――地下一階――
「ねえ、マジでやんの? 俺、帰りたくなってきたんだけど」
「何を心配する必要があるか。ウィズがいれば後は我が輩が適当に補助する。大体5階層あたりで俺のレベリングするぞ。それが終わったらお前の番だ」
「……不安しかない。本当にお金は倍になって返ってくるのかとか、そもそも生きて帰ってこられるのかとか……今日ほどテレポートを覚えておけばよかったって思う日はないと思う」
何やら弱気なことを言っているこっちの世界の俺。
確かに俺がわりかし安心してダンジョンに挑めたのは魔王軍幹部が二人いたからだ。
今回は魔王より強いらしいバニルは店番してていない……代わりに出動したのは俺。
今の俺はレベルリセットされてるせいもあり、そよ風程度の攻撃で死にそうな予感がするが、そんな悠長なことを言ってる暇はないマジで。
本当はバニルを連れてきたかったところだが、一緒に行動されると俺の存在が消滅しかねない。
そんなことを思いながダンジョンの奥へ進んでいるとこっちの世界の俺が騒ぎ出す。
「そもそも! こんなこと罷り通っていいのだろうか! これって犯罪だろ! 俺のことを心配してるめぐみんとダクネスが黙っちゃいないはずだ!」
「いや、その二人なら快諾してくれたぞ?」
「酒飲んでただろ! んなもん快諾じゃないわ!」
「いや、めぐみんはノンアルで酔っ払ってないし『どうぞ、ウチのカズマをよろしくお願いします。引きこもることは得意なのでダンジョン籠りにかり出してあげてください。これで脱引きこもりしてもらえれば幸いなのですが……わ、私ですか!? ええっと、わ、私は日に一度爆裂魔法を撃たないと死んでしまうので遠慮しておきますね』と言われたんで……」
「あいつは帰ったら毎日ドレインタッチの刑に処して懲らしめる! こんなダンジョンさっさと攻略してやらぁ!」
どうやらやる気になってくれたらしい。
……しっかし、この面子で一体何日で踏破できることやら。
俺の記憶が正しければ、あと数週間もしないうちに魔王城へ赴き、それで魔王討伐を成し遂げないといけない訳だが……
それまでに俺のレベルをあげておかないと城に向かう道中でも死にかけるだろうし、何なら魔王との決戦の時にその余波だけで余裕で死ねる。
加えて、こっちの世界の俺のスキルポイントを乱獲しないといざって時の手段が減って死ななくてもいい場所で死にそうな予感が……
というわけで、少々――いや、かなり手荒な誘導になったが今日から俺たちはせっせと魔物を討伐していくのだ。
「っと、俺たちの獲物がお出ましか! フハハハハハ! 雑魚のゴブリンごとき、我が輩の出る幕でもないわ! ウィズさん! カズさん! ゴブリンどもを懲らしめてやりなさい!」キリッ
「誰がカズさんだ、ゴブリンより雑魚なレベル1がいきってるんじゃねえよ! なぁにが『懲らしめてやりなさい』だ! 無理矢理俺のこと連れてきたくせに人任せにすんじゃねえ! 『フリーズ』――ッ!」
「まあまあ、暴れん坊ロードの有名な台詞ですので『フリーズガスト』――ッ! 控えおろう、こちらにおわす方をどなたと心得ますか! 私の店を救ってくださった救世主様ですよーってね」
「……意外とノリノリなんだな」
「有名な物語ですからね」
そんな暢気なことを言っているが目の前の惨状はさながらコキュートス。
まだ第一階層なのに地獄の中でも一番深い場所に位置するっていう地獄の底を見ることになろうとは。
手加減をして魔法を放ったのか大部分のゴブリンは顔を氷に埋めながらも生きながらえている。
「では制圧が完了しましたのでトドメをよろしくお願いしますね」
「了解。ン『狙撃』ッ! ン『狙撃』ッ! ン『狙撃』ッ!」
「おおっ……素晴らしい手際ですね。まさか一発の矢で数匹いっぺんに討伐してしまうなんて。狙撃のスキルを使っていましたし、かなり幸運値が高いんで……あれ? お客さんってレベル1なんでしたよね? 一体どうしてスキルを……」
「ん? ああ、普通は知らないんだよな。実はレベルリセットされてもスキルや魔法は使えるんだよ。しかもレベルが上がるごとにまた同じようにスキルポイントを獲得できる」
「へぇ! そりゃすごい!」
撒いた話に魚が食いついた。
俺はここぞとばかりに話を続ける。
「ここだけの話、俺は知り合いに頼んでレベルが上がるたびにレベルドレインしてもらって数々のスキルを手に入れた」
「ほう! ……でもそんな話聞いたことがないな。いや、アンタを疑ってるわけじゃないんだが、どうしてこんなにお手軽にスキルポイント獲得できる方法があるってのにみんな試さないんだ?」
「そりゃ、まず友好的にレベルドレインしてくれるモンスターがいないからだろ。レベルリセットのポーションもたまにしかお目にかかれない代物だ。なにより、こんな危なっかしい世界でわざわざ一度弱くなろうだなんて俺みたいなとち狂った発想をする輩はいない」
「アンタ、とち狂ってる自覚はあったんだな」
「そこ余計な口出さない」
念のためにいっておく。
俺がとち狂ってるように見えるのはそういう演技だ。
くれぐれも元々頭がおかしい爆裂娘だのと一緒にしてくれるなよ?
よしんば、俺がとち狂ってるというのであれば、それはお前自身もとち狂っているのを証明したことになるんだぞ、こっちの世界の俺よ。
「こほん。まあそういうわけで俺は絶対正規ルートじゃない方法でスキルポイントを獲得していったわけだが……してみたいか、レベルリセット」
「えっ、できんの? なんか今の流れだとレベルを下げる方法がないからできないのかと」
「幸運なことに、ここにはレベルドレインしてくれる友好的な店主さんがいらっしゃる」
「……ほえ? どうかしましたか、私をじっと見つめて……?」
消費した魔力をそこらのモンスターから吸い取り、干からびさせているリッチー。
いや、「どうしました?」じゃないんだが?
まさかとは思うが、俺がいた世界とこっちの世界とでリッチーの種族特性が変わっているだなんてことないよな!?
そんな恐ろしいことを想像してしまい身を震わせていると。
「あ、そういえば私、リッチーでした!」
「おい、まさか自分が不死王だってこと忘れてたのか」
「い、いえ、覚えてましたよ? ただ最近はよい商品を仕入れたと思ったらバニルさんに理不尽な殺人光線を浴びさせられたり、お店の経営で頭を悩ませるばかりだったもので、魔法使いとしての戦闘ならともかく馴染みのないリッチーのスキルはすっかり封印してて……」
「忘れていたと」
「で、ですが私は悪くないですよ! あのスキルは確かにレベルドレインの状態異常がありますが……」
「なんだよ、デメリットでもあるのか?」
俺が言っているレベルドレインのスキル。
それは、リッチーの固有スキル『不死王の手』だ。
その効果はレベルドレイン以外にも呪い、昏睡、魔封じ、恐慌、石化、即死……その中のいずれかの状態異常をランダムで引き起こすというもので。
「不死王の手でレベルリセット? 外れを引けば即死? おんま、何俺に危ない橋渡らそうとしてんだよ!」
「だから渡る前にこう説明してんだ。まあ、幸運値が限界突破してるお前なら大丈夫だ! 俺が生きてるのがその証拠」
「そんな運任せを人に勧めるだなんて本当にお前頭おかしいんじゃないか!?」
「えっと、それじゃやらないのか?」
「いや、やるけども! じゃんけんで負けた回数は片手で収まるこのカズマさんの幸運値をなめんなよぉお! ウィズ、ひと思いにやっちまってくれぇええ!」
「私としてはおすすめしませんよ……? どうしてもというのであれば6階層についたらやりますが……」
……ああ、悲しいかな。
こっちの俺は多大な損失のせいで恐れるものが何もないと言ってはいたが、本当に恐れを忘れてしまい狂っちまった。
正直言って、今まで転生特典の魔法を見てきた限り、レベルによって魔法の威力は変わらないのはわかっているし、ここでレベルドレインしてもいい気はする。
が、そうなると問題は魔力総量。
こっちにはドレインタッチできるやつしかいないし、なんならマナタイトもこれでもかってほどにあるが、不測の事態に備えて余裕は持つべきだろう。
俺は敵感知と回避、潜伏スキルで攻撃を避けつつ敵にとどめをひたすら刺していき……
――地下五階――
「『デッドリーバックスタッブ』……っと。またレベルあがったな!」
「……なあ、アンタ、レベルいくつだっけ?」
「たぶん10かそれくらい……あ、今また1つレベル上がった感じがしたぞ。ウィズ、そろそろレベルドレインのおかわり!」
「レベルドレインじゃなくて不死王の手ですよ!? なんで一定確率で即死が付与されるのにそんなに躊躇ないんですか!?」
「俺が思う『これが一番早いと思います』を実践してるだけだが? オーガレベルのモンスターが出てくる階層でレベル20あったところで焼け石に水だし、だったら一回の戦闘ごとにレベルドレインした方が――」
「確かにオーガの討伐推奨レベルは一桁レベルからちょっと脱した程度のところになかった気がするが、そんなやつが単身でオーガに突っ込んで一撃で仕留めてくんな自殺志願者か!」
「フーハハハハハハ! 日和ってるやついるぅ? いねえよなあ! フハハハハ! 我が輩は今絶好調も絶好調! ダンジョンの魔力がどんどん濃くなっていってるおかげで超絶絶好調である!」
物陰に隠れて気づかれない間にスッと近づいてドスッよ。
今はまだ昼なはずだが、満月の晩並みに肌もつやつや!
ダンジョン効果様々だ!
と、順調にダンジョン探索を進めていると、俺の敵感知スキルに警笛が。
「10以上いるな……オーガの群れか?」
「お二人とも下がっていてください。きっとさっきの攻撃で仲間が殺されたのに気づいて報復に来るんですよ、オーガは仲間意識が強いですからね」
「ジィー……」
「……なんだよ。何か言いたいんだったらはっきり言えよ」
「いや、『日和ってるやついる?』とか言って煽ってたやつがウィズの背中に隠れてるなって思って」
「ふっ、何とでもいうがいい。俺の得意分野は一対一のタイマン勝負。ああ、タイマンなら魔王とどっこいどっこいの勝負ができる俺だが、一対多は魔法使いの方が向いてるかなって思うんだ。ほらカズマくん、ウィズより魔力効率いいんだから魔法使って仕留めてみろよ。なんだっけか、『これはインフェルノじゃない、ティンダーだ』だとか言ってかっこつけてたカズマく――」
「あああああなんだか急に戦いたくなってきたなぁ! 『ティンダー』!」
「じゃあウィズ、今度は俺にレベルドレインしてくれ」
呆れ顔のリッチーさんだが、俺も魔王討伐に備えて持っておきたいスキルがある。
なんせアクアがいない戦いになるんだ。
回復魔法やら強化魔法やら、それから今の俺ならたぶん覚えられるであろうあの魔法とか……まあとにかく聖職者系の魔法がほしい。
万が一、実体のないアンデッドモンスターと戦闘になったら遠距離攻撃で仕留めたいが、そんな手段は今のところめぐみんの爆裂魔法しかないからな。
そんなレベルドレイン中で動けないウィズを知ってか知らずか、一心不乱にオークがいる方向へ魔法を放つ勇者様。
きっと魔法をチートに持ったせいで古き病が再発したんだな。
俺も若いときにはそういう時期があった。
庭に誰もいないことを確認して、俺の中に秘められた力が覚醒しないかどうかこっそりオリジナル魔法の練習をしてたもんだ。
だって異世界に転生した勇者なんだぜ?
そりゃ、自分に特殊な能力の一つや二つあるって信じたいだろ。
まあ、なかったんですがね、ははっ。
と、そんなことをしている間に魔法の乱射が終わったようで、地面に突っ伏す冒険者が一名。
「流石、カズマさんですね。今まで数多くの強敵を相手にしてきただけありま――ええっ死んでる!?」
「勝手に人を殺すな!」
「……魔力切れでしたか。生きてて安心しました」
「くっ、俺のレベルが低いばっかりに……情けないぜ」
「体力も使い切ったのかよ……今ドレインタッチしにいくからおとなしくしてろよー」
「早めにお願いしまーす」
土に顔を埋めて何か情けないだとかレベルのせいだとか言っているが、俺の魔力ってレベル上げてもそこまで上がんなかった気が……
まあ、そんな野暮ったいことを言うほど俺はばかじゃない。
いつまでも突っ伏してちゃかっこ悪いし、起こしてやるために魔力補充のドレインタッチしに行こうかと近づいた……そのときだった。
「ああっ! 新手のモンスターがカズマさんの方に! あれは……ミノタウロス!? どうしてこんな浅い階層に!?」
「えっ、何? 俺のそばで何か起こってんの?」
「カズマ! 敵がお前のそばにポップしたぞ! 潜伏だ! 俺は地面に隠れるからお前も地面に、窪みがあるそこに隠れてスキルを使うんだ!」
「……俺の奥義であるダークフレイムはその絶大な威力故に消費魔力もまた絶大……要約すると、限界を超えた魔力を使ったので、身動き一つとれません」
「……うん、知ってた」
「近くからモンスターが湧いて出てくるとか予想外です。やばいです。食われます。すみません、ちょっと助けて――」
蒸気機関車のごとく力強く、荒々しく鼻息をフシューと吹き出す黒黒としたモンスターがポップした。
後で思えばだが、あのときのダンジョンの魔力――転生特典の魔法をマシンガンがごとく乱射し、消え失せた大量のモンスターの魔力がひとまとまりになったせいで魔力密度が高くなって魔力だまりが形成されていた。
正直俺も詳しいわけじゃないが、エネルギーは質量に変換できるあの有名な法則は魔力においても適応されるらしい。
「ウィズ! 何か魔法は!」
「『パラライズ』! ……レジストされッ!? レベルが高い!?」
「じゃあ別の魔法だ! そうだ、攻撃魔法は……」
「駄目です! 近すぎて撃ったらカズマさんにも……!」
「幸運値だけは人並み以上だ! 多分当たらないから撃て!」
「い、いや無理です! に、逃げてください!」
「……まだ魔力が体力がぁ」
ウィズの状態異常も攻撃魔法も使えない……俺がなんとかするしかないってことだ。
俺、レベル1何だが?
魔王軍幹部の攻撃をレジストするような化けもんと戦いたくないんだが!?
ヒィッ、こっち睨んだ怖ッ!
――それでも刻一刻と迫る命の危機。
すくんだ俺を見て脅威じゃないと思ったのか、背を向けて獲物に狙いを定め始めるミノタウロス。
本当は逃げたいくらいに怖いけども……
はぁ……いくら怖いからって俺以上にビビって、念のために渡したマナタイト全部使ってまで全力で魔法放ちまくるなよな。
まったく、しょーがねえなあ……!
「ウィズ、俺がなんとか引きつける。タイミングを見て撃て」
「い、一体何を……?」
本当はデッドリーバックスタッブ――敵に気づかれないで背後から刃で攻撃すると一定確率で即死たらしめる、一撃必殺の暗殺スキルで仕留めたいが今の俺はレベル1。
切りつけてもあの分厚い皮膚を薄皮一枚程度も破れない、ダメージを与えられない時点で無意味だ。
どうすればいいのだろうと焦る俺の内心を知ってかニタリと嘲笑う牛野郎。
魔力と体格とで格下だと見抜いて敵に値しないと見下し慢心している目だ。
そこに、勝機はある。
「ふは、ふはは、ふはははははは! 道具をぶん回すことしか能がないお前にとっておきのプレゼントをしてやろう!」
「なっ! 無策に突っ込む気ですか!? だめです! あの一撃を受けたら――!」
ウィズの心配そうな声が聞こえる。
正直、アドレナリンかなんかがドッパドパと放出されてるせいで恐怖心など感じない。
むしろ戦いに対して高揚感のようなものさえ覚える。
これが俺の冒険! 俺はなりたい――英雄に!
……いけない、これはいけない傾向だ。
興奮とは冷静から最もかけ離れている、計画を正常な判断のもと練り上げる上で最も忌むべき状態だ。
だが、おかげで震えはない。
正確に、遅れなく、頭に描いたままに動作できる。
ミノタウロスが頭上に振りかぶった巨大な鉄の塊。
大剣のつもりだろうか、得意げに、試し切りでもするように鈍く振り下ろす。
こんなのを食らっただけでも俺はきっと木っ端みじんにされるに違いない。
が、受けるわけない。
回避スキルが発動する。
流水のようにしなやかに、それでいて爆破的に体が加速してレベルを凌駕した動きで剛鉄をすり抜ける。
そんな予想外の動きに目を開くも、驚きで体は硬直し、勢いづいた腕の勢いは止まらず、地面へと突き刺さる。
その掛けられた橋を伝い、鋼鉄を思わせる皮膚を一切まとわない見開かれた丸い場所へ名もなき短刀が導かれ突き刺さる。
そのまま刃は捻られ……
「ファイアボルト……ッ!!」
「あの魔法、詠唱していない!? ……レベル1では到底……マナタイトの魔力で補って……!」
「ウィズ! 今だ! 何も見えてない牛公が痛がって誰もいない方に行ったぞ!」
「は、はい! 『カースド・ライトニング』!!」
ファイアボルト(魔力過剰ティンダー)が手元で爆ぜたせいで吹き飛ばされ、皮膚が爛れる。
しかしそうなったのは憎たらしいことに俺のだけ。
あんな旨い肉して、皮膚はどうしてあんなに堅いんだよ……
だが、無駄じゃなく、炎を食らった付近……目以外にも鼻や耳の機能を奪ってやったらしい。
脅威だと察したのか俺の方向を探ろうとするも見当違いの方向へ。
それが仇となり、胸に大きな風穴を開けることになったのだった。
なかなか強かったが……俺の敵じゃなかったな。
だけどもやっぱ疲れたわ……
緊張が解けたせいで気づかなかった心身の疲労が一気に押し寄せる。
上半身だけは起こしていたがそれを維持することすら放棄し、地面に倒れ込む。
そんな俺を心配してか駆け寄る足音。
「大丈夫ですか!?」
「おう、駄目だ。早くドレインタッチでの回復を……」
「大丈夫そうでよかったです」
傷が徐々に癒えていく。
心なしか心まで癒えてる気がするのは、主に目の前に実っている母性を感じているせいなのだろうか。
そうこうしてるうちにうらやましそうな視線が。
「……さすがにお前の命の恩人にそういう目をむけるもんじゃないと思うんだが」
「別に向けてない。っていうかアンタ、レベル1に戻ってたろ? あんな無茶をして……よく生きてるな」
「今はたぶんレベル5だと思うぞ」
「そんなあっけらかんに言われても……」
「私自身、相当な修羅場をくぐってきたつもりだったのですが……ほ、本当にどんな修羅場をくぐってきたんですか?」
「魔王討伐してきた……とかかな。なんてな、フハハハハハ! さてさて、次の敵がお出ましのようだ。諸君、迎撃の準備はよろしいか! もちろん俺はできている!」
「お、おい! 待て、また一人で突っ込んでいくなっ!」
俺の背中に忘れ去られている魔道具の音は聞こえなかった。
とある作品に影響を受けて。