あの素晴らしい世界に帰るため   作:桃玉

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15.リベリオン~ありふれた職業で~

その後、仮面の力でスーパーハイテンションになっていた俺は地下六階に至るまでに爆裂魔法を習得できる以上のスキルポイントを乱獲し、レベル30に到達した。

ちょっとしたイレギュラーに遭遇したが、順調順調!

 

「皆の衆、ここから先は佐藤和真隊員が主役である。俺がモンスターをなんとかする。ウィズ隊員はカズマ隊員の護衛を頼んだ」

「レベル的に苦戦しないのか?」

「無論大丈夫だ。問題ない」

「……聞いた俺が野暮だった。そりゃな、それできるんだったらなぁ……なあウィズ」

「ええ。まさか習得困難なカースド・ネクロマンシーを覚えているのかと思って驚いちゃいました! 根本的に違う原理――信仰に基づく僧侶系の技なのは理解できましたが……それはどういった原理で?」

「企業秘密……といっておこう」

 

呆れ顔の二人が言う『それ』とは、俺の後ろにいる巨大な牛のことだろう。

俺は現在、セレスディナを無力化するためにレジーナ教に入信している……ということは、セレスディナが使っていた傀儡化の能力が俺も使えるって訳だ。

即死魔法は流石に信仰が足りないせいか加護が分割されてるせいで習得できなかったのが残念だが、傀儡化ポイントはセレスディナと分割されているだけ。

セレスディナは一人で何百体というゾンビを操って見せたこの能力――ポイントが半減してるとは言えミノタウロスの死体を一体操るくらいわけない。

 

そう、わけない……のだが。

正直言って、死体だろうとなんだろうと、操るってのは倫理的にどうなのかと思う。

だって仏さんをそういう扱いするってのはなんかだし、仮にそれが人ならなおさら傀儡化した相手の尊厳を踏みにじるような気がして……

ダンジョン探索に入る前からそういう活用法があることは知ってたが、どうにも使う気にはなれなかった……

うん、ついさっきまでの話だが。

 

いざ使ってみるとレジーナ教に入っている弊害か、仲間ならともかく復讐すべき敵を操ることに関しては罪悪感をあまり覚えなかったのだ。

何より今の俺はダンジョンの魔力と仮面のせいで『どんな手をつかおうが…………最終的に…勝てばよかろうなのだァァァァッ!!』というモード鬼畜を解放状態。

奥に進めば進むほど満ちあふれてくる全能感、疲れを知らない人類を超越したかのような錯覚をする体。

そんな状態では倫理観など道端の石に等しいのだ。

 

「行け! 下層でも通じるだろうその膂力、遺憾なく示すのだ!」

「うわー、流石鬼畜仮面、心強いなー……」

「心から『うわー』って言うのやめてくれない? 心強いって言葉がフォローになってないくらい俺の心に刺さるんだが。お前のために全力振り絞ってるんだから少しくらい労ってくれてもいいんだぞ?」

「いや、うん……はい、ありがとうございます」

 

強そうなやつをウィズに倒してもらって仲間に引き入れを繰り返していたら、ついには何十体という大所帯になってきたし、ダンジョンのモンスターも同胞だとわかっているのか本来の力を出し切れていない感じがするが……

ダンジョンのモンスターはダンジョンマスターが生み出した資源だ。

つまりダンジョン産の魔物は意思があるように振る舞っているだけの存在……なはず。

だから俺は資源の無駄遣いをしないよう、どんどん仲間を増やしていき消耗した肉塊はドレインタッチで最後の最後まで使い切る、これぞエコ。

そんなクリーンエネルギーの権化となった俺と他二人の隊員との距離は心なしか遠い気がする。

 

「……な、なんだよ! 俺だって罪悪感くらい感じてるよ! その罪悪感打ち消すように振る舞ってるだけだから本当にドン引きした目で見ないでくれ!」

「いや、本当にそんな目で見てたわけじゃ……」

チーン

「ほーれみたことか! なんだ、俺が後ろで指示してるだけだから冷酷な感じに映ってるのか!?」

「そ、そりゃそうだけど……ま、まあ、俺はドン引きした目だったかもしれないが、ウィズは違うだろ? な?」

「え、ええ……」

チーン

「嘘ばっかり! あれか、狙撃でモンスターの間を縫うような巧みな弓技術で毒矢をぶち込むだけじゃ満足しないってか!? ならばよろしい! 俺も前に出てやる! 俺の怒りと悲しみの鎮魂歌を食らいやがれぇッ!」

「あっ、おい!」

 

敵感知スキルが警笛を鳴らす方へ走り出す。

千里眼スキルが十数体の二足歩行モンスターを捉えるが、向こうには俺の気配を気取られていない。

俺は傀儡にしているミノタウロスの陰に潜伏。

でかいコイツを囮にして接近し、気をとられてる間に背後へと回り込み、デッドリーバックスタッブで命を刈り取る。

 

「フハハハハハハ! でっけぇゴブリンの群れよ、我が輩の糧となるがいい!」

 

と、そのまま流れるようにクリエイトアースとウインドブレスの目潰しコンボをまき散らす。

目が見えない状態でバランスをとりにくいだろうソイツらにクリエイトウォーターとフリーズをお見舞いして転倒させる。

からの倒れたソイツらの顔面にもクリエイトウォーターとフリーズを食らわせ呼吸を封じる。

後ろからウィズたちが来るのを確認し、これにて殲滅完了と格好をつけようとして――

 

「オマエ……ダレダ……! バニル様ジャ、ナイ……!」

「むむ、まだまだ骨のあるやつがおったわ! あと、俺のことをあのヘンテコ悪魔と間違えるなよ、流石に失礼だぞ」

「……ナンダ、コノ土塊ハ……ッ」

 

炎魔法を使って溶かそうとするちょいと元気なモンスターにはドレインタッチで俺の魔力を補填。

そして、自力で氷を破ったコイツには、大量に買ったポーションの中に『お買い上げ、ありがとうございまーす!』という紙とともに紛れていた迷惑な紅魔の魔道具職人特製爆発ポーションをクリエイトアースゴーレムで創造したゴーレムに搭載し、ティンダーで点火。

 

「バニル人形(仮)、なんちゃって! フーハハハハ! 気分爽快であるな!」

「えっぐい! 流石鬼畜仮面……やることなすことがえげつないわー」

「お前がやれって、そういう反応するからやって――ていうか、そう言いつつしっかりトドメ刺している冒険者さんに言われたくない」

 

俺は、こっちに追いついて早々、弱っているモンスターに魔法やスキルを容赦なく振るう鬼畜にそう返すのだった。

 

 

 

 

そんなこんなで俺がモンスターを使役し肉壁を作り、敵の動きを弱らせたところにチート魔法、そこにウィズの援護もあり順調に進んでいった。

躾のなっていない地獄ネロイドとその飼い主に感動の再会をさせてあげたり、ウィズが俺と同じようにモンスターの死体を使役し始めたり……

まあ、いろいろあったが無事最終階層である地下二十階に到着し――

 

「よもやここまで到達するものが現れようとは! 我がダンジョンを攻略し、ここまで来れたことは褒めてやろう。さあ、ここまで来た汝らの力! アンデッドの王にして永遠の命を持つ存在、ヴァンパイアの真祖にして千年の時を経た、この……この…………」

「あらあら、リッチを差し置いていつからバンパイアがアンデッドの王になったのでしょう。本当に、ここまで来るのに苦労しましたよ。うふふ……」

「ふはははは! いやいや全く、よくもまあこれだけ大仰なダンジョンを作ってくれたものだな! たかだか一度の人生しか送っていないひよっこが、随分と大きく出たものだ、ふはははははは!」

 

仰々しい扉を開いてみると、そこには挑戦者を待ち構えていらっしゃったラスボス殿が。

そんな堂々と待ち構えてらっしゃった吸血鬼の真祖は、リッチーと正体不明の仮面、それから大勢の魔物に取り囲まれ、ピクピクと引きつらせながらも、必死に笑みを浮かべて――

 

「あの、今お茶を入れますから、ま、まずはご用件からお伺いしましょう……か……?」

 

なんだか気の毒になってきた。

そんな俺の思いとは真逆に、貧乏な店主さんと無一文の冒険者はボスの後ろにある宝の山を見て目を輝かせている。

 

「うぉぉおおっ!! クリスから教えてもらった宝感知スキルがビンビンに反応しまくってる! これも……あれも! マジか! これが半分俺のものだって!? ほ、本当にもらっちゃっていいのか……?」

「『オール・アプレイザル・マジックアイテム』……うふふ、これはこれは魔法の威力が上昇する指輪……こ、こちらも相当なマジックアイテム! ほ、ほとんどお客さんのお手柄なのに私が半分もらってもいいのでしょうか!」

「宝に目がくらみし侵入者の方々、一応それは私のものなので――いや何でもないですごめんなさい」

 

守銭奴どもに睨みをきかせられ縮こまるラスボス。

いや、うん、正直申し訳ないとは思っている。

だって使役してるモンスターの死体――フェンリルやらドラゴンやら超強力なモンスターで構成されてるばかりか、そのトップは不死の王。

一対一でいい勝負なのに、圧倒的数の暴力に震えるしかない吸血鬼の真祖には涙を禁じ得ない。

まあ、こうなるように仕組んだ俺が他人事のように言うのも何だが。

金に目がくらみ、そんなことを考えているとは知らない二人が。

 

「ウィズ、流石に使役してるやつら使っても一回じゃ持ちきれないぞ」

「そうですね、少なくても3回以上は往復しなければ……ああっ、ですがこの魔道具も素晴らしいし、こちらも……」

「いや、なんか便利な魔法ないのか? 収納魔法とか、あと転移魔法があったろ。あれで往復すれば全部持ってけるんじゃないか?」

「なるほど、確かにそうすれば……あっ、ですがカズマさん、私のテレポートの登録地点はもうすでに3つとも埋まってまして……」

 

全部持って行かれるんじゃないかって冷や汗が止まらない吸血鬼の人だったが、ウィズの言葉を聞いて顔色が良くなる。

しかし残念かな、こっちの俺が妙案を思いついたのかニヤリと笑う。

 

「なぁに、心配するなよウィズ」

「その口ぶり……何か案があるんですね?」

「ああ、とっておきがな。……俺の職業は冒険者だが、まだテレポートを覚えていない。そして、幸いにもここにはテレポートを習得している先生がいらっしゃる」

「……ッ! つ、つまり……そういうことですか!」

「ああ、察しがついたみたいだなウィズ君、いや、先生……俺にテレポートを教えてください!」

「もちろんです!」

 

泣き崩れるアンデッド。

仕方ない……ことだったんだ。

ここでテレポートを覚えてもらわないと、魔王と戦う際にダンジョンにテレポートできない……

つまり、俺が辿ってきた筋道から外れてしまう。

別に魔王城で魔王を討伐すればいいと思うんだが、それが確実にできるかどうかは定かじゃない。

万が一に備えて、特にテレポートはしっかり覚えてもらう必要があったんだ。

強盗されている嘆きのヴァンパイアの肩に、俺はそっと手を置き、深く同情した。

 

それはそれとして、ダクネスのお土産の鎧は強奪させてもらう。

 

 

 

 


 

 

 

 

長い戦いだった……

こんな絶望しかない場所で、俺は何を望んでいる?

生きて帰ること、家へ。

そんな思いがついに叶うときが来たんだ。

 

と、大げさに言ってみたが、実際はたったの二日程度しかかからなかった短い旅路。

もしかしなくても先駆者がいて、その最短ルートをなぞったんじゃないかって思えるほどの早さ。

……俺が聞いてた話はお宝とステータスアップだけで、未踏派のダンジョンをリアルタイムアタックするって話は聞いてないんだが?

 

まあともかく。

テレポートを習得することができた俺は、あのダンジョンの最奥をテレポート地点に登録し、無事帰還。

日の光を浴びることができた喜びに感激しながら自宅まで歩き、扉を開ける。

たった二日なのに久しぶりに感じるその家の空気を吸い込み、俺は声を発するのだった。

 

「ただまー」

「おや、もう帰ってきたのですね? お帰りなさいかじゅイタタタっ!? 帰ってきて早々なんですか、ほ、ほおつねらないでください!」

「しらばっくれんなよ!? お前が唯一のストッパーだったのになんで俺のダンジョン送りに同意しやがった! そもそもどうしてそんな二日も失踪していたやつのことを平然と迎えられるんだよ! 少しくらい心配しろよ!」

「い、いつまでも引きこもってばかりのカズマが悪いのですよ! それに心配しろと言われましても、流石に魔王軍幹部とそれに並ぶだろう人物が護衛と聞きました。これのどこに不安を覚える必要があろうか」

「あるだろ! そもそも普通は魔王軍幹部と一緒って時点で不安だろ……ウィズだから良かったけど仮面の人と一緒は不安だろ! 『ドレインタッチ』!」

「ほわぁああああっっ!? 力がぁ……!」

 

ヒリヒリする頬をさすりながら言い訳をするロリ魔法使いに追撃のドレインタッチ。

悪びれないこいつには後で泣いて謝るまで毎日これを続けてやろうと心に誓った。

そんなやりとりを玄関でしていると、後ろから声が。

 

「仲睦まじいことこの上ない冒険者よ、お届け物に来たんだが……荷物はここでいいか?」

「おう、助かる。ていうかお前、テレポート覚えてるんだったら最初からそう言ってくれよ。そうすれば別に俺が時間をかけて覚えなくてもよかっただろうに」

「わざわざ登録地点を消去して、あの場所を登録してるといっても同じこと言えるのか?」

「えっ、それは本当にありが――」

「まあ嘘だけど。もともとあの場所は登録してあったし」

「嘘か……いやちょっと待て、今元々あの場所を登録してたって言ったk」

「ふわはははは! もう一度往復してくるからそこに置いてあるものをさっさと片付けておいてくれー! ではな、ふは、ふははははは!」

「ちょ、笑ってごまかすな」

 

あの仮面は人をおちょくらないと死んでしまう性分なのだろうか。

そんな、1日1回爆裂魔法を撃たないと死んでしまう紅魔族並みの理由ではないだろうが。

とりあえず俺は仕方なしに、黒い鎧やらで足の踏み場のない玄関を片付け始めるのだった。

 

「ところで、いつ魔王討伐に行く?」

「なんだよそれ、俺そんな約束してな――」

チーン

 

本当はお前の都合がいいときになるように魔改造した魔道具だろ……なあ?

そうだと言ってくれ!

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