ワールド・クロス   作:Mk-Ⅳ

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お久しぶりです。お待ちしていた方には誠に申し訳ありません。再び更新していくのでよろしくお願いします。


第二十二話

「ここがIS学園…広い」

 

IS学園正面ゲート前で朝田詩乃はそう呟いた。自分の通っている高校とは比べ物にならない程広大な敷地に隅々まで手入れが行き届いていた。流石世界唯一のIS操縦者育成機関と言ったところか。

勇やユウキと同居している彼女だが、勇の任務の都合上、IS学園の始業式が始まる今日から学園内の寮で生活することになった。

そうなると詩乃が1人で暮らさねばならなくなってしまうので、勇太郎が彼女も勇らと一緒に寮で生活できるよう手配したのだ。

詩乃の通っている高校も今日から始業式だったので午前中に終わり、勇とこの正面ゲート前で待ち合わせていたのだが、ブルーアイランド内で空間震が発生したため一時交通が停止してしまい、それが夕方になり解除されたことを勇にメールで伝えると予定通りゲート前で落ち合うこととなった。

 

「おーい、詩乃ー」

 

聞き覚えのある声で呼ばれたのでそちらを向くと、勇が小走りで駆け寄って来ていた。

 

「ごめんごめん。待たせちゃったねー」

「ううん。今着いたところだから。勇こそ大変なのに手間を取らせてごめんなさい」

 

空間震が発生した時刻、怪物が現れたと言う話を小耳に挟んだ。きっと勇もかなり大変だっただろうに、自分の面倒まで見なければならないのだから、彼の負担になってしまうのが申し訳なく思う。

 

「気にしない気にしない。同じ家で友達なんだから遠慮しなさんな」

 

そう言ってにこやかに笑う勇。本当に苦だなんて思っていないのだろう。そんな彼の優しさについ甘えてしまうのだ。

彼とは半年前のGGOの世界で最初は敵同士として戦い、その後偶然再会したのを機に共に行動する様になった。

それから彼の強さに憧れ、背中を追いかけていた。そして子供の様に純粋に世界を楽しむ彼といる時間は、現実の辛さを忘れられる程に楽しかった。

死銃事件の時もターゲットとなった自分を守るために、危険を顧みず共に戦ってくれた。

過去の罪から怯え生きるのを諦め様としていた自分に己の罪を話し、生きていてもいいのだと励ましてくれた。

事件後罪と向き合い、前に進む機会を与えてくれた。彼には返しきれない程の恩がある。

 

「どうしたの詩乃?」

 

考え込んでいた自分を心配してくれる勇。それだけでも嬉しく思ってしまう自分は現金な女だなぁと自嘲してしまう。

 

「何でもない。ユウキも待ってるから行こ?」

 

心配させない様に微笑みながら言うと、「じゃあ、いこっか~」と先導してくれるのでその後をついて行く。

前を歩く勇の背中は、自分とそれ程変わらない身長なのに不思議と安心できる頼もしさがあった。

いつか守られたり追いかけるのではなく、横に並んで共に歩きたいと思うのであった。

 

 

 

 

 

詩乃と合流したので部屋の前まで案内した俺はドアをノックした。

 

「ユウキ、アミタ。勇だけど詩乃連れてきたよ~」

 

そう告げると部屋の中からドタバタと騒がしい足音が聞こえてきたかと思うと、ドアが勢いよく開かれた。

 

「兄ちゃんおかえり~!」

 

我が妹が飛びついてきたので受け止めてやる。元気があってよろしい、よしよし頭も撫ででやろう。

 

「えへへ~」

 

幸せそうな顔してんなぁこいつ。そんなにいいのかね?

 

「勇君おかえりなさいませ」

「ただいまアミタ。そっちの方は大丈夫だった?」

「はい、皆無事ですよ」

 

それはよかった。ま、ユウキの様子をみれば分かるんだけどさ。

 

「詩乃見てみて!この部屋すごいよ!ホテルみたいだよ!」

 

俺から離れたユウキが興奮した様子で、詩乃の手を引っ張って部屋の中に入っていった。

俺もお邪魔すると、ユウキの言う通りそこらのビジネスホテル顔負けの豪華さを誇っていた。いくら各国の重要な人材を預かるからって金かけすぎじゃね?

 

「ユウキベットで跳ねるな!後荷物はちゃんと整理しておけよ共同で使うんだから」

「は~い」

 

ベットでトランポリンしていたユウキを注意し、ダンボールに詰めて運ばれてきた荷物を片付けておくように釘を刺しておく。でないとしっちゃかめっちゃかしかねん。

ちなみにIS学園の寮は二人一部屋となっているが、ユウキが詩乃と同じベット使うってことでアミタと三人で借りることとなった。俺は教員用の部屋を借りさせてもらうことになっている。

 

「じゃあ俺はちょっいと一夏の様子を見てくるね」

「おーボクも行くー」

「いいからお前は荷物でも片付けてなさい」

 

ぶーぶー文句たれるユウキをアミタと詩乃に任せて部屋を後にするのだった。

 

 

 

 

 

頭に叩き込んだ寮の見取り図と、知らされていた一夏の部屋を照らし合わせながら向かっていると、窓の外では日が沈みかけていた。

そろそろ夕飯の時間か、何をたべようかなと考えていたら曲がり角で誰かとぶつかってしまい、相手が尻餅をついてしまった。

 

「す、すまない!余所見をしていてしまった。怪我は無いかい?」

「大丈夫です~。ちょっとびっくりしちゃいましたけど~」

 

慌てて相手の少女の無事を確認すると、にこやかに笑いながら無事であると話してくれた。

手を貸して起き上がらせると背は俺より少し低く、キツネ?の皮を被ったような独特の服装をしていた。

 

「大変失礼をした。俺は天道勇。今日からここで世話になる者だ。よろしく頼む」

「私は布仏本音といいます~。あなたがオリムーが言っていたお兄さんですか~。こちらこそよろしくお願いします~」

「オリムー?ああ、一夏のことか。もしかして同じクラスなのかな?」

「そうです~」

 

初めて会う筈の彼女が俺のことを知っている可能性として、最も高いのを言ってみたら当たったようだ。

 

「そっかならあいつと仲良くしてくれるかな?右も左も解らない環境で心細いだろうからさ」

 

今までと違う環境だって事前に覚悟は決めていただろうけど、いざ目の当たりにするとやっぱり大変だろうからな。少しでも不安が和らげてやりたいしな。

 

「分かりました~。ふふ」

「ん?何か可笑しなことでもあったかな?」

「そうじゃなくてですね~。本当に仲がいいんだなぁ~って思ったんです~。オリムーお兄さんのために怒ってましたからぁ~」

「怒る?何でさ?」

 

温厚が服を着てるみたいなあいつが怒るなんて珍しいじゃないか。しかも俺のためってどう言うこっちゃい?

 

「同じクラスのセシリア・オルコットって子が、ISの男性操縦者のオリムーが気に入らないみたいで、色々と悪口言っていたんですよ~。最初はオリムーも無視してたんです~。そうしたらオルコットさんがお兄さんのことを「腰抜けの臆病者」って言ったらオリムーが「あの人は俺の自慢の兄だ!!馬鹿にするんじゃねえ!!!」ってすごい剣幕で怒鳴ったんですよ~。そのまま言い合いの喧嘩になっちゃったんですけど、織斑先生が止めてくれたんです~」

「あの馬鹿者め…」

 

俺のことで喧嘩するんじゃないよ…。もっと自分のことで怒れよたくっ。

ちなみに職業不明の千冬の姉さんだったけど、何とここIS学園で教師をしていたのだ。詳しい経緯までは教えてくれなかったけど。

 

「そう言っている割には嬉しそうですよ~」

「まあ、嫌ではないけどね」

 

可愛い弟分にそう言われたら嬉しいですよそりゃ。

 

「うん?何やら騒がしくなってきたような?

 

何やら廊下の先の方から騒音が聞こえてきたな。

 

「ん~?一夏が何かやらかしたかぁ?」

 

方角的に一夏の部屋がある方だな。あいつは無自覚に騒動を起こすからなぁ。主に女絡みで。

ある部屋の前で女子が集まっており、その中心に案の定一夏がいた。神に祈るように頭の上で両手を合わせている。仏教にでも入信したのかお前は?視姦されながら精神統一でもしてんの?

 

「何してんのお前?坊主にでもなりたくなったん?」

「い、勇兄!助けて!色々と大変なことになってる!」

「んあ?」

 

人ごみを掻き分けて一夏に声をかけると、救世主が現れたかのような顔で助けを求められた。

周りの女子を気にしているので視線を向けると、それぞれ随分と際どい格好をしていた。あ~こりゃ男には毒だわなぁ。

 

「おーい箒。このままだと一夏が狼になって周りの女子に襲いかかちゃうぞー」

「するかぎゃああぁぁぁ!」

 

扉をノックしながら部屋にいるだろう箒に告げると、扉が勢いよく開いた思ったら、飛び出してきた腕に襟を掴まれた一夏が引き込まれていった。ホラー映画によくありそうな場面だった。

 

「あの人が織斑君のお兄さん?」

「本当に女の人みたい」

「美人だよねぇ~」

 

一夏がいなくなったためか、俺に注目が集まってしまったらしい。つーか布仏さんよ俺に美人は褒め言葉じゃないからね?

 

「さっきの馬鹿(一夏)の兄貴分の天道勇だよ、ここで生活させてもらうから弟共々よろしくね。それと男もいるってことを意識して服装を選んでもらえると助かる」

 

取り敢えず自己紹介としておこう。それと格好について注意すると「はーい」と元気よく返事してくれた。ここの生徒も来禅と同じくらいノリがよさそうだな。

そんなことを考えながら「入るぞー」と部屋の中の一夏らに言いながら入ると、正座している一夏を箒が仁王立ちしながら見下ろしていた。

 

「で、何があったんよ君ら?」

「それが…」

 

二人の話を纏めると互いに同居人のことを知らず、箒がシャワーを浴びている時に一夏がやって来て、相手が女子だと思っていたのでタオル巻いただけで出て行ったそうだ。後は察しの通りの展開となったそうだ。

 

「なるほどねぇ。一夏も悪気はなかったんだから許してあげなよ」

「それはそうですけど…」

「てか君ら同居人のこと聞かされてなかったの?」

「いえ」

「そういや山田先生から聞いてなかったな」

 

伝えておけよ…。そもそも男女を同じ部屋にするなよ、いや色々と要因があるんだろうけどね。クサレ兎とかクサレ兎とか。

 

「その箒、知らなかったとはいえ、俺が悪かった許してくれ」

「いや、私も迂闊だったすまなかった一夏」

 

うむ。これにて一件落着のようだな。では俺の用件を済ませるか。

一夏に近づき笑顔で肩を掴む。

 

「一夏よ」

「どうしたのさ勇兄?てか顔が怖いし肩が痛いんだけどッ!」

「貴様俺がホモだと思っているらしいなぁオイ」

「え?違うのぐあああああああああ!!」

 

素晴らしき思考の弟にコブラツイストを決めてやろう。

一夏が必死に抵抗しているが、何遠慮するな特と味わうがいい。

 

「俺はホモじゃねえええええええええ!!!」

「ぎゃああああああああああああああ!!!」

 

次は四の字固めにしてやろう。ほれほれたんと味わえ。

 

「だ…だって…女性に…興味無い…感じ…だったし…。さっき…だって…周りの…女子を…気にして…なかったじゃん…」

「単に気になる相手がいなかっただけだし、あれくらいで狼狽える様な鍛え方してねぇんだよ!」

「おがああああああああああああああ!!!」

 

止めを刺すべく海老反り固めに移行する。フフフいい声で鳴くじゃないかぁ!

 

「ほ…箒…た、助け…てくれ…」

「自業自得だ諦めろ」

 

箒に助けを求めるがあっさりと切り捨てられる。さあ、これでトドメだ!

何かが折れる音と共に一夏の悲鳴が響き渡ったのであった。

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