あの素晴らしい世界に帰るため   作:桃玉

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16.ゴーホーム~旅路の終わり~

アクセルの街及びサトウカズマ傀儡化計画の記録

 

<計画開始1日目>

今日、ターゲットであるサトウカズマがアクセルの街に帰って来た。

サトウカズマは噂を聞くところ鬼畜だのロリコンだのクズだのカスだの言われているが、今までの魔王軍幹部の消息やら何やらを辿るとアイツに行き着く。

正直取るに足らない相手だと思っていたが、魔王はアイツのシュジンコウホセイとやらを危惧してるらしい。

だから仮に魔王軍に引き入れることができなかったとしても、サトウカズマを傀儡化する。

それができなかったらば、最悪、魔王を討伐することを断念するようにホラ話を信じ込ませれば、サトウカズマという厄介な敵を無力化したってことになるから及第点だ。

 

というわけで、だ。

魔王軍の勝利に大きく関わるだろう計画を実行しようとしたんだが……

そんなときにまさかのアイツが登場した。

 

消息不明になっていた魔王軍幹部、見通す仮面の大悪魔、バニルだ。

胡散臭いし、よく悪感情を搾り取られてたから悪印象しかない。

重要な作戦を実行しようと動き始めたそのとき、信用できないし関わり合いになりたくないヤツに遭うだなんて幸先悪すぎるなと嘆きたかった。

 

まあヤツの話を聞いてみると、あたしの作戦について協力したいということだった。

だからあたしは言ってやったんだ。

「あたしが実行するからな。お前は見通す目でも使っていい案を教えてくれ」ってな。

つまり、アンタには手出しさせないと暗に言ってやったんだ。

 

だがあの悪魔はそんなことを意に介さない。

それを知って悪感情をむさぼってやろうとでも思っているのか、それとも本当に知らずか、アイツはサトウカズマたちを紹介してやるって言ってきやがった。

まじで最悪……そう思っていた。

 

なんかうまくいってしまった。

サトウカズマたちとは初対面のはずなのに、何を聞いてきたのかあたしのことをすんなりと受け入れ、パーティーメンバーの一員となってしまった。

いや、成功したってことだしいいことではあるんだが、いかんせんアイツが関わってるとなると上げて落とすだなんてこと、想像して然るべきだろう。

だが、「これからも協力してやるから、ちょっとずつ仲良くなっていこうぜ」って言われたし表面上でも仲良くしてやろうと思う。

 

……しかし眠い。

さっき、墓地の死体を掘り起こして傀儡にしてきたせいかもしれない。

もしくはあの悪魔のせいで気疲れしてるのかも。

あの胡散臭い悪魔に「あの三人だけでなく、街からも信用を得るために墓を荒らしにでも行くとしよう。遅かれ早かれ、死体を掘り起こす算段だったのだろう?」と言われ、やっぱりあたしの思考を読んでるんじゃないかと思うも、つまりそれはあたしの内心を知りつつ協力してくれてるってことで……

 

いやいやいけない。

アイツに気を許したらそれこそ終わりだ。

少なくとも明日の成功を見てからじゃないとな。

これからも警戒していかないと。

 

 

 

 

<計画開始2日目>

成功してしまった。

いや、本当にいいことなんだがなんとなく腑に落ちないというか。

何というか、バニルがアクセルの街で「仮面の人」だなんて呼ばれて、どういうわけかあんなに怪しいのにあたし以上にこの街に溶け込んでることとか。

悪魔なのにターンアンデッドをマジで使って、それであたしの引き立て役になってくれたこととか。

 

あと、あたしが「どうして協力してくれるんだ」って聞いて、アイツ、なんて返したと思う?

「我が輩はカご近所付合いを大切にする、カラススレイヤーで有名なバニルであるぞ?」だって。

魔王城であんなことやそんなことをしまくってたアイツが?

 

そんなあたしの心を読んだのか。

「人類は我が輩たち悪魔のただ飯生成機である。それにウィズの魔道具店を切り盛りするには心地よい接客態度などは最低限なくてはな。お買い上げいただいたお客様のありがとうの言葉ほど嬉しいものはない」

ほんと、胡散臭いことこの上ない。

 

あの悪魔を信用していいものかと未だに疑ってしまう。

だが、大勢の前で赤っ恥をかかされなかったし、意外に忠誠心のかけらも見えなかったバニルも魔王のことを気にかけたりしてるのだろうか?

少なくとも現状アイツの情報に嘘はないし、役に立っていることは認める。

「この調子で我が輩のことを徐々に信頼していけよ? それと、感謝も忘れずにな。最近は悪感情より感謝の念の方が好みの感情となってきたので報酬はそれを所望する」と言われたが、一生信頼はできなそうだ。

まあ、感謝するくらいは何でもないだろうし、徐々に信用くらいはしていってやろうと思う。

 

 

……

 

 

<計画開始10日目>

初めて討伐クエストらしい討伐に出かけたんだが……最悪の事態を回避できた。

マジで、マジでありがとうバニル!

まさか初心者の街にいる雑魚モンスターごときに後れをとるだなんて思わないだろ?

打撃に耐性があるって言ってもあたしのメイスが効かないだなんて思わないし、まさかあたし以外の3人がみんな飲み込まれるなんて……

 

というかアイツら何なんだよ!

カズマはまあいい。スケベであたしの胸を凝視してくる程度だ。意外と噂は当てにならないみたいだ。

でもあの魔法使いはどうして何もないところに向かって……爆裂魔法を使うなよ!

そして騎士も、どうして真っ先に自ら鎧を脱いでカエルに捕食されに行くんだよ!

あたしも捕食されそうになった危機的状況だったんだが、駆けつけてくれたバニルのおかげであたしだけは粘液まみれにならなかった。

しかも、あたしがなんとかしてくれたってみんな勘違いするように動いてくれたおかげで信頼度がすごく上がった気がする。

まあ、あのときは今まで築いてきた清楚キャラの崩壊だとか、死にそうだっていう恐怖だとか、粘液が気持ち悪いと嫌悪感だけだったが、追加で感謝しておこうと思う。

本当に感謝しかない。

 

そういえばバニルが「流石にこの展開は読めなかった……まあ無事で何よりだ。期待以上の感謝をしてるのはちょっと怖いが……。とりあえず今日は休んでおけよ」と言っていた。

でも、この前に「うまくいったときは感謝をすること」って言ってたから、それをそのまま表現してるだけだぞ?

やっぱ悪魔だし感謝され慣れてないだけだろう。

これからはしっかり思いを形にして、あの悪魔を矯正、もとい、更生させていこうと思う。

 

 

……

 

 

<計画開始21日目>

カエルの中って、微妙にぬくいんだなぁ……。 セレナ

もうカエルはやめよう、うん。

リベンジだって言って、部屋の中でゴロゴロしてるカズマを連れ出したあたしが愚かでした。

 

あたしたちのパーティーの攻撃手段はめぐみんの爆裂魔法とカズマのよくわからん魔法、それ以外はない。

だってダクネスの攻撃は当たらないし、あたしの武器は効かないし。

そんな高火力な攻撃手段のみだから、捕食されたらカエルごとお陀仏になること間違いなし、誰も助けられないというクソ仕様。

泣きたい。

そんなあたしの心情を察したのかバニルは「ま、まあ、今回の件で一気に絆が深まったように感じるぞ? そう気に病まないで」なんて言い出した。

んなの慰めにならねえよ……全滅の危機を救ってくれたバニルには感謝するが、もう少し早めにならなかったのか?

そしたら「あのモンスター、どういうわけか我が輩の魔眼で見通せぬのだ。文句ならモンスターを強化しているあの魔王に言ってやれ」だってさ。

 

……なぜかバニルの見通す魔眼から逃れるし、きっとアイツはこの初心者の街にいるべきモンスターじゃないんだ。

それと、傀儡と復讐の女神に仕える身として、魔王城に帰ったらしっかり復讐と称して魔王をどつきまわしてやろう。

 

 

……

 

 

<計画開始30日目>

なんか最近ぼーっとすることが多い気がする。

過労かもしれない。

なんせ共同生活の屋敷だ。

一人の時間が少ないせいで朝から晩までずっと演技しなきゃならないのは精神的に負荷が大きいのだろう。

 

しかしバニルが言うには計画は順調だそうだ。

「汝とあのパーティーの絆も信用も確実に深まってる。そろそろ次の段階に進んでも良いだろう」とのことだ。

……正直、カエルに捕食されたことで得た絆なんてほしくないんだが。

一先ず明日話すためにバニルが用意した偽のバックグラウンドの設定について、矛盾がないようにもう一度文字に起こしてみようと思う。

 

 

 

 

まず、あたしには姉と親がいる故郷で暮らしていたが、そんな故郷は数年前に魔王の手の者によって滅ぼされ、両親を殺され、唯一の肉親となった姉は連れ去られたと。

なんとかして助けたいと魔王軍に入り、姉の場所を突き止めようとしたが、時すでに遅し。

……うん、ここの話は慰み者にされて息絶えてたとか言うよりぼやかした方がリアリティー増すな。

明日はそうしよう。

 

それで、そんな残虐非道な邪知暴虐の魔王に復讐を果たしたい一心で、あたしは復讐の神であるレジーナ様の信徒になって、その影響でプリーストからダークプリーストになってしまったと。

なるほど、絆と信頼が深まった今、あたしの職業の秘密について教えることで、指名手配されるべき職業に就いている理由を違和感なくばらせるし、そんな弱みを見せつけることでさらに絆と信用は深まると。

なかなかに悪魔的な発想じゃないか、流石はバニル。

 

そんなあたしは魔王軍の中での地位を高め、魔王を信用させ、油断したときに接近し、暗殺を目論むも、ダークプリーストのため攻撃魔法は使えず、魔王には通用しない。

人間のようにナイフ一つ心臓に突き立てれば死ぬような存在じゃない魔王を倒すためにどうしようと悩んでいたそんなとき、カズマたちが魔王軍幹部を次々に倒しているという話を聞き、そんな強力なパーティーを手引きして魔王城へ奇襲すれば魔王討伐も可能性があると思い接触した。

姉を殺した憎い魔王のそばに長年仕えるフリをして機会を窺っていたが、どうにかして魔王を倒したいから協力してほしい……

 

矛盾はなさそうだが、このままだと魔王を討伐する流れになりそうだぞ?

そうバニルに聞いたら「魔王軍に入れと言っても入らないぞ? アイツの妹はこの国の王女だし、やっぱり傀儡化がベストだろう。しかし傀儡化するとほら、違和感が出るだろう?」だそうだ。

確かにその通りだ。

どうしても精神に干渉する状態異常なのだから違和感は拭いきれない。

 

それに加えてバニルが「あれでも有名なパーティーだ。急に消息が絶たれたら街の警戒心が高くなる。魔王軍がアクセルの街を襲撃する日までは、魔王に仕えるっていう受け入れがたい状況になっても傀儡化を解けにくくするように、絆と信頼を深めることに注力するんだ」と。

どうしてあたしの傀儡化の能力をここまで詳しく理解しているのか問いたくなったが、まあいいか。

明日はこのままバニルの計画に乗っかるとしよう。

 

 

 

 

<計画開始31日目>

作戦は成功した。

最初はいきなり何を言ってるのか、冗談のように思われていた。

そりゃそうだ。

あたしの家族は魔王に殺されたって話ならともかく、ダークプリーストだとか魔王軍幹部だとか、信じられないだろう。

だが、迫真の演技、それから今まで信頼されるように好感度を稼いできたおかげで、昨日の内容を捻りなく話すだけで、何の疑いもなく話を信じ込こんでくれた。

名前を偽っていたこともダクネスがダスティネス・フォード・ララティーナだって同じで隠してたし、気にすんなよと気遣ってくれた。

騙していたことを怒らず、むしろあたしに同情してくれるような様子だった。

 

姉妹が殺されるという事態を自分に置き換えて考えたのか、何も言えないでいるめぐみん。

普段のような変態ではなく、魔王を非道なやつだと一貴族として、仲間として憤るダクネス。

あたしに協力したいが、魔王を討伐という危険を冒す必要性に駆られて葛藤するカズマ。

 

めぐみんやダクネスに関してはそのまま魔王城に乗り込んでしまうのではないかというような勢いだったが、カズマがそれを準備が必要だとか、レベルを上げて基礎ステータスをあげる必要があるだとか言ってくれた。

 

「助けにいきたい気持ちはわかるが……流石に相手のテリトリーで戦うのは、いくら奇襲したからって分が悪いだろ? それにいきなりそんなこと言われても覚悟も俺にはないし……」なんて申し訳なさそうに言われたが、あたしとしては正直、こんなにうまく計画が進んでいる状況に、笑いを堪えるのが大変だった。

 

それはそれとして、バニルの「あの三人との冒険の日々を大事に心の中にしまっとけよ?」なんて言われたが、ありゃどういう意味だ?

 

 

 

 

<計画開始42日目>

バニルから「そろそろ魔王軍がやってくる頃合いだが……。カズマが指揮官になれば持ち前の機転で魔王軍を倒してしまうだろう。その前に自然に魔王城へ連れ出すために一手投じておこうか」と提案された。

確かにあと2週間程度で魔王軍が侵攻してくるはずだが、どうしてそれをするとカズマたちが魔王城へ誘導できるのかわからない。

が、きっと目で未来を見通した上での提案だろう。

 

今までの信用に傷をつけないように「今までは一人で街を落としたと虚偽の報告をしてたが、今回は物理的に距離がある場所を同時に攻められるから片方は庇いきれない」と嘘と真実を混ぜて話してやるとしよう。

 

 

 

 

<計画開始43日目>

バニルを信用してよかった。

カズマたちに魔王軍が王都とアクセルの街を襲撃をするという情報を伝えたんだが、カズマが「その魔王城の人手が薄いときに乗り込めば魔王討伐の可能性が高いんじゃ」と言い出したのだ。

バニルの一手投じておこうの意味が、カズマたちが自発的に魔王城へ行くための誘導だったとようやくわかって一安心だ。

 

話が終わると早速魔王討伐のためにとクエストを受けレベルを上げようと動き出した。

が、結果は案の定。

 

ここは初心者の街アクセル。

周辺に住んでいた強力なモンスターはすべて駆逐され、推奨レベルは10レベル以下。

カズマもめぐみんも中堅冒険者を脱して上級冒険者を名乗っていい50レベル近く。

ダクネスも攻撃が当たらないせいで二人よりは低いがそれでも筋力ステータスはレベルにそぐわないイカれた数値。

 

そもそも、レベルは高くなればなるほどそう簡単に上がらなくなる。

仮に魔王軍幹部などの格上相手に勝利すれば上がるかもしれないが、通常、初心者の街アクセルでそんなことは起こりえない。

 

がっくりした三人に健気な感じの作り笑いを披露してやったら、明日も行きましょうだなんて言ってくれて。

あたしのために頑張ってくれてることはわかるが、そんなに肩を落とさなくてもと思ってしまう。

どうせ芝居だし…………芝居ねぇ。

バニルに「粘液まみれにした魔王より仲間を大切にしたらどうだ? 気が向いたら魔王に復讐してみろよ……なんてな」って冗談半分で言われたせいか?

なんだかなぁ……

 

 

 

 

<計画開始57日目>

そろそろ魔王軍がアクセルの街に襲撃してくる計画が実行段階になる時期だ。

バニルの言葉を信用してあたしはこの街から出ようと思う。

 

ステータスが低いせいで魔王討伐に乗り気じゃないカズマだが、なんだかんだ言って仲間思いで、最終的にはしょうがないなとぼやきながら助けようとするお人好しだ。

付き合いは短いが、今まで精一杯仲間であろうとしたあたしが一人で魔王城へ向かうと手紙を残そうと残すまいと、きっと追いかけてくるに違いない……だが手紙があれば足止めくらいにはなるはずだろう。

そんなことをバニルも言っていたがあたしもその通りだと思う。

 

正直、苦楽をともにした大切な仲間だし、魔王の元とへ殺されに来てほしくないが……

まあ、あたしの計画が成功すればなんとかなるだろう。

 

しかし、これでこのドタバタ生活も終わりを迎えると思うと感慨深いかもしれない。

……迷惑かけられたり予想外の事態に見舞われたり、大変だったがなんだかんだ言って嫌いじゃなかったよ。

 

 

 

 

 

『拝啓 日の入りが刻々と短くなり、肌寒く感じる季節ももうすぐです。

 こうして突然お手紙を差し上げたのは他でもなく、パーティーを抜けさせてもらいたいのです。

 突然こんなことを言い出して申し訳ないと思っておりますが、魔王軍幹部として、最後の仕事をしなければならなくなりました。

 今後は魔王軍幹部として再び活動をしなくてはならないのですが、このまま、あなたたちのパーティーに籍を入れておけば、その名声に傷がついてしまいますので。

 ですから籍を外して、私は元からいなかった、存在しなかったということにしておいてください。

 よろしくお願い申し上げます。

 

 元々、魔王からあなたたちを魔王軍に入れることを命令され、あなたたちに魔王から狙われていることを警告するためにこの地へやって参りましたが、まさか、冒険を止めず、逆に私のことを仲間に入れてパーティーを続けてくれるだなんて思いもしませんでした。

 あなたたちには感謝しています。それは感謝してもしきれないほどで。

 カズマ、めぐみん、ダクネス……あなたたちとの冒険は、今までの私の人生の中で一番輝いていて、楽しくて――

 復讐心に捕らわれた私がそれを忘れることができる唯一の時間でした。

 私は今後、あなたたちとの冒険の日々を絶対に忘れはしないでしょう。

 

 王都を襲撃する魔王軍の中には魔王の娘がいると聞き、被害は甚大なものになると予想されます。

 勿論、アクセルの街も危険に晒されることになります。

 このことを思うといてもたってもいられず、自分勝手なことなのですが、魔王の寝首を掻いてみようかと思います。

 流石に私の復讐に付き合わさせて、危険な思いをさせるのは心苦しいですし、もしかすると私が失敗する可能性もありますので、カズマたちにはどうか私の失敗を想定してもらい、アクセルの街を守っていただきたいのです。

 

 その際にはどうか、私のような復讐に捕らわれてダークプリーストになった未熟者ではなく、代わりの素晴らしいプリーストを入れてください。

 今まで、ありがとうございました。 さようなら。

 

 セレスディナより  愛する仲間たちへ、深い感謝を』

 

 

 

「……っとこんなもんでいいか?」

「うむ、バッチリではないか。その手紙は我が輩が預かっておこう」

「頼んだ。あたしは見つからないうちにこの街から出る」

「……本当に、一人で行くのか?」

「あたぼうよ。これでも魔王軍幹部の一人なんだ、アンタほど強くはないが自衛くらい簡単だ」

「そういう意味じゃなくて、一人でやる気なのかって……」

 

なんだコイツ、尻すぼみしていきやがって。

悪魔のくせにあたしのこと心配してくれてるのか?

 

「んなもん、あたしが決めた復讐に、勝手に仲間を巻き込めねえし。……アイツらのこと、後は誘導頼んだぞ」

「それは無理な話だ。あのハチャメチャな連中をそこまで誘導できるんだったら苦労しない」

「ハハッ、確かにそうかもな」

 

確かにあたしの制止を聞かず、爆裂魔法とドMと鬼畜を全開にしてくるあいつらは無理だわ。

ならせめて、あたしが死の呪いをばらまき終わるまでは……

と、そこまで言おうとして。

 

「お前が死んだらアイツらきっと気に病むぞ?」

「……思考読むなよ」

「魔眼なぞ使わずともばれてしまう、演技ができぬへっぽこプリーストが悪い」

「お前の前で演技したって意味ないだろ。演技したところで見通してくるお前って存在の方が悪い」

「……追いかけるアイツらが魔王城に着いたら魔王の元へ案内、よろしく頼むぞ?」

「わーった。遅かったら、先にサクッとやっちゃうからな。待たせんなよ」

「善処しよう」

 

この街に来たときのあたしは、信用ならなかったコイツにこうも素を曝け出すようになるなんて思いもしなかっただろうな。

それに、魔王を裏切るなんて考えに走るだなんて……今の自分でも驚きだ。

 

でも……それだけ、コイツと、それからアイツらに影響されまくったんだろうな。

ダークプリーストで、魔王軍幹部なあたしのことを迎え入れてくれて、親身になってくれて。

って、いけないな。

楽しい思い出に引っ張られて足が重くなりそうだ。

 

 

「じゃあな。……行ってくるわ、魔王討伐」




普通の指示の例「アウラ、自害しろ。」
→命令を遂行すれば傀儡化が解ける。即効性。痛みが伴うも意思の力で抵抗可能。
悪辣な指示の例「アウラ、徐々に自害したくなれ。」
→命令完了時期が不定なので解けない。遅効性。徐々に心に浸透するため抵抗不可。

というわけで、徐々に意識改竄を約2ヶ月かけて行ったバニマ。
(バニル+マクスウェル)×2レベルの悪魔的所業ですね……と言いつつ、悪から善の道へと引っ張り上げた光落ち展開で、なんとかバニマさんのカルマを善に……なりませんかね?
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