「あ゛ー、暑っつい」
真夏の炎天下の中、僕、
切っ掛けは友人からゴッドイーターシリーズを勧められたことだった。試しに初代ゴッドイーターをやってみた僕はこれにどハマりし、初代は勿論流れるように続編のバースト、2、レイジバースト、初代のリメイクであるリザレクションまでクリアしたのだ。ちなみに一番難しかったと思うミッションは初代のピルグリムである。いや、あれはホントに鬼畜だって……。
まあ、それはともかくそんなこんなで3以外の作品を軒並みクリアした僕は今現在3を買う為に近くのゲームショップに向かっている途中である。
「にしても暑い……もうちょっとどうにかならないのかなこれ」
今年は近年稀に見る……いやそんなことはないか。割と毎年こんな感じだったわ。でもそう言いたくなるくらいには暑いのである。
そんな暑さから、注意力が散漫になっていたのが悪かったのだろう。
信号のない横断歩道を渡っていた時。
────猛スピードで突っ込んでくるトラックに気が付かなかったのだから。
「……ぁ……?………ここ、は………?」
気が付いたら、見知らぬ場所に居た。なんというか、ただただ真っ白な部屋だ。驚きの白さ……。
「おやおや、目覚めたようだね?」
「!?」
背後から聞こえてきた声に驚き振り向くと、そこには狐の面を被り、和服を着た人間が居た。
「おっと残念、私は人間ではないよ」
「な、……僕の心を……読んだ……?」
「その通り。私は君たちが言うところの神様ってやつでね。心を読むくらいはお手の物って訳さ」
神様だって……?いやでも実際に僕の心を読んだ訳だし……。
「本当に……神様……」
思わず息を呑んで目の前の人物……神様を見る。お面をしているので表情は分からないが、どことなく面白そうな雰囲気をしている。
「それで、その神様が僕に何の用です?」
「ふむ、そうだね……まず君は死んだ。それは認識出来ているかな?」
「死んだ……?僕は確か、ゲームを買いに行く途中で、横断歩道を渡ってて……そうだ、何か強い衝撃を受けて、気付いたらここに居た……車にでも轢かれたのか……」
「ま、概ね正解だね。暴走したトラックに轢かれた君を魂だけの状態でここに呼び出した訳だ」
呼び出した……か。
「それで、一体何故僕を呼び出したんです?」
「そうそう、それなんだけどね。実は君に提案があるんだ。別世界に転生してみないかい?」
「別世界に……転生?それってもしかして、ラノベとかでよくある……?」
「そう!君が居た世界とは違う世界で新たな生を歩む、所謂神様転生というやつさ!」
神様転生……ラノベやら漫画やらでよく読んだりしてたけど、まさか自分が当事者になるなんてね……。
「ひとまず詳しい話を教えてください」
「いいだろう、まず転生先の世界だが……ゴッドイーター、と言えば分かるかな?」
ゴッドイーターかぁ……作品としては好きだけど、自分が行くとなると厳しい世界だよなぁ……。
「それと、転生先はランダムだ。君も、そして私も決めることはできない」
「つまりどこに生まれるかは選べないってことか……」
「それだけじゃない、何に生まれるかも選べないんだ」
それを聞き、思わず頬が引き攣るのを感じた。
「え、それって……」
「そう、そもそも人間に生まれるかどうかも分からない。と言っても、そこらの動物に生まれ変わるということはない。最低でも何らかのアラガミにはなれるはずだ」
アラガミかぁ……いやまああの世界のことを考えると下手な人間に転生するよりもそっちの方がいいのか……?でも最悪オウガテイルになる可能性もあるんだよなぁ……。
「ちなみに仮にアラガミに生まれた場合は感応種と血の力の影響を受けなくなり、捕食した相手の特徴を取り込んで進化する能力が通常のアラガミよりも大幅に強化され、更に同じアラガミを喰らえば喰らう程能力が強化される。人に生まれた場合は身体能力が神機使い並に強化され、P66偏食因子に必ず適合出来る。勿論神機使いになれば元々高い身体能力は更に強化される。そんな感じの特典がつくよ」
「それは……かなり強力な特典ですね」
「ふふ、そう思ってくれるならこちらも用意した甲斐があったというものだよ……それじゃあ、早速だけど行こうか!」
いよいよか……さて、僕は何になるのだろうか?人か、神か。なんだか恐ろしいような、ワクワクするような、不思議な気分だ。そうしていると、段々意識が薄れてきた。ふふ、次に目覚めた時、僕は何になっているのだろう……。
「ふふ、行ってらっしゃい。君の次の生に、幸多からんことを……」
………ん、んん………
……んん……ん……?
僕は……確か……そうだ、狐面の神様と出会って、それで……
!!そうだ!ゴッドイーターの世界に転生したんだ!結局僕は何になったんだ……?
寝転がっていた身体を持ち上げると、どうにも視線が高い。少なくとも人間ではなさそうだ。
自分の身体に目を向けると、まず目に入ったのは鮮やかな赤。それも、まるで水晶の様に透き通った赤だ。この時点でもしかしてとは思ったが、両腕に付いたブレード、背中とお尻の辺りから生えている何かの感触。僕は確信した。
────僕、ルフス・カリギュラになってる。
よっし!ルフス・カリギュラは作中でもかなり強かったし、当たりだろう。ブレードも左右共に結合崩壊していないし、背中に何かが突き刺さってる感触もない。つまり、ケイトさんを殺した個体とは別か、まだケイトさん達に出会ってないかだ。出来れば後者であってくれるとケイトさんが自動的に救済されるから嬉しいんだけど。
さて、取り敢えず現状確認をしていこう。
まず、僕はルフス・カリギュラに転生した。これは間違いないだろう。次に今居る場所だ。これは自分の目で見える情報から恐らく蒼氷の渓谷だろう。真っ白な雪景色の中に凍りついたダムが存在していて、なんとも壮観だ。恐らく人間からしたら寒いのだろうが、アラガミ、それも氷属性を扱うルフス・カリギュラだ。全く肌寒さを感じない。にしても、白い雪景色の中に赤い自分か。まるで紅蓮地獄の体現だな。
っと、それはともかくとしてだ。ここが蒼氷の渓谷ということは、恐らく今自分が居るのは極東だろう。これが分かったのは大きい。これからの行動の方針を決めやすい。
そして最後に今が何時なのか、ということだ。これは今いる場所以上に大事な情報だと言っていい。とはいえ、これに関しては知る方法が限られている。最重要と言ってもいいけど、今は難しいだろう。
さて、現状確認はこんなものだろう。次は、自分がこの世界でしたいことを纏めるか。
まず、この世界で起こる悲劇をどうにかしたい。例えば上田さんことエリック・デア=フォーゲルヴァイデ。彼は任務中の油断から頭部からオウガテイルにパックリいかれてしまったのだ。例えばケイト・ロウリー。彼女は任務中に運悪く当時未知のアラガミだったルフス・カリギュラと遭遇し、撃退はしたもののダメージが大きくアラガミ化が進行。共に居たギルバート・マクレインの手によって介錯された。このように、ゴッドイーターの世界では大なり小なり多くの悲劇が起こる。勿論その全てをどうにか出来るとは思わないが、手の届く範囲くらいはどうにかしたい。
次に、自己の強化。あの神様が言っていたことが本当なら、この身体はアラガミを喰えば喰うほど進化し、強くなっていくということになる。アラガミでなくとも、食べた対象の特徴を取り込む能力も強化されているらしいから、フィールドに落ちている素材、例えばヒヒイロカネや強化ポリカーボネートやオラクル石なんかを喰べればかなりの強化が出来るだろう。
更に、戦闘訓練。これについては言うまでもないだろう。いくら強力な力を持っていたとしても、使いこなせないようでは駄目だろう。
今やりたいことと言えばこんなところか。今の年代が分からない以上、取り敢えずは色んな物を食べまくって自分を強化することに専念しよう。……もしかしたらサリエル辺りを食べれば、人型になることも出来るかもしれないしね。
そうして周辺をうろついていると、ひとつ気付いた。周囲に居るアラガミが一点に集中しているのだ。今がどの時代なのかは分からないが、蒼氷の渓谷というこの場所で、アラガミが一点に集中している……もしや、香月ナナの力の影響……つまり、香月ヨシノが死亡してしまうあのイベントが発生しているのではないだろうか?
だとすれば、僕が介入しないという選択肢は存在しない。もしかしたらヨシノさんを救えるかもしれないし、集まってくるアラガミを相手に実戦もできる。捕食も出来るから一石二鳥どころか一石三鳥まである。よし、行こう!
そうしてアラガミ達の向かう方向へと全力で駆け出したのだが、早速この身体の規格外のスペックを知ることとなった。ゲーム内で戦った経験から分かっていたが、スピードが周囲に居るアラガミと比べても段違いなのである。
更に、周囲に居た小型アラガミ、オウガテイルを適当に鷲掴みにして喰らってみたが、小型とはいえ万全な状態である筈のオウガテイルを苦もなく噛み砕くことが出来た。このことから、小型程度ならわざわざ攻撃するまでもなく喰らえる程の力を持っているのが分かる。ちなみに味は……なんと言えばいいだろうか、パサパサした味のない鶏肉みたいな感じだった。あんまり美味しくない。
ひとまずオウガテイル1匹を丸々平らげ、更に周囲の他のアラガミ達にも手を伸ばしていく。大抵は普通のオウガテイルで、稀に堕天種や雷属性のヴァジュラテイル、中型アラガミであるシユウやヤクシャまでをも手当り次第に喰らっていった。勿論足は止めていない。
ちなみに何故中型アラガミまでをも簡単に喰らうことが出来たのかというと、彼らがこちらに注意を向けていなかったからだ。恐らく、このアラガミを惹き付ける偏食場パルスの中心へと向かうことを優先していた為だろう。一応こちらに鷲掴みにされて抵抗はしていたものの、拘束を振り解けるほどではなく。頭部を1口に噛み砕けばそれで再生するまでは抵抗が止むのでそのままコアまで喰らえばいい。傍から見たらその様は戦闘などではなく、ただの食事にしか思えないだろう。
そんなこんなで走り続けていた僕は、戦闘音と子供の泣き声を聞き、更にスピードを上げた。