新作の信長の野望で遊んでいた結果がこれだよ!
多分来月中までは禄に更新できないと思います。ごめんなさい。
プリンセス消失後、残ったノイズを殲滅した部隊は基地へと帰投していた。
『天道軍曹準備が整いました』
「了解」
整備士の誘導に従い、機体を格納庫の専用ドックに固定させると装甲を開き機体から降りる。
結局目標であった精霊を討ち取ることはできず、寧ろ見逃してもらったと言った方が正しいだろう。
奴がその気になれば、俺達を殺すことなんて造作もなかっただろうに、奴らが何をしにこの世界へとやって来るのかは不明だが、人類を滅ぼし得る存在なのは実感できた。
奴ら精霊がその気になれば、人間なんて虫けらの様に駆逐されるだろう。軍が躍起になって倒そうとするのも頷けた。
「でも、悲しそうな目をしていたな…」
誰に話しかけるでもなく一人呟く。
プリンセスが見せた目。まるで、自分がなぜ世界から拒絶されているのか分からないと言った目をしていた。
そもそも精霊とは本当に敵なのか?共存することはできないのか?人類は余りにも精霊という存在を知らなさ過ぎるのではないか?
――いや、よそう。向こうがどう考えていようが、俺の大切な人達を傷つける可能性があるならそれは俺の敵だ。ならば躊躇いはしない、喜んで恨まれてやるさ。
「あの――」
考えに耽っていたら不意に声をかけられた。
声のした方を向くと、金髪碧眼で作業服に大きめの白衣を羽織り、メガネをかけ頭にゴーグルをつけるという、奇抜なファッションをした俺より年下ではないかと思える少女がいたって、前にも見覚えがあるような…。
「ああ、君は確か始めてMK-Ⅱに乗った時にいた…」
「はい!ミルドレッド・F・藤村と申します!AST整備班所属で階級は伍長です!」
元気よく自己紹介してくれる伍長。うん、元気なのはいいことだよね。
「天道勇軍曹だよ。よろしく伍長」
鳶一意外にも俺より年下の軍人がいるのは、正直どうかとも思うけどもね。
「お疲れ様勇」
「お疲れ様です隊長」
「精霊と戦って負傷者無しなんて、私が隊長になって初めてよ。あなたのおかげよありがとうね」
こんどは隊長である日下部大尉がやって来て労ってくれた。吹っ飛ばされた鳶一も大したことなかったみたいだし、よくよく考えれば俺もよく無事だったなぁ。
「いえ、隊長達の援護があったからです。それに精霊には結局逃げられましたし」
「あんな化物相手じゃ仕方ないわ。戦って死者が出てないんだもの、それだけで十分よ」
確かに知能を持った自然災害と言われてるだけの力があったな。だからって、倒せないって訳じゃないってのが俺の考えだけど。
「今日は疲れたでしょうけど、このあと反省会があるからそれが終わったらゆっくり休みなさい」
「了解です」
俺が敬礼しながら答えると、それじゃ後でねと言い残し隊長は他の隊員の様子を見に行ったのだった。
本日の戦闘についての反省会が行われたブリーフィングルームに鳶一折紙は一人残っていた。
隊長である燎子を始め他の隊員達が退室したにも関わらず、折紙はプロジェクターでスクリーンに映し出された映像を凝視していた。
五年前のブルーアイランドにある天宮市に出現し、街を炎で焼き払った精霊識別名『イフリート』折紙から家族を奪った仇敵である。
遠距離から撮影されたもののため映像はぼやけており、角度の問題で背中しか映されていないが、小学生程度の体格で和風の着物と見られる物を身に纏い頭部に鬼を連想させる角が二本生えていた。
折紙はASTに入ってから毎日欠かすことなくこの映像を見続けていた。あの日の怒り、憎しみ、後悔、そして無力だった自分を忘れないために。
「……」
結局今回も精霊を討ち取ることができなかった。顕現装置を用いて超人となったが、それでも精霊が持つ絶対的な力の前には赤子同然であった。
あの日から五年間、この手で敵を取ることだけに全てを捧げてきた折紙の人生を嘲笑っているかのようだった。
――力が足りない。精霊を倒し、
「ふぅん。それが君の
澱んだ思考をしていた折紙に不意に背後から声がかけられた。
ゆっくりと振り返ると、両手に飲み物の缶を持っている天道勇が立っていた。
はっきり言えば折紙はこの男が嫌いであった。何の苦労もせずに力を手にしているこの男に嫉妬しているのだ。
以前行った模擬戦で、この男はなんの躊躇いもなく勝利のために自分を犠牲にすることができていた。逆の立場だったら果たして自分も同じことができたか?はっきりとできると言えない自分が嫌だった。
人生を捨てて生きてきた筈の自分が、どんなに望んでも手にできない力を、捨てることなく持っているこの男が許せなかった。
「イフリートねぇ。五年前に一度現れてからまるっきり姿を見せてないんだってね」
険悪の眼差しを向けられているにも関わらず、気にした素振りも見せず隣まで歩いてくると、片手に持っていた缶を投げ渡してきた。
折紙が反射的に掴むのを確認すると、もう片手に持っていた缶を開け飲み始める勇。
「何の用?」
「んー用って訳じゃないけど、ちょっと聞きたいことがあってねぇ」
「確認?」
「そ、君の戦う理由。似てるんだよねぇ君の目って俺に」
「似ている?」
何を言っているのか本気で理解できなかった。自分とこの男が似ている?冗談でも笑えなかった。
「正確に言えば昔の俺にだけど」
「昔の?」
「そう。十年前に空港で起きたテロ事件って知ってる?」
「知っている。白騎士事件の後、ISの導入に反対した組織が起こした国内最大級のテロ事件」
白騎士事件――
ISの存在が発表されてから1カ月後に起きた事件。日本を射程距離内とするミサイルの配備されたすべての軍事基地のコンピュータが一斉にハッキングされ、2341発以上のミサイルが日本へ向けて発射されるも、その約半数を搭乗者不明のIS「白騎士」が迎撃した上、それを見て「白騎士」を捕獲もしくは撃破しようと各国が送り込んだ大量の戦闘機や戦闘艦そしてCR-ユニットと言った軍事兵器の大半を無力化した事件。この事件での死者は皆無だった。この事件以降、ISとその驚異的な戦闘能力に関心が高まることとなった。
白騎士事件から暫くして、各国は女性優遇制度を採用したことに反発した者達によって、ある空港が襲撃され死傷者数千人を超える日本史上最大のテロ事件として、連日報道されていたことを当時幼かった折紙でも覚えていた。
十年経った今でも特集が組まれ、軍でも忌むべき事件として語られている。
「俺その事件の生き残りな訳よ」
「ッ!?」
勇の放った言葉に目を見開く。確かに父である勇太郎の妻がテロによって命を落としたとは聞いていたが、どの事件だったかまでは話してくれなかったのだ。
「その日外国に出張していた父さんが帰って来るから、迎えに行ったんだよ。んで、事件に巻き込まれてさ、母さんが俺を庇ってさ、そのせいで死んだんだよ」
「……」
「事件の後でもさ、夢に出てくるんだよ。目の前で冷たくなっていく母さんと、今まで当たり前の様に笑っていた人達だった物が辺りに散らばってるのがさ。それでその人達が『何でお前は生きているんだ』『お前が死ねばよかったんだ』とかってさ、言うんだよ」
悲痛である筈の話を、まるで笑い話をしているかの様な気軽さで飄々と語る勇に、言葉が出なかった。どうしてそんなに平然としていられるのだろうか?そんな勇を見ていると、どうしようもなく怒りが沸いてきた。
「憎くはないの――」
「ん?」
「大切な人を殺した奴らを何もできなかった自分を!」
気が付けば声を張り上げていた。自分と似ていると言うならなぜ何も捨てていない?なぜ楽しそうに生きている?どうして笑っていられる――
憤怒の形相で睨みつけられているにも関わらず、なははと笑って飲み物を口にする勇。そんな態度にますます怒りが込上がってくる折紙。まるで自分の生き方を馬鹿にされている様な気分だった。
「そりゃ憎んださ。でも、テロ起こした連中はすぐに軍に潰されちゃったんだよねぇ。だから自分を恨むしかなかったさ、『何で生きているのか?』『あの時死ねばよかった』てね。何度か死のうとしたけど、結局怖くてできなかったけどね」
「それならどうして――」
そんな風に笑っていられるのか?と問うと、勇は飲み物を口に含み喉を潤してからそれはねと口を開いた。
「救われたんだよ妹に。血は繋がってないけどまあ、そこはどうでもいいか」
「妹?」
「そ、
まいっちゃうよねーと肩を竦めておどける勇。
「極みつけはそのデパートがテロリストに襲われてさー本気で神様を呪ったね、うん」
勇の言葉に絶句する折紙。当時反女性優位主義運動が活発だったとは言え、短い間に二度もテロに巻き込まれるとは運が悪いレベルの話ではなかった。
「そんでテロリストの一人に俺もユウキも殺されそうになってさ、気がついたらそいつを殺してたよ」
「え?」
「無我夢中でさ、相手の拳銃を奪ってそれで撃ったんだよ」
その時のことを思い出したのか今まで浮かべていた笑みが消え、今まで見せたことのない冷徹な表情に、背筋が凍る感覚に襲われた。
だが、すぐにいつもの穏やかな表情へと戻ると、それでねと言葉を続けた。
「事件が終わった後にさ、ユウキが『助けてくれてありがとう』って言ってくれたんだよ」
「ありがとう…」
「それで思ったんだよ。俺でも誰かを守れるんだって、大切な人のために戦おうってさ。それからは日本のあっちこっちで道場破りして鍛えてたって訳よ」
一区切り着いたのか再び飲み物を口に含む勇。対して折紙は俯いてしまう。
彼も自分と同じ様に苦しんだのだ。いや、人を殺したことの無い自分以上の苦しみを味わってなお、前へ進んでいるのだ。あの日のまま止まってしまっている自分より、強いのは当然だったのだ。
「私は――五年前イフリートに目の前で両親を殺された」
俯いたまま静かに語りだした折り紙に、相槌をうつこともないがしっかりと耳を傾ける。
「許せなかった。あんなに優しかった父さんと母さんを奪った奴を」
その時の光景が脳裏に浮かび、缶を持っていた両手に力が入り、缶が軋む音が部屋に響いた。
「そんで、復讐のために軍に入った訳か」
「それもある。でも、自分の様な悲しみを他の人に味わって欲しくなかった。それに――」
「それに?」
「守りたい人がいる。その人が助けてくれなければ、私も両親と一緒にイフリートに殺されていた」
精霊の攻撃から自分を助けてくれた、自分と同い年の少年の顔を思い浮かべる折紙。
その少年とは同じ来禅高校にいるのだが、クラスが違うこともあり、結局会うことができず一年が過ぎてしまった。
「そっか、なら手伝うよ」
「え?」
勇の言葉の意味が理解できず、俯いていた顔を上げて問い返す折紙。
「復讐については悪いとは言わないけど、いいとも言えないから無理だけども、君の誰かを守りたいって思う気持ちは応援したいからさ、少しは仲良くしてくれるとありがたいんだけど」
「……」
「一人で背負いこみなさんな。協力しあってこその人間ってもんでしょう」
屈託のない笑顔で折紙の頭に手を置く勇。最初は驚いたが不思議と心が落ち着いていった。
自分と同じ痛みを知る彼なら、信頼してもいいのではないだろうかと思えるのも、彼の魅力なのだろうか?今なら彼が誰からも好かれるのかが分かる。
「分かった」
「うっし、じゃあよろしく”折紙”!」
折紙が頷くと、嬉しそうな顔をして頭に置いていた右手を差し出してきた。
最初はその動作に面食らったが、すぐに握手を求められていると理解すると、おずおずとその手を取った。両親を失ってからは、人と関わらなくなったのでこういったことをするのは新鮮であった。
「よろしく天道軍曹」
「んー勇でいいよ堅っ苦しいの苦手だからさ。あ!何なら”お兄ちゃん”でもええんやで?」
サムズアップしながらドヤ顔で提案してくる勇。流石にその呼び方は遠慮願いたい。
「勇と呼ばせてもらう」
「だよねー」
冗談冗談と笑いながら、腕時計で時間を確認する勇。
「んじゃ、俺は帰るね。またあ明日ー」
「また明日」
別れの挨拶をすると、ブリーフィングルームを出ていく勇。それを見送ると勇から貰った缶に視線を移す折紙。
奇しくもそれは自分の好きなジュースであった。缶を開け飲んで見ると温くはなっていたが、いつもより美味しいと思った。
時は少し遡り、勇と折紙がいるブリーフィングルームのドアに張り付いている人物がいた。
アミタ・フローリアン。『エルトリア』と呼ばれる世界から、無限連環システムである『エグザミア』を求めてこの世界へと飛び出していった妹を追いかけている少女である。
現在は勇の父である勇太郎の計らいで、ブルーアイランド基地に身を置かせてもらっていた。
帰還した勇がいつまでも経っても戻ってこないので、探していたらここに辿り着いたのであった。
「(楽しそうですね)」
ドアに耳を当てて部屋の中の会話を盗み聞きしているアミタ。いけないことであることは理解しているがどうしても気になってしまい我慢できなかった。
ちなみにドアは防音性なのだが、アミタはエルトリアの環境復興作業用ロボット『ギアーズ』であり、視覚・聴覚といった感覚器官が人間より優れているのだ。
最初は険悪な雰囲気だったが徐々に和らいでいき、今では笑い声も聞こえてくる様になっていた。
あの二人の仲がよくないというより、折紙が一方的勇を嫌っていたそうだが、それが改善されるのは喜ばしいも、なぜか素直に喜ぶことができなかった。
「(どうして、何でしょう?)」
勇が自分以外の女性と仲良くしているのを見ると、胸が締め付けられる様な感覚に襲われるのだ。
異常があるのではないかと勇太郎に相談して点検をお願いしたら『人の心を持っていれば、誰でも経験することだからだいじょぶだいじょぶ』と嬉しそうに笑いながら言われてしまった。
故郷のエルトリアでは、『死触』と」呼ばれる環境破壊によって、徐々に人が住めなくなっており、多くの者が他の星への移住している。
今ではエルトリアにいるのは、死触の研究をしている生みの親である博士や、エルトリアに愛着のあるお年寄りしかいなくなっていた。
そのためアミタは同年代の若者と出会ったことがなく、自分が経験したことのない事態が発生しているのだろうか?と考え込んでいた。
『んじゃ、俺は帰るね。またあ明日ー』
いつの間にか話し合いが終わっていた様で、ドアへと向かって足音が近づいてきていた。
「(わわわ!?)」
こんなことをしていると知られたら嫌われてしまうと、慌ててドアから離れ曲がり角へと身を隠す。
幸い勇はブリーフィングルームを出ると、アミタのいる方とは逆方向に去っていったので胸を撫で下ろした。
「うー勇君のことを考えると変になっちゃいます」
一緒にいると自然と勇を見ているし、どうしたら喜んでもらえるのか考えてしまったり、この間の模擬戦で傷ついた姿を見て途轍もない不安に襲われるのだ。
「やっぱり不具合があるんでしょうか?」
彼女がその感情に気づくのはいつになるか……。
基地内の勇太郎の執務室でデスクに備えられた椅子に腰掛けながら、各部隊から上げられた報告書に目を通している勇太郎。
「そっちに入った新人はどうだった大尉」
報告書から目を離し、デスクの前に控えていた燎子に問いかける勇太郎。
「はい、想像以上の活躍でした。流石少佐の息子さんです」
今日の戦闘ではASTは負傷者無く作戦を終えている。目標を達成できなかったちは言え、精霊との戦いでは必ず負傷者が出ていたことを鑑みれば、十分な結果であった。
「そうか、ならば俺は親として最低だな」
「え?」
悲痛な面持ちで椅子の背もたれへ寄りかかる勇太郎。
なぜ勇太郎がそんなことを言うのか分からない燎子は困惑してしまう。
「勇の才能が俺との血の繋がりによるのなら、そのせいであの子を戦場へと向かわせてしまった。できるなら、戦いとは無縁の世界で生きて欲しいかったよ」
「少佐…」
親が子の幸せを願うそれは当然のことである。しかし、軍人として混迷していく世界で、勇の力が必要となっているのも理解していた。そして本人が願ったとは言え、軍人の道を選ばせてしまったことに悩んでいたのだろう。
「あの子は幼い頃から力があり、誰かのために傷つく優しさがあった。妻が死に痛みを知ったあの子は、大切な人が同じ痛みを味わうことがない様にと戦う道を選んだ。本当なら止めるべきだったのかもしれん。それでも俺はあの子の決意を尊重したのだ。時折思うよ間違えてしまったんじゃないかとね」
いつもの様な覇気の無い弱々しい声音で話す勇太郎。その姿は常に先陣を切り部下の道を切り開く勇敢な戦士ではなく、子を思いやる一人の父親のであった。
「そんなことはありません」
「む?」
「勇君が言っていました『俺が前へ進めるのは、父さんが背中を押してくれるから。信じて見守ってくれるから迷わないんだ』って」
「…そうかあの子が。言うようになったじゃないか」
子が育つのは早いもんだと感慨深そうに笑う勇太郎。
「すまんね、らしくないところを見せてしまったな」
「いえ、誰でも弱音を吐きたい時はあります。私でよければいつでも聞きますよ?」
「そうかい?なら、その時はお願いしようかねぇ」
そう言っていつもの様に、はっはっはっと豪快に笑う勇太郎であった。
SF映画にでもありそうな、戦艦の艦橋を思わせる空間に設置されている巨大なモニターに、プリンセスとASTの戦闘を記録したと思われる映像が流れていた。
「――以上が本日行われた戦闘です司令」
金髪で整った顔立ちの男が折り目正しく礼をしながら言葉を発する。
男に司令と呼ばれたのは館長席に腰掛けている10代半ばと見られる少女であった。
真紅の軍服をシャツの上から肩がけにしている少女は「そう」と短く答えると小さく右手を上げ、人差し指と中指をピンと立てた。まるで、煙草でも要求する様に。
「はっ」
男は素早く懐に手をやると、棒つきの小さなキャンディを取り出した。一切の無駄のない動作で包装を剥がしていく。
そして少女の隣に跪き「どうぞ」と、少女の指の間にキャンディの棒を挟んだ。
少女がそれを口に放り込み、棒をピコピコと動かす。
「…ASTに見慣れないのが混じっていたわね。見た感じPTみたいだけど」
「はい、報告にあった新型の量産試作機で、ヒュッケバイン系列のようです」
少女の問いかけに男は跪いたまま答えると、モニターに勇が駆るMK-Ⅱが映し出される。
「ヒュッケバインねぇ。確か三年くらい前に基地一つをまるごと吹き飛ばしたのよね?」
「ええ。初期型は新型動力の『ブラックホールエンジン』のテスト中にエンジンが暴走を起こし、基地の人員数千人を巻き込んで消滅してしまいました。そのためPTの開発一時は中断されていたのです。ですが最近になって再開されたようですね」
「嬉しそうじゃない。元教導隊だけあって感慨深いものがあるのかしら?」
「確かにそうですが、今の私は指令の忠実な下僕。指令に尽くすことが何よりの――おうふぅ!」
言葉の途中で少女が男の頭の上を足で踏みつけると、男は恍惚とした声を発した。
「ありがとうございます!ありがとうございます!」
「余計なことは言わなくていいのよ。にしてもこの装着者自殺志願者なのかしら?精霊相手に接近戦を挑むなんて」
モニターにはMK-Ⅱとプリンセスが切り結んでいる場面が流れており、少女はそれを見ながら呆れが混ざった声で言う。
「精霊の霊装に射撃武器は通じにくいですから、間違った判断ではありません。無論リスクも高いですがああもっと強く踏んで下さい指令!」
男が真顔で解説しているが、少女に膝まづいて頭を踏みつけられている姿は、シュールとしか言いようがなかった。
「装着者のデータはある?」
「はい、あります」
少女が言うとモニター艦橋にいたクルーがコンソールを操作し、に勇に関する情報が表示される。
「って天道先輩じゃない」
「おや、勇君をご存知で司令?」
「ええ。私の通っている学園の高等部にいた人よ。ついこないだ卒業したけど。と言うか神無月あんた先輩を知っているの?」
意外といった顔つきで神無月と呼んだ男を見下ろす少女。ちなみに未だに踵で踏んづけたままである。
「はい、教導隊の隊長を勤めていた天道勇太郎さんのお子さんですよ。直接お会いしたことはありませんが、写真を見せながらよく自慢してらっしゃいました」
神無月の言葉に「ふーん」と答えると、顎に手を当てて思案顔になる少女。
「にしても彼強いわね。精霊とあそこまで渡り合えるなんて」
「そうですね。まだ荒削りなところはありますが、素質は十分にあるでしょう」
神無月の言葉に少女が「不味いわね」と呟いた。
「軍は近々、ISとシンフォギアシステムの投入も検討しているみたいだし。このままだと最悪の事態が起こりかねないわね」
「では司令?」
「ええ。そろそろ
少女は席から立ち上がり男に命令を下した。
その言葉にクルー達が息を呑むのが聞こえる。
「はっ!」
軍の教本に載っていそうな程綺麗な敬礼をする男。
それを見て満足そうに頷くと数歩前へ歩を進めた。
「さあ、私達の
やっとプロローグ編が終わったって感じですね。
次回以降は他の原作キャラもどんどん出てきますのでお楽しみに!