セレスディナを無力化して、ダンジョンでレベリングとスキルポイントの乱獲をして……
全部順調だった。
最初はトラブルメーカーで幸運値が最悪で、ことあるごとに借金をこさえてくる駄女神で……そんないつも俺に泣きついてくるアクアがいないおかげで、順風満帆なんだって思ってた。
でも、今更ながらに思う。
アクアがいたからこそ……
ダンジョンを攻略後しばらくして。
いよいよ俺たちは旅立つ、魔王を倒し世界に平和をもたらすため。
俺は先駆者としてコイツらを導かないといけない。
だから俺は、今日も今日とて説得に励んでいた。
「……これから、魔王討伐の旅に行きます」
「行きません」
「行きます」
「行きません」
「行きます!!」
「行きません!! いい加減しつこいぞ! このやりとりもう何回した!」
「なんだよ、まだ2週間も経ってないぞ……というか今日は出発予定日だろうが! お前の仲間はもう準備万端なのに、どうしてお前だけはそう意固地なんだ! 外にいるヤツら見ろよ! お前以外はあんなにやる気なんだぞ!」
杖を高らかに掲げているめぐみんは、
「ふふふ……我が名はめぐみん。紅魔族随一の魔法の使い手にして最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操りし者……我が最強魔法の前には魔王などそこらの塵芥と同然。そして語り継がれる我が英雄譚……。始まりは『魔王城の結界をどうするか。そう聞かれた最強の魔法使いは無言で杖を構え、爆裂魔法で魔王諸共城を消し飛ばし――」
などと気持ちの高ぶりを押さえられず独り言がうるさく、今にも爆裂魔法を放ちそうな勢い。
まあ、俺が魔王城の結界をどうするかの作戦を教えたらこうなったんだが。
そして漆黒の鎧を撫でるように触っているダクネスは、
「カズマからの……ふふっ。これが噂に聞いていたツンデレか……! いつもであれば重い攻撃を受けたいと願うのだが、今日は何故だか同時に無性に敵をなぎ倒したい衝動が……。そうだ! 貴族は民を守るのが義務だというが、攻撃は最大の防御だとか聞いたことがある! であれば、魔王なら我が敵に不足なし!」
と、王国の貴族としての義務とかうんぬんかんぬんを大義名分に、鎧の副作用で猪突猛進に。
うん、あのダンジョンで見つけてきた鎧――クルセイダー専用の鎧だし、その防御力や敵を恐れない効果は戦う上でめちゃ有能なんだがなぁ……
いかんせん、うちの脳筋お嬢様はもともと敵を恐れない。
それどころか筋金入りのドMで嬉々としてモンスターに突撃していくから、その効果が上乗せされればどうなるかは想像に難くない。
「こんなパーティーメンバーが乗り気な状況。どうして一人だけ行かない選択肢があろうかいやない! 行くぞ!」
「行きませんったら行きません! どうして俺がそんな危険なことしなきゃならないんだ!」
「理由は言っただろ、魔王軍が王都とアクセルの街に攻めてくる。だから魔王城が手薄になる。その機会を狙って魔王を倒せば世界は平和、お前は英雄、ちやほや祭り!」
「だからって行かないよ!? 普通に行かないよ!? 俺のことなんだと思ってんだ! ちやほやされたい人生だけどそこまで危険なことまでしたくないわ!」
「えー……ついでにエリス様が『魔王のせいで人類がヤバい』的なこと言ってたし……な、行こうぜ?」
「あー! 聞こえなーい聞こえな……今なんか重要なこと言った気がするけどそういうのついで扱いすんなよ! それにそういうのは多分王都で活躍してるっていう魔剣使いの人がなんとかしてくれるって! 確か名前は……」
「ミロロギ」
「そうそれ! きっとミロロギさんがなんとかしてくれるって!」
正しい名前を覚えられてない魔剣の勇者には同情するが、まあ、アクアがいないせいで接点があんまりなかったからなぁ……
というか今思ったんだが、ミツルギってアクアを追いかけてそのまま魔王討伐に乗り込んだ主犯だよな?
アクアはどうせ魔王城を目前にして「や、やっぱりカズマさんたちを待った方がいいと思うの。女神の勘がここで待たないとカズマさんのお折檻が過激かつ酷く長いものになるって囁いてるの」とかビビって言い出すに決まってる。
この世界の魔王討伐して元の世界に帰ったらアクアの説教はそこそこに、アイツに必ずドロップキックを食らわせる……そう心に誓った。
「いや、でも待てよ? 確か王都の冒険者各員には魔王軍との戦いに参加してほしいって連絡がいってるはずで、そうするとアイツは自主的に魔王討伐には乗り出さないのか」
「そんなこと言ったって俺は魔王城には行かないぞ。行くとしてもアイリスを守るために王都へだ。まあ、ソイツが王都に残るっていうんだから、アイリスの代わりにしっかり前線で活躍してくれることだろう。うん、アイリスの兄として褒めてつかわす!」
……なんか不穏な匂いが漂ってきたぞ。
転生特典をしっかりもらったこっちの世界の俺なら、ワンチャンミツルギがいなくても魔王をどうにかできそうだが、ミツルギだけじゃなくアクアまでいないとなると苦しい戦いになりそうな予感がする。
特にダクネス。
いくらダンジョンから持ってきたクルセイダー専用の鎧があるとはいえ、支援魔法と回復魔法のプロはいない。
普通のアークプリーストとでも比べることなんかおこがましいレベルの俺がなんとかしなきゃいけなって考えると、積極的な戦闘や長期戦は避けたいところ。
今後の具体的な行動を考えて思わず頭を抱えてくなるが、とりあえず今すべきは目の前の俺を魔王城へ誘導すること。
俺は自分の妹に思いを馳せてニヤニヤしている冒険者に誘惑の言葉を吐く。
「なあ、自分の妹、めちゃくちゃ大切に思ってるんだろ? だったらなおさら魔王城へ行くべきだ」
「どうしてだよ」
「魔王の力で魔族やらモンスターは通常より力を増しているんだ。だからお前が魔王を倒せば王都での戦いも勝率がぐっと上がる……っていうのは建前で」
「建前で!?」
「魔王倒したらアイリスにめちゃくちゃ尊敬されると思う」
「だ、だとしてら行きますん!」
「葛藤して言葉おかしくなってるぞ。……そんな悩める子羊には今ここだけの出血大サービス! サキュバスサービスのプレミアチケットがここに一枚二枚三枚……」
「あああああっ! 俺のことを誘惑するなぁあ! 確かに魅力的だが俺はこれからめぐみんに夜這いされるって予言されたことを忘れてないぞ!」
「残念だったな! それは俺が毎晩お前を説得するために張り込んでたせいでなくなったわ!」
「おま! 何してくれちゃってんの! 俺のまだかまだかと待ち望んでた甘酸っぱい夜を返せよ!!」
「フハハハハハハ! 本来は魔王城に行く前日に、あのロリっ娘が『今回の旅は、今までのどんな旅より危険なものになるでしょう。なので……。お互い、後悔がないようにしておきましょう』とやってくる訳だったのだが……。フワハハハハ! 滑稽かな滑稽かな! まさか己の意地でそのような展開を潰してしまうとは! しかもその後ダクネスもひっそりと隠れて――」
「ぬぐぅぉおおおおおおあああああっっ!!」
「ちょ、俺の仮面を引っぺがそうとするんじゃない! ほ、本当にやめろ! からかいすぎたことは謝る、悪かったから、きっと魔王討伐後にそういう展開はあるはずから今回は諦めろ!」
「ち、ちくしょーッ! 何が世界平和だ!」
我ながら本当に頑なな……どうしてもっと素直に人の話を聞き入れてくれるような人間に育たなかったんだ!
もっと世界平和を心から願う優しき心の持ち主になりたかった……
なんて後悔しても今の自分の性格もこんなんだし、むしろこれが自分なんだと受け入れて前向きに付き合っている。
そんな性格なもんで、何を働きかけても危険に身を投じるだなんて自らするわけないってことは自分自身がよーくわかってる。
仲間がなんかやらかして、それで俺が巻き込まれて、嫌でもなんとかしなきゃならなくなったときに、ようやく危険な賭に踏み切って……
そんで、持ち前の幸運値でサイコロの目を乱数調節してなんとかギリギリの勝負に勝ってきたわけだ。
「今まで散々強敵と戦ってきただろ。今更魔王が何だ! たまには世界平和を願って戦っていたんだとか言ってみたいだろ!」
「このバカチンが! 元からおかしい頭がさらにおかしくなったか!」
「知ってるか? 馬鹿っていった方が馬鹿なんだぞ?」
「お前ほど馬鹿じゃありません! 確かに今までたくさんの強敵を葬り去ってきたパーティー代表のカズマさんだが、流石に魔王は行くか! というか今までのは単純に巻き込まれただけだし、わざわざ自分から厄介ごとに首を突っ込みにいくほどの馬鹿に成り下がった覚えはない!」
「いやいやいや! 確かに危険なことをしないってのはいいことだと思うが、何のために街の冒険者からスキルや魔法を教えてもらった!」
「生活水準を上げるためだけど」
「そうだ、生活水準を下げる要因である魔王をしばきにいくためだ! てか、真面目な話、今のお前のチートとスキルがあれば割と魔王討伐できると思うんだ。マジで」
「いや、ほんと勘弁してください……」
……やっぱり駄目そうか。
今日までいろいろ考えて行動してきたつもりだが、やっぱり何か強いきっかけがないと俺は動かない。
具体的にはアクアとか。
「はぁ…………仕方ない、か」
「おっ、なんか諦めてくれる感じか? そうだそうだ、俺はどんな誘惑にも抗える強靱な精神力を持つ男カズマさんだ。ここは大人しく引き下がって……」
「この手だけは使いたくなかったんだがな」
「この手って?」
「いや、何でもない。それより、このチケットは結局用済みになっちまったし、お前にくれてやるよ」
「えっ、マジで?」
「おう、マジマジ。どうせ俺は使わない……というか使えないしな。だから感謝して受けとっとけ」
「あ、あざっす……何か心苦しいけど、そういうことなら……あ、れ……」
「心苦しいのは俺の方だよ。ごめんな」
「何……を…………」
傀儡化。
レジーナ教に感謝をした者は傀儡となってしまう。
ダンジョン内でモンスターの死体を操った時はそこまで罪悪感がなかったはずなのに、やっぱり仲間というか、生きているやつっていうか……
この仮面をつけていると倫理観やらなんやらがあふれ出る全能感で薄れて、悪魔的な思考に陥りがちになっている感覚があったが、流石にまだ俺の中の良心は健在だったようだ。
別に恨んでくれたって構わない。
むしろその方が俺自身楽な気がする。
薄れゆく自我、それでもまぶたを閉じまいと抗っている中、外の方からめぐみんとダクネスが早く行こうと催促する声が聞こえてくる。
「先に行ってしまいますよ? 私は魔王を討伐した希代の天才魔法使いとして名を馳せますが、一緒についてこなくて大丈夫ですか?」
「なあ、本当にそろそろ出発しないか? 足の手配は済んでいるのだ。一度王都へテレポートして、そこから魔王城へ行こうとしてたんだが、仮面の人がアルカンレティアに寄りたいと……。そうだな、英気を養ってから行くのも悪くはないだろう。一度温泉に入ってから……その……」
「おやおやぁ? 一体何を考えて顔を赤くしてるのですかねぇ? おおよそ日頃の礼だとか言って背中を流し、そのまま流れでえっちいことをするつもりでしょう? 卑猥ですよ!」
「ひひひ卑猥ではない! というかそういうことを言うめぐみんこそ簡単にそういう思考にたどり着くということは、自分こそそういうことをしようとして――おい、耳を塞ぐな!」
……よく英雄は色を好むだとか、戦いの前後は人間の本能が刺激されて発情するだとか、戦国時代の衆道だとかは聞くが、お外の二人はお盛んなようである。
薄れゆく意識の中、そんな二人の会話を聞いていたのか……
「そう……なのか、仮面の、人が…………」
「い、いや、何か勘違いしてるみたいだが俺は何もしてないぞ? アルカンレティア行こうっていったのはゼスタのおっさんにスキルを教えてもらうためで……」
「ふっ、これが、ツン……デレか…………俺、行くよ……アルカンに」
「ちょっと待て! い、意識落とさないでくれ! か、傀儡化解除……は感謝し終わらないとできないんだった! こんなの想定外だぞ……よ、よし、とりあえず命じる! お前は魔王討伐しに行け!」
「イエス、ユアハイネス!」
「ノリが軽い!? なあ、わかってんのか? 最終的には魔王城に行くんだからな? テレポート覚えたからってお楽しみの後に逃げようとすんなよ?」
「うん、マジで感謝してる。だから行こう! アルカンレティア!」
「わ、わかってるんだよな? アルカンレティアじゃなくて魔王城だからな? アルカンレティアは中継地点だからな!?」
「混浴風呂に、俺は入る!!」
「なあ、答えになってないぞ? 俺と会話してくれない?」
……これ、傀儡化しなくてもよかったんじゃね?
こうして、なんだかうまくいったようで微妙な傀儡化を俺自身に施し、魔王城への旅が始まったのだが――
「つーん」
「いや、あの、アクア……さん。どうしてそんなにいじけていらっしゃって?」
「自分の胸に手を当てて考えなさいな」
「いや、まあうん。いろいろ倫理的にグレーなところ攻めたけど、お帰りの一つもないと、その……な?」
「…………モンスターだけじゃなく自分自身をも傀儡化したド畜生のサトウカズマさん、おかーりなさい」
「間違っちゃない……ないんだけども! もうちょいなんとかならないかな!?」
「名誉アクシズ教に任命したのにレジーナ教に転身した裏切り者のカズマにはこれくらいが丁度いいと思うの」
というわけで、仮面の人こと佐藤和真は……
リセットのポーションの効果、果敢にも挑んだダンジョンの成果、その全てをリセット致しました。
「いーやいやいや! こんなのおかしいだろ! そもそも悪質教なんて入った覚えないし、なんで俺リセットされてるんだよ!」
「きっと、それもこれもアクシズ教を信じなかったせいよ。邪神の力を得たその代償を支払うことになったのね……って今私の教団のこと何て言っ――」
「今はそんな神の怒りだとか何だとか、オカルト的な方向を考えてる場合じゃないんだよ……なあアクア、本当に今回のところは俺が悪かったってことでいいからさ、何卒迷えるカズマさんに助言を、お導きを……」
「あらあら、カズマさんカズマさん。どうしちゃったのいつになく殊勝な心がけじゃない? ……うん、ちょっとさっき私の教団について何かいってた気がしなくもないけど……きっと私の聞き違いだったのね」
「ウン、ソウダネ。アクシズ教バンザーイ。アクア様バンザーイ」(棒)
「ふふん、そう言われると悪い気はしないわね……いいわ、私が助けになったげようじゃない! ……あ、帰ったらシュワシュワ買ってくれない?」
「おう」
「貢ぎ物、忘れないでね? その対価として迷える子羊である貴方をこの女神アクアが導いて差し上げましょう……。それでそれで? 一体何のご相談かしら? シュワシュワの分は働いてあげなくもないわよ?」
さっきまで俺のことを背信者とか言ってジト目で見てたくせに……
チョロいな。
こんな単純なヤツをみてるとセレスディナ絡みのせいで疲れて摩耗した心が癒やされてく気分だ。
もちろんヒロインではなくペットって意味で。
そんなペット枠の駄女神様は腰に手を当て、全知全能なわけないのに自信満々に胸を張ってドンと叩き。
「さあ、どんなお悩みでもこの女神アクアの手にかかればちょちょいのちょいよ! なぜなら、私は知らないこと以外は天地万物森羅万象一切合切有象無象すべて知り尽くしてるもの! さあ、ダニエルさんのオススメの銘柄は……」
「それはどうでもいい」
「なんでよぉぉお!」
「俺はリセットされた理由を聞きたいんだ、今はそんな話興味ないわ!」
「どうでもいいなんてことはないで……ま、まさかとは思うけどあの私がイチオシしてるお店のお酒の情報が気にならないとでも言うの!?」
「いや、気になるけども!」
この前街中を見て回ってたら偶然見つけたあのお店。
こぢんまりとし、隠れ家的な雰囲気を感じる店内は、もうそれだけであたりの予感がするほどに最高な雰囲気だった。
その店の主人はダニエルと名乗り、ここがあの店かとさらに興奮のボルテージは爆上がり。
銘柄とかはあんまりわからないからダニエルさんにカニ鍋に合うオススメを選んでもらって――やっぱり美味かった。
そんな最高のシュワシュワを知りたくないっていったら嘘になる。
「確かにどうでもいいとかは言い過ぎたよ。正直めちゃくちゃ気になる。だからそれは後で教え――」
「でしょでしょ! なんて言ったってあそこのお店は酒樽の年季が違うもの。カズマも前に飲んだことあるでしょ? ほら、初めてアルカンレティア旅行に行ったとき、私の高級シュワシュワを飲んだって懺悔したじゃない? あれもあそこのお店で買ったのよ。帰ったら改めて買い直してもらったけれど、やっぱり別格ね。樽の香りと熟成させた深い味わいが……」
「後でって言ったろ話聞けよ! シュワシュワの話で俺のことを誘惑するな話を脱線させないでくれ……今の俺、リセットされてここに来たんだって。気になるけど今はその話題じゃないだろどう考えても!」
「ええっ!? でもでも、帰ったらみんなでおいしく飲みたいじゃない? ……これは何よりも最優先すべき重要な話よ。カズマさんの意見も聞いておいた方がいいと思ったんだけど……」
「どうせ魔王を倒した賞金で金はあるだろ。アクアのオススメを一本ずつ買って家にストックしておこうぜ」
「カズマさん太っ腹ぁ!」
本当にさっきまでのむすっとした感じはどこへやら。
俺の言葉を聞くとぱぁっと顔を輝かせ……
「おい、もしかしなくてもあの店のシュワシュワ全部買い占めようとか考えてないよな?」
「……ま、まっさかぁ!」
「考えてたろ」
目をそらし口笛を吹き始めた。
……どうしてこう何かをごまかしたくてやる口笛ってとてつもなく下手なんだろうな。
コイツ、口笛で小鳥のさえずりやるだけで稼げるレベルなのに。
そんな飲んでも飲みきれないような量を買おうとしている駄女神をジト目で見ていると。
「な、何よ! 要は私の厳選おすすめラインナップを買えばいいんでしょ! シュワシュワ選びは私に任せてちょうだい! ……とするとおつまみとお料理は何がいいかしら」
「……長くなりそうか?」
「ええ……でも任せて! 宴会の女神と勘違いされるほどにアクシズ教は宴会に命を賭けているの。アクシズ教の女神の名にかけて必ず完璧な手配をするわ!」
そう言って意気揚々とメモ帳にシュワシュワの種類だけではなく食べ物、会場のセッティング、披露する宴会芸をリストアップしていくアクア。
……やっぱりお前、シュワシュワのことしか頭にないだろ。
猫の手も借りたいと思ってアクアに協力を求めた俺が馬鹿だった。
俺は頼りにならなそうな駄女神を見てため息をつく。
仕方なしに一人でリセットの原因を見つけるために例の魔道具を見る。
それを見ると丁度魔王城へ着いた俺たちが写っている。
これから丁度魔王城へ爆裂魔法を撃ち込もうとしているアークウィザード。
一つで家が建つレベルのマナタイトを大量に消費しようとしているアホを止めようとしている冒険者とクルセイダー。
そして、めぐみんの邪魔されないように二人を押さえている俺。
そこで映像は終わっている。
ここでリセットされて、俺たちの冒険は終わったんだ。
つまり、この辺の時間帯に何か重要な情報が――冒険をやり直すことになった要因があるはず……
そう思って画面をいじって――
「………………は?」
誰かの声が漏れる。
アクアの声じゃないし、画面は動いていない…………俺の声だ。
魔道具からは誰も彼も何処も何も……全てが動いていないのにも関わらず、それは――
驚き、理解が及ばず一瞬思考が停止し、脳が理解を拒絶するほど――
あまりにも受け入れがたい事実だった。
「ア……イ…………は? ……え? 刺されっ、血、血が――」
順調に今までやってきたんだ。
それがどうしてこんな……
何かの間違いだと、そう信じたかった。
映像が動き出せばその場にいる誰かがなんとかしてくれるんじゃないかって思いたかった。
しかし、そんな俺の希望を冷たく切り捨てるかのように、その静止画像は不変。
動かない。
続きはない。
酷く無慈悲に、ただ事実を突きつける。
そこは王都。
アイリスの背後には護衛の兵士が。
その手には抜き放たれたロングソード。
刃は致命的な程に深々と……
白く輝く聖鎧を着込むも、兵士や冒険者の志気を上げるためか、頭部を露出させ。
白い首筋を突き上げた刃は空気と血液の管を裂き、支えることが困難でぐらつき。
白スーツはアイリスに手を伸ばすもその行為にもはや意味を見いだせず空を切り。
頭部に血を送る頸から溢れ出る赤。
銀色の鈍い刃を伝い滴り落ちる赤。
貫いた剣、護衛兵の目は………赤。