勝手に魔王討伐に行ってくると言って家出したセレナ。
今まで仲間だと思ってたのに急に魔王軍に戻るだとか抜かして……
俺たちのことを散々心配させやがって、帰ったら説教だ説教!
そんなことを思いながら始めた魔王城への旅。
ゆんゆんを仲間に引き入れ、セレナを追いかけるために馬車で王都まで走るもその姿はなく。
そこで魔剣の勇者のパーティーを魔王討伐メンバーに引き入れ、馬車で王都を発つ。
……本当はセレナを連れ戻したいだけなのに、本気で魔王討伐したいミツルギには申し訳ないと思ってるが、仮面の人が連れて行った方がいいと言うんでついてきてもらうことに。
8人で魔王城まで急いだ。
道中、セレナの姿は見えず、ついには――ここまできてしまった。
「ここから先は魔王がいるだろう。けど、僕たちなら大丈夫だ。カズマくんたちは頼りになるし、世界に平和をもたらすためにも倒そう!」
「いや、言ったよな? 俺たちの目的はあくまでセレナを連れ戻すことで、魔王討伐できそうだったらするけ……」
「じゃあ突入するぞ!」
「話を聞けぇぇええっ!」
この勇者様、話聞かねぇッ!
猪突猛進なミツルギが扉を勢いよく開き突入するのを止めるように追いかけ――
扉を開けた瞬間、目の前の光景に時間が止まったような感覚に襲われた。
魔王の容姿も、近衛兵の様子も、俺が想像してたものとはまるで違くて、想像と現実のギャップに脳の処理が追いつかない。
おどろおどろしく、禍々しい、それこそラスボスが鎮座するような威圧感満載の場所と人物がいると思っていたのに――
玉座の間には、魔王が肩で息をしながら座り込み、その片腕が欠けた状態で血を流していた。
そして、その周囲には親衛隊らしき騎士たちが横たわっている。
動ける者はいないようで、まるで何かに飲み込まれた後のような惨状だ。
圧を感じることもなく、そこはただ薄暗く、奇妙な静寂だけが広がっている。
「なんだ、これは……」
ミツルギが呟くと、後ろに続いていためぐみんたち5人も一斉に目の前の光景に困惑を露わに。
しかし仮面の人だけは表情が読み取れない。
むしろ「待ってろって言ったのに……。でも、魔王は弱ってるし、案外悪くはない状況と言えなくもないのか……?」とよくわからないことを一人でぼそぼそと呟いてる。
普通、こういう場面では魔王が悠然と玉座に腰を掛け、俺たちを嘲笑するのがお約束だろ?
それがなんだよ、肩を押さえて、息も絶え絶えで、この満身創痍の魔王は。
「カズマくん、これは一体どういうことだ!?」
ミツルギが小声で、しかし魔王からは目を離さずに俺に問いかける。
そんなこと言われたって正直、俺だって状況が掴めていない。
ただ、一つだけ聞いていた話とは違う事態が気になっていた。
「仮面の人。セレナはどこだ。道中会わなかったってことは玉座の方に向かったはずだろ……なんでいないんだ」
「……」
玉座の間を見渡すが、あの姿はどこにも見当たらない。
仮面の人はだんまりした様子で口を開かない。
一体何の不都合があるのか、言いにくいことでもあるのか…………いや、セレナはきっと遅れているだけだ。
仮面の人が珍しく読みを外して、それで恥ずかしくて黙ってしまってるだけなんだろ?
考えてみればアクセルの街からここまでに馬車に乗れずテレポートも使えないとなれば2週間はかかるんじゃないか?
どれだけ頑張っても10日より早いなんてことはないはずだ。
つまり、俺たちが予想より早く到着してしまったから、セレナが追いついていないだけに違いない。
そう、不安を払拭するように、心の中で自分を納得させようとした矢先、魔王が疲れたような声で呟いた。
「次から次へと……仲間に裏切られたかと思えば、今日は厄日か……」
今、仲間に裏切られたって言ったか?
思わずその言葉にピクリと反応してしまう。
その言葉の意味するところは俺たちの前にも魔王に刃向かったやつが、しかもそれは魔王軍のやつだったってことで……
「俺たちより先に誰が来たってんだ?」
「貴様らには関係ない……と言いたいところだが、そうは言い切れないな。どうせだ、教えてやるとしよう」
魔王の体力の消耗具合を見るに、体力や傷の回復のための時間稼ぎのためだろうか。
普通、こういうときに敵に情報をペラペラしゃべるやつは死亡フラグが立つんだが……
そんな俺の考えを知らないだろう魔王は、忌々しげな目で俺たちを見て、苦々しそうに語り出した。
「セレスディナ……お前たちにはセレナと名乗ったか? どちらでもいいが、お前たちにも馴染みがある名だろう? 数十分前、と言ったところか。アイツは俺の元にやってきて『アクセルの街の件についての報告』だと言って――――俺を裏切って暗殺しよう刃を突き立ててきたのだ。まったく、セレスディナのせいで親衛隊だけではなく俺の腕まで持っていくとはな……」
魔王の話を聞くと、この玉座の間をこのような惨状に変えたのは、他でもないセレスディナで、魔王自身の腕を一人で欠損させ、親衛隊を壊滅状態に追い込んだと。
……正直訳がわからない。
だってそうだろ、いきなりそこに寝ているヤツらがセレナにやられて死んでいるだなんて言われても理解が追いつかない。
親衛隊の体には傷がなく、血のにおいと血痕以外に激しい戦闘の跡はこの場所にはない。
本当に、ただ寝ているだけのように見える。
「流石キミの仲間だね。まさか一人でここまで……」
ミツルギのそんな声が聞こえてくるがこの状況のすべてに引っかかりを覚える。
俺だけではなくめぐみんもダクネスも、そう思っているという顔をしている。
だって今まで冒険を一緒にしてきたセレナは、カエルに飲まれるくらいの力で、魔王を、親衛隊をこんな状態にするなんてあり得ない。
それに――
「なあ、セレナは本当にお前にそんな大層な傷を負わせたのか? 私たちが知るアイツは……」
「ダクネス、戦闘の痕もないのですよ。そんな話を信じる方が馬鹿馬鹿しいです。……大体、あの子が魔王を倒せるような攻撃手段を持っているものですか。私より非力で、ありえませんよ」
「……確かに、セレナの姿が見えないのに、ここで戦ったという証拠もないか……」
ダクネスとめぐみんの言うとおり。
セレナにこんな惨状を引き起こす能力があるはずないし、セレナの姿も見えない。
「戦ったんだって言うんだったらダクネスの言うとおり証拠出してみろよ! 出せないだろ? 本当はめぐみんの爆裂魔法を連打してたときは別の場所にいて、ちょうどその場所で瓦礫が落ちて大怪我したんだろ?」
「……その様子だと、セレスディナめ、レジーナ教である自身の能力までは明かさなかったのか?」
「能力……?」
「そうだ、復讐と傀儡の能力……聞いたことがないみたいだな? 仲間のように接してきたらしいが、そこまで信用されなかったと見える」
復讐と傀儡……
どういう能力かはたぶんそのまんまの意味なんだろう。
復讐の能力は憎い相手を攻撃するのか、傀儡の能力は相手を操り人形にしてしまうのか、詳細はわからないが、魔王がそう意味深に説明するのを聞いて、一つの仮説が立ってしまう。
『セレナは親衛隊に殺され、復讐の能力で道連れにしたのではないかと』
後ろでミツルギが魔王の話を気にとめる方が馬鹿だと声を荒げているみたいだが、あんまり聞こえてこない。
考えれば考えるほどセレナがどうして今までその能力を隠してきたのだとか、話してくれなかったのだとか、勝算がないのに魔王討伐に一人で行ってしまった理由がわかってしまう。
復讐という普段は使えない、しかし魔王を討伐するためだけの能力を仲間に話さなくてもいいだろうし、何より――
いいや、ありえない。
そんな馬鹿なことをするだなんて……
だがしかしそんな馬鹿な考えを拭えない。
俺はミツルギの制止を振りきり、不安を否定したい一心で魔王に、
「な、なあ、それでセレナは……その、復讐の能力であんたをそんな状態にしたのか? どういう能力で……」
「知りたいか?」
思わず生唾を飲み込む。
セレナが本当にしたのかしてないのか、確信を持ちたいけど持ちたくなくて……
そんな俺の様子を見て、ニヤリと魔王は静かに続けた。
「復讐の能力はな、自身に攻撃してきた者に同じだけのダメージを与えられる、そんな力だ」
「お、おい、ちょっと待てよ…………本当なわけ……」
だとしたらどうして魔王の左肩がなくて、親衛隊のやつらもこんな状態になっているのかが説明がつかない。
誰か一人が再起不能になる分にはわかるが……
「ほ、本当のこと言えよ! つくにしてももっとマシな嘘を……」
「……嘘? 何も俺は嘘をついては……」
「だっておかしいだろ? 『ダメージを攻撃してきたヤツだけに与える』なら、親衛隊全員が死んでるのはおかしいだろ!」
「そうです! 嘘つきは魔王の始まりとは言いますが、さすがは魔王。私たちを騙そうとは……しかしそうはいきません。やはり魔王の話は聞くに値し――」
そうめぐみんが言いかけた時。
魔王が、不敵な笑みを浮かべ……
「信じるも信じないもいいが……言い忘れていたことを話してやろう。自分が死んだときに周囲に強力な呪いをまき散らすのだ。つまりこの惨状……どういう意味かわかるな?」
「カズマさん! 信じちゃ駄目ですよ! きっと私たちを混乱させるだけの罠です、聞く必要なんて……!」
ゆんゆんの言葉はもっともだが、セレナと一緒に時間が長い俺らだからこそ、セレナが抱えていた魔王に対する復讐心を知っているし心の闇を知っていて……ゆんゆんの言葉を塗りつぶすかのように不安がわいて出てくる。
もしも、もしも魔王の話が本当だとしたら……
魔王の左肩から先がないっていうことは、それはつまり、戦いの時に肩を吹き飛ばされたってことで……
親衛隊が死んでいるということは、つまり……
魔王の言葉が淡々と続く中で、俺は次第に冷や汗が背中を流れるのを感じた。
あのセレナが、魔王を弱らせ、親衛隊を壊滅させたという言葉に現実味が帯びてきてしまった。
ただ、セレナが魔王に挑んだという事実を否定したかっただけなのに。
「か、仮面の人? 嘘だよな?」
「……」
「なんでだんまりしてるんだよ? あのセレナはまだここまで来れてないだけだろ? 魔王が言ってることは嘘っぱちなんだろ? なあ?」
これ以上聞いてはいけないと理性では理解していながらも、止めることができなかった。
嘘じゃないことを理解してしまったが故に、魔王の言うことに矛盾が生じていないが故に、いつも俺たちをいい方向に導いてくれてる仮面の人に否定してほしかった。
だが、仮面の人は俺の言葉に何も応えない。
「さっき、何か呟いてただろ? セレナに『待ってろ』って言ったってことは、俺たちが魔王のところに先に着くようにしてくれたってことだよな?」
「……」
「魔王が弱ってるのもいつも通り計画通りなんだよな? いつもお前が裏でこっそり誘導かけてくれてた感じなんだろ? 今回もそうなんだろ……?」
「……」
「案外悪くはない状況なんだろ……? なあ、答えてくれよ……」
本当に…………いや、セレナは死んでない、だろ?
そんな俺の希望をあざ笑うかのように魔王が。
「いつまでその仮面の男に話してるんだ? そんなもの、聞くまでもないだろう。命を代償にしなければこの惨状は作れまいし、それをするヤツが他にいると思うか?」
その言葉に、頭の中が真っ白になった。
口は動くが言葉が出ない。
セレナが死んだ?
そんな馬鹿なことがあるか?
頭の中では否定しようと必死に考えるが、心の奥底ではすでに理解していた。
「さっき、何か呟いてただろ? セレナに『待ってろ』って言ったってことは、俺たちが魔王のところに先につくようにしてくれたってことだよな?」
違う。
セレスディナを先に行くように仕向けたのは俺だし、待ってろっていうのも魔王城の中で合流して、それでセレスディナにはプリーストとして動いてもらおうと……
全てはアクアの代わりになってもらうため。
そういう計画だったんだ。
「魔王が弱ってるのもいつも通り計画通りなんだよな? いつもお前が裏でこっそり誘導かけてくれてた感じなんだろ? 今回もそうなんだろ……?」
確かに、今回も俺が誘導をかけた……が、計画は狂った。
それはこの玉座の間を開けた瞬間にわかったことで、まさかこんなことになってるだなんて思いもせず。
魔王の抉れて欠損した部位を見て、親衛隊どもが無様にも地に伏せっているのを見て、セレスディナが魔王に自分を殺させようとしたのだと察した。
そんなセレスディナが死んだことを知りながらも、俺は悲しむわけでもなく、怒るわけでもなく、喜びがにじみ出て……
セレスディナに復讐を果たせたこともそうだが、どちらかというと魔王討伐を達成できそうな状況に、当初の計画より状況が好転していたから。
セレスディナは女神の力もなければプリーストとしての能力もそこそこ、アクアの代わりとしては心許なかったから最初に練っていた計画には少し不安があった……が、親衛隊がおらず、魔王も弱体化している今の状況……
セレスディナはアクア以上の働きをしてくれたのだと、憎しみしか感じてなかったアイツに初めて感謝したもんだ。
「案外悪くはない状況なんだろ……?」
回復や支援役は不在。
だが、魔王は弱っている。
チート持ちが二人いる。
タイマン勝負じゃなく一対多という有利な状況にある。
ああ、ようやく帰れるのか……
そんな歓喜で心の中は満たされていた……最初の方だけ。
震える声を聞くたびに罪悪感が混じっていく。
喜びに置換されたはずの復讐の炎が心を爛れさせたのか、胸の奥がじゅくりと痛む。
「なあ、答えてくれよ……」
「いつまでその仮面の男に話してるんだ? そんなもの、聞くまでもないだろう。命を代償にしなければこの惨状は作れまいし、それをするヤツが他にいると思うか? ……さて、そろそろお喋りはやめにしよう」
傷の回復が終わったのか、魔王の声が俺の代わりに答え、立ち上がる。
俺は何も言えず……
本当のことを言ったら俺が俺だと気づかれて存在が消滅しちまうだとか、嘘でも慰めてやりたいのにその言葉が浮かばなかったとか、そんな建前じゃなく。
何周もして、そのたびに怒り恨みをため込んで、そのせいでセレナが死んだことに何も思わないで……吐き出し口を見失った負の感情と、正の感情による孤独感が心に重く沈み込む。
俺一人だけが全部を知ってる、それ故の疎外感。
「そうか、死んじまった、のか…………」
確認をとるように、しかし確信を持っているように、俺に問う。
思わず顔を伏せると、「間に合わなかったんだな。アンタの計画通りにならなかったんだな……俺のせいで」と。
確かに計画通りじゃないが、お前のせいじゃない。
セレスディナが勝手にやったことだ。
……そんな虚実が混ざる慰めは死んでも吐けなかった。
俺が怠けず、いじけず……だとしたら作戦通りになっていたのだから。
その泣きそうな声、肩と手の震え。
俺が、お前らの仲間を殺すように仕向けたような、そんな感覚に陥る。
セレスディナを仲間だと思っていた奴らの呼吸、挙動の一つ一つが俺の爛れた心に塩を塗り込むようで。
俺がここまで、魔王城まで導いてきた意味を否定しているわけじゃないはずなのに、どうしようもなく自分がしてきたことが悪いことだったんじゃないかって……
いや、セレスディナは敵だ。
容赦なく俺の仲間を殺すような、残虐非道で、慈悲のかけようもないようなヤツだ。
だから、徹底的に、俺の仲間にしてきた仕打ちをしたって……いや、そうしないとまた俺の穴をついて仲間に酷いことをするに違いないんだ。
レジーナ教に入ってるせいか、俺の嫌な感情が溢れ出そうになるが、別に感情には支配されていない。
理性的に、論理的に、計画的に、俺の仲間を助けて魔王も討伐するように動いたんだ俺は。
だから俺は何も悪いことはしてない、俺は、何も間違っちゃない。
そうやって敵を作って、悪を作って、自分は正義だと正当化させ、魔王を倒すことに意識を変えようとしたとき――
「……『ティンダー』、『ウインドブレス』」
声が意識の切り替えを阻害する。
……俺が出した声じゃないのに自分と同じ声。
それは敵に対しての憎しみじゃなくてセレスディナに対しての悲しみで、敵に対しての怒りじゃなく自分に対しての怒りが込められた声。
その声の方を見ると、左右の掌には魔力の球。
生み出した高熱と暴風を制御して球状にまとめ上げているも、太陽のように眩く白い光、それから肌を焼く熱気が漏れ出る。
それが一秒も経たずにその制御から外れ、魔王の方へ。
球が爆ぜ、薄暗い場所を照らす。魔王は壁を突き破って吹き飛ばされ……
俺の目に映ったのは哀色。
目の前にいる俺が鏡の中の俺じゃないことはわかってる。
でも、瞳を見ると哀しそうだった。
「なあ、仮面の人。計画が失敗したんだったら、次はどう動けばいいと思う……?」
「……」
「時間稼ぎくらいなんとかするからさ、だからセレナの遺体探してくれよ。ゼスタが蘇生魔法使えるかもだし、それかけてもらえれば生き返るかもだろ? ……なんとか、ならないかな」
後悔してるんだな……こっちの世界の俺も、そして俺も。
セレスディナを敵として見てきたくせに、散々アイツの精神を弄んだくせに、傀儡として利用してきたことに負い目も何も感じないくせに。
どうしようもなく後悔してる俺を見ると、不相応でおかしな思いが湧いて出てくる。
いくら自分の行いを正当化しても、本来死ななかったヤツが死んで、その結果悲しんでいる仲間がいて……
「はぁ……しょうがねえなぁ」
「も、もしかしてなんとかなる感じ? セレナを生き返らすことできる感じ?」
「いいや、蘇生魔法なんて女神レベルじゃないとまともに使えない。アイツを生き返らすのは無理だ」
「そう、だよなぁ……」
「泣きそうな顔をするんじゃない、泣きたいのはこっちだぞ。このまま清々しく魔王討伐できればよかったのにセレスディナめ、途中で死にやがって。計画が台無しじゃないか」
「魔王討伐できればよかったのにって……結構弱ってるしできるだろ。それともなんだ、仲間を散々な目に遭わせてくれたアイツは倒せないほど強いってか?」
「清々しい気持ちでってところが抜けてるぞ、馬鹿め」
そう言っていると魔王が吹き飛ばされた壁の奥、煤塵からゆらゆらと影が見えてくる。
刀に似せて作られた剣を、再開される戦闘のために構えている俺を見て。
「なあ」
「……なんだよ。何か清々しく魔王を倒すためのいい作戦でも思いついたか?」
「いいや、ちょっと違うな。というか、もし、もしもの話になるんだが……」
「さっさともったいぶらず言えよ。魔王が来るぞ」
俺は、自分の背中を見ながら、こう、息を吐き出した。
「なあ…………やり直したいか?」