっていたあの子は頬を赤く染めていたが、目の前のロリっ子は恥ずかしげもない様子で瞳を赤く染める。

自信満々な様子から嘘をついてるようには感じられない。

つまり、この子はこの前の凄い威力の爆発魔法を使った張本人って訳だ。

そう言われればあの魔法が最強だって言うのも頷ける。

でもまだ疑問がある。

 

「あの魔法は凄かった。そんな魔法を使えるヤツが俺のところに来てくれるのは嬉しいが……そんな凄い魔法使いなら引く手数多なんじゃないのか? どうして俺のところに……」

「そ、それはですね……えっと……そう、私のような孤高の魔法使いは仲間を選ぶのです。同じレベルに至らない者はパーティー内から浮き、それ即ち崩壊を意味する。しかしながら貴方は最弱職ながらに何か特別な力を秘めている。私は貴方の中に光る輝きに導かれたのだ」

「俺の中の……輝き……ッ!」

「この邂逅は世界が選択せし定め。私は貴方のような者の出現を待ち望んでいた。改めて名乗らせてもらおう、我が名はめぐみん。少年、汝の名は?」

 

どうやら俺の姑息な冒険者の意味を勘違いさせる策略に嵌まって――最弱職という意味での冒険者ではなく普通の冒険者だと思って来たわけじゃないらしい。

実に賢い、そして魔法使いという職業柄その賢さが魔法の実力に反映されているとしたら……冷やかしや詐欺師なんかじゃない。

コイツは凄いぞ!

なんて大物が俺のところに来やがったんだ……!

俺はようやく集まった冒険者仲間に促され、差し出された手を取った。

 

「俺はカズマ。サトウカズマだ。よろしくなめぐみん!」

「サトウカズマ……なるほど、なかなかいいセンスの名前じゃないですか。よろしくお願いしますよカズマ」

 

最強の魔法使いを仲間に入れられた。

若干中二気質だが人形みたいな美少女でやる気が出てくる。

実力を初めて信じてもらえた。

転生特典の力だが、それでも期待に応えたいという気持ちが溢れる。

名前を褒められた。

俺自身親につけてもらった名前を褒められることに悪い気はしない。

 

なのにどうしてだろう。

今はものすごい複雑な気分だ。

そんな俺に不安そうな顔をしてのぞき込んでくるめぐみんが。

 

「どうしましたか?」

「……いやなんでもない。それよりこの後冒険に行こうって思ってるんだが、準備は万端か?」

「もちろんです! ……と言いたいところなのですが、実は今朝は何も食べてないのです。冒険に行く前に腹ごしらえでも」

「おう、腹が減っては戦ができぬって言うしな。今日は俺が奢ってやる、しっかり食って大きくなれよ」

「……私を子供扱いするのはやめてもらおうか。これでも今年14になり成人するのですから。それはそれとしてゴチになります!」

 

どこを見て子供扱いしたかっていうのは藪蛇だし言わないでおこう。

めぐみんが注文してテーブルに置かれた飯の量に食べ盛りだなぁなんて親戚のおじちゃんみたいなことを思ってみるが、俺のそんな生温かい目を気にしない食い気の凄まじいめぐみんはほっぺをもっもっと動かしていた。

 

 

 

 

腹ごしらえが終わり、今は街のすぐ外にある平野を歩いている。

満腹になっためぐみんを連れ、あの俺を食らったモンスターであろうジャイアントトードの討伐依頼を受注ししたのだ

めぐみんは一撃熊のような強大な敵を倒しにいきたいと言っていたが、俺には前回のトラウマがある。

一先ずはトラウマ克服のためにも、そして慎重にいくためにも、めぐみんを説得してジャイアントトードを消し炭にすることにしたのだ。

 

しかしまあだだっ広い平原なのにモンスターの陰一つ見えない。

それだけこの周辺のモンスター駆除は進んでるってことだろうが、冒険者の商売あがったりだな。

まあそのおかげでお喋りしながらここまで来れたんだが。

 

「へぇ、つまり爆裂魔法ってのは火属性だけじゃなくて風属性との複合魔法なのか。てっきり爆発属性って言うジャンルかと思ってたよ」

「如何にも。故にどこの属性にも属さない無属性魔法として扱われることが多いのですよ。……と言いますか、そんなことも知らないでよくオリジナル魔法を開発できましたね」

「あー、俺の場合開発っていうか、生まれつき使えたみたいな?」

「ほほう、つまり特殊能力持ちというわけですか……。ふふふ、素晴らしい設定を持つ仲間と巡り会えたものです」

 

そしてしばらくコイツと話してわかったことがある。

あれだ、コイツ重度の中二病患者だ。

俺も人のこと言えないところがあるが、不自然に大人びた言動、自分が特別な存在であるという思い込み……

いや、めぐみんは言葉の選び方がそこらの大人より難しいし、頭がいいことには変わりないんだろうし、爆裂魔法とかいうすごい魔法を使える。

そう考えると思い込みとかじゃないし、ある意味中二病ではないのか?

いやでも世界が選択せし定めとか言ってるし……

 

めぐみんの愛あふれる爆裂魔法についての話を聞きながら歩いていると、ようやく一つの影が見えた。

視線の先にはヌボーッと日光浴している一体のカエル。

遠くから見ると普通のカエルみたいだが、あのデカさは恐怖だ。

魔法が使えなかったら一撃でひき殺されるか食われるかする自信がある。

 

だが今日は心強い仲間、そして日中で視界も良好。

前回の敗因である軽率さもない。

勝つる!

 

「めぐみん、まずは俺の魔法から見てくれないか?」

「ほう、例の固有魔法ですか」

「ちょっと前のお礼参りと自分の限界を見定めるのもかねて、最大火力調節で撃ってみたいんだ。……爆裂魔法の前座になればいいんだがな」

「そうですね、それがいいと思います。我が魔法は最強を冠する爆裂魔法。その分、魔法を使うのに準備時間が結構かかりますし」

 

めぐみんがそう言って俺に先手を譲ってくれた。

せっかくの異世界で初めて人に見せる魔法……それも最強の魔法使いに見せる魔法だ。

飛びきり凄い魔法を見せなくっちゃな!

俺は意気込んで両手を突き出す。

 

 

「じゃあ見せてやるぜ……俺の魔法! 地獄の業火に抱かれて消えろ――『ティンダー』ッ!!」

 

 

俺の両手に現れた炎。

それが俺の手と手の間で融合して、ゆらゆらと揺らめく白い炎できあがった。

しかし内包するエネルギーは凄まじいことこの上ない。

 

それを放つとジャイアントトードにゆっくりと近づき、着弾した。

その瞬間に一気に轟っと炎が咲き燃え広がる。

ジャイアントトードは数秒で焼失した。

 

そこまで確認して俺は憎きジャイアントトードを討伐できた、リベンジを果たせた実感が湧き上がり胸をなで下ろす。

魔法が終わったがなお地面を焦がし続ける。

それを見ためぐみんが生唾を飲み込み喉を鳴らす。

 

「ふ、ふおおぉおぉ! か、カッコいいです! 何ですか今の凄まじい威力の魔法はインフェルノですか!」

「ふっ……今のはインフェルノじゃない。……ティンダーだ」

「ふあぁぁああ! か、かっこ良すぎます! 我が奥義には及ばないまでも上級魔法以上の威力はあるのでは!? それに何と言ってもさっきの台詞がカッコいいです!」

「そ、そうか? なんだか俺は小っ恥ずかしくなってきたんだが……」

「何を言うのですか! 最高にイカしてます!」

 

俺の転生特典、それは属性魔法。

初級魔法にある火『ティンダー』、水『クリエイト・ウォーター』、土『クリエイト・アース』、風『ウィンドブレス』、それと氷結魔法『フリーズ』。

もちろんただの初級魔法じゃない、というか初級魔法と名前が同じなだけで、実は別物。

ただその魔法は初級魔法かそこらの魔力で上級魔法――呪われた魔法や爆発系魔法には劣るものの、トップの魔法使いレベルの魔法――に匹敵する威力を出せるとのこと。

実際めぐみんの評価的にその通りなんだろう。

 

でも褒められたせいか、それとも中二病が恥ずかしくなったからか。

どちらかはわからないが顔があっつくなってきた。

だがそうもしてられなかった。

俺の魔法の音で目を覚ましたのか、向こうの方からジャイアントトードが数体新たに湧いてきた。

俺は次の魔法を放とうと手を前に構えたが、それはめぐみんの手によって阻止される。

 

「ふっふっふ。久しぶりにいいものを見せてもらいましたよ。今度はお礼に私がとびきりの魔法であのカエルに食らわしてあげましょう!」

「というと……爆裂魔法か」

「ええ。我が究極の奥義、カエル如きにはもったいないかもしれませんが、カズマに改めて見せるためにも標的となってもらいましょう」

 

めぐみんが詠唱を始める。

その間にもカエルはこちらに迫ってくる。

時間にして、こっちに辿り着くのは数十秒先のことだが、ズシンズシンと地面をならしてくるので少しばかり心臓の鼓動が早まる。

しかし、10秒ほどたった頃だろうか。

めぐみんの周囲の空気がビリビリと震えだし、放電現象のような白い光の筋が消えては現れ、尋常ではない気配がそこにはあった。

やっぱりあのときの魔法の使い手はコイツだ。

疑っていたわけではないが、改めてその非日常的な緊張感がそう思わせてくる。

 

「見ていてください。これが人類最大威力の攻撃手段です――『エクスプロージョン』ッッ!!」

 

杖の先が白く光る。

その瞬間に膨大なエネルギーがギュッと凝縮したような目映い光が顕現した。

その光が赤い瞳に映り、その紅色を鮮やかに照らした。

 

世界から赤と白以外がなくなる。

音は轟音にかき消され、肌は熱に当てられ……

魔法の効果が消失してようやく自分がどこにいたかを思い出す。

それほど凄まじい魔法が、今回はほとんど目の前に現れて、気がつけばそこにいたはずのカエルも地面も悉く消失していた。

 

「す、すっげー。これが爆裂魔法か……」

 

異世界に来て初めて見た人の魔法、それが俺にとってはこの魔法、爆裂魔法だったんだ。

それを間近で見られて感動に打ち震えていたが、先ほどまで爆裂魔法のこととなると口が達者だっためぐみんの声が聞こえない。

自分が放った魔法の余波を受けて恍惚としているのかと思いめぐみんがいたところをみると、そこには誰もいなかった。

 

いや、違う。

そこには誰かはいた。

ただ、巨大すぎるが故にそこにいるとは認識できなかった。

……認識、したくもなかった。

 

爆裂魔法の爆音によって目覚めたのだろう。

しかも時期は春先。

冬眠から覚めるカエルが爆裂魔法の熱風によってどんどん目覚めていって……

俺は必死に抵抗した。

食われてるめぐみんをそっちのけで一先ずは自分が助かること優先して魔法を放ちまくった。

……同じ轍は二度と踏まないって、そう意気込んだのになぁ。

 

「……カエルって、よく見ればかわいいと思うんだ……ヘプッ」

 

俺の視界は真っ白だったのが一変、真っ暗になるのだった。

 

 

「お、お前まで食われてんじゃねええぇぇええッッ!!」

 

 

誰かの叫び声が聞こえた気がした。




<<同じレベルに至らない者はパーティー内から浮き、それ即ち崩壊を意味する。
めぐみんは自分の実力を最弱職と同レベルで見てたのか、それとも本当にカズマが強いと思って入ったのか、それは謎のままである……

<<今朝は何も食べてない
実は二日前から絶食中な貧乏ウィザード。

<<誰かの叫び声が聞こえた気がした。
まさか自分まで食われるとは思ってなかった。というか魔力切れになる前に短刀での攻撃に切り替えるかと思ってたら、そもそも短刀はなかった件。
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